労災認定の枠をさらに拡げるために「本省に直接訴えたい」梅田さんの思いを実現させよう

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『原子力資料情報室通信』第428号(2010/2/1)より


労災認定の枠をさらに拡げるために「本省に直接訴えたい」梅田さんの思いを実現させよう

渡辺美紀子

 約30年前に島根原発と敦賀原発の定検工事に携わり被曝し、その後、心筋梗塞で労災申請した梅田さんの問題についてはその経過を本誌(423・424・425・427号)でお伝えしてきた。

不透明化する検討会開催要項

 厚生労働省は、第2回電離放射線障害の業務上外に関する検討会を12月25日に開催すると発表した。厚労省から一度は、梅田さんの検討が9月9日(第1回検討会)で行なわれたという説明があったが、後に訂正された(本誌425号参照)。これまで、同一年度でも別の案件の場合は個別に開催要項が作られている。梅田さんについての第2回検討会ということか?など疑問が生じた。
 9月9日に開かれた「第1回電離放射線障害の業務上外に関する検討会開催要綱」には、2006年までは開催要項の開催目的として公表されていた病名、施設、業務、労働局等の具体的記述がいっさいなくなっている。これでは、どのような事案についての検討会が開催されているのか何もわからない。07年の喜友名(きゆな)正さんの悪性リンパ腫についての検討会のとき、病名が「造血器の腫瘍」となっており、また施設の記載がなかった。このように情報の公開度は明らかに後退してきている。
 原子力資料情報室にはこの間、梅田さんら原発で作業し被曝した人たちからの相談や訴えが寄せられている。それらに関連することを厚労省に問い合わせても、厚労省は「労災については個人事案であるから」を理由に何も答えない。

梅田さんの訴え

 梅田さんは労災を申請した松江労働基準局からの聞き取り調査で、また直接、厚労省の担当者に電話して、働いていた当時の現場の状況などを訴えてきた。
 「島根原発での作業のときは普通の作業服にゴム靴、胸のポケットにアラーム線量計を装備するだけのいたってシンプルなもので、防護のためのマスクを着用することはなかった。敦賀原発では約1ヵ月間、赤いツナギ服を着て全面マスクを着装しての作業だった。40℃近い場所なので、マスクはすぐに曇ってしまう。ガス切断機でパイプを切ったり、溶接する仕事なので、マスクが曇っては仕事にならない。マスクを外して作業をした。また、定検期間中に作業を完了させるために、線量計をはずして作業したこともあった」ことなどを申し立てている。

12月22日、厚労省へ申し入れ

 これら梅田さんの訴えがどこまで厚労省に届いているのか、また検討会はいつ開かれるのかなど質すため、昨年12月22日、社民党の近藤正道議員の紹介で、厚労省に対し申し入れを行なった。
 厚労省労働基準局から労災補償部補償課職業病認定対策室の宮村満・中央職業病認定調査官、安全衛生部労働衛生課の永田和博・主任中央労働衛生専門官、同課堀内克浩・業務第四係長が出席した。 
 同省からの主な回答は、?9月9日の第1回検討会は別件のもので、梅田さんについては12月25日から開始される。新たな疾病なので、疫学調査の文献収集と検討が必要、?管理されない被曝があったことを示す労働現場の状況を示すものはない、とのことであった。

梅田さんが直接厚労省に訴える場を!

 厚労省の回答で、梅田さんの訴えがきちんと受け止められていないことが明らかになった。梅田さんは当初から、「お金があったら、すぐにでも上京して本省に直接訴えたい」と願っていた。原発で働いた労働者本人からの申し立ては前例が少なく、貴重な機会である。いま、梅田さんが直接訴える場を設定する準備をすすめている。
 また梅田さんは、これまで自分が申し立ててきたことが、検討会でどのようにとりあげられているかを明らかにしたいので、検討会に提出される資料をすべて開示されることを求めている。当然認められるべきことである。

被曝線量の増加で心臓病・脳卒中の死亡リスク上昇

 1月14日、ブリティッシュメディカルジャーナルの電子版に、「広島・長崎の被爆者、被曝線量の増加で心臓病と脳卒中の死亡リスクが上昇」の記事が掲載された。放射線影響研究所の清水由紀子さんらの研究によるもので、ホンコン発のロイターは価値あるニュースとしていち早く伝えている。
 広島・長崎で原爆に被爆し、1950?1953年の時点で生存していた8万6611人を2003年末まで追跡したところ、推定被曝線量が1グレイ高くなるごとに、心臓病の死亡率は14%、脳卒中の死亡リスクは9%ずつ上昇した。
 1950?53年、対象者の被爆時の状況(爆心地からの距離、屋内にいたか屋外にいたかなど)を調査し、その結果をもとに個人ごとの放射線被曝線量を推定した。被曝線量に応じて、対象者を22のグループに分けた。被曝線量が最小のグループは0?0.005グレイ未満、最大のグループは3グレイ以上で、対象者の86%の被曝線量は0.2グレイ未満だった。2003年末までの追跡調査で、心臓病死亡8463人、脳卒中死亡9622人を確認した。
 その結果、しきい値(それ以下の被曝線量ではリスクが上昇しないという上限値)がなく、被曝線量に応じてリスクが直線的に上昇するという。
 これまでに同様の分析は何度か報告されてきたが、今回は直近の報告から追跡期間を6年間延長し、心臓病や脳卒中などの死亡数が25%増えている。それらを踏まえて著者らは、中程度の放射線(約0.5?2グレイ)が心臓病と脳卒中の死亡率を上昇させる点について、今回の研究はこれまでで最も強固な知見をもたらすものだと結論している。同時に、0.5グレイ未満での結果は誤差範囲にとどまるものだが、追跡期間を延長して追加の症例が発生することで、低線量のリスクについてより正確な推計がもたらされるだろうとしている。

原爆症認定の新しい動き

 厚労省は、原爆症認定基準を緩和し、被爆者救済に前向きの姿勢で取り組んでいる。
 原爆症認定の新しい審査の方針(2009年6月21日改訂)では「?放射線起因性が認められる心筋梗塞」、原爆症認定の在り方に関する検討会報告(2007年12月17日)では「心筋梗塞については、原爆被爆者を対象とした疫学調査のみならず、動物実験を含む多くの研究結果により、一定以上の放射線量との関連があるとの知見が集積してきており、認定疾病に追加する方向でしきい値の設定などの検討を行う」
 放射線起因性については、急性放射線障害の有無も考慮の対象になる。原爆症認定の在り方に関する検討会報告(2007年12月17日)では「1.基本的な考え方の(2)放射線起因性の判断についての項の?3番目、放射線起因性の判断要素として急性放射線障害(急性症状)が議論された。急性症状には典型的な発症時期、発症経過がある。典型的な症状が明らかである場合は、これを考慮すべきである」など積極的な認定へ動いている。前記のような新しい知見もどんどん生かされることだろう。原発被曝労働者の労災補償も、当然これらの動きとリンクされるべきである。

 2004年の長尾光明さんの多発性骨髄腫の労災認定を勝ち取って以来、原発被曝労働者やJCO臨界事故被害者の救済に向けて取り組んできた課題を継続して行ないます。省庁交渉などを積極的に行ないます。日程が決まり次第お知らせします。
→ 2月8日13:00~に決まりました!詳細はこちら
www.cnic.jp/876

 また、これらの行動にご支援とご賛同をよろしくお願いします。
→賛同について 詳細はこちら
www.cnic.jp/878

(渡辺美紀子)


■健康管理手帳について
・放射線被曝労働を労働安全衛生法施行令の「健康管理手帳を交付する業務」に加え、健康管理手帳を発行すること
■労働基準法施行規則第35条に関して
◎労規則別表1の2の電離放射線業務に対して、労災認定例示疾病を大幅に拡大すること
・がんについては、すべてのがんを対象にすること。
・がん・白血病以外の病気について、大幅に拡大すること
◎例示にない疾病の労災申請に対して、本省の責任で慎重に審査を行ない認定すること
・梅田さんの心筋梗塞労災申請に対して、申請者の申し立てを深刻に受け止め、「管理されない被曝」について厚労省自ら徹底的に調査し、労災認定すること
◎電離放射線業務に対して、別表1の2の例示疾病として、多発性骨髄腫と悪性リンパ腫が追加されたことを周知徹底すること
・電離放射線業務関連事業所に説明パンフレットを配布し、従事者への説明を義務付けること
■放射線管理手帳について
・放射線管理手帳に、認定対象疾病(包括的救済を含む)、申請手続き、不服申し立て制度、等の労災関連法規を記載すること
■原発労災の資料の公開について
◎原発労災の審査過程と関連資料を公開すること
・今年度顕著になった電離放射線業務の「業務上外検討会開催要項」の不透明化を撤回し、検討課題を具体的に提示すること
・労災申請者の申し立てが検討会でどのように取り上げられたかを本人に開示すること
・原発労災の申請・認定状況等の公開
■労働環境の改善等について
◎労働環境の改善、被曝線量の低減を指導すること
・放射線業務の作業計画をあらかじめ点検すること。作業環境から「管理されない被曝」の危険が高い場合には、計画の修正を求めること。
・作業実施結果の提出を求め、労働者の被曝線量が、あらゆる1年で20ミリシーベルトを超えるおそれがある場合、また「管理されない被曝」があったと判断される場合は、特別な指導をすること
・さらに低い被曝線量についても被曝低減に向けて指導すること
■長尾裁判について
・長尾さんの原子力損害賠償裁判で、「被告東電の主張は否定しない立場」の国の補助参加をとりやめること
■JCO臨界事故被害者の救済について
・健康管理検討委員会の50ミリシーベルト以下なら健康影響は検出されないとする見解を撤回すること
・住民健康診断を長期に継続し、健診内容を充実し、精密検査の費用を公費負担すること
・事故後から長期通院状態になっている住民の医療費を補償すること
・被災住民に健康管理手帳を発行すること
・JCO従業員その他被曝作業従事者、避難等に係った自治体職員に健康管理手帳を発行し、健康管理体制を整えること

原発被曝労働者・JCO臨界事故被害者の救済に向けた申し入れ呼びかけ団体:原水爆禁止国民会議、原発はごめんだ!ヒロシマ市民の会、反原子力茨城共同行動、双葉地方原発反対同盟、関西労働者安全センター、原子力資料情報室、ヒバク反対キャンペーン
【連絡先】
渡辺美紀子 (原子力資料情報室)Tel.03-3357-3800
建部暹 (ヒバク反対キャンペーン)Tel.0790-66-0384


30年目の真実、死亡扱いされていた原発親方
樋口健二(フォトジャーナリスト)
『原子力資料情報室通信』第423号(2009/9/1)より
www.cnic.jp/843

被曝労働に関する動き
渡辺美紀子
『原子力資料情報室通信』第424号(2009/10/1)より
www.cnic.jp/838

白血病、がん以外の病気でのはじめての検討 梅田さんの検討会はこれから
渡辺美紀子
『原子力資料情報室通信』第425号(2009/11/1)より
www.cnic.jp/849

多発性骨髄腫、悪性リンパ腫が疾患リストに例示される
さらに、労災認定の枠を拡げよう
渡辺美紀子
『原子力資料情報室通信』第427号(2010/1/1)より
www.cnic.jp/863