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『原子力資料情報室通信』343号 (2003/1/1)より

連載・低線量放射線の影響をめぐって(その3) 最終回

医療被曝は別枠に


 前回(342号)、2005年に刊行予定のICRP新勧告案の概要について紹介したが、重要であると思われる2点を追加する。
 医療被曝については別個に取り扱い、病気の最良の治療や放射線診断のためのガイダンスレベルとして検討する、と提案し直している。これまで、医療被曝には線量限度はなかった。患者にもたらされる利益が大きいことが明らかであるとして、限度を設けることで必要な検査や治療ができなくなってしまってはならない、とされているのだ。これには、放射線診療にたずさわる医師や放射線検査技師が必要な検査しかしない、そして常に患者の被曝線量を減らすための努力をしているという条件が守られていなければならない。しかし、とくに日本の医療の実態をみると、この前提条件は確かなものではない。集団検診など必ずしも有効ではない検査が多すぎること、またコンピュータの設定ミスで過剰に被曝させられてしまった事故が相次いでいるなど、多くの問題をかかえている。
 医療被曝を除くすべての被曝に関しては、どんな線源に対しても提案した防護対策レベル(342号、p.12、表3)で、防護できるとしている。なお、防護の最適化(被曝をできるだけ低く抑えるために行なう措置)には、常識的な判断が求められるため、将来的にはその行為にかかわる利害関係が予想される人々として、良識あるステークホルダー(利害関係者)の参加とその交渉により、実際的な最適化の合意が決定する、と新しい合意形成の考え方を提示している。この「良識あるステークホルダー」には、ぜひ原子力施設周辺の住民や大量被曝させられている原発下請け労働者らを加えなくてはならない。

■科学的・中立的装いをこらして

 放射線防護基準を大幅に改訂しようとするときには、必ず国際的・科学的権威が動員される。UNSCEAR(国連放射線影響影響科学委員会)やBEIR(電離放射線の生物学的影響に関する米国科学アカデミー)委員会の登場だ。露骨に原子力産業サイドに立つのではなく、科学的、中立的な装いをこらして、巧妙に国民を説得する役割を担っている。
 BEIR委員会は、低線量被曝の影響に関する最新情報にもとづくLNT(被曝線量に応じてがんや白血病が発生する確率が増えるという、しきい値のない直線反応関係)、しきい値、ホルミシス、適応応答などについて検討し、BEIR-司鷙陲鬚泙箸瓩觝邏箸鬚靴討い襦このプロジェクトのスポンサーは国防総省、エネルギー省、原子力規制委員会、環境保護庁で、国家挙げての作業だ。原発事故の後処理、日常的な放射能の放出、原発や核兵器工場の除染や閉鎖にともなう放射能廃棄物の処理などにかかる、ばく大な費用をできるだけ節約するために、リスク評価をめぐって、必死の構えだ。
 2001年に刊行される予定だったBEIR-司鷙陲話戮譴討い董2003年になるという。バイスタンダー効果やゲノム不安定性がどのように低線量のリスクに影響するのか、原爆被爆者で出ているがんや継世代影響以外の健康影響などをどう評価するかなど、水面下でさまざまな議論がすすんでいる。次のUNSCEAR報告は2005年に発行される。ICRP2005年勧告策定に向けて関連機関の動きが活発化している。

■放影協のチェルノブイリシンポ

 11月27、28の両日、放射線影響協会が主催するチェルノブイリ健康影響シンポジウムが開かれた。このシンポジウムは、1991年に国際原子力機関(IAEA)の国際諮問委員会(IAC、委員長:重松逸造・放射線影響研究所理事長=当時)が「チェルノブイリ事故に関する放射線影響と防護措置に関する報告」をまとめ、公表した翌92年から毎年、ロシア、ウクライナ、ベラルーシなど海外からも研究者を招き開催されている。
 「チェルノブイリ事故から16年後のベラルーシの甲状腺腫瘍」について、ベラルーシ医科大学のユーリー・デミチクが報告した。小児甲状腺がんは90年ころから急増し、95年をピークに下降し、2001年の発生は0だった。現在は、事故のとき子ども(15歳以下)だった人たちが成長し、青年(15〜18歳)と若年成人(19〜33歳)で発生率の増加が続いている。2001年の発生率は青年で10万人あたり11.3、若年成人で5.7だった。ベラルーシにおける1986年から2000年までの甲状腺がんの総数は8240人(子ども724人、青年387人、成人7129人)。小児甲状腺がんでの死亡は3人(1人は治療中の合併症、2人は転移)。事故後生まれた子どもでがんと診断されたのは29人。
 子どもと青年の乳頭甲状腺がんの攻撃的な特性を調べるため、652人の患者を調査した。小さな甲状腺腫瘍は攻撃性が高く、がんの直径が5ミリ以上の症例では、多発性成長と甲状腺外への転移があった。一次がんの大きさは、局所転移や離れた臓器への転移の頻度と有意な相関があった。
 Y・デミチクは父のエフゲニー・デミチクとともに、ベラルーシ国立甲状腺がんセンターで手術や治療を行なっている。E.・デミチクはB・カザコフらと連名で、臨床的なデータにもとづいて、急増する小児甲状腺がんはチェルノブイリ事故による放射能汚染によって誘発された可能性を強く示唆しているという論文を、1992年にイギリスの科学雑誌『ネイチャー』に発表した。この論文がきっかけで、それまでベラルーシやウクライナの科学者の主張を無視してきたIAEAなどの国際機関も認めざるをえなくなった。
 91年のIAC報告で「住民は放射線が原因と認められるような障害を受けていない。今後もほとんど有意な影響は認められないだろう」と結論した重松逸造・放射線影響研究所名誉顧問が座長となっての総合討論のとき、Y・デミチクが「甲状腺がんの発生の増加は放射線誘発のものであることは動かせぬ事実である」と強調したことは、とても印象的だった。このシンポジウムの参加者からはいまだに、甲状腺がんの発生について、被曝線量との関連がはっきりしないから、因果関係は疑問だという発言があるのだ。

■膀胱腫瘍も増加のきざしが

 ウクライナ科学アカデミー泌尿器疾患研究所のアリーナ・ロマネンコは「チェルノブイリ事故後のウクライナにおける膀胱腫瘍発生:分子的機構」を報告した。ウクライナにおける膀胱がんの発生率は、1986年に10万人あたり26.2人だったのが、2001年には43.3人に増加している。汚染地域の住民について、膀胱の放射線に関連した病気の発生とその分子的メカニズムを調べた。高汚染地域の患者74人、低汚染地域キエフの患者62人、非汚染地域の33人について、膀胱細胞層のマッピング生体組織検査を実施した。さまざまな手法による免疫組織化学分析により、病理学的パラメータの比較研究を行なった。結果は、汚染地域のすべての患者で、固有層の結合組織の広い面積に硬化をともなう慢性的な増殖性非定型膀胱炎が共通して観察された。さらに膀胱細胞層に小さながんが発見され、これを“チェルノブイリ膀胱炎”と定義した、と報告した。
 この発表について、「尿のセシウム濃度が数ベクレル程度でこんな結果が出るとは信じられない」という声が多くあがった。たしかに、この研究はこれからも継続しなければ、確かな結果は得られない。
 しかし、ベラルーシ、ウクライナ、ロシアの汚染地帯では、限られた地域での統計の断片かもしれないが、今後注意しなければばらないと思われるデータが数多くある。これらを、調査の数が少なすぎるなどの理由にひとくくりに切り捨ててしまってはならない。

■被曝の押しつけを許さない

 事故から16年が経過し、きびしい経済状態が続くなか、ベラルーシやウクライナ、ロシアでは「チェルノブイリはもう終わった」としてしまいたいという雰囲気が強い。研究所の統廃合が進行していて、研究員への給与の支払いも滞っているという。とくにベラルーシは、94年に当室が日本側の事務局を担当し、ベラルーシ科学アカデミーとシンポジウムを開催したころとはまったく状況が変わって、チェルノブイリのことを問題にするだけで圧力がかかるという事態になっているという。多くの地域が汚染区域からからはずされ補償が打ち切られるなど、被災者にとってはますますきびしい状況になっている。
 チェルノブイリの影響はこれからも長く続く。しかし、その広大な汚染地に起こっていることを科学的に証明することは、至難の技である。証明できることは事実のごく一部でしかない。科学的に証明されるか、されていないにかかわらず、事実は存在するのだ。
「被曝が原因だという証拠がない」という一言で、原爆被爆者、チェルノブイリ、世界各地で起きた核汚染の被害者たちは切り捨てられてきた。これを許さないために、あらゆる被曝の押しつけに反対する大きな動きをつくることが、私たちの課題だ。[終]


(渡辺美紀子・スタッフ)

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