【講演会報告】日米原子力協力協定と日本のプルトニウム政策国際会議2017 プレイベント 「もんじゅの終焉と日本の核燃料サイクルの行方」

『原子力資料情報室通信』第512号(2017/2/1)より

【講演会報告】日米原子力協力協定と日本のプルトニウム政策国際会議2017 プレイベント 「もんじゅの終焉と日本の核燃料サイクルの行方」

 

 既報の通り原子力資料情報室は、米国の憂慮する科学者同盟との共催で「日米原子力協力協定と日本のプルトニウム政策国際会議2017(PuPo2017)」(2月23日・24日)を開催する。そのプレイベントとして、フランク・フォンヒッペル・プリンストン大学名誉教授を招き、2016年11月21日に講演会を開催した。フォンヒッペル教授は国際核分裂性物質パネル(IPFM)前共同議長で、30年以上、プルトニウムと高濃縮ウランの管理に関する政策立案に携わり、使用済み燃料からのプルトニウムの分離などの研究に貢献してこられた。同氏にはPuPo2017でもご登壇いただくこととなっている。
 以下、フォンヒッペル教授の講演概要を報告する。

高速増殖炉の失敗
 講演でフォンヒッペル教授は、まず高速増殖炉の歴史をひもとき、1970年代、高速増殖炉は将来の原子力発電の主役となると考えられていたが、予想は大幅にはずれたことを指摘した。その予想との誤差の背景には、予想されたほど電力需要は伸びなかったこと、さらに重要な点として、高速増殖炉の技術的な困難性があった。
 実際、通常の軽水炉では平均設備利用率がおおよそ80%になるのに対し、高速増殖炉ではほとんどが20%以下にとどまる。また、70%を超えているロシアのBN-600では、15回ものナトリウム火災を起こしている。

核燃料サイクルの2つの道
 核燃料サイクルには2つの道がある。ひとつは使用済み燃料を再処理しないワンススルー、もうひとつは使用済み燃料を再処理するプルトニウム分離だ。原子力を利用する多くの国ではワンススルーが行われており、プルトニウムを分離している国はごく一部だ。その背景には、ワンススルーの場合、廃棄物は使用済み燃料だけだが、再処理を行った場合、廃棄物は、ガラス固化体、プルトニウム廃棄物など様々な形態となって出てくる点と、再処理コストが高いという点があげられる。再処理によって取り出されるプルトニウムは現状、ウランとプルトニウムを混ぜた混合酸化物(MOX)燃料に加工され、軽水炉で用いられているが、プルトニウムによるウラン資源節約はおおよそ12%程度にとどまり、一方で燃料費はウラン燃料の10倍に上るのだ。
 結果、かつて、フランス、イギリスとロシアは再処理サービスを各国に提供していたが、今日、そうしたサービスを購入しているのはオランダのみとなっている。過去顧客となっていた国々は、再処理をやめ、MOX燃料などで既に取り出されたプルトニウムを削減しようとしている。なお、再処理が行われてきた結果、各国の民生用プルトニウム保有量は合計で271トン(核兵器3~6万発分)となっている。

再処理正当化理由としての放射性廃棄物
 再処理で取り出されるプルトニウムを利用するはずだった高速増殖炉が実現されず、プルトニウムを軽水炉で利用しても、コストが高く、多くの放射性廃棄物を生み出し、核テロといったリスクも高くなる。そのため、今日、再処理推進派は、プルトニウムや他の超ウラン元素をそのまま廃棄すると数千年後に地上に出てくるかもしれないから、分離して、高速炉で核分裂させるべきだと推進の理由を変えるようになった。
 しかし、彼らの主張に従うと、通常の原発がすべて今日閉鎖したとしても、現在存在するプルトニウムや超ウラン元素を99%除去するためには高速炉と再処理工場を数百年にわたって運転しなければならないことになる。他方、直接処分を行ったとしても、プルトニウムは地中では比較的移動しにくい。
 再処理とプルトニウム燃料の製造は、1万年先に地下深くの処分場から地上に漏れ出してくるものよりずっと深刻な問題を生じさせる。1957年に旧ソ連で起きたウラルの核惨事では、マヤーク核技術施設再処理工場の高レベル廃液貯蔵タンクで生じた爆発により、大量の放射性物質が大気中に放出され、約1,000 km2の範囲で避難が行われることになった。また、事故が起こらずとも、再処理工場は大量のトリチウムを海洋に放出する。
 現在、中国や韓国が民生用再処理を追求している。韓国では1970年代以来、再処理技術の獲得を熱望してきた。その韓国では、2015年の世論調査で54%が核兵器保有を望むと回答している。中国でも民生用再処理工場の建設計画が進んでいたが、連雲港市で計画されていたフランス設計による六ヶ所型の再処理工場は計画が中断された。

結論
 今回のもんじゅの失敗は、高速炉の非経済性を再度示すものとなった。またイギリスにおいては、多くの原発を運転するEDFエナジー(フランス電力傘下)が使用済み燃料の再処理を拒否しており、再処理は放棄されつつある。フランスにおいても、Arevaが保有するラ・アーグ再処理工場は老朽化しつつある。フランス政府はフランス電力に再処理の拒否を認めていないが、再処理コストは上昇していくだろう。韓国においては使用済み燃料対策に重点が置かれており、中国でも福島第一原発事故以降、原子力にたいする懐疑的な意識が国民の間に広がっている。
 再処理・高速増殖炉推進論者はいつまでも再処理・高速増殖炉サイクルを推し進めることはできないだろう。           

(報告:松久保肇)