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『原子力資料情報室通信』409号(2008/7/1)より

六ヶ所村周辺の変動地形から見えてくること
渡辺満久(東洋大学社会学部)

『原子力資料情報室通信』409号(2008/7/1)より

六ヶ所村周辺の変動地形から見えてくること

渡辺満久(東洋大学社会学部)

S面の確認

 2008年のゴールデンウィークに爆音の轟く三沢空港からレンタカーを借り上げ、六ヶ所村へ向かった。六ヶ所村を訪れるのは、これが初めてであった。「S面」の分布や高度を確認するために、数日間、現地調査を行なったのである。
 「S面」の認定は比較的容易であった。約11.5万年前に北海道の洞爺湖から飛来したToya火山灰も、複数の地点で確認できた。途中、無断で山菜取りに入った人に間違われ、大声で叱られたこともあった。有名な出戸西方断層(でとせいほうだんそう)の断層露頭を通りかかった際、八戸の松山先生のグループが作業している所を拝見した。しかしその時は、地質コンサルタントの方々が作業しているものとばかり思い、挨拶し損なってしまった。遠慮しないで、露頭に近付けばよかったと後悔している。
 「S面」とは、地形学(自然地理学)の分野において用いられる「専門用語」である。もともとは、「下末吉面(しもすえよしめん)」と呼ばれていた海成段丘面のことであり、その頭文字を取って「S面」と呼ばれるようになった。神奈川県の下末吉という地域で詳しく調査されたことに由来する。
 河川や海の近くでは、階段状の起伏が見られることがある。この階段状の起伏は「段丘」と呼ばれ、地形学では平坦な部分を「段丘面」、急な崖の部分を「段丘崖」(だんきゅうがい)として区別している。段丘面とは、過去のある時代に、河川や海によって形成された平坦面である。その後新たに平坦面が形成される時に、古い平坦面との間に崖(段丘崖)が形成される。河川が形成した段丘面は河成段丘面、海が形成した段丘面は海成段丘面と呼ばれる。S面は、今から約12.5万年前、現在より少し海面が高い温暖期に、海岸線付近で形成された海成段丘面である。
 一般に、海成段丘面は非常に平坦である。S面は、日本だけではなく世界中において、とくに広く分布する海成段丘面である。このため、海岸付近において、S面は非常に平坦で広い台地として認識されることが多い。断層運動などの地殻変動が生じた場合、この極めて平坦なS面の形状が乱されることになるので、地殻変動による異常を検知しやすい。
 また、同一時代に形成された海成段丘面の高度は、どこでも同じであったはずである。したがって、非常に離れた地域であっても、S面の高度を比較することによって、約12.5万年間の地殻変動の影響を容易に知ることができる。
 このように、断層運動などの地殻変動による影響や変動量を知る上で、S面は欠かせない指標なのである。このように重要なS面に係る調査を、六ヶ所村で実施しようと思い立った理由を次に述べる。

日本原燃の報告書を見て驚いた

 現地調査を行なう数ヵ月前、2008年2月某日、私の目の前には1冊の資料があった。その資料は、「日本原燃株式会社・再処理施設及び特定廃棄物管理施設「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」等の改訂に係る耐震安全性評価報告 敷地周辺・敷地近傍・敷地内の地質」というものである。この資料の中に提示されていた、六ヶ所村周辺の地形分類図を何気なく見ていたのであるが、海成段丘面の分類図に非常に強い違和感を覚えた。私の専門は地形学なので、その図を見ていたのである。
 通常、異なる時代の海成段丘面が認識されるとき、それらの間の段丘崖は滑らかに連続するはずである。しかし、目の前にあった地形分類図では、段丘崖は異常とも思えるほど複雑な形状を呈していたのである。何か嫌な予感がして、他のデータを確認することにした。原子力関係の報告に関わると、「まさか……」という感じ(渡辺、2008)がよぎることが多い。
 同じ資料の中には、日本原燃が実施した反射法地震探査結果も含まれていた。これを見て、さらに驚いた。再処理工場の近傍の地下においては、古い地層は逆断層によって切断され、その上の若い地層は撓曲(とうきょく)していたのである。これは、典型的な逆断層による変形構造であり、地層の変形は地表直下まで連続しているように見えた。西側が隆起しており、地層は東側(海側)へ傾斜している。
 すぐに、空中写真を見ることにした。すでに述べたように、海成段丘面は非常に平坦なはずなので、断層運動が地表まで及んでいるとすれば、すぐにわかると思ったのである。結果は、一目でわかった。S面は異常な傾斜で海の方向へ傾いていた。ここで、少し慎重に考えてみた。もし、海側に若い海成段丘面がいくつか分布していれば、見かけ上、段丘面の高度が海側へ下がるように見えることはありうる。しかし、どんなに写真をみても、時代の異なる段丘面の間にあるはずの、段丘崖を確認することはできなかった。連続するS面が、異常な傾斜で海側へ突っ込んでいるとしか見えなかったのである。
 段丘崖が見えないところで、無理やり段丘区分をしようとすると、段丘崖は非常に不自然に描かれることになろう。私が地形分類図を見て感じた違和感は、これが原因であったと考えている。すなわち、地殻変動によるS面の変形を、何とかそれ以外の要因で説明しようとしたために、矛盾が露呈したと考えられる。
 その後、共同研究者である、中田高氏(広島工業大学)と鈴木康弘氏(名古屋大学)ほかの方々にも検討していただいたが、ほぼ同様の意見を得ることができた。原子燃料処理施設の下に存在する逆断層は活断層であり、S面の高度を数10m食い違わせていることは、ほぼ確実である。このように確信し、現地調査を実施しようと決意したのは、日本原燃の報告書を手に取ってからわずか30分後のことだったと記憶している。今後早急に、論文にまとめる予定である。

大陸棚外縁断層

 S面の変形から確認した活断層は、いわゆる「大陸棚外縁断層(たいりくだながいえんだんそう)」の南方への延長部にあたるように見える。海上保安庁水路部(1982)による調査結果を見ると、大陸棚外縁断層は南方で分岐して、一方は尾駮沼(おぶちぬま)の北で陸に向かって伸びるように示されている。大陸棚外縁断層の南への延長部が、上陸している可能性がある。
 日本原燃の見解によれば、大陸棚外縁断層は70〜80万年前に活動を停止した断層であると結論されている。しかし、この見解には異論も提出されていたはずである。米倉伸之先生(元東京大学教授)がその一人であった。2001年に亡くなられた米倉伸之先生は、私の恩師である。「あれは活断層だと思うけどなぁ…」と仰っておられたことを思い出す。誤解されては困るが、米倉先生の見解だからそれを支持するというわけではない。米倉先生は、そのような従順性を嫌っておられた。私も無批判に恩師の見解を正当化するつもりは毛頭ない。海域の音波探査結果を拝見する限り、日本原燃の見解にも一定の合理性はあると思っている。
 しかしながら、日本原燃による結論には疑問は残る。海底の音波探査によって活動時期を特定できるであろうか? 今は活動を停止しているとまで断言できるであろうか? そこまでの解像度はないはずである。だからこそ、これまで専門家の間でも見解の相違があったのではないだろうか? 大陸棚外縁断層の活動性は、海底のデータで議論していても埒が明かないように思えた。この断層が上陸すると予想される地点で、陸上のデータで詳細に検討することが重要であると考えるのである。

学会発表とその後の動き

 写真判読結果と現地調査結果をもとに、2008年の「日本地球惑星関連連合大会」において、六ヶ所村の活断層の存在について報告させていただいた。原子力政策に関わる大きな問題があることをより広く知っていただこうと思い、学会発表の直前にマスコミ報道をしていただいたためか、かなりたくさんの方々に聞いていただくことができた。
 会場には、日本原燃の関係者も多数おられたそうであるが、残念ながら何も反応がなかった。あの場において、個人的見解を披露することには相当の抵抗があることは理解できるが、私としてはかなり期待外れであった。せめて、「ここはどうなの?」程度の質問があってもよかったのではないだろうか。これに関しては、中島(2008)が正しく分析しているように思える。
 我々は、原子力発電に対して反対ではない。化石燃料への依存体制から脱却するための方策として、原子力発電は現実的に進められているものの1つとして評価している。ただし、言うまでもなく、そこでは高度な安全性が確保されなければならない。そこが問題である。日本原燃は、我々の研究成果を「科学的根拠のない一方的な推論」であると断定し、何も質問がなかった学会発表の直後、ホームページにおいて「立地地域の皆さまを中心に多くの方々をいたずらに不安に陥れる内容となっています」とのコメントを公開した。これには、かなり失望した。
 日本原燃のコメントは、「すでに我々が十分に検討しているのであるから、余計なことは言うな」とも理解できる発言である。活断層認定に関する真摯な議論を行なわないまま、異論を一方的に排除することは、非常に大きな問題である。
 我々は、「いたずらに不安に陥れる内容」という表現の撤回を求める意見書を日本原燃に提出した。しかし、それに対する応答はいまだにいただいていない。当たり前のことではあるが、我々は地域の皆様を不安に陥れたくて研究をしているわけではない。議論の透明性を確保し、説明性を高めることが重要である。それができなければ、「不安に陥れる」のは一体誰なんだと問いたくなる。
 2007年に発生した中越沖地震の後に、我々は原子力社会における活断層評価の問題点を指摘し、活断層が過小評価されていることを明らかにした(鈴木ほか、2008)。この時も、「科学的でない一方的な推論」、「いたずらに不安に陥れる」という表現での批判をいただいた。今回も同様に、このように批判されるであろうことは、ある程度予想してはいた。しかしながら、まともに同じ文言が出てきたことには驚きを禁じえない。科学的な議論に基づき、施設の安全性が確保されることを切に望んでいる。

見えてくる問題点

 審査の場においては、何がどのように議論されたのであろうか? これもまた、余計なお世話だと言われてしまうかもしれないが……。事業者側が膨大なデータを提出し、それを委員会で検討するというシステムでは、正しい評価を期待できない。どんなに有能な専門家がそろっていても、現状のシステムでは限界があることは明白である。審査方法を根本的に考え直す必要があることを、強く感じている。
 それにしても、「専門家」は審査の場において何を見ているのであろうか。今回のことは、普通の変動地形研究者であれば、すぐに気がつく問題である。きちんと議論されたのであればよいのであるが、議論された形跡はない。すなわち、どなたも気がつかれなかったのではないかと思えてくる。六ヶ所村周辺の活構造を検討している過程で、大間原発の敷地に関する疑問も見えてきた(中田、2008)。大間周辺の海成段丘面高度の異常についても、普通の変動地形研究者であれば、容易に認定できるもの(気がつくべきもの)である。案外、この辺にも、大きな問題点の1つがあるのかもしれない。


文献
■海上保安庁水路部、1982、5万分の1海底地質構造図「むつ小川原」。
■中島達雄、2008、原子力支える組織 不可解な行動、コンパス、2008年6月2日読売新聞夕刊。
■中田 高、2008、広域的な変位・変形に関する安全審査の問題点とその改善、原子力安全委員会 耐震安全性評価特別委員会 地質・地盤に関する安全審査の手引き検討委員会 第8回会合 配布資料。
■日本原燃、2008、再処理施設及び特定廃棄物管理施設「発電用原子慮施設に関する耐震設計審査指針」等の改訂に係る耐震安全性評価報告 敷地周辺・敷地近傍・敷地内の地質」、49p。
■鈴木康弘・中田 高・渡辺満久、2008、原発耐震安全審査における活断層評価の根本的問題−活断層を見逃さないために何が必要か?、科学、78、97-102。
■渡辺満久、2008、原発建設における特殊な活断層評価−変動地形学の視点から、原子力資料情報室通信、403号、6-9。
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