原子力資料情報室声明 司法としての原発回帰の不当決定-高浜異議審決定

司法としての原発回帰の不当決定 高浜異議審決定

 

2015年12月24日 

原子力資料情報室

 

高浜原発3号機(左)、4号機(右)
撮影日:2015年12月6日
撮影者:片岡遼平

24日、福井地裁(林潤裁判長)は15年4月の高浜原発の運転差し止め仮処分命令を取り消す決定を行った。福島原発事故に対する司法としての反省がなく、原発回帰を追認する不当判決である。

決定は、原子力規制委員会が専門家の審議を経て策定した規制基準は合理的であるとし、審査の過程に重大な過誤欠落がなければ、それに基づく判断も合理的であるとする、福島事故前の考え・立場に逆戻りした内容となっていて、とうてい容認することはできない。

前決定が指摘した実際の地震がこの10年で5回も基準地震動を上回った理由を分析することなく、また、震源を特定せずに定める地震動については参考とする16地震に対して、最大規模であった岩手・宮城内陸地震について地質構造の違いを主張して評価対象から外したことを追認している。司法は、この地震も評価したうえで耐震安全性を主張するように求めるべきだった。

免震重要棟の建設は、工事認可より5年間猶予とさらに緩和したことで原子力規制委員会の姿勢が問われているが、今回の決定では新規制基準が「緊急時対策所の基準地震動に対する耐震安全性を確保するための手段については『免震機能等により』と規定されており、~必ずしも免震機能を有していることを常に要求するものではない」と解釈している。原子力規制委員会よりもさらに緩い判断を司法が示したことになる。これでは新規制基準の骨抜きにもつながりとうてい許されない判断と言える。

最後に原子力施設への意図的な攻撃に対する対策についても、きわめて狭い敷地に立地されている高浜原発を実際に視察すれば、攻撃に耐えられるとする判断は出ないはずだ。大型航空機が意図的に原子炉建屋に衝突すれば原子炉は破壊され重大事故は避けられない。あるいは、敷地内で爆発炎上すれば、規制委員会が「確認している」とする「アクセスルート」が使用不能になることは、現場を見れば一目瞭然である。