新潟県中越地震の余震が続いている! 柏崎刈羽原発は緊急に停止を!

新潟県中越地震の余震が続いている! 柏崎刈羽原発は緊急に停止を!

■つぎつぎやって来る大きな揺れ

2004年10月23日午後5時56分に新潟県中越地方(山古志村,川口町,小千谷市)を震源とする大きな地震(マグニチュード6.8,震源深さ13キロメートル)が発生してから,7日になるが余震は依然として続いている.大きな岩盤同士の押し合いぶつかりあいによって,逆ずれ断層運動が起こったと見られている.防災科学技術研究所の「強震ネットワークK-net」(www.k-net.bosai.go.jp/k-net/ )などをみると,最初の地震で下記の様な大きな地震動が観測されている.

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2004年10月23日午後5時56分のM6.8の地震の最大加速度と最大速度
(地表,東西北西上下3成分のベクトル合成値)
小千谷市(K-net,震央からの距離:1km):1500ガル,136cm/s,震度7相当値
小千谷市(気象庁,震央からの距離:7km):1007ガル,95.3cm/s,震度6強
十日町(K-net,震央からの距離:20km):1750ガル,65.6cm/s,震度6強相当値
※川口町では10月23日本震で震度7,午後6時34分の余震(M6.3)で2515ガルを観測との報道あり.
朝日新聞( www.asahi.com/national/update/1030/015.html )
読売新聞( www.yomiuri.co.jp/national/news/20041030i213.htm )
気象庁の中越地震に関する報道第18報など
( www.jma.go.jp/JMA_HP/jma/index.html )
( www.jma.go.jp/JMA_HP/jp/quake/quake.041030154009.03.0.html )
( www.seisvol.kishou.go.jp/eq/2004_10_23_niigata/event.html )
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同じく防災科学技術研究所の「基盤強震観測網」(www.kik.bosai.go.jp/kik/ )では,地中岩盤上の地震動の加速度として,長岡で414ガル(震央距離16km)が観測されている.

また,10月27日午前10時40分には,本震を起こしたものとは別のグループの断層が動いたとみられ,マグニチュード6.1の地震が起き,広神村などで震度にして6弱の揺れが観測された(小出町では南北水平523ガル,上下530ガルという値が観測されたことがK-netに出ている).

■柏崎刈羽原発で起こっていること

震源から25キロメートルほどの位置にある柏崎市でも,地表で144ガル(K-net,水平方向・東西,震度5)の揺れが観測された.しかし,東京電力の柏崎刈羽原発の運転は,定期検査中の4号炉を除いて継続されている.5号炉の原子炉建屋地下4階に設置してある地震計で約60ガル(その後50数ガルと東京電力が発表した)を観測したが,原子炉自動停止の設定値(この位置では水平方向120ガル)に達しなかったため停止しなかったというただそれだけのことであり,事故や故障が起きる危険性がないのではない.建屋のより高い位置では原子炉停止の設定値(原子炉建屋2階など,水平方向185ガル)に近い加速度の揺れを感じていたのではないか.

実際いくつかトラブルが起きていることが報道されている.『新潟日報』の10月25日付け朝刊31面( www.niigata-nippo.co.jp/tyuetujisin/newpage3.html から閲覧・入手できる)によると,1号炉と2号炉のタービン建屋でモルタルが落下したり,地震の揺れにより2・3・4・5・7号炉の使用済み燃料貯蔵プールから,冷却水があふれた出したという.『新潟日報』は,4号炉で200リットル,他の炉でも数リットルから100リットルがあふれたようだ,と伝えている.プールのひび割れや漏水などが生じていないか,早急に確認する必要がある.燃料プール内の冷却水が失われれば,プールでの空だき事故につながりかねないからだ.

東京電力は運転中の原子炉に関する詳細な情報提供を怠っている.原子炉内の冷却水の揺れによって出力が急上昇したり,地震の揺れによって配管や配管のサポートが損傷するたぐいの事故は過去に何度も経験しているのに,それぞれの機器の状態の確認すら満足に行なわれていない.

伝え聞くところによると,定期検査中の4号炉での作業も,かなり過酷な条件の下で行なわれているようである.現在約4000人の労働者(電力,メーカーとその下請けを含めて)が4号炉で原子炉建屋やタービン建屋内などで作業中だが,余震が起こるたびに作業の中断を余儀なくされている,という.

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これまでに地震が引き起こした原発のおもな事故(『原子力市民年鑑2004』より抜粋)
[年月日][震源][M][事故内容]
1978.6.12:宮城県沖:7.4:福島第一1号炉,送電線のガイシ損傷により自動停止.
1983.7.2:茨城県沖:5.7:福島第一3・6号炉,タービン停止により自動停止.
1985.11.27:常神半島沖:5.4:大飯1号炉,タービン停止により自動停止.
1987.4.23:福島県沖:6.5:福島第一1・3・5号炉,出力異常上昇により自動停止.
1993.11.27:宮城県北部:5.8:女川1号炉,出力異常上昇により自動停止.
1997.5.12:福島県沖:5.7:福島第一1・3号炉,出力上昇.
2000.7.21:茨城県沖:6.1:福島第一6号炉,小配管が破断したため手動停止.
2003.5.26:宮城県沖:7.0:女川3号炉,225ガルの揺れで自動停止,主蒸気管で水漏れなど.福島第一1・2・4号炉,気水分離器の脚部に曲がり.
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■老朽化する原発とたよりない耐震設計

柏崎刈羽原発の各原子炉の耐震設計は,基礎岩盤の300ガル(設計用最強地震)および450ガル(設計用限界地震)の地震動(地震の揺れ)に対してなされている.ただし,1号炉は1981年の建築基準法改正とそれを受けた原子力発電所の耐震設計審査指針(耐震指針)の改正以前に,設置の許可がおりている(1978年)ため,その基準が適用されておらず古い設計である.その他の原子炉にしても,設計用地震に1回襲われたときに「耐えるように設計する」ことになっているが,「耐えるように」の中身が問題だ.

耐震指針では,かならずしもすべての機器・容器が設計用地震で損傷しないこと,破壊しないことは要求されていない.どこかが壊れても,大量に放射能放出するような事故が起きなければよい,というのである.果たして,それで大丈夫だろうか.地震が引き起こす原発の事故の発生形態でもっとも恐れられているのが,各種機器・安全装置の共倒れ現象である.いくつもの装置がいっときに破壊される危険性があるのだ.

また,想定している地震動の大きさも過小に見積もっている疑いが濃い.今回の地震でも上記のように,岩盤上の1成分だけで400ガルを超す加速度が観測されている長岡などの例があるからだ.ここでは詳しくは触れないが,地震速度についてはこの過小見積もりの疑いがいっそう強い.ものの破壊のエネルギーとしては速度の方が影響を与えるだけに深刻だ.また,多数の繰り返し襲ってくる大きな余震も全くの想定外である.さらに,柏崎刈羽原発の場合は,設置されている岩盤の質が劣悪だということも心配だ(弾性波速度700m/s以下のものもある).

さらには,シュラウドにひび割れを多数残したまま運転を続けている原子炉もある(1・2・3・5号炉).配管のひび割れや減肉が生じている箇所もある.こういう状態で想定外の大きな揺れが襲えば,老朽化した原発はひとたまりもないだろう.

■伏在断層の連鎖的活動の可能性

10月27日午前10時40分の大きな余震は,それまでの余震の震源から少し東にはずれたところで起きている.このような震源域のひろがりは,長岡平野西縁断層帯全体にひろがる可能性があるのではないかという心配が出てくる.柏崎刈羽原発の敷地にごく近い東頸城丘陵の西側斜面に伏在する断層群が活動したら,と考えると恐ろしくなる.

政府の地震調査研究推進本部は10月13日に,長岡平野西縁断層帯で全体が1つの区間として活動した場合,マグニチュード8.0程度の地震が(30年以内に)発生する可能性がある,との評価結果を出したばかりである (www.jisin.go.jp/main/chousa/04oct_nagaoka/index.htm ).まだ,マグニチュード8.0のエネルギーを放出しきっているとはいえず,今後も余震が続く可能性が否定できない.

少なくとも,余震が続くあいだ,東京電力は柏崎刈羽原発をすべて停止し厳重な警戒にあたるべきだ.

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