【原子力資料情報室声明】 原発再稼働を認め、行政に追従した大阪高裁、広島地裁の姿勢を問う

【原子力資料情報室声明】 原発再稼働を認め、行政に追従した大阪高裁、広島地裁の姿勢を問う

2017年4月7日

NPO法人 原子力資料情報室

 

さる3月28日に大阪高裁が関西電力高浜原発3、4号機について、3月30日には広島地裁が四国電力伊方原発3号機について、それぞれ、住民側の運転差止めの申立を退けた。

6年の歳月を経てもなお、終息の見通しが立たず、住民の多数が苦しめられている東京電力福島第一原発事故の深刻さを軽視する姿勢である。

運転中にあった高浜原発3、4号機について、大津地裁は2016年3月9日に運転禁止の仮処分を決定した。これに対する関西電力の異議も同地裁が同年7月12日に退けた。このたび、大阪高裁はこれらいずれをも取り消したわけである。

また、伊方原発3号機については、原発からおよそ100キロメートル圏内の広島市、松山市の住民が人格権に基づき、運転差止仮処分を申し立てていたものである。

 

1) 二つの裁判所の判断はともに、原子力規制委員会が決めた新規制基準を安全性の判断の基準であるとして、不合理はないという。

だが、新規制基準そのものについては、専門家・研究者のあいだで多くの批判が指摘されており、さまざまな議論のあるところである。決して「安全基準」ではない。原子力規制委員会委員長自身がそのことを明言している。福島第一原発の事故の原因については今もって明らかになってはいないからでもある。大阪高裁のいう、「設備の具体的な損傷状態や損傷の原因等について一部未解明な部分が残されているものの・・・」というレベルではない。だからこそ、現在も、「新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会」が事故原因の究明作業を続けているのである。

 

2) 重大事故発生のさい、住民のだれもが被ばくせずに避難できるか。

大阪高裁はこの点について、新規制基準が、深層防護の第1層から第4層のレベルまでを規制の対象とし、第5層レベルに当たる原子力災害対策を規制の対象としなかったことが不合理であるとはいえない、という。だが、それは誤りというべきである。

避難計画を含む原子力災害対策は、原子力事業者、国、地方公共団体が主体となり、相互に連携し、適切に実施されるべきものという。「適切に」の実際をどう考えるのか。そもそも、その避難計画の適否、実行可能性を、何処が判断できるのか。放射性物質の放出、被ばくに関する的確な情報を時々刻々に発出し、被ばくせずに避難する指示を示し続けることは不可能事である。原子力規制委員会こそが責任を負う立場ではないか。

このように、原子力発電所の重大事故発生の可能性を否定できず、福島事故の再来を、それ以上の事故を、恐れないわけにはいかない住民は不安の中に生きることになる。

 

司法は、原子力事業者の意向や行政とは独立に、住民の「人格権」を最大に尊重するべきである。