原子力資料情報室声明 世論無視のエネルギーミックス

特定非営利活動法人原子力資料情報室は、4月28日に、資源エネルギー庁が2030年の発電電力量に占める原発の割合を20~22%とする「長期エネルギー需給見通し」案を示したことを受けて、声明を発表しました。


 

世論無視のエネルギーミックス

 

2015年4月30日
原子力資料情報室

 4月28日、総合資源エネルギー調査会の長期エネルギー需給見通し小委員会に、資源エネルギー庁が「長期エネルギー需給見通し」として、2030年の発電電力量に占める原発の割合を20~22%とする案を示した。なお、水力を含む再生可能エネルギーは22~24%としている。

 世論調査によれば7割~8割が直ちに、もしくは段階的脱原発を支持している。この傾向は福島原発事故から4年がたつがほとんど変化していない。むしろ直ちに原発を停止すべきとの意見が増える傾向にあると言える[i]

 政策はこの世論を反映して作成されるべきである。今般のエネ庁の考えはこれを全く無視していながら、いかにも原発依存度の低減をしたかのように以下のように胸を張っている。

 「経済成長等による電力需要の増加を見込む中、徹底した省エネルギー(節電)の推進及び再生可能エネルギーの最大限の導入により約4割を賄うことにより原発依存度の低減に大きく貢献する」。これが見せかけの数字であることは誰しも気づくことだろう。

 徹底した省エネというが、これは経済成長率1.7%を前提とし、電力需要が2013年の9666億kWhから2030年には11769億kWhへと大幅に伸びることを想定したうえで、省エネによる削減率を17%としたものである。それでも9808億kWへと2013年より増加する想定だ。毎年減少の一途という実績は、これも全く無視されている。果たしてそれほど電力需要が伸びるのか? その余地はないといえる。だとすれば、省エネ17%は見せかけであり、まじめに取り組まなくても達成できそうではないか。逆に言えば、いっそうの省エネが見込めるともいえる。

 「最大限の導入」という再エネは、水力を除けばわずか14.4%程度。うち風力は1.7%しかない。あまりにも腰砕けの再エネ導入ではないか。環境省が35%は達成可能との試算を出していることを考えれば(経産省と共通のデータを使ってここまで達成できるとしている)、さらに積極的な姿勢を見せるべきである。

 依存度低減と胸を張るが、原発22%という数字は、原発の廃炉が決定した11基を除くすべての原発の運転再開とそれらの運転期間延長、新増設を前提としたものである(新増設は考慮せずとされているが、「新増設」の定義に疑義がある)。依存度低減などと言えるような代物でないことは明白だ。加えて、運転延長は大きな危険をはらむ。多くの原発で老朽化による原子炉圧力容器の劣化が進行しているからだ。

 エネルギー起源の二酸化炭素排出量も2013年比21.9%の削減という世界のレベルからは笑われる計画だ。

 このような政策が広範な世論の支持を受けるとは考えられない。第4次エネルギー基本計画は早晩破たんすることになるだろう。



[i] 2013年第27回原子力委員会資料より(www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2013/siryo27/siryo2.pdf