判決UP★志賀原発控訴審は不当判決!

志賀原発控訴審は不当判決!

2009/3/18 原子力資料情報室

 3月18日、志賀原発の控訴審判決が名古屋高裁金沢支部で下された。
 裁判は志賀原発2号炉の建設・運転の差し止めを求めた民事裁判で、第一審判決(2006年3月24日)は、原告側の主張を認め、原発の耐震安全性が十分ではないとして運転の停止を求めた。
 控訴審では原発の耐震安全性を主たる争点として争われ、一審以降に隠ぺいしていたことが明らかになった臨界事故や、その後発生したタービン損傷事故についても争われた。内容は、原告側の主張を退け、北陸電力の主張をことごとく認めるものだった。以下、判決骨子と要旨に基づき、耐震安全性に関して現段階ですでに明らかになっている判決の不当性を3点主張する。

①震源を特定せず策定する地震動をマグニチュード6.8で十分としたのは不当である

 判決では、兵庫県南部地震および鳥取県西部地震がおきたからといって、「地表地震断層が明瞭に現れずにマグニチュード7.3の規模の地震が発生するということはできない」から原告の主張を採用する必要はなく、北陸電力のM6.8でよい、と主張している。地震の認識が極めて甘く、鳥取県西部地震を既知の活断層によるものとするなど、無知というほかない。耐震設計指針の改訂(06年9月)の中ではM7.0からM7.3程度までを考慮することが主張されていた(新指針に基づく耐震安全性のバックチェックでは各社ともM6.9程度と低く評価しているので、この点は、他社にもかかわる問題だ)。
 志賀原発では地震動に対する機器の安全余裕が少ない。小さ過ぎると思われる現在の地震の想定においても、制御棒、残留熱除去系配管、主蒸気配管、格納容器など、安全上重要な機器・構造物で、破壊するかしないかの基準に迫っている。これらは、計算の仮定のおきかたによって容易に基準を突破するものであり、耐震安全上きわめて危ういことを示している。住民の安全を考えるなら、より大きな地震を考慮した上での耐震安全性を求めるべきだった。

②邑知潟断層帯の評価は推本を無視する暴挙

 一審ではこの評価を巡って敗訴した北陸電力は、耐震バックチェックにおいて邑知潟断層帯に関する従来の評価を変えて34kmに延長した、しかし、これに近接する坪山-八野断層は別のものと区別して評価している。控訴審判決では、ずれの向きが逆であるから別物としてとらえて十分だとした。地震調査推進本部の基本的考えである「5kmルール」(二つの活断層距離が5km以内なら一体のものとして考慮すべき)に従えば、坪山-八野断層は邑知潟断層帯として評価、断層長もさらに10km加えて44kmで評価した上での耐震安全性を求めるべきであった。実際、地震調査推進本部ではM7.6程度、上下に2?3メートル食い違いを生じるような地震を、地形のつながり(断層地形)などを考慮して想定している。

③新潟県中越沖地震の悲惨な体験は全く考慮されていない

 判決は安全審査にパスしたことをもって北陸電力による安全性の主張を十分なものとしているが、中越沖地震ではその安全審査の誤りが明らかにされた。
 中越沖地震を踏まえた北陸電力の対応は「使用済燃料プールの水が床面に溢れないよう対策を講じている」上、放射性物質の漏えいによる被ばく線量はわずかだったことから、この地震により「本件原子炉に前記の具体的危険性があることが示されたとはいえない」と断じている。原子力安全・保安院は、中越沖地震の経験から揺れが1.5倍になるケースを評価するべき指示を出している(これで十分と言えない)が、判決要旨には一言の言及もない。中越沖地震における柏崎刈羽原発では、地震の大きさ(マグニチュード)に比してとてつもなく大きな揺れが原発を襲った。地震の規模と揺れの大きさについての評価も、耐専スペクトルで十分、としていることから、その重大性を見逃している。過去の痛い経験を踏まえるべきところ、非常に矮小化したとらえ方である。
 志賀原発2号炉は、旧指針の基準下で設計・建設された原発であり、新指針によるバックチェックが補助的なものであることを忘れてはならない。
 判決全体において、「原子力安全・保安院によって概ね妥当と評価されている」ということを根拠に判断が下されているが、これで納得するものはいないだろう。
 原発の耐震安全性は、将来起こりうる地震に対して原発が安全であることを示すべきものであるが、判決は将来の地震への備えに対する考えが全く欠如したものであり不当といわざるを得ない。この判決は志賀原発の耐震安全性を保証するどころかいっそう不安を高めるものである。


判決をUPしました。4つのファイルに分かれています。
   ~100項
 https://cnic.jp/files/shika_20090318_hanketsu1.pdf
101項~200項
 https://cnic.jp/files/shika_20090318_hanketsu2.pdf
201項~290項
 https://cnic.jp/files/shika_20090318_hanketsu3.pdf
別紙
 https://cnic.jp/files/shika_20090318_besshi.pdf

◆判決要旨(2009/3/18)
cnic.jp/files/shika_20090318_youshi.pdf

◆第58回原子力資料情報室公開研究会 [2006/4/22]
志賀原発2号機運転差止判決 原発は地震に耐えられない
報告:岩淵正明(弁護士・能登原発訴訟弁護団事務局長)
配布資料
cnic.jp/files/20060422SHIKA.pdf