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『原子力資料情報室通信』第342号(2002.11.30)より

連載・低線量放射線の影響をめぐって(その2)

コントローラブル線量で防護体系ができるのか?
2005年に刊行予定のICRP新勧告

 国際放射線防護委員会(ICRP)は、放射線防護に関する勧告を行なっており、各国の規制当局は、ICRP勧告を国内の原子力に関する規制の法律や放射線障害の防止にかかわる法律に取り入れている。日本では、2001年4月に1990年勧告を法令に取り入れたところであるが、現在、ICRPは、これまでの放射線防護体系を根本から見直す作業を進めており、新たな基本勧告の刊行を2005年に予定している。
 ICRPは、1990年勧告後に多くの疑問が出され大議論になった経験を踏まえ、これまでの姿勢をがらりと変えて、新しい構想を積極的に開示している。国際的な幅広い議論を求め、オープンなかたちで進めていてる。日本でも、保健物理学会では大塚益比古氏(放射線防護問題協会)を主査としてICRP勧告検討委員会を発足させ、また原子力安全協会では放射線防護基準検討専門委員会で、電力会社など原子力にかかわるさまざまな機関でも議論が進められているようだ。
 出てきた意見を反映したレポートが次々と提出され、流動的な状態で、また筆者の内容の把握も不十分ではあるが、重要な問題なので主な内容を紹介し、気が付いた問題点を指摘しておきたい。

とるに足らない線量は切り捨てる?

 ICRP主委員会のロジャー・クラーク委員長が勧告改訂を提案した最初の論文(Control of low-level radiation exposure:time for a change ?,Journal of Radiological Protection, 1999, Vol.19,No.2,107-115)は、1999年に出た。まず低線量領域では疫学によるデータが限られているので、生物学的リスクを評価するためには、発がんに関わる細胞機構を明らかにすることがいっそう重要であることを述べている。つぎにICRPが採用してきたしきい値なしの直線仮説に関して批判されてきた理由について説明している。そして、これまで複雑でわかりにくかった防護体系をわかりやすくするためとして、新しい防護の概念「コントローラブル(controllable、制御可能な)線量」なるものを提案した。
 これは個人の防護を基本とするというもので、職業・公衆・医療被曝と分けることなく、被曝をともなうすべての活動や行為を、作業者と公衆とを区別することなく、最も被曝する個人の線量に着目して制御しようとしている。ICRPがこれまでとってきた集団線量による社会中心の判断基準から重点を個人に移すとしている。「被曝を合理的に実行可能な限り低く、ALARP(as low as reasonably practicable)」
を原則とするとし、人が日常的にあびる自然放射線の何倍あるいは何分の1として線量の基準レベルを表すことが提案されている。
 ICRPが新たに原則としようとしている「最も多く被曝した個人の健康に対するリスクが問題にならない(trivial)ものであれば、いかに多くの人が被曝しようとも全体のリスクは問題にならない」というのは、低線量被曝の影響をバッサリ切り捨ててしまおうというひどいものだ。これまでもICRPは、原子力産業の利益を守るために一貫して放射線のリスクを低く評価し続けてきたが、これほど露骨に打ち出していることに強い怒りを感じる。

社会的背景

 なぜ、これまでの防護体系を大きく変える必要に迫られたのか。クラーク論文では. その社会的背景をこう述べている。
「多くの国で土地の放射能汚染がかなり問題になっている。チェルノブイリのように 事故放出によるものもあれば、大気中核実験によるものもある。また過去のラジウム の夜光塗料施設によるものや廃液の過度の放出によるものがある。現在とくに問題なのは原子力施設(古い原子炉や兵器製造工場)の廃止措置である。 それには費用がかさむ。そして残留汚染を低レベルに抑えるのにあまりにも金をかけ過ぎると考える人たちがいる。汚染した土地をそのままにしておくと社会問題になっ て、国によっては環境リスクが大きすぎるという理由で訴訟になるだろう。このような問題があるので、出費を減らすために、線量−反応関係にしきい値が あると主張する人たちからの圧力が増しつつある」
 これから、ますます原子力施設の老朽化・廃炉、放射性廃棄物処分の費用の問題が大きく出てくる。これらのコストを減らすためにクリアランス・介入免除・除外レベルなどの導入も検討している。ICRPはしきい値の議論を避け、この仮定を使わない防護の枠組みをつくることを意図したのだろう。

集団線量の放棄

 集団線量の概念は、線量と時間の範囲を限定して使うべきで、防護体系からはずしていくという方針が打ち出されている。しかし、事故の長期的影響を見積もる作業などに、集団線量は使われてきた。また、いくつかの防護手段の選択肢からどれを選ぶかを判断するときの尺度として、集団線量を放射線防護からまったくはずすことはできないはずだ。
 ICRPは、グループを防護するときは、影響を受ける個人の線量レベルと、その人たちの数の変動の両方を考慮するという。使うのにわかりやすい量は、被曝グループの大きさとそのグループの平均線量の積で、この積を表すのに集団線量という用語は適当ではないとしている。そして、新たに「グループ線量(group dose)」という用語を検討しているという。被曝グループの定義としては、特定の時間帯で、特定の範囲の被曝をした人たちに限るとしている。集団線量の放棄は、やはり低線量被曝の影響を無視しようということに他ならない。

自然放射線の危険性評価も必要

 新しい防護対策として、個人線量のクラス分けが都合がよいとして、線量バンドが提案されている。表1に個人の年間実効線量に関する線量バンドを示す。自然放射線に相当する領域を「ノーマル・バンド」と呼び、その10倍、100倍というかたちがとられている。自然放射線も決して無害ではない。自然放射線を基本にするなら、自然放射線の危険性を定量的に評価することも必要だ。
これで本当に防護されるのか?
 2001年6月のタスク・グループの会議では、「防護対策のための線量(doses for protective action)」(表3)が提案された。事故時の住民の避難のめやすを年間20ミリシーベルトとしている。これは事故が起これば、住民は何年間にわたって年間20ミリシーベルト近い被曝を受ける可能性をもつことになるが、これはとても認められない。また、線量の加算性(これまでに被曝した総線量に対するリスク)は考慮されているのだろうか。生涯線量の把握も重要である。
「出生前の子どもの防護に対する特別の配慮も、1ミリシーベルトの何分の1かの拘束値と2〜3ミリシーベルトによって行なえることになろう」「公衆に対する現行の1ミリシーベルトという線量限度は必要なくなる」など、気になる点が多々ある。原発労働者らの健康がしっかり守られるものでなくてはならない。

もっと、わかりやすい言葉で!

 これまで複雑でわかりにくかった防護体系を、新勧告はシンプルで理解しやすい体系にするというふれこみだったが、やはりその意図は成功しているとは言いがたい。
 これまでICRPから提出される勧告はとてもわかりにくいものだった。読み手の英語力不足ばかりではないらしく、そのまわりくどい言いまわしはネイティブにとっても理解しにくいという。日本語の翻訳版はさらにわかりにくい。重要な用語の訳語がこなれてないので、原文とつきあわせて何度読んでも意味がつかめず、なんて私は頭が悪いんだろうと落ち込んでいたが、私ばかりではないらしい。
 「わかりにくい」という声にたいして、クラーク委員長自ら、「現在の体系は非常に複雑で、また説明するのがむずかしい。公衆や政治家にたいして、「行為」と「介入」のちがいを説明することは不可能にちかい」という発言をしている。とにかく、専門家以外の人にもちゃんと理解できる新勧告になることを強く望みたい。


(渡辺美紀子・スタッフ)

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