原発きほん知識のカテゴリ一覧を見る

セシウム-137(137Cs)

半減期 30.1年

崩壊方式
ベータ線を放出してバリウム-137(137Ba)となるが、94.4%はバリウム-137m(137mBa、2.6分)を経由する。バリウム-137mからガンマ線が放出される。

生成と存在
セシウムの代表的な放射性同位体。天然では、ウラン鉱などの中のウラン238(238U)の自発核分裂によって生じるが、生成量は少ない。
人工的には、核分裂による生成が重要である。1メガトン(TNT換算)の核兵器の爆発で6,300兆ベクレル(6.3×1015Bq)が生じる。電気出力100万kWの軽水炉を1年間運転すると、14京ベクレル(1.4×1017Bq)が生じる。
図2に、スウェーデンのストックホルムにおける大気中濃度の時間変化を示す。


図2 セシウム-137大気中濃度の時間変化
古川路明、「放射化学」、朝倉書店(1994)、p.176

www.asakura.co.jp/books/isbn/978-4-254-14545-8/

1970年まではアメリカと旧ソ連、それ以後は中国による大気圏内核実験の影響である。頻繁に核兵器実験が実施された1960年代前半に日本人は1日に1ベクレル以上を摂取していたと推定されている。
1986年4月26日に起こった旧ソ連のチェルノブイリ原発事故では、8京ベクレル(8.0×1016Bq)が放出された。1986年の急激な濃度の増加は、その影響である。期間が短いとはいえチェルノブイリ原発事故による濃度の増加は大きかった。

化学的、生物学的性質
「セシウム-134」を参照。

生体に対する影響
10,000ベクレルを経口摂取した時の実効線量は0.13ミリシーベルトになる。また、1mの距離に100万ベクレルの小線源があると、ガンマ線によって1日に0.0019ミリシ-ベルトの外部被曝を受ける。
旧ソ連原発事故では、広い地域が1m2あたり50万ベクレル(5.0×105Bq)以上のセシウム-137で汚染された。そのような場所では、セシウム-137のみから1年間に1ミリシーベルト以上の外部被曝を受ける。事故直後は、短寿命放射能の存在と内部被曝の寄与で年間10ミリシーベルトをはるかに超える被曝を受けていた。ふつうの人は、そこに住むことはできない。(「ストロンチウム‐90」も参照)

再処理工場からの放出
セシウムは排気中にはほとんど入らない。排水中の放出量も低いはずであるが、フランスのラ・アーグ再処理工場からの2003年の排水中への放出量は、7580億ベクレル(7.58×1011Bq)だという。これは決して少ない量ではなく、六ヶ所村工場が稼動した時の放出は厳重に監視されねばならない。
再処理後に発生するガラス固化体の中に含まれるガンマ線を放出する放射能として重要である。「ガラス固化体の近くでは、10分間に死にいたる被曝をする」などといわれる時には、セシウム-137から放出されるガンマ線の影響が考えられている。処分開始から1,000年の間はセシウム-137に特に注意をはらわねばならない。

放射能の測定
試料を適当な容器に入れ、ゲルマニウム半導体検出器でガンマ線を測定するのがふつうの方法である。体内にあるものは、全身カウンターで測定できる。

 

放射線エネルギー(100万電子ボルト) ベータ線, 0.514(94.4%), 
の寄与が大きい。1.18(5.6%); ガンマ線, 0.662(85.1%、バリウム-137mから放出される).
比放射能(ベクレル/g)3.2×1012
排気中又は空気中濃度限度(すべての化合物、ベクレル/cm3) 3×10-5
排液中又は排水中濃度限度(すべての化合物、ベクレル/cm3) 9×10-2
吸入摂取した場合の実効線量係数(すべての化合物、ミリシーベルト/ベクレル) 6.7×10-6
経口摂取した場合の実効線量係数(すべての化合物、ミリシーベルト/ベクレル) 1.3×10-5