JCO臨界事故総合評価会議
 
JCO臨界事故総合評価会議はJCO臨界事故の真相と影響を究明する市民サイドの研究プロジェクトです
事務局:原子力資料情報室・原水爆禁止日本国民会議
 
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JCO臨界事故・生活影響調査報告会
−事故は地域をどう変えたか−

PDF版(含表)

下記HTMLは【表】を含んでいませんので、【表】についてはPDFをご参照ください
全項目ごとの集計結果については3/1発表をご参照ください

2002年5月10日改訂版
於・総評会館

長谷川公一(東北大学大学院文学研究科教授・環境社会学)

1 調査の概要

1.1 調査の目的・ねらい

住民は、JCO事故から約2年半が経って、現在、どのような不安を抱いているのか。どんな悩みを抱えているのか。健康状態はどうなのか、などを目的に、2000年2月に0〜2km圏全体で行った住民意識調査に続いて、前回回答した世帯を対象に、「追跡調査」を行った。

原子力安全委員会の調査委員会の報告書を批判的に検討し、事故の真相や問題点を明らかにする市民サイドの団体として、1999年秋に「JCO臨界事故総合評価会議」が、原水禁・原子力資料情報室・市民運動家・弁護士・研究者などによって組織されたが、今回の調査は、「JCO臨界事故総合評価会議」の第2次の調査・研究活動の一環であり、トヨタ財団の助成を得ている。調査の実施責任者は、東北大学大学院文学研究科教授・長谷川公一であり、富士常葉(とこは)大学環境防災学部講師・田窪祐子、原子力資料情報室、原水禁、水戸市・東海村などの市民グループが協働で、茨城大学人文学部などの協力も得て実施した。

1.2 調査対象世帯と回収率

事故を起こしたJCOの転換試験棟の外壁から2km圏に事故当時から居住する世帯で、2000年2月の調査に回答した692世帯に調査票を3票づつ配布し、535世帯から、高校生以上の1008票を回収した(世帯レベルの回収率77.4%)。なお前回調査では、2km圏に住む2683世帯を母集団として、そこから946世帯を無作為抽出し(一部全数調査)、692世帯から回答を得た(回収率73.2%)。

今回の回答者のうち約600人は、2000年2月と同一人が回答しており、時系列的な変化について、今後自由回答とともに、詳細な分析が可能である。

回収者の性別割合は前回よりも女性が3.4%増えている(46.9%→50.3%)。20・30歳代の回答者に占める割合が低下し(30.2%→22.6%)、50歳代以上の割合が10%高まっている(49.7%→60.5%)【表1】。

回答者の地点別内訳では、那珂町居住者の占める割合が4.7%高まっている(26.0%→30.7%)。中心部に近い東海村の1500-2000km圏の居住者の占める割合が24.2%から19.5%に低下している。同地点の対象者にアパート居住者が多く、転居者が多かったことによる【表2】。

1.3 主な調査項目

 健康状態、事故の生活への影響、今後への不安、事故後の異議申し立て行動、定住意思、東海村の将来像、JCO事故や原子力政策・原子力施設への意見、国際熱核融合実験炉(イーター)立地問題についての知識と賛否、東海村・科学技術庁・マスコミなどの対応の評価などをたずねた。おもに選択肢式。

1.4 調査実施日

2月10日(日)・11日(月)・16日(土)・17日(日)

1.5 調査結果の公表予定

1)単純集計結果の「速報」を発表(3月1日、於・茨城県庁記者クラブ)
2)東海村・東京でおもなクロス集計結果について中間報告会(4月14日・5月10日) 
3)調査報告の概要をまとめる
4)国際社会学会(7月・於オーストラリア)、日本社会学会など、国内外の学会などで報告する。

専門誌などでも調査結果を紹介する。JCO臨界事故総合評価会議のHPでも、調査結果・分析結果を公開している(http://www.cnic.or.jp/jco/jcac/)。

2 主な調査結果

2.1 体調の悪化・事故以降の症状の項目数とJCOからの距離との間に統計的に有意な関連がある 

事前の予想以上に、「体調が悪くなった」と答える者が多い(問1-1 10.1% 102人。「少し悪くなった」と「かなり悪くなった」の合計)。とくに350m圏では、37.2%が体調が悪くなったと答えている。JCOからの距離と体調の悪化との間には、1%水準で統計的に有意な関連がある【表3】。なお年齢と体調の悪化との間には、統計的に有意な関連がなかった。

2000年4月に実施された健康診断に行った者の割合は、那珂町居住者の方が東海村居住者よりも統計的に有意に多い(健康診断に行った者は那珂町居住者の23.9%に対し、東海村居住者は16.5%。1%水準で有意。ただし行った結果の不安や心配の程度には町村による差はない)。うち不安や心配が消えない者は25.4%に及ぶ(問1-3 SQ1)。

現在の症状として「常に」、「時々」、「たまに」をあわせて5%以上があげているのは、*頭痛がする(合計10.2%←5.8%)、*めまいがする(5.8%←2.0%)、*発疹やかゆみ(5.8%←2.5%)、*体がだるい(7.7%←5.0%)、*体が疲れやすくなった(9.1%←5.9%)、*風邪を引きやすくなった(6.8%←4.3%)、眠れない(5.2%)、事故現場への恐怖感(8.0%)、臨界事故に関するニュースは見たくない(6.2%)、不安でたまらない(7.9%)の身体的な症状と精神的症状である。とくに*の項目は2000年2月時点(←の右側)より症状の訴えが多い。いずれも身体的な症状であることが注目される。症状が出始めた時期として「しばらく後」が2%以上あげられたのは、頭痛がする、めまいがする、発疹やかゆみ、体がだるい、体が疲れやすくなった(4.4%)、風邪を引きやすくなった(3.3%)、眠れないである。これらも眠れないをのぞいて、身体的な症状である。(問2-1)。

現在の症状を1項目以上訴えた者は307人(30.5%)、1つ以上の症状が事故直後・しばらく後から出始めたとする者は220人(21.8%)にのぼる。事故直後・しばらく後からの訴え項目数とJCOからの距離との間には1%水準で統計的に有意な関連がある【表4】(現在の症状の項目数とJCOからの距離との間には有意な関連はなかった。現在の症状の項目数、事故以降の訴え項目数ともに、年齢・通知された被曝線量との間に、統計的に有意な関連はなかった。通知された被曝線量とJCOからの距離との間には5%水準で有意な関連がある。)。

JCO事故は、中性子線が19時間にもわたって住環境を汚染し続けるという、世界に例を見ない事故であった。中性子線が人体に与える影響についてはデータが乏しいために、十分明らかになっていない。本調査の身体的影響に関する項目は、2km圏住民1000名に関する、2年間分の貴重なデータといえる。

2.2  過半数近くがイーター建設に反対

那珂町へのイーター建設に対して賛成は24%、反対は46%(問15-2)。

那珂町居住者は83.3%が知っているが、東海村居住者は52.5%しかイーター建設を知らない。那珂町居住者の56.2%は反対。賛成者の割合は両地区で同数だが、那珂町居住者はわからないが12%少ない分だけ、反対が増えている【表5】。認知の有無・賛否とも、年齢と1%水準で有意な関連がある。30〜60歳代で反対が多い。10〜20歳代では知らないおよびわからないが多い。症状の訴え項目数が多い人は、イーター建設に反対の者が多い(1%水準で有意)。イーター建設問題への関心が高いほど、反対が増える傾向にあるが、ただし性別とクロスすると、男性の方が建設を知っている者の割合が多く(男性は70.0%が知っているのに、女性は53.3%にとどまる)、過半数近くが反対だが、反対者の割合は女性より5%低下し、賛成者の割合は女性の倍以上にのぼる【表6】。イーター建設の認知の有無・賛否ともJCOからの距離との間には有意な関連はない。

2.3 2年前と変化した項目・変わらない項目

1)定住意識の回復(問8-1)。「ずっと住んでいたい」が36.1%から56.3%に上昇
   「引っ越したいができない」、「できれば引っ越したい」は半減。
   子どもに「この地域に住んでほしい」も10%増え、「他の土地で生活してほしい」は9%減(問8-2)。
   ただしJCOとの距離の遠さと定住意識・子どもへの住んでほしさの間には、ともに1%水準で統計的に有意な関連がある。那珂町居住者の定住志向は高く(65.2%)、東海村居住者の定住志向は54.2%である。できれば引っ越したいも東海村居住者が10.8%で、那珂町居住者の倍以上の割合にのぼる。子どもへの住んでほしさも同様(1%水準で有意)。【表7・8】

 2)東海村の原子力施設の操業継続の是非に関しては、現状維持が3.6%増え、即時停止は4.7%減少(問14)。

 3)東海村の対応への評価はなお相対的に高いが、「大いに評価する」は23.6%から8.1%に減少(問23)。

 4)東海村の今後の地域像については、「原子力産業との共存」が 半数近くにのぼるほか、2年前とほぼ同じ割合の回答である。原子力発電について疑問や今後の事故の可能性に不安を持ちながらも、当面は「原子力産業との共存」を選ばざるをえないという「引き裂かれた住民意識」が見られる(問9-2)。

2.4 原発増設には懐疑的

 東海村への原発増設推進論は15%、反対論は76%(問17-F)。

 約3分の2の住民は、原子力発電に関して批判的な意識をもつようになった。全体として原発推進論者は20〜25%程度。総理府の全国調査(99年2月)と比較してみても、日本全体での増設論は20%少なく、廃止論が13%多い(問20-1)。

2.5 欧米先進国の原発離れの現状への認識が乏しい

エネルギー問題・地球温暖化問題・放射性廃棄物問題などへの関心は高い(問19)が、欧米先進国で建設中の原発は実際にはゼロ(ただしフランスの最後の1基は試運転中。3月営業運転開始予定)だが、正確に認識している人は3.8%しかいない(問21)。23%は10基以上建設中と判断している。政府・電力会社サイドの原発推進論の浸透とメディアの報道不足がある。

2.6 JCO事故は風化していない

原子力防災マニュアルなどはよく読まれており(問12)、「JCO事故について早く忘れたい」も38%にとどまっている(問17-A)。今後の事故への不安感もなお大きい(問18-B)。これらの回答傾向と回収率が77.4%ときわめて高かったことからも、JCO事故が「風化」しているとは、調査結果からはいえない。むしろ全体として、2km圏内に住む人びとのJCO事故に関する関心は、2年半後も高いといえる。

Acknowledge
JCO臨界事故総合評価会議の活動(2001年11月〜2003年10月)はトヨタ財団の助成「市民社会の時代の科学・技術 」を受けています(詳細)

 

 
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