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原子力資料情報室通信381号(2006/3/1)より

〜図版準備中〜

放射能の大放出が始まる―使用済み燃料試験迫る―

澤井正子

 六ヶ所再処理工場は2001年に施設が完成し、工場稼働にむけた試験が行われています。今までに水(2001/4開始)、化学薬品(2002/9開始)、劣化ウラン(2004/12開始)を使用した試験が実施されました。そしていま、実質的な工場の稼働開始となる使用済み燃料を使ったアクティブ試験に関する手続きが、最終段階を迎えています。

アクティブ試験をめぐる状況

 日本原燃は2月20日、2月中に開始予定としていたアクティブ試験を3月中に、同様に再処理工場の竣工を2007年8月へと1ヶ月延期しました。これはアクティブ試験のための諸手続きが2月中では終了しないためです。しかし政治的・法的スケジュールはなりふり構わず進められています。
 昨年末からのアクティブ試験に関連する動きを表1にまとめました。試験に対する日本原燃、原子力委員会、原子力安全保安院、原子力安全委員会、そして青森県の対応に差はありません。すべてが一体となって一刻も早い試験開始のため、形だけの手続きを重ねています。『ウラン試験報告書』より先に『アクティブ試験計画書(以下『計画書』)』が提出され、国の試験計画認可の手続き日程は数週間も前から決定していました。東京では午前中の検討報告を午後の委員会が決定し、その日のうちに責任者が青森県へ報告に行くという強引な進め方です。青森では「国のお墨付き」を根拠に、住民の疑問や質問に対して「安全だ」、「問題ない」という対応が続いています。必要のないプルトニウムのための総額約11兆円の巨大プロジェクトを、誰も何の責任もとらない“無責任のサイクル”が動かしているのです。3月中に日本原燃と青森県・六ヶ所村が安全協定を締結し、アクティブ試験を開始する可能性が濃厚です。

アクティブ試験の概要と目的

 原発の使用済み燃料は、「プルトニウム+ウラン+死の灰」の塊です。非常に強力な放射線と高い熱を出し続けるため、常に水の中で放射線を遮へいし冷却する必要があります。再処理工場はその使用済み燃料を切り刻み、大量の薬品を使って化学反応によってプルトニウム、ウラン、死の灰に分離する施設です。まさにこのような再処理工場の機能を試すのが試験の目的です。『計画書』でも、「これまでの試験では確認できなかった(中略)、環境への放出放射能量、核分裂生成物(死の灰)の分離性能、ウランとプルトニウムの分配性能、液体廃棄物・固体廃棄物の処理能力」等々を確認するといっています。特に大きな目的は気体、液体として日々放出する放射能がどのくらいの量になるのかを確認することです。
 表2は日本原燃が公表した『アクティブ試験計画書(使用済み燃料による総合試験)』の概要です。試験ではPWR型使用済み燃料約210トン、BWR型使用済み燃料約220トン、合計約430トンが使用されます。試験全体は大きく二つに分れています。前段は個々の機器・設備が設計どおり動くか、設計値の性能を出せるかをみる「施設の安全機能及び機器・設備の性能の確認」で、後段は実際の操業に近い状態で工場の連続運転によって年間の処理能力(800トン)が可能かをみる「工場全体の安全機能及び運転性能の確認」となっています。
 さらにそれぞれの段階が第1ステップ(約2ヶ月間、処理量PWR燃料約30トン)、第2ステップ(約4ヶ月間、PWR約50トン、BWR約10トン)、第3ステップ(約5ヶ月間、BWR約60トン)の前段と、第4ステップ(約3ヶ月間、PWR約110トン)、第5ステップ(約3ヶ月間、BWR約160トン)の後段に区分されています。最初の段階は燃料の燃焼度が低く冷却期間も長い放射能量が少ない使用済み燃料を少し処理することから始められ、後段になれば実際の使用済み燃料の仕様に近い条件のものが操業と同じように処理される予定です。試験全体は約17ヶ月間(1年5ヶ月)の予定です。試験項目の中で(性能検査)となっているのは、国の使用前検査です。

放出放射能量

 六ヶ所再処理工場は、1年間で表3と表4に示されているような膨大な量の放射能を放出します。気体廃棄物としては表3にあるようにクリプトン85が33京ベクレル、トリチウムは1900兆ベクレル、炭素14が52兆ベクレル、よう素が280億ベクレルなどです。これらの放射能は、高さ約150メートルの排気塔から排風機を使って時速約70キロメートルの速さで大気中に放出されます。加速して排気することによって放射能は大気中で拡散されるので、周辺住民への影響は少なく被曝量は十分に低いと国は言っています。
 同様に廃液として海に捨てられる放射能は表4にあるように、トリチウムが1.8京ベクレル、よう素2130億ベクレルなどです。六ヶ所村の沖合3キロ、水深44メートルに設置された海洋放水管の放出口からポンプを使って時速約20キロで放出され、十分に希釈されるのでこれも安全性に問題はないというのです。すでにこれらの排風機やポンプの性能試験は終了し、アクティブ試験では実際の使用済み燃料を使って「環境への放出放射能量」が表の値で収まるかどうかをみるというのです。

放出量の確認?

 「環境への放出放射能量」の確認はどのように行われるのでしょうか。『計画書』をみると、試験の前段は燃料の燃焼度も低く処理量も操業の状態より大幅に少ない状態で、後段でも使用済み燃料の条件は、認可されている最高燃焼度55,000MWD/tには及びません。これでどうして実際の操業時の放出放射能量が確認できるのでしょうか?日本原燃は、計算によってはじき出す予測値で確認すると言っています。レベルの低いもので、高い場合を推測する考え方です。計算にはORIGEN(オリゲン)と呼ばれる計算コードなどが利用され、実際の測定値と沢山の仮定と評価を重ねた計算によって推定放出量を出し、燃焼度45,000MWD/tの燃料を800トン処理した場合の値(表3、表4の判定基準)と比較するするというのです。
 放射能の量というのはほとんど計算です。しかし問題は例えば「計算コード(ORIGEN)」の信頼性や、様々な入力数値の誤差の考え方、仮定の不確実性など様ざまにあります。計算コードを使って計算に計算を重ねるという評価の方法は確実なものではありません。さらにこの不確実な放出放射能量から、国や日本原燃はさらに計算を重ねて年間0.022mSv(22マイクロシーベルト)という被曝量を計算し「問題ない」と言っています。しかし放出量さえこの値に収まる保証もなく、被ばく量は事業者の都合のよい条件で計算したものでしかありません。(アクティブ試験の放出放射能による環境への影響や国の被ばく評価の問題については、次号以降で取り上げる予定です。)

誰が評価するのか

 さらに問題になるのが評価の方法です。『計画書』によれば、第1と第2ステップ、第2と第3ステップの間に放出放射能量や性能を評価するホールドポイントというものが設定されています。しかし第3〜第5ステップの間には評価ポイントは設定されていません。第2ステップまでの放射能量の少ない試験の評価だけで、残りの340トンの再処理にゴーサインを出そうとしているのです。
 試験の概要をみると第2ステップまではほとんどPWRの燃料しか処理されておらず、第3ステップでBWR燃料が試されます。処理量を見てもここまでが試験の前段です。六ヶ所再処理工場が技術を導入しているラ・アーグUP-3再処理工場の実績からみてもこれは大きな問題です。なぜならフランスやドイツの原発はほとんどがPWRなので、UP-3にはBWR燃料再処理の実績が少ないからです。情報公開の面でも問題はあります。試験全体をとおしても試験の評価の公開はホールドポイント(2)の1回しかありません(国へ提出)。重大な事故やトラブルが予想される第3ステップ以降に公開はないのです。
 この試験の評価を誰が行うのかというと、日本原燃「自身」です。『計画書』は、ホールドポイントで「技術評価委員会を開催し、試験実施中に想定された結果を逸脱すると判断された場合には、必要な措置を講じた上で、再試験を行うかまたは次の試験に移行するかを判断する」としています。しかも試験中に事故・トラブルがあった場合の対応もすべて日本原燃に任されています。計画では評価を行う時間も、再試験や改造工事などの時間も何も考慮されていません。始めから終わりまで操業のスケジュールしか考えていないようです。ホールドポイントをもっと増やし最低でもステップごとの評価を行い、ホールドポイントごとに評価を公表するべきでしょう。