米印原子力協力 アボリション2000 からの呼びかけ

米印原子力協力:アボリション2000 からの呼びかけ

各位

多くの皆さんがご承知のとおり、2007年5月5日のウィーンでの年次総会にてアボリション2000は、米印原子力協定に反対する年間キャンペーンを始める決定を下しました。

アボリション2000は2つの重要な決定を下しました。
1.協定はNPTに違反すると論ずる要旨説明文を(コピーが同封されています)(1)、NPT準備委員会で外交官に配布すること。
2.米印協定をあつかう新しいワーキング・グループを、アボリション2000というネットワークに設けること。

この手紙の目的はワーキング・グループにみなさんを招き、みなさんがキャンペーンに参加し、この協定にかんして各政府に働きかけをしてもらうことです。

米印協定とは

2005年にアメリカとインドは、アメリカの法律を改正するべく協定条項に合意しました。米平和核計画のもと提供された技術補助によって分離されていたプルトニウムを使った、1974年のインドによる核実験以後、この法律のおかげで、NPT条約非締約国へ核技術・燃料を輸出することが阻止されていました。こうした法律はほぼ30年も昔のものですが、核兵器への欲望を増幅するような、商用の輸入核技術・燃料をNPT条約非締約国が使用することを防止しようとしました。2006年12月にアメリカ大統領ジョージ・W.・ブッシュはこの条件からインドを除外する法案に署名しました。

核分裂性物質国際パネル(15か国の核専門家からなる独立グループ)にむけた報告書によれば、米印原子力協定は、インドが核兵器用資材の備蓄を格段に増加させることを許すことになりかねません(ジアー・ミアーン、マニ・ラマナによる「南アジアの核:米印原子力協定は火に油」(2)を参照)。パキスタンはすでに懸念を表明しており、自国の備蓄核兵器用資材を増やすと警告しています。

アボリション2000は、核軍縮・核不拡散にたいするこの協定の様々な影響についてたいへん憂慮しています。

●協定はNPTに違反します(添付されたアボリション2000による要旨説明文における分析を参照)。
●協定は、「インド及びパキスタンに対し、核兵器開発計画を中止し、核軍備化及び核配備を行わず、核弾頭搭載可能な弾道ミサイルの開発及び核兵器のための核分裂物質のいかなる生産をも中止」するように求めた、1998年の国連安全保障理事会での全会一致決議に違反します。さらにこの決議によって、「全ての国に対し、インド及びパキスタンの核兵器及び核兵器搭載可能な弾道ミサイルの開発計画に何らかの形で資することのある設備、物質及び関連技術の輸出を防止するよう奨励」する。
●核不拡散条約(NPT)という枠組みの外で核兵器を開発し、核兵器放棄の公約をまったく果たさなかったインドとの核取引を許すことによって、協定は、核兵器開発を自ら目論む国に、誤ったメッセージをそのまま伝えてしまいます。そうした国は、核取引という特権を長くは否定されないと考えるでしょう。
●NPTの外に留まる他の3か国ーパキスタン・イスラエル・北朝鮮ーは、インドと同じ扱いを期待します。イスラエルとパキスタンはこの扱いをすでに求めています。
●協定は、5つの公認の核兵器保有国に核兵器を放棄するような圧力を少しもかけるものではありません。それどころか、協定はインドを6番目の核兵器保有国として事実上認めてしまいます。

協定を阻止するにはまだ間に合います。

米印協定の発効には原子力供給国グループ(NSG)による決議が必要です。NSGは全会一致で機能しているので、45のNSG各加盟国がそのルール改正に合意し、インドへの核売却を許諾しなくてはなりません。

NSG加盟国:アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベラルーシ、ベルギー、ブラジル、ブルガリア、カナダ、中国、クロアチア、キプルス、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、日本、カザフスタン、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルグ、マルタ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェイ、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、ロシア、スロバキア、スロベニア、南アフリカ、韓国、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、ウクライナ、イギリス、アメリカ

こうした国々は、核技術にかんする加盟国にとって利益になるかもしれないが、同時にインドの核兵器能力を強化し、パキスタンの備蓄核兵器を必然的に増加させることもある協定を支持するかどうか決めなくてはなりません。協定に納得しなければ、NSG諸国はその履行を阻止することができます。

すでに憂慮を表明した国もあります。新アジェンダ連合の国々(ブラジル、エジプト、アイルランド、メキシコ、ニュージーランド、南アフリカ、スウェーデン)は2007年5月のNPT準備委員会で、協定をNPTと矛盾すると見なすと述べたワーキング・ペーパーを作成しました。(同封されたNACのワーキング・ペーパーの抄録を参照)

行動の呼びかけ

アメリカ(4)とインド(5)の団体は、ここしばらく協定に反対するキャンペーンを精力的に展開しています。他の数か国にある団体も積極的ですが、キャンペーンを拡大するべきときです。

わたしたちワーキング・グループは、NSG諸国のアボリション2000各団体が自らを啓発し、米印原子力協定が孕む危険な影響について各政府に働きかけをするように求めます。
わたしたちは、アボリション2000のすべての団体が協定に反対する声をあげ、各政府がそれに反対するように強く求めます。

アメリカとインドが向こう数週間後に核協力にむけて正式の合意を結べば、NSGは、早くも今年秋の会議には、インドを取り込むべくルールを改正するように求められるので、各団体が緊急に行動をとることをわたしたちは強く求めます。

政府が協定にかんして憂慮を表明する有効なフォーラムは以下のものがあります。
i. ニューヨーク、2007年秋の国連総会。
ii. 2008年のNPT準備委員会(協定がNPTと核兵器廃絶への期待を切り崩してしまいますので)。

全大陸の国にある団体を含めた会員層の厚さのおかげで、アボリション2000ネットワークには、米印協定が適切なフォーラムで十分に議論されることを確かにするのに、重要な役割を果たす力があります。このキャンペーンにむけてワーキング・グループは焦点として活動することを期待しておりまして、みなさまの活動をお伝えくださることを望んでおります。

ワーキング・グループへの参加に関心のある方は、コーディネーターにご連絡ください。

フィリップ・ワイト
原子力資料情報室
〒162-0065東京都新宿区住吉町8-5曙橋コーポ2階B
TEL:03-3357-3800 FAX:03-3357-3801

○●ワーキング・グループのウェブサイトは以下で見ることができます。●○
www.cnic.jp/english/topics/plutonium/proliferation/usindia.html

フィリップ・ワイト(ワーキング・グループコーディネーター)
アンソニー・サルーム(アボリション2000コーディネーター)


参考文献と添付資料
1. 2007年5月のNPT準備委員会で外交官に配布された、アボリション2000の要旨説明文。
2.「南アジアの核:米印原子力協定は火に油」、ジアー・ミアーン、マニ・ラマナ、朝日新聞2007年3月5日
kakujoho.net/temp/070305z&r.PDF
「南アジアにおける核分裂性物質と米印原子力協定の影響」ジア・ミアン、A.H. ネイヤー、R. ラジャアラマン、M.V. ラマナ、核分裂性物質国際パネルの調査報告#1、2006年
www.fissilematerials.org/ipfmresearchreport01.pdf
3. 2007年5月のNPT準備委員会の公式文書から抜粋。
4. アームズ・コントロール・アソーシエーションのウェブサイト(http://www.armscontrol.org/projects/india/)には貴重な資料欄がある。
5. 3月10-11日にムンバイで開かれた、「米印『協定』にかんする国際セミナー:インド・南アジア・非同盟運動(NAM)そして世界秩序」の決議は以下のリンクで見ることができる。(http://publish.indymedia.org/en/2007/05/886061.shtml)
(6. 日本語の資料は核情報のホームページにあります。http://kakujoho.net/inpk/ )

核情報http://kakujoho.net


2007年5月のNPT準備委員会での公式文書からの抄録

スイス(2007年4月30日)
「、、、民生用原子力エネルギー分野における米印の協力計画は、NPTに基づく核不拡散体制にとって影響がないということはない。この計画が実行されると、1995年の再検討会議でNPT無期限延長を全会一致で可能にした妥協案の妥当性に疑義が生じる。」

日本(2007年4月30日)
「NPTの普遍性完遂という目標にむけて、日本は、インド、イスラエル、パキスタンが非核兵器保有国として条約に加盟する要求を何度でも繰り返す。」

アイルランド(新アジェンダ連合を代表して)(2007年4月30日)
「NPT加盟国は今では国際社会全体をほぼ包含しているが、37年前の発効にもかかわらず条約は普遍性を完遂していない。このことが、新アジェンダ連合にとって依然として憂慮の原因になっている。新アジェンダ連合は、NPTの普遍性を完遂するべく締約国全てが努力を惜しまないことを一貫して求めてきたし、またインド、イスラエル、パキスタンは、未だ条約の締約国ではないが、非核兵器保有国として即座にかつ無条件で条約に加盟することを強く求める。」

新アジェンダ連合(2007年5月1日)
新アジェンダ連合の諸国であるブラジル、エジプト、アイルランド、メキシコ、ニュージーランド、南アフリカ、スウェーデンを代表して、アイルランドが提出した作業文書より(2007年5月1日)
「14.1995年のNPT再検討・延長会議の決議IIで、国際的な平和と安全保障ならびに核兵器の撤廃を完遂するさいの重要な要素として、普遍性が浮き彫りになったことを考えると、条約で宣言された目標、さらに1995年のNPT再検討・延長会議で全会一致で下された決定・決議条項の一部として、条約締約国がおこなった公約の双方を達成するべく、普遍性という枢要な目標にむけて具体的な措置がとられることが必須である。
15.新アジェンダ連合は、NPTの普遍性を完遂するべく締約国全てが努力を惜しまないことを求め、またこの点から、インド、イスラエル、パキスタンは、未だ条約の締約国ではないが、非核兵器保有国として即座にかつ無条件で条約に加盟することを強く求める。
16.国際原子力機関(IAEA)による自国の核施設への包括的保障措置を受け入れない国に新たな原子力供給取り決めを結ばないとする、1995年の再検討・延長会議での全会一致を、2000年の再検討会議で締約国が再確認したことを新アジェンダ連合は想起する。」

マレーシア(2007年5月1日)
「マレーシアは、非締約国が締約国に比べて特別待遇を受ける場合というのは、条約の精神と字句の甚だしい違反に等しいという見解である。さらに、NPT締約国ではないある国家による、核兵器開発に転用されうる核物質・技術・知識の入手が核兵器保有国によって容易にされているということをマレーシアは憂慮する。この点から、締約国が条約普遍化という目標を完遂するにあたって本当に真摯ならば、こうした締約国はマレーシアに加わり、核にかんする科学的または技術的分野のあらゆる核関連物質・方策・補助を条約非締約国に譲渡することについて、完全かつ完璧に禁止するように求めるだろう。例外はない。」

アラブ首長国連邦(2007年5月1日)
「この場の最優先事項は、6つの中軸を重点的に取り扱うことによって、この会議での討議を進めることでなくてはならず、こうすることが、核軍縮にむけて漸進的かつ系統的な進展に寄与する。
5. 条約の普遍性ならびに効果性を高めるべく、条約締約国でない国家を確実にとりこむ一段と効率的な対策をとる。」


要旨説明文

NPT第1条に完全遵守か?
米印協定

1. 序
米印原子力協定は、承認されたならば、NPTならびにNPT再検討会議で下された決議に違反するという一見自明な主張がある。

インドがNPT締約国ではなく、条約条項では非核兵器保有国と見なされ、自国の核施設に包括的保障措置を受けていないけれども、米印原子力協定はインドに核材料・技術を売却する基礎を敷こうとする。核分裂性物質国際パネルによれば、現在の構成で米印原子力協定は、インドが自国のウラン資源を転用し兵器用プルトニウムの生産を格段に増加させることを許す(1)。

2. 米印原子力協定関連のNPT文書と再検討会議決議
核不拡散条約第1条(1968年):締約国である各核兵器保有国は、核兵器その他の核爆発装置またはその管理をいかなる者にたいしても直接または間接に移譲しないこと、および核兵器その他の核爆発装置の製造もしくはその他の方法による取得または核兵器その他の核爆発装置の管理の取得につきいかなる非核兵器保有国にたいしてもなんらの援助、奨励または勧誘をおこなわないことを約束する。

「核不拡散と核軍縮のための原則と目標」(1995年):
原料物質、特殊核分裂性物質、または特殊核分裂性物質を処理、使用ないし生産するため、特別に設計ないし作成された設備・資材を、非核兵器保有国に移譲する新たな供給取り決めをおこなう場合には、必要な前提条件として、機関の全面的保障措置を受諾し、かつ核兵器その他の核爆発装置を取得しないという、国際的に法的拘束力のある約束を受諾することを要求しなくてはならない。

2000年NPT再検討会議の最終文書:
10. 会議はさらに、国連安全保障理事会の決議1172(下に引用)のみならず核不拡散条約にある目的に反するかそれを切り崩すあらゆる行動を、締約国がすべて慎むように求めた。

36. 会議は、1995年5月11日に再検討・延長会議で採択された決議2の第12段落(上に引用)を再確認した。

国連安全保障理事会の決議1172(1998年):
7. (決議は)「インド及びパキスタンに対し、核兵器開発計画を中止し、核軍備化及び核配備を行わず、・・・核兵器のための核分裂物質のいかなる生産をも中止」(するように求めた)。

8. (決議は)「全ての国に対し、インド及びパキスタンの核兵器及び核兵器搭載可能な弾道ミサイルの開発計画に何らかの形で資することのある設備、物質及び関連技術の輸出を防止するよう奨励」する。

3. 分析
以上の引用はNPT締約国の一致した見解と、国連安全保障理事会の全会一致決議を表す。

米印原子力協定を取り込みうる統一見解にNPT締約国が達するための新たな基礎を提案する責務は、NPT締約国で、この2国間協定の一方であるアメリカにある。各締約国は、説得されれば、2010年のNPT再検討会議への勧告としてこの提案を採択してもよい。

原子力供給グループ(NSG)には協定を承認することがその発効前に求められる。NSG加盟国は、協定がNPTに遵守するかどうかという疑問が適切に解決されるまで、この問題について決定をするいかなる取り組みにも抵抗しなくてはならない。他の何かをしようなら、善なる誓約の由々しき違反である。

NSG加盟国の全てはNPT締約国であるが、NSG総数はNPT総数全体を表さない。NSG加盟国のほぼ3分の2が核兵器を保有しているか、核同盟国の一部であるのに、NPT締約国のほぼ3分の2の安全保障は非核兵器地帯にある。

4. 勧告
NPT締約国は、いかに米印原子力協定が第1条と1995年と2000年の見解に遵守しており、国連安全保障理事会の決議1172に違反していないかという文言をNPT準備委員会でアメリカに提示させなければならない。すると締約国は説得力のある決定を下すか、または協定が条約の目的と目標に反しているかを決めることができる。