原子力資料情報室声明:原子力規制委員会は「もんじゅ」の設置許可を取り消すべき

原子力規制委員会は「もんじゅ」の設置許可を取り消すべき

2015/11/5
NPO法人 原子力資料情報室

 

11月4日に開催された原子力規制委員会は、「もんじゅ」の管理・運営主体を日本原子力研究開発機構に代えて新たな者を明示するように、文部科学大臣に勧告することを決めた。勧告文書(案)は来週の規制委員会会合で検討される。

規制委員会はこの間、文部科学省の担当者から意見を聴取し、機構理事長からも意見を聴取してきたが、いずれも納得できずに今回の勧告を決めるに至った。

今回の事態へ至る直接的な発端は3年前の機器類の点検漏れで、件数は14000件にも上った。同時に、機構が機器の点検間隔を安全評価や所定の手続きを経ずに変更していたことも明らかになった。これを契機に規制委員会は機構に対して、13年5月に運転再開の準備活動の禁止を命じた。さらに、機器類の重要度分類が正しく行われていなかったことも重大な欠陥であった。しかし、その後も、規制庁の保安検査でも毎年、保安規定違反が指摘される事態が続いている。まさに「解決のゴールさえ見えない」(田中委員長)状態である。

この間の意見聴取でも、停止中でさえ根本原因分析やPDCAを回すなど相変わらずの計画を返答するばかりで、機構は保安上の管理ができない組織であり、そのような主体に出力運転時の保安活動ができるとは考えられない、「もんじゅ」を運転する技術的能力がないと、規制委員会は判断したのだった。勧告は、文科大臣に対して、①機構に代わるどのような者が有効であるのか具体的に明示すること、②これが明示できないときには「もんじゅ」の在り方を抜本的に見直すこと、③半年を目途に結果をしめすこと、を求める。

原子炉等規制法[i]24条は、「原子炉の運転を適確に遂行するに足りる技術的能力がある」と認められないときには許可をしてはならないと明記している。そして、規制委員会は、機構には「もんじゅ」を運転する技術的能力がないと判断したのであるから、設置許可を取り消すべきである。さらに言えば、代わりのどのような組織も、もはや「もんじゅ」の安全な管理・運営を行うことはできないと考えられる。規制委員会が指摘するように、「もんじゅ」は設備も組織も経年劣化しているからだ。95年のナトリウム漏れ火災事故以来今年で20年になる。この間、ナトリウム漏えい事故後の安全総点検でも見つけられなかった炉内中継装置の設計ミス(落下事故で判明)、機器類の重要度分類ミスに見られる根源的欠陥、ナトリウム漏えい検出器の点検作業不良、繰り返される点検漏れ…。 こうしたことから見えてくることは、もはや「もんじゅ」を熟知する人がどこにも存在していないということだ。仮に、新しい主体が設置許可を申請し直しても、今日の規制基準に基づく許可を得ることはできないだろう。

「もんじゅ」にはこれまで1兆円を超える予算が費やされてきた。そしてなお、毎年200億円程度の費用が維持管理のためだけに費やされている。出力運転できる見通しのない原子炉にこれ以上の予算を費やすことは許されない。

「もんじゅ」の廃炉は、「国産増殖炉の開発」を目標としてきた日本の原子力政策に抜本的な変更を迫ることを意味する。日本は再処理・プルトニウム利用という核燃料サイクルから撤退するべきである。


[i] 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律