核廃絶:ニューヨークのNPT2010年に向けて今、声をあげなければいつあげるのか?

『原子力資料情報室通信』第427号(2010/1/1)より


核廃絶:ニューヨークのNPT2010年に向けて
今、声をあげなければいつあげるのか?

 後の世代が「2009年は核廃絶にとって画期的な年だった」と評価するか否かは、私たち市民社会のこれから半年間の行動いかんにかかっている。
 1月のオバマ米大統領の誕生によって「暗い闇が過ぎた」と世界中の人々は感じた。核廃絶にとって最悪だったブッシュ政権の時代が終わり、大統領立候補以来一貫して核軍縮と核不拡散の重要性を強調してきたオバマ大統領の時代が始まった。一方、日本では、9月の政権交代によって、核廃絶を唱えながら核兵器に依存してきた自民党政権に替わり、核廃絶のために熱心に働くだろうと期待されている政府が誕生した。
 4月5日のプラハにおける歴史的な演説で、オバマ大統領は「核兵器のない世界」を掲げ「核兵器を使った唯一の国として、アメリカは行動する道義的責任がある」と言った。被爆者をはじめ、この演説を聞いた世界の人々は、「やっと核廃絶の時代がやって来た」と希望が持てるようになった。一方、同じ演説で、「核兵器が存在する限り」アメリカが核抑止力を維持することや、「自分が生きている間実現できないかも」とも言ったオバマ大統領の核廃絶へのコミットメントを疑った人も少なくはなかった。
 この1年を振り返って見た時、核廃絶に関する様々な動きをどう評価すればよいだろうか。希望を持たせる動きもあれば、逆流もあった。9月から10月にかけて、国連で、日米両政府は核廃絶に向けた例のない協調を見せたものの、米国の核態勢見直し(NPR)プロセスにおいて、両国の官僚の頑な抵抗に変わりがないことが分かった。核廃絶への機運は高まったが、具体的な行動につながるかどうかまだ分からないというのが正直なところである。
 一つだけはっきり言えるのは、この先、市民の役割は今まで以上に大きくなるということだ。特に日本の市民運動に求められている役割は大きい。
 下記の通り、従来の日本政府の政策は核廃絶の妨げとなってきた。この妨害が取り除かれるまで、私たちは新政権に粘り強く政策転換を求め続けなくてはならない。
 非核3原則について、日本政府が今まで国民をだましていたことが大ニュースとなった。「核兵器を持ち込ませない」という3つ目の原則が米国との密約によって破られていたのだ。この密約問題ほど大きく取り沙汰されなかったが、日本政府が核廃絶への第一歩である核兵器の「先制不使用」政策に反対してきたことも、反核運動の働きかけで、大きく報道された。「被爆国として核廃絶を訴える日本が、その裏で核戦力の維持を米国に求めていた」と11月6日の朝日新聞で報じられた。アメリカの核の傘に依存しているがゆえに、日本が核廃絶の足かせとなっていることをだれも否定できなくなった。「先制不使用」政策を米国に求め、核兵器に依存しない安全保障政策をとるよう、私たちは新政権に強く要求し続けなければならない。
 今こそまさに歴史的な局面である。核廃絶への道が拓けるか、それとも核不拡散体勢がくずれていくか、これから1年間のうちに見えてくるのではないか。特に、2010年5月、ニューヨークで開催される核拡散防止条約(NPT)の再検討会議は重要である。再検討会議で進展がなければNPTが崩壊する恐れがあると言う人もいる。一方、オバマ米大統領と日本の新政権の誕生によって生まれた機運が具体的な行動につながれば、核廃絶への確実な第一歩となる可能性もある。
 市民運動が今の機運をとらえて、各国の政府と市民にうまくアピールすれば歴史が変わる。各団体の取り組みが重要であることはもちろんだが、これから半年間という限られた時間内で個人個人がイニシアチブをとることもとても重要である。長年核廃絶のために尽力してきた日本の反核運動であるからこそ、悔いを残さないようにがんばろう。

フィリップ・ワイト


《短信》
ICNND報告日本政府の政策転換が必要

 日豪共同イニシアティブである「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)」の報告書の発表が、12月15日に東京で行なわれた。ケビン・ラッド豪首相とギャレス・エバンズICNND共同議長(豪元外相)が来日し、その日に、エバンズ・川口順子両議長が鳩山由紀夫・ラッド両首相に報告書を手渡した。
 両首相への報告書手渡しの後に、エバンズ・川口両議長と日本のNGOとの意見交換会が開かれた。同日、日本のNGOは、豪州をはじめ世界のNGOと共同で声明を発表した。ICNND報告書が「核兵器の価値を否定する」ことを掲げ、安全保障政策における核兵器の役割を限定する提言を行なっていることを高く評価しながらも、報告書が示した核軍縮の行動計画はあまりに遅く、世界的な核廃絶の機運を後押しするよりも、ブレーキをかける危険性をはらんでいると指摘した。
 声明の全文は次のURLにある:
www.cnic.jp/862
 意見交換会で、エバンズ氏は、日本政府は「核兵器の役割を核兵器の抑止に限定する政策を支持する」と米国政府に伝えるべきだと言った。また、同氏は政策転換のために日本政府に働きかけるようNGOに呼びかけた。これまで、日本政府は核兵器の抑止に限らず、生物兵器、化学兵器および通常兵器を抑止するために核兵器が必要だという政策をとってきた。独立し

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