JCO臨界事故総合評価会議
 
JCO臨界事故総合評価会議はJCO臨界事故の真相と影響を究明する市民サイドの研究プロジェクトです
事務局:原子力資料情報室・原水爆禁止日本国民会議
 
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JCO臨界事故・3年後に見えてきたものJCO臨界事故
3年後に見えてきたもの

JCO臨界事故総合評価会議

2002年9月発行
A4判・98頁

1000円+送料

正誤表[2003/2/27時点]PDF

品切となりました。申し訳ございません。

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もくじ

はじめに
第1章 JCO刑事裁判でこれまでに判明した事実(伊東良徳)
第2章 組織事故−企業犯罪としてのJCO臨界事故 −JCO刑事裁判を傍聴して(根本がん)
第3章 転換試験棟の安全審査で何があったか(藤野聡)
第4章 中性子線放出の際の被曝線量に関する考察(古川路明)
第5章 臨界事故に伴う放射能の放出(古川路明)
第6章 濃縮ウランからの中性子放出(古川路明)
第7章
(1) 東海村住民・那珂町住民の身体的影響・原子力問題への高い関心−JCO臨界事故・第2次住民生活影響調査の分析−(長谷川公一)
   第2次住民生活影響調査・主な単純集計結果
(2) “安全”の希求と残る不安−第2次住民生活影響調査・自由回答欄への記入から−(田窪祐子)
第8章 オフサイトセンターにみる原子力防災の問題点(末田一秀・山本定明)
第9章 繰り返す過去−住友原子力工業の放射化金属流出事件(藤野聡)
第10章 骨抜きにされる事故の教訓−事故後の3年間(藤野聡)
付録・JCO臨界事故総合評価会議について


はじめに

「はじめに」を転載します。

 1999年9月30日のJCO臨界事故から3年の月日が経ちました。JCO臨界事故総合評価会議は臨界事故に関する市民サイドの研究組織として、原子力資料情報室と原水爆禁止日本国民会議のよびかけで集まった各方面の専門家により99年12月に発足し、現在も活動を続けています。

 原子力安全委員会が組織した事故調査委員会(ウラン加工工場臨界事故調査委員会)は事故からわずか3ヵ月後に最終報告書を出して解散してしまいました。一方、評価会議は2000年4月に中間報告書、2000年9月に報告書『JCO臨界事故と日本の原子力行政』(七つ森書館)を出し、検討で見出された問題点に即して「政府への提言」を提出しました。また2001年2月には第2回地方原子力安全委員会(横浜)において、原子力安全委員たちとの討論を行なうなど、事故をめぐる幅広い議論を喚起してきました。

 原子力安全委員会との討論では、「調べなくても影響はない」など、事故の解明を真摯に行なおうという姿勢ならば出てこないはずの言葉が安全委員たちから続出しました。「事故調報告書は調査でなく対策」と安全委員長自身が述べたのでした。しかし果たして対策としてさえ適切であったのかは、事故調報告のあとも続発する事故・事件が如実に物語っているのではないでしょうか。

 その後JCO刑事裁判が行なわれても事故に至る経緯には疑問が残り、JCOを相手取って経済損害や健康被害の補償を求める複数の損害賠償請求が起こされるなど、日本の原子力史上最大の事故といわれるJCO事故は、未解決の課題を多く残しているといえるでしょう。私たちの提言した内容も、十分に実現されているとはいえない状況です。

 評価会議はトヨタ財団の研究助成「市民社会の時代の科学・技術」(2001年度)に2年計画のプロジェクト「JCO臨界事故の原因と影響に関する再検討と政策提言」を申請したところ、幸い助成を得ることができました。同財団に深く謝意を表したいと思います。また、生活影響調査にご協力いただいた地元の皆様をはじめとして、私たちの活動は多くの方々のご支援によって成り立っていることを記し、深く感謝いたします。

 具体的な調査・研究として、水戸地裁で定期的に行なわれたJCO刑事裁判の公判傍聴を続けてきたほか、この2002年2月には、2000年2月の生活影響調査に続く第2次生活影響調査を東海村・那珂町で行ないました。またJCO事故後に改正されたといわれる防災体制が本当に有効に機能するのか、各地に赴いてチェックなども継続してきました。今までの成果については既に2002年5〜7月に東京で「JCO臨界事故総合評価会議・連続講座」を開催して報告したほか、この中間報告書をもとに「中間報告会」を開催することとなりました。

 なお最終報告書の発表は2003年秋を予定しています。JCO臨界事故総合評価会議はWEBサイト(http://www.cnic.or.jp/jco/jcac/)にも情報を掲載しており、今後の予定や成果についても随時掲載していきますのでご参照ください。

 私たちは大きく、原因究明、被曝影響、生活影響調査、防災問題などのテーマに分けて作業をすすめました。現時点までの成果は以下の各章にそれぞれの担当者によって示されています。

 第1〜3章では、JCO裁判にもとづいて事故の原因論を再検討しています。科学技術庁と原子力安全委員会によって行なわれたJCO転換試験棟の安全審査の実態や、JCOと動力炉・核燃料開発事業団(核燃料サイクル開発機構)との力関係などが断片的ながら明らかになるなど、事故調が触れるのを回避した事柄が垣間見えてきた一方で、事故に至った経緯に関する関係者の証言には依然として不透明な部分が残るなど、疑問も残されています。評価会議は2000年の「政府への提言」で「臨界事故の再調査を民間の第三者機関によっておこなうこと」を提言しましたが、事故調も検察(裁判所)もそのような組織ではないため、真相究明の点では限界があることが感じられます。

 つづいて臨界事故による放射線・放射能の放出とその影響について論じているのが第4〜6章です。JCO臨界事故では周辺環境に中性子線が長時間にわたって放出されましたが、事故調では線量がどのように推移したのかという検討にも詰めの甘さが残りました。また科学技術庁が200mSvの線量を被曝しても影響はないかのような宣伝を行なうなど、中性子被曝の影響については未知数の部分が大きいにもかかわらず、影響はないと断定、ないし過小評価する姿勢が顕著でした。放出放射能についても事故調は残留溶液の分析にもとづく厳密な定量を行なわないなど、手段を尽くしたとはいえないまま終了しています。ここでは中性子被曝をめぐる論理がなぜ複雑かをはじめとして、JCO事故と被曝にまつわる問題を論じています。

 2002年2月に行なった第2次生活影響調査については第7章で報告しています。JCO臨界事故のあと、数多くの意識調査が行なわれましたが、このように1回限りでなく定点観測的な追跡調査を行なったのは、公表されている意識調査では、私たちだけです。今回の第2次調査は第1次調査で回答を得た世帯に、その後の健康状態や生活への影響、原子力に関する意見などを尋ねました。事故後の心身不調や生活への影響を訴える声は多く、事故が残した傷跡は依然として深いことや、多くの人が事故を契機に原子力と地域のあり方について考えていることなど、事故が地域社会に何をもたらしたかを示す重要な結果といえるでしょう。ご協力いただいた対象世帯の方々や調査員など多くの人々に重ねて感謝を記したいと思います。

 JCO臨界事故は、事故後の対応に関しても大きな課題を提起しました。臨界事故が起きることも、臨界が継続することも想定されていなかったため、迅速な対応が行なわれず、政府が手をこまねいている一方で東海村長の決断によって始めて住民への避難要請が行なわれました。ではJCO事故を契機として、確実な防災体制が構築されたのでしょうか。しかし原子力施設において十分に起こりうる規模の事故が、依然として起こりえないとされているのはもちろんのこと、JCO事故で対応の遅れた政府に情報と権限が集中するような法改正も行なわれています。そして事故後の防災システム整備のいわば目玉として各地に建設されたオフサイトセンター(緊急事態応急対策拠点施設)についても、事故自体の影響によって使用不能に陥る可能性をはじめとして、どのような指揮系統のもとでどのように情報が流れるのかが不明瞭であるなど、実際に迅速に機能するとはとても考えられない実状が見えてきています。日ごろからの情報公開の点でも、原子力施設の危険性を実態に即して知らせようとしない姿勢は問題をはらんでいます。

 このように見てくると、JCO臨界事故が提起した問題の広がりは極めて大きかったにも関わらず、事故を起こし、被害を拡大した構図には依然としてメスが入れられないままであることに気づかざるを得ません。2002年8月に東京電力の検査記録改竄が発覚したことを発端として、複数の電力会社で原発をめぐる情報隠しが明らかになるなど、不正は底なしの様相を呈しています。一方、原子力政策の軸とされてきた再処理・プルトニウム利用をめぐっても矛盾が顕在化するなど、原子力のあり方にはますます鋭い問いが突きつけられている状況だといえるでしょう。

 そのような中、JCO事故がどのような構造から起き、何をもたらしたのか、私たちに対してどんな教訓を投げかけていたのかをもう一度考えてみることは、科学技術と私たちとの関わり方、そして社会全体のあり方を探っていく上でも欠かすことのできない課題です。今後も研究を深めていきたいと思いますので、この中間報告書に対しても皆様から多くのご意見・ご感想を頂ければ幸いです。

 

Acknowledge
JCO臨界事故総合評価会議の活動(2001年11月〜2003年10月)はトヨタ財団の助成「市民社会の時代の科学・技術 」を受けています(詳細)

 

 
(C)JCO臨界事故総合評価会議 
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