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投稿者: ゲスト 投稿日時: 2009/4/28 17:33:33 (2075 ヒット)

東京電力を告発する長尾裁判控訴審に不当判決
しかし、長尾さんが多発性骨髄腫であったことは認める


 4月28日午後2時、東京高裁812号法廷。冒頭2分の写真撮影が終った後、第19民事部の青柳馨裁判長は東京電力を告発する長尾光明さんの原発裁判の控訴審判決を下した。「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人らの負担とする」判決理由も述べないまま、退廷した。

 判決文は、地裁判決が否定していた長尾さんの多発性骨髄腫について、「国際診断基準の3つの診断用件、〃貔兇泙燭惑△M蛋白を検出、骨髄におけるクローナルな形質細胞の増加または形質細胞腫、4慙臓器障害(複数の骨病変)の存在を充足するものと認められるから、その疾患は多発性骨髄腫であると認めることができる」とした。
 しかし、放射線被ばくと多発性骨髄腫との因果関係については、「…高度の蓋然性をもって証明されたということはできない」と否定した。

◆判決文
http://cnic.jp/files/court/nagao_hanketsu090428.pdf

◆これまでの長尾裁判記事
http://cnic.jp/modules/news/index.php?storytopic=24&storynum=10


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投稿者: ゲスト 投稿日時: 2009/3/2 18:35:34 (1846 ヒット)

長尾光明さんの原発労災裁判判決期日の変更のお知らせ

■ 4月28日(火)午後2時から
 東京高等裁判所812号法廷


2月26日、裁判所より連絡があり、長尾事件の判決期日が延期となりました。
当初、3月26日の予定でしたが、延期の結果、4月28日午後2時と指定されました。

『原子力資料情報室通信』416号(2009年2月1日発行)参照
「東京電力を告発する長尾訴訟 4年間の審理の終わり」
 氏家義博(長尾訴訟弁護団・弁護士)




『原子力資料情報室通信』第416号(2009/2/1)より

東京電力を告発する長尾訴訟
4年間の審理の終わり

氏家義博(長尾訴訟弁護団・弁護士)

 2008年12月25日、東京高等裁判所a第812号法定において、長尾訴訟控訴審の第2回期日が開かれた。
 結論から言えば、この日の手続きは極めて淡々と進められ、裁判長は同日をもってすべての審理を終えることを宣言した。提訴より4年の長きに渡った長尾裁判は、あっけない結審の場面を迎えることとなったのである。



 今回の期日では、控訴人(長尾氏側)と被控訴人(東京電力側)より、共に準備書面が用意されており、法廷に提出された。東京電力側の提出書面は、相も変わらずに長尾氏に対する「多発性骨髄腫」という診断を争うとともに、疫学的証拠による因果関係の判断を否定するものである。これに対し、当方側の書面は、一方で医学的診断論に関して、東京電力の主張が意図的な議論のすり替えと、強弁にしか過ぎないことを明らかにした。またこれに加えて、疫学論については、岡山大学大学院の津田敏秀教授作成にかかる2通の「意見書」を基礎として、詳細な議論を展開するものであった。
 なお、東京電力側の主張で印象的であったのは、自然放射線の被ばくに関する部分である。即ち、東京電力によれば、人は誰でも宇宙・大気・食物・空気等からの自然放射線の被ばくを受けるものであり、日本人の平均値を前提にすると、長尾氏は73年間に175.2ミリシーベルトの集積線量(本件原発で受けた被ばく線量の2.5倍)を受けたものだという。
 この主張に対しては、当方の弁護団長鈴木より、直ちに口頭で異論が述べられた。それというのも、かような議論は、長尾氏側から見れば、「だから何?」としか言いようのないものだからである。地球上のすべての人が自然放射線の被ばくにさらされているとしても、長尾氏は「それに加えて」原子力発電所における大量の被ばくを受けたのであり、かような「平均値以上の被ばく」を本件訴訟で問題としているのである。ここで平均値の値がいくつであろうと、本件訴訟とは関係がない。
 結局のところ相手方の主張は、放射線被ばくの日常性を強調することによって、いたずらに放射線の危険性を相対化するという、印象操作でしかない。以前、自然放射線に触れて、「原子力発電所の近くに住むより、妻の隣にいた方が多量の放射線をあびる」と発言した高名な評論家がいたが、東京電力の持ち出した主張は、これと完全に同一レベルのものである。無責任なマスコミ発言では通用しても、法廷における厳密な議論には到底耐えられるものではない。



 ところで、ここまでのやりとりで、法廷において経過した時間は、10分にも満たないものである。これに続けて、裁判長は双方に追加主張がないことを確認すると、あっけなく結審を宣言した。当方からは、事前に、上記津田教授の証人申請を提出していたが、これも採用されることがなかった。
 このような裁判所の対応から、本件の結果を予想することはとても難しい。津田証人の話を聞くまでもなく、裁判所は疫学論についてすでに十分にしたという趣旨なのか。あるいは、証人を呼んでも呼ばなくても結論に代わりはないという、単なる消極的判断なのか。知るのは裁判官のみである。
 本件の第一審判決は、東京電力が具体的に主張していないような医学論まで持ち出して、長尾氏の確定診断を否定するものであった。また、法理的には不必要な疫学論議にあえて踏み込み、専門家が慎重に議論して下した労災認定の結論を「一刀両断」するものであった。そこに見られたのは、「原発労働に起因する多発性骨髄腫への罹患」という事実を、何としても認めまいとする強固な政治的意思である。
 しかし、原審の内容が酷いものであればあるだけ、理性的な目からはその誤謬がいっそう明らかである。もともと、控訴審の役割は、第一審の下した判決を、今一度、別の観点から見直すことにある。4年を経てついに事実審の終了に至った今、控訴審の理性的な判断を静かに待ちたい。


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投稿者: ゲスト 投稿日時: 2008/12/12 18:18:15 (1923 ヒット)

『原子力資料情報室通信』第414号(2008/12/1)より

長尾訴訟 第1回控訴審 二つの「発想の転換」

氏家義博
(長尾訴訟弁護団・弁護士)

 10月30日午前11時、東京高等裁判所にて、長尾訴訟の第一回控訴審期日が開かれた。このような訴訟期日は、短い場合Aだと数分で終わってしまうことも珍しくない。しかし、この日は長時間に渡って、裁判長による本件の論点に関する説示と、双方当事者に対する質問が行なわれた。
 その中で、裁判長は本件に関する自らの疑問点を、当事者に対して率直に投げかけた。裁判長の発言における基本的な問題意識は、「果たして、長尾氏に対する医学的な診断名を確定することが、本件の解決にとって不可欠なものか」というものであった。
 即ち、本件の第一審においては、相手方が「多発性骨髄腫」という長尾氏に対する診断名を争い、医学界の権威者を担ぎ出した上、数通に及ぶ「意見書」を提出して、徹底的に争ってきた。被告の議論は、医学界で承認された診断基準と明白に相反し、また明かな自己矛盾すら孕むものであったが、いずれにしてもこの議論のためだけに、約2年以上に及ぶ歳月が費やされた。しかし、改めて考えてみれば、長尾氏が病に倒れて、必死の闘病生活を送ってきた事実自体は明白である。相手方とても、この点を争うものではない。そこで本質的な問題は、長尾氏が罹患したその「病気」と、原子力発電所での勤務との間に、因果関係があったのか無かったのかではないか。その「病気」の医学的な名称を確定することは、必ずしも問題解決に不要なのではなかろうか―これが、裁判長の基本的な疑問点である。この点について裁判長は、「病態は色々あるだろうが、長尾氏の罹患した『生(なま)の病気』との間の因果関係が争点ではないか」という表現で発言を行なっていた。
 このような指摘は、ひたすらに些末な医学論争に終始してきた第一審の審理に対して、根本的な発想の転換を要請するものである。この姿勢を前提とするならば、今後の控訴審手続においては、「診断論」の議論はむしろ付随的なものとなり、「因果関係論」が中心的な争点として浮上することになるであろう。
 もちろん、長尾氏に対する「多発性骨髄腫」の診断を否定した第一審の結論は誤ったものであり、これを正すための主張は、今後も必要である。また、因果関係の立証自体、必ずしも容易という訳ではない。しかし、今回の裁判長の指摘は、第一審とは異なる視点において、改めて本件を審理し直そうという姿勢の表明であったことは確かである。いわば裁判所によって、第一審をやり直すための、新しい土俵は用意されたと言える。今後はこの新しい舞台において、一層の攻防を尽くすことが求められている。
 なお、期日の終わり近く、裁判長より被告に対して、「原子力損害賠償法のこれまでの適用事例は?」との質問があった。また、その質問と前後して、「本件について発想の転換は出来ないか」との発言が行なわれた。その趣旨は明確ではないが、「被害者救済法たる原賠法の趣旨を重視して、本件を解決することは出来ないか」との意味にも取れる発言であった。仮に、裁判所が本腰を入れて、このような見地から、「被害者救済」を前提にした法解釈を行なうのであれば、原子力損害の被害者救済に向けて、確実な一歩が踏み出されることになる。裁判所がどこまで真剣にこの問題と取り組むか、期待を込めて見守りたい。

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ぜひ、傍聴してください!
長尾原発労災裁判第2回控訴審
 12月25日(木) 午後2時から
 東京高等裁判所812号法廷
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投稿者: ゲスト 投稿日時: 2008/10/2 13:02:04 (2288 ヒット)

長尾原発労災裁判控訴審を勝利しよう!
控訴審第1回口頭弁論、「報告と講演の集い」のお知らせ 【終】



 ■第1回口頭弁論期日

  日時   2008年10月30日(木)午前11時〜

  ところ   東京高裁 812号法廷




 ■原発被曝切り捨てを許すな、長尾原発労災裁判控訴!報告と講演の集い

  日時   2008年10月30日(木) 午後6時30分〜

  ところ   全水道会館 大会議室 
(JR水道橋駅東口下車2分)

 内容
報告 「長尾判決と控訴の要点」
鈴木 篤(長尾裁判弁護団長 江戸川法律事務所)
講演 「水俣・アスベスト・長尾被曝、疫学は市民の科学」
片岡明彦(関西労働者安全センター)
講師は尼崎住民アスベスト被災問題の先頭に立ち、企業責任と償いを牽引した実績者。実践した「疫学」をもとに、水俣・アスベスト、そして長尾裁判地裁判決の問題点を明らかにします。


★裁判へのご支援とカンパをよろしくお願いします。
郵便振替口座:00210-4-60257 長尾原発裁判を支援する会

銀行口座:中央労働金庫本店 普通1443744 長尾原発裁判を支援する会

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東京電力を告発する長尾光明さんの原発裁判を支援する会
責任団体:よこはまシティユニオン・関西労働者安全センター
原水爆禁止日本国民会議・原子力資料情報室


■容認できぬ!長尾地裁判決控訴審を勝利しよう
《これまでの経過》
 5月23日、東京地裁判決(松井英隆裁判長)は最低最悪の不当判決でした。東京電力の言い分を超えて、多発性骨髄腫という病気と放射線被曝との因果関係まで否定し、厚労省が専門家を招集して行なった労災認定をも否定する、驚くべき判決でした。
 長尾さんは東京電力福島第一原発、動燃新型転換炉ふげん、中部電力浜岡原発でベテラン技術者として配管作業に従事、この被曝が原因で多発性骨髄腫を発症、白血病類似疾患であり白血病の認定基準を大きく上回る被曝線量記録と疫学証拠をもとに、厚生労働省は専門家検討会の議論を経て労災として認定しました。
 労災認定とは労災保険法による労災補償制度上の業務上疾病として認められ、療養補償と休業補償給付の支給決定を受けることをいいます。長尾光明さんが労災申請したときにはすでに発症から長期間が経過していたため、労災補償の多くの部分が時効で消滅していましたが、多くの方の支援を得ての労災認定でした。
 しかし、労災補償は最低限の補償に過ぎません。長尾さんは全造船に加盟し、労働組合と共に労災上積み補償を元請である東芝、直接の雇用者である石川島プラント建設に要求しましたが、各社はこれを拒否したため、損害賠償裁判に訴えざるを得ませんでした。
 原子力の職場では、損害賠償責任は原子力事業者が負うという特別法=原子力損害賠償法があり、この原賠法に基づき東京電力に4400万円の賠償を求めることになりました。
 原賠法は無過失責任賠償責任を規定しており、労災認定を受けた長尾さんの場合は因果関係は明らかですから、裁判所は早期に長尾さんの訴えを認めるべきでした。
 結局、裁判所は「多発性骨髄腫ではない」という東京電力の荒唐無稽の主張を容認してしまったのです。裁判における東京電力の主張は矛盾だらけでした。多発性骨髄腫による4ヵ所の骨融解を別々の疾患であるとしたまれにみる非科学的判決を放置することは絶対にできません。
 長尾さんは判決直前についに還らぬ人になりましたが、ご遺族と弁護団、支援一同は控訴を決意しました。
 ぜひとも、控訴審第一回弁論の傍聴と「報告と講演の集い」に多くの方々のご参集をお願いします。
 すべての仲間のみなさん、控訴審勝訴を目標に共に頑張ろうではありませんか。

●これまでの長尾裁判関連記事はこちら
http://cnic.jp/modules/news/index.php?storytopic=24&storynum=10


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投稿者: ゲスト 投稿日時: 2008/7/3 15:00:00 (2560 ヒット)

『原子力資料情報室通信』409号(2008/7/1)より

司法の独立はどこへ?
東電を告発する長尾裁判で不当な国策判決

金沢裕幸
(長尾裁判弁護団・弁護士)

2008年5月23日午後1時10分、東京地裁527号法廷。民事第43部の松井英隆裁判長の声が法廷内に響き渡った。「原告の請求を棄却する」
 裁判長は判決理由の要旨を淡々と述べていく。その内容は、原告の主張をことごとく退け、被告東京電力の主張を認めるものであった。判決理由の朗読が進む中で我々原告弁護団は、ある種の驚きと空しさ、そして言いようのない憤りの高まりを押さえることができなかった。判決内容は、現在の裁判所がいかに国策としての原子力事業を重視し、支持しているか、いかに国民の生命・身体を軽視しているかを明白に示すものであった。果たしてこの国には司法の独立は存在しているのか――疑問を感じざるを得ない程に「ひどい」判決がそこにはあったのである。

本件提訴に至る経緯

 本件は、原子力発電所の労働者であった長尾光明さんが放射線被曝により多発性骨髄腫に罹患したことを理由として、東京電力に対し損害賠償を求めた裁判である(なお、訴訟途中から国が被告補助参加人として加わった)。
 長尾さんは、東京電力の福島第一原発等において配管工や現場監督として4年3ヵ月にわたり、放射線作業に従事した。蓄積総被曝線量は70ミリシーベルト(mSv)に及んでいる。退職後の1992年頃から体調に変化が現れ始め、次第にさまざまな症状に苦しめられるようになっていった。1998年に多発性骨髄腫の診断を受けた長尾さんは、その後、原子力発電所での放射線被曝が病気になった原因ではないかと考え、支援者の援助を受け、労災認定を求めた。
 これを受けて、厚生労働省は専門家による検討委員会を設け、多発性骨髄腫と放射線被曝との因果関係等について検討を重ねる。そして、2004年1月、福島の富岡労働基準監督署は、長尾さんの病気が原子力発電所での放射線被曝に起因するものとして労災認定を行なった。
 しかしながら、労災認定では慰謝料等の法定外補償を受けられない。また、何よりも長尾さんの心の中には、原子力発電所を設置、管理する東京電力の責任を明らかにし、今も危険に曝されながら働いている後輩たちに、これ以上の被害を受けさせたくないとの思いがあった。そのような強い思いに突き動かされて、長尾さんは2004年9月7日、東京電力を被告として、東京地方裁判所に対し損害賠償請求の裁判を提訴したのである。

訴訟の経緯と主な争点

 本件は、原子力損害の賠償に関する法律(いわゆる「原賠法」)に基づく請求であり、同法においては原子力事業者の無過失責任が定められている。従って、過失の有無は争点となりえず、すでに厚労省も因果関係を認めて労災認定がなされている以上、損害額が中心的争点となるように思われた。
 しかしながら、被告東京電力は全面的に争う姿勢を見せる。当初、被告は多発性骨髄腫と放射線被曝との間には因果関係がないという因果関係論、損害賠償請求権は時効により消滅しているという時効論を中心に争ってきた。原告はこれに対し、多くの疫学論文や判例を示して反論を加えた。
 ところが、被告は途中から、そもそも長尾さんの罹患した疾病は多発性骨髄腫ではないとの主張を加えてくる。診断論が争点となり、被告は、名古屋大学大学院医学研究科教授である清水一之医師の意見書を4度も提出し、徹底的に争ってきたのである。
 しかし、学会の重鎮とされる清水医師の意見書は、矛盾と歪曲に満ちた甚だ不当な内容に終始するものであった。清水医師は、複数の診断基準を恣意的に使い分け、原告の診療記録の記載を歪曲して都合よく引用し、意見書ごとに矛盾した見解や自らの過去の論文にすら矛盾する見解を述べるなど不当な議論を展開した。
 そこから透けて見えてきたのは、何としてでも本件訴訟の敗訴を回避し、原子力事業の推進を図りたいという国策企業、被告東京電力の強い意志であった。目的実現のためには真実を曲げることすら厭わない被告東京電力の隠蔽体質であった。
 もっとも、清水医師の意見は明らかに不当であり、長尾さんが多発性骨髄腫であるとの診断の正確性は疑いようのないことであった。原告は、清水医師の矛盾や歪曲を突いて反論を展開し、2007年12月7日、3年余りに及ぶ第一審は結審を迎えたのである。

多発性骨髄腫の罹患を否定する
不当な判決内容

 2008年3月28日に予定されていた判決言渡しは、裁判所の都合により延期され、同年5月23日に言い渡された。その内容は、原告の主張を全面的に退け、被告東京電力の主張を認めるものであった。
 まず判決は、長尾さんの病気が多発性骨髄腫であることを否定した。多発性骨髄腫か否かについては、国際骨髄腫作業グループ(IMWG)が2003年に発表した国際診断基準を基本として判断するのが相当であるとし、〃貔極瑤惑△M蛋白を検出、骨髄におけるクローナルな(クローン性の)形質細胞の増加又は形質細胞腫、4慙臓器障害の存在のすべてを満たす必要があるとした。その上で、ゝ擇哭△陵弖錣禄実しているものの、の要件について、同要件にいう骨病変はクローナルなもので複数ある必要があるとし、右鎖骨の骨破壊はクローナルと認められるが、他の骨病変はクローナルなものとは認められず、複数性を欠いているため要件を満たさないとした。
 しかし、の要件について右鎖骨以外の部位にクローナルな骨病変の存在を認めない判決の認定は明らかに不当である上、そもそも複数のクローナルな骨病変が必要という解釈自体に大きな疑問を抱かざるを得ない。
 本件においてクローナルな骨病変の存在を判決の要求するレベルで証明するためには、苦痛を伴う骨髄検査を重ねなければならず、実際上極めて困難である。病苦と闘う日々を送っていた長尾さんに更なる苦痛を要求するかのごとき判決の論理は、正に「血の通っていない判決」の論理に他ならない。

驚くべき国策判決

 そして、今回の判決で我々が驚き、憤りを感じたのは、多発性骨髄腫と放射線被曝との因果関係の有無についてまで判断し、これを否定したことである。判決は、各疫学調査について内容がさまざまであるにとどまらず一部相反する内容を含んでおり、一致した一定の傾向を読み取るには至らないとし、厚労省の検討会結果をも否定した。
 その判決内容自体、各疫学調査についての厳密な検討も行なっておらず、疫学の基本的理解を欠いた不当なものである。しかし、ここで我々が驚き、憤りを感じたのは、多発性骨髄腫への罹患を否定した上でなお因果関係の有無を判断した裁判所の姿勢である。裁判所は、長尾さんが多発性骨髄腫でないとした。従って、因果関係の有無について判断するまでもなく、原告の請求を棄却できたはずである。むしろ判決を下す上で必要のない因果関係の有無について判断することは完全な蛇足であり、判断をしないことが裁判の常識と言えるものである。
 それをあえて裁判所は判断し、因果関係を否定した。何故であろうか。それは、裁判所が国策である原子力事業に安全性のお墨付きを与えたかったからであると我々の目には映る。果たしてこの国には、司法の独立は存在しているのか――暗澹たる思いを禁じ得ない。

控訴審に向けて

 原告である長尾さんは、昨年12月13日に鬼籍に入られた。もし生きてこの判決を聞いておられたらと思うと複雑な心境になる。生前の長尾さんは、とても明るく、大病を抱えているとは思えないほどに元気な方であった。それでも裁判の話になると被告や被告側の医師に対する怒りを露わにされた。法廷では原発労働の過酷な実態を詳細に証言され、訴えられた。今もなお、かつての自分と同じく不安や恐怖を抱えながら原発労働に従事している後輩たちへの熱い思いがあった。
 我々は、長尾さんのご遺族の控訴意思を受け、6月5日、東京高等裁判所に控訴を行なった。長尾さんの遺志を継ぎ、原発労働の現場を変えるために、我々はしっかりと前を向き、歩んで行かなければならない。


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投稿者: ゲスト 投稿日時: 2008/6/12 12:47:33 (2267 ヒット)

国策としての原子力産業推進を優先した不当判決は許さない!

 原子力発電所で働き、被曝し骨髄がんの一種の多発性骨髄腫になった長尾光明さんが東京電力に賠償を求めた訴訟に対し、東京地裁(松井英隆裁判長)は5月23日、請求を棄却した。長尾さんは2004年1月、被曝が原因だったとして労災認定を受けたが、判決は「多発性骨髄腫とは認められない」と診断そのものを否定した。
 そして、診断を否定しておきながら、「仮に(多発性骨髄腫と)認められたとしても、放射線被ばくと疾患との因果関係は肯定できない」と奇妙な論理を展開し、さらに現在の国の放射線被曝の法廷限度以内の被曝で多発性骨髄腫に罹患することはないとまで言っている。ここには、この判決が極めて政治的な意図で書かれたものであることが示されている。
 この判決は、放射線被曝の影響をきびしくとらえ、多発性骨髄腫など白血病類似疾患や固形がんをも補償対象として認めている世界的な流れに逆行するものである。
 私たちは、人のいのちや健康よりも、国策としての原子力産業の推進を優先しようとする政治的圧力に屈したこの不当判決を許すことはできない。
 長尾さんは困難だった労災認定を勝ち取った後、「原発でたくさんの労働者が被曝している。長年経って、仕事をやめた後で出た病気が労災認定されたことは他の労働者の励みになると思う。元気なうちは皆さんに協力したい」と、病気と闘いながら裁判を闘い、「日本の原子力発電所の暗闇を照らすような判決を」と心から望んでいた。長尾さんの遺志をしっかり受け継ぎたい。

 6月5日、長尾さんの訴訟を引き継いだご遺族は、この判断を不服として控訴しました。
 これからもご支援をよろしくお願いします。

渡辺美紀子

●これまでの長尾裁判関連記事はこちら
http://cnic.jp/modules/news/index.php?storytopic=24&storynum=10

→判決要旨
http://www.cnic.jp/files/court/nagao_hanketsu080523.pdf


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投稿者: ゲスト 投稿日時: 2008/5/23 17:25:38 (2694 ヒット)

本日、東京電力を相手に損害賠償を求めて闘ってきた長尾光明さんの裁判(2004年10月、東京地裁に提訴)の判決が言い渡されました。
原告側の主張を排斥する不当な判決です。

→→【判決要旨PDF】

これまでの長尾裁判関係記事はこちらをごらんください。
http://www.cnic.jp/modules/news/index.php?storytopic=24&storynum=10




   生前の長尾光明さん 撮影:樋口健二さん


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投稿者: ゲスト 投稿日時: 2008/5/16 17:17:16 (5080 ヒット)

『被曝労働ホットライン』開設のお知らせ

5月23日の長尾さんの裁判判決の翌日と翌々日
5月24日(土)と25日(日)の両日
午前10時〜午後5時
原発で働き被曝した労働者、放射線作業従事者、離職してから健康に障害がでてきた人たちの相談窓口として『被曝労働ホットライン』を開設します。


電話番号(全日本造船機械労働組合)
0120−00−2385


責任団体:全造船機械石川島分会
『被曝労働ホットライン』へのお問い合わせは
 同分会 内山俊一(携帯電話:090−4094−2597)

または、長尾労災裁判を支援する会(下記担当者)
●神奈川労災職業病センター(担当:川本浩之)
横浜市鶴見区豊岡町20−9 サンコーポ豊岡505
TEL:045−573−4289

●原子力資料情報室(担当:渡辺美紀子)
東京都新宿区住吉町8−5 曙橋コーポ2階B
TEL:03−3357−3800

石川島プラント建設の社員であった長尾光明さんが、2004年10月に東京電力を提訴した裁判は、いよいよ5月23日に判決を迎えます。

昨年12月7日の結審にあたって、原告の鈴木篤弁護団長から、本人の声を聞いてほしいと、
長尾さんの最終意見陳述が口頭で補足されました。
「私は1977年10月から82年1月まで、東京電力福島第一原発の配管工事に従事して大量の放射線被曝をあびました。退職後98年に第3頚椎と左鎖骨が骨折し、多発性骨髄腫と診断されました。07年10月からは右鎖骨にも骨髄腫ができ入院中です。
原因は放射線被曝であり、阪南中央病院の村田三郎医師にも診てもらい、国も労災として認定しました。しかし、東電は私が診察も受けていない清水一之医師が、多発性骨髄腫の診断は偽りであるという意見書を出してきました。
私が働いた時期にアルファ各種の放射性物質が大量に放出されていたことも明らかになりました。原子力発電所での仕事はほんとうに苦しいものでしたが、私は精一杯働いてきました。その結果が多発性骨髄腫です。もし原発で働くことがなかったら、今のような苦しみを背負うこともなかったと思うと、ほんとうにくやしくてなりません。
 私は現在、病床にあって法廷で意見を述べることはできませんが、日本の原子力発電所の暗闇を照らすような判決を下されることを切に願います」
(長尾さんの最終意見陳述書より要旨)

長尾光明さんの最終意見陳述書全文は、原子力資料情報室のホームページに掲載しています。
http://cnic.jp/modules/news/article.php?storyid=593

長尾さんは結審の6日後の12月13日、容態が急変し、お亡くなりになりました。享年82歳でした。

私たちは、長尾さんの体調の良いうちに本人尋問の実施を求め、2006年4月6日、東京から大阪の法廷に出張するかたちで行なわれました。尋問の中で長尾さんは、東京電力や石川島プラント建設が、放射線被曝のリスクを説明することもなく、十分な安全教育も行なっていなかったこと、分厚い防護服を着て高温の劣悪な作業現場で働いたことなどを証言しました。
長尾さんの労災を申請するに至るまでの過程は実に困難なものでした。苦しい病気と闘いながら自ら手がかりを求め、ようやく支援グループに出会えたのです。
いつも原発でいっしょに働いた仲間や若い人たちが病気や健康不安に苦しんでいることを思い、「私のあとに続いてほしい。そのためにも勝たなくては」と、強い意志で闘っておられました。
私たちは、被曝から20年後に発症した「多発性骨髄腫」を白血病以外で初めて労災認定を勝ちとったことは、日本の原発労災認定のせまい扉を開ける第一歩となりました。長尾さんの労災認定、そして「原子力損害の賠償に関する法律」に基づいて東京電力に民事損害賠償を求める裁判を提訴した事実と意義をたくさんの人に知らせたいと思います。
 また、現在健康被害に苦しんでいる原発被曝労働者を掘り起こし、支援し、救済する運動を広げていくこと、さらに被曝の低減、健康管理手帳の交付、健康保障を要求するなどは、原発で働く労働者の実態を明らかにすることとともに、私たちの大きな課題です。



   生前の長尾光明さん 撮影:樋口健二さん



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投稿者: ゲスト 投稿日時: 2008/4/23 15:40:53 (2600 ヒット)

 5月23日(金)は、長尾原発労災裁判の判決日です!

 東京電力を相手に損害賠償を求めて闘ってきた長尾光明さんの裁判(2004年10月、東京地裁に提訴)は、5月23日午後に、いよいよ判決が言い渡されます。当日の裁判傍聴や要請行動、報告集会に、多くの皆さんがご参加下さいますようお願い致します。

【スケジュール】

12:15〜12:50  東京地裁(地下鉄霞ヶ関A1出口)前でビラまき
         http://www.courts.go.jp/tokyo/about/syozai/tokyotisai.html

13:10〜     東京地裁527号法廷で判決!

14:00〜14:30  司法記者クラブで会見



会見後〜16:00  東京電力(千代田区内幸町1-1-13、新橋駅5分)および文部科学省に要請行動(千代田区霞ヶ関駅3-2-2、銀座虎ノ門駅新連絡口11番直結)

18:30〜     全水道会館で報告集会(文京区本郷1-4-1、TEL 03-3816-4196、JR水道橋駅東口2分)
         http://www.tokyo-csw.org/comittee/kenshuu_2004_0610b.html


東京電力を告発する長尾光明さんの原発裁判を支援する会

責任団体:
よこはまシティユニオン
関西労働者安全センター
原子力資料情報室
原水爆禁止日本国民会議

事務局・連絡先:
よこはまシティユニオン
神奈川県横浜市鶴見区豊岡町20-9-505
TEL/FAX 045-575-1948



長尾原発労災裁判とは

◆労災認定された疾病で東京電力に損害賠償を求めている初めての裁判です。

◆被ばくから長い潜伏期間を経て発症した放射線障害で賠償を求めた初めての裁判です。

◆東京電力は、労災認定(国の決定)はもとより、病名自体も争っています。


1 裁判に至る経過

 配管工の長尾光明さん(故人・大阪市)は、石川島プラント建設の労働者として、1977年〜82年の間、東京電力福島第一原子力発電所などで働きました。その際の放射線被ばくが原因で、退職後に「多発性骨髄腫」(白血病と類似の血液性のガン)になりました。労災職業病の相談に応じる団体や被ばく問題に取り組む市民団体の支援も受けて、2004年1月には、労働基準監督署から努災認定されました。多発性骨髄腫の初めての労災認定ということで、国は専門家委員会を開いて慎重に決定したのです。その間に、一人でも入れる労働組合に加入し、会社や電力会社などに情報開示や損害賠償に関する団体交渉を求めてきましたが拒否されました。誠意のなり会社の対応を正すために、2004年10月、「原子力損害の賠償に関する法律」(原賠法)に基づいて、東京電力に約4430万円の民事損害賠償を求める裁判を東京地裁に提訴しました。

2 法廷で争われたこと

 通常の労災民事損害賠償裁判では、会社の責任や過失がどの程度あるのかが大きな争点になります。いくつかの会社の労働者が混在するような現場であると、どの会社にどのような安全配慮義務があったのか、本人の過失もあるのではないかなどの立証に時間がかかることが少なくありません。しかしながら、原賠法では、過失の有無とは関係なく、因果関係さえ認められれば、全ての賠償責任を電力会社が負うことになっています。労災認定されたということは、国が因果関係を認めたことになります。ところが、東電は国の決定は間違いであり、「多発性骨髄腫と放射線は関係がない」と主張し、さらに「多発性骨髄腫」の診断そのものが間違いであるとする医師の意見書を何度も提出して、争ってきました。そのため訴訟は大変長くかかってしまいました。

3 結審直後に長尾さんが亡くなられる

 2007年12月7日、ようやく裁判は結審となりました。その後12月13日、長尾さんは亡くなられました(享年82歳)。亡くなる少し前までしっかりとした口調で、「東電は許せないが、それ以上に許せないのは東電に頼まれて多発性骨髄腫を否定する医師だ。主治医の先生が、こんなにきちんと治療してきてくださっているのに、診察もしないでいい加減なことを言わないでもらいたい」とおっしゃっていました。「親父は判決を本当に楽しみにしていたのです。聞かせてやりたかった」と、息子さんは話されています。ご遺族が裁判を承継されました。

4 注目される判決

 わたしたちは、勝利判決を確信しています。東電の多発性骨髄腫否定論、因果関係否定論に対して、原告側弁護団は逐一具体的に反論を尽くしました。証拠調べでは、ほとんどが多発性骨髄腫め診断が正しいかどうかに費やされましたので、それ以外の争点で棄却されることはまずないと思われます.
 いずれにせよ、東京電力の態度は許しがたいものであり、原賠法の趣旨を踏みにじるものです。つまり、原子力産業が本質的に極めて危険であるからこそ、わざわざ特別の法律を制定して、過失を問わず、かつ責任を集中する形で賠償する仕組みを作ったのです。一人の労働者が、被ばくが原因で長年経過してから病気になった、それを国(厚生労働省)が認定したのですから、速やかに賠償するべきなのです。もしも一人一人の被害者の診断や因果関係を争うとすれば、わざわざ特別の法律を作った意味は全くありません。ちなみに、被ばく後10年以上経って電力会社が賠償した原子力損害については(長尾さんもそれに当たります)、国が電力会社に補償することになっています。それを理由に国(文部科学省)が補助参加して、東電を応援してきたことも併せて批判されなければなりません。
 万一、請求が棄却されるとすれば、原賠法は抜本的な改正が必要となるでしょう。つまり、仮に原発事故などが起きて住民被害が生じても、長年経ってから発生、請求したものについては、国が病気として認定したものすら賠償を否定されることがあり得ることなります。放射線障害の因果関係の特定が難しいことは事実です。結局誰も何も賠償しないということになりかねないでしょう。




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投稿者: ゲスト 投稿日時: 2008/4/11 18:29:44 (2037 ヒット)

崎山比早子さんが『科学・社会・人間』103号(2008年1月発行)に「長尾裁判から見えた市民科学の意義」を執筆
高木学校のホームページにアップされています。
http://takasas.main.jp/column_080405.html





●このほかの長尾裁判に関する記事リンクはこちらから●
http://cnic.jp/modules/news/article.php?storyid=638


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