原子力安全・保安院「福島第一原子力発電所5号機の配管減肉管理について」に対するBWR関係市民団体の声明

原子力安全・保安院「福島第一原子力発電所5号機の配管減肉管理について」に対するBWR関係市民団体の声明

東電の技術基準適合義務違反の疑いに目をつぶり、法令順守の職務を放棄した保安院見解を直ちに撤回し、福島第一原発5号機を停止させよ

2004年10月11日
BWR関係市民団体

 東京電力福島第一原発5号機の配管の肉厚が、技術基準による必要最小肉厚を切って運転されている可能性があると福島県が指摘していた問題について、原子力安全・保安院は、東電の運転継続を容認する見解を示した(「福島第一原子力発電所5号機の配管減肉管理について」10月7日原子力安全・保安院)。保安院の見解は、東電が技術基準適合義務に違反し、法律を侵して運転している疑いに目をつぶるものであり、原発の運転にあたり法令を順守させるという保安院の最低限の職務をも放棄する許しがたいものである。

 東電が福島第一原発5号機の第4給水加熱器A系配管のオリフィス出口下流エルボ部で大幅な減肉を確認したのは第19回定期検査が行われていた昨年5月であった。この時点で配管の余寿命は0.8年しかなく、定検を終えて発電を開始した昨年9月から10ヶ月後の今年7月には必要最小肉厚を切ることになる。しかし東電は、次回定期検査の今年11月まで使用しても問題ないと判断して運転を継続し、保安院もこれを容認した。

 保安院は運転容認について、「仮に技術基準上の最小許容肉厚に達したとしても、これがただちに安全上の問題に結びつくことはない。」との、驚くべき理由を挙げている。
 電気事業法は、原発の運転に際しては技術基準に適合することを要求し、配管の肉厚については、技術基準から算出される必要最小肉厚を上回る状態を維持することを求めている。これに違反した場合は、技術基準適合命令が発せられ、それにも従わない場合には罰せられる。保安院はその命令を発する立場にあり、この法律を順守させ、技術基準に適合するように事業者を監督する立場にあるはずである。技術基準には余裕があるから必要肉厚を切っても安全だ、というのは、こうした立場をかなぐり捨てるものである。では一体何のために技術基準はあるのか、何のための安全余裕なのか、そして何のために保安院はあるのか。これでは保安院の存在意義を疑わざるをえない。
 保安院は容認の理由として他に、①減肉が局部的であること、②昨年の定期検査時の最小肉厚部においても技術基準に対して一定の余裕があること、③今回東電が用いた減肉率0.6ミリ/年が、保安院がPWRで解析した0.2~0.3ミリ/年と比べても大きく、過大に評価されている可能性があること、④美浜3号機事故のような事故が起こるおそれのない部位であること、といった点を挙げている。しかし以下のようにこれらはいずれも容認の理由にはならない。

<1> 局部減肉の評価方法については、美浜3号機事故調査委員会において保安院が作成した「中間とりまとめ」に「検討することが望まれる」とあるように、今後の課題とされているだけで、現在は「配管全周が、測定された最小肉厚まで減肉していると想定」して判定が行われている。保安院は、減肉が局部的であることを理由に判断を甘くすることをいさめ、より保守的に評価し判断するよう指導する立場にあるはずである。

<2> 問題の配管の肉厚は、昨年5月の時点で最小4.3ミリとなっていた。技術基準による必要最小肉厚は3.8ミリであり、余裕などない。安全側に立てば、東電が管理方法に従って算出した余寿命から、現在既に必要最小肉厚を切っているものとして対処すべきである。

<3> 保安院が減肉率の解析に用いたデータは、美浜3号機を除くと、電力会社が各原発につき1例ずつ電力会社の側で任意に選んだものであり、減肉率の低い無難な事例を提出したものと思われる。保安院が解析に用いたデータは減肉の実態を反映しておらず、このことは、今回の事例や女川原発1・2号機の激しい減肉事例が、保安院の解析の後になって発覚したことによっても明らかである。よって、保安院が解析で得た減肉率のほうが、過小に評価されているとみるべきである。また、保安院が解析に用いた減肉事例の多くは今回の該当箇所とは流速や温度の条件が異なり、直接の比較はできない。

<4> 美浜事故のような事故さえ起こらなければよいというのは、配管の破断が引き起こす影響を矮小化するものである。

 また保安院の見解は、「配管内の圧力などを計算すると、実際には肉厚0.3ミリでも耐えられ、余寿命も6年あると解釈して交換期を11月からの定検時に決めた」との東電の見解については何も触れていないが、これでは保安院が、関電に対して、関電が独自の解釈をして寿命を長く計算していたことを批判した姿勢とは全く異なる対応を取っていることになる。

 保安院によると、保安院は、美浜原発3号機事故の調査の過程で、9月14日には既にこの減肉事例を把握していたが、東電の勝手にさせることをこっそりと決めて放置していた。このまま行けばこの件は誰に知られることもなく済んだであろうし、そのように事を運んでいたのであろう。このように一旦は容認を決めていたために、10月6日になって福島県の指摘を受けても開き直り、法律を守らなくても安全だなどという信じがたい見解を出しているのである。
 保安院の見解に対し福島県は疑問を呈し、「減肉の不確実などを考慮すれば、早急に配管の点検調査を行うよう求めるなど、安全確保に責任を持って対応すべき」と指摘したという。県は東電に対し運転の停止を要求している。これは安全を優先した当然の判断である。

 保安院は、見解を撤回し、東電に直ちに福島第一原発5号機を停止させるべきである。また、減肉の過去の管理状況を調査した結果についても、すべてを包み隠さずに明らかにすべきである。

以上

宮城県
 原子力発電を考える石巻市民の会
 みやぎ脱原発風の会
福島県
 脱原発福島ネットワーク
新潟県
 柏崎原発反対地元三団体
 みどりと反プルサーマル新潟県連絡会
 プルサーマルを考える柏崎刈羽市民ネットワーク
静岡県
 浜岡原発を考える静岡ネットワーク
茨城県
 脱原発とうかい塾
島根県
 島根原発増設反対運動
愛知県
 核のゴミ・キャンペーン・中部
首都圏
 原子力資料情報室
 ストップ・ザ・もんじゅ東京
 核燃とめておいしいごはん
 東京電力と共に脱原発をめざす会
 原発を考える品川の女たち
 福島老朽原発を考える会