タニムラボレターNo.023 東京を流れる荒川の堆積物の調査(2)

『原子力資料情報室通信』第481号(2014/7/1)より

 

 

 

 

 

荒川堆積物の放射性セシウム137+134濃度
測定機:NaIシンチレーション検出器(EMF211)、測定時間:2時間
試料容器:U8容器、試料状態:乾燥状態(80℃2日)

 (前回からのつづき) 岸から20メートル地点までの干潟の堆積物を採取できましたが、この付近の水路の幅は約300メートルもあります。ですから、長さも幅も大きな荒川のごく一部の堆積物を採取したことになります。しかし、子どもたちが遊べる範囲を調査したいという目的には合致しているので測定を進めました。
 測定の結果、興味深いことが分かりました。岸から15メートル地点の堆積物に含まれる放射性セシウム濃度が最も高く、表面から6cmまでで約400ベクレルが含まれていました。その次に高いのは、岸から10メートル地点で、表面から6cmまでで約250ベクレルでした。岸から5メートルと20メートルは100ベクレル以下の値でした。なお、除染していない周辺の河川敷土壌は、250~600ベクレル程度でした(全て1キログラムあたり)。
 限られた範囲の調査ですが、この結果からは、周辺の河川敷の土壌と比較して、荒川の干潟に放射性セシウムが大量に堆積しているとは言えません。ここでは、河川敷で遊ぶのと、干潟に入って遊ぶのとで、被ばく量に大きな差はないと言えます。
 河川で運搬される石な砂などは、水の流れと物の重さによって沈殿しやすい場所が異なります。放射性セシウムは粒径の小さい粘土粒子に吸着しやすい傾向があるので、堆積物に含まれる放射性セシウム濃度は、その粘土比率に影響されることが考えられます。
 今度は放射能測定した堆積物の粒度を調査しようと計画しています。  
 (谷村暢子)

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