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プルトニウム-238(238Pu)

半減期 87.7年

崩壊方式
アルファ線を放出して、ウラン-234(234U、24.55万年)となる。

生成と存在
地球上にあるものは人工放射能としてよい。プルトニウム-239(239Pu、2.411万年)を速い中性子で照射すると生成する。軽水炉内ではウラン-235(235U、7.04億年)の二重中性子捕獲を経て生じるネプツニウム-237(237Np、214.4万年)の中性子捕獲で生じるネプツニウム-238(238Np、2.117日)のベータ崩壊によっても生成する。
1年間運転後の軽水炉内にあるプルトニウム1㎏中に約20g(放射能強度、1.3兆ベクレル)が含まれ、アルファ線を放出するプルトニウム同位体としてはもっとも放射能強度が大きい(「プルトニウム-239」を参照)。
核兵器の爆発による生成量は少なく、放射能強度がプルトニウム-239の5%以下である。
原子力電池に用いる高純度のものは使用済核燃料から分離したネプツニウム-237を原子炉照射してつくられる。

人工衛星と「原子力電池」
1961年から1982年までに、34個のSNAP(Systems for Nuclear Auxiliary `Power、補助原子力システム)と呼ばれるプルトニウム-238を含む原子力電池が人工衛星に搭載された。
1964年4月、大気圏再突入中の人工衛星が破壊され、搭載されていたSNAP-9Aに入っていた1㎏のプルトニウム-238(630兆ベクレル、6.3×1014Bq)がインド洋上13,500mの成層圏に入った。プルトニウムの降下は遅く、1970年になっても5%が大気中に残っていた。
SNAP-9Aの熱出力は500Wで、電気出力は50Wに満たない。大量の放射能を含む電源であり、特殊な条件下でのみ利用できる。

化学的、生物学的性質
プルトニウムの化学的性質を述べることは難しい(「プルトニウム-239」を参照)。

生体に対する影響
アルファ線による内部被曝が問題になる。10,000ベクレルの不溶性酸化物を吸入した時の実効線量は110ミリシーベルト、経口摂取した時は0.088ミリシーベルトになる。この差は大きいが、原因の一つは経口摂取した時は体内に吸収されにくく、吸入した時は肺などに長く留まることにある。

再処理工場からの放出
六ヶ所村では、年間800tの使用済核燃料を処理する予定で、その中に約1京ベクレル(1.0×1016Bq)のプルトニウム-238が入っている。プルトニウムは施設から排出されないはずであるが、イギリスのセラフィールド再処理工場周辺の海は汚染されているという。六ヶ所村再処理工場の排水中に10億ベクレル(1.0×109Bq)程度が入るとされている。工場の運転開始後の排出量に注目すべきである。

放射能の測定
試料を化学的に分解し、プルトニウムを分離して測定試料をつくり、シリコン半導体検出器でアルファ線を測定するのが適当である。同時にプルトニウム-239とプルトニウム-240も測定できる。体内にある量を知るには、排泄物中の放射能を測るバイオアッセイを用いる。

 

放射線エネルギー(100万電子ボルト) アルファ線,5.50 (70.9%), 5.46 (29%);エックス線 0.0136 (11.7%).
比放射能(ベクレル/g) 6.3×1011
排気中又は空気中濃度限度(不溶性の酸化物、ベクレル/cm3) 8×10-9
排液中又は排水中濃度限度(硝酸塩、ベクレル/cm3) 4×10-3
経口摂取した場合の実効線量係数(硝酸塩、ミリシーベルト/ベクレル) 4.9×10-5
経口摂取した場合の実効線量係数(不溶性の酸化物、ミリシーベルト/ベクレル)8.8×10-6
経口摂取した場合の実効線量係数(硝酸塩及び不溶性の酸化物以外の化合物、ミリシーベルト/ベクレル) 2.3×10-6
吸入摂取した場合の実効線量係数(不溶性の酸化物、ミリシーベルト/ベクレル)1.1×10-2
吸入摂取した場合の実効線量係数(硝酸塩及び不溶性の酸化物以外の化合物、ミリシーベルト/ベクレル) 3.0×10-2