「東洋町は原発の廃棄物を拒否する」原発推進のエネルギー政策が問われている

「東洋町は原発の廃棄物を拒否する」
-原発推進のエネルギー政策が問われている-

澤井正子

■最終処分場が拒絶された

原子力発電によって発生する高レベル放射性廃棄物の最終処分場応募問題が最大の争点となった高知県東洋町の町長選挙は、処分施設立地調査応募に反対する澤山保太郎さんが約70%の圧倒的多数の得票によって当選しました。澤山新町長は公約どおり応募取り下げを表明し(下記「勝利にあたっての決意」参照)、当選翌日の4月23日、応募撤回と文献調査中止を求める文書(下記参照)を事業主体の原子力発電環境整備機構と担当官庁の資源エネルギー庁に郵送しました。

■選挙結果

・有権者数:2934人
・投票率:89.26%
・確定投票数(投票総数2619票、有効票2582票、無効票37票)
 澤山保太郎:1821票(得票率70.5%)
 田嶋裕起:761票(得票率29.4%)

■【勝利にあたっての決意】

澤山保太郎

平成19年4月22日

まずもって、このたびの町長選挙においてわが陣営が大勝利を得たことを祝し、全国の心配してくださった国民の皆さんにこの勝利をご報告するものであります。

1. 前町長は町内外の一部の者と高レベル放射性廃棄物の町内持ち込みを画策してきました。それが露見したのは昨年9月。爾来8ヶ月の混乱と不信、対立が町内で続きましたが、今日こそはっきりと核反対という町民の選択が示され、決着がついたと考えます。

2. 政府と原環機構はこの選挙結果を真剣にうけとめ、高レベル放射性廃棄物の東洋町持ち込み、最終処分施設の立地調査を、直ちにやめるべきであります。
私たちの勝利は、女性を中心とする東洋町民の、美しい東洋町の自然を護れという熱い想いによって勝ち取られたものですが、また、近隣の高知県、徳島県の皆さん、全国の核に反対する多くの皆さんのご支援のおかげでもありました。
東洋町民の労をねぎらうと同時に全国のご支援いただいた方々に感謝の意を表します。

3. 私は明日より町役場に登庁しますが、まずもって、原環機構と政府エネ庁に対し、前町長が行なった立地調査の応募書の撤回を申し入れ、政府が認可している文献調査の中止を求める所存であります。

4. 私は、核廃棄物の問題を解決した暁には、町内の対立の解消と町民融和に勤め、以前のような静かな東洋町の暮らしを回復するよう努力を惜しまない所存であります。
そのためには、町政の民主的運営の基本を定め、全町民が町会議員や町職員と一致協力できるシステムを構築し、利権を排除し、公正な行政を進めていきたいと思います。

5. 東洋町政は、今回の核廃棄物の問題のほかにも、巨額の借金をかかえ厳しい財政難にあえいでいますし、南海地震・津波など災害対策や、失業・雇用の問題、人口流出など深刻な問題があります。私はこれらの問題について町議や町民の知恵と協力を得て一歩一歩抜本的な解決策を講じてまいる所存であります。

6. 今回の東洋町の選挙結果は、政府のこれまでの原子力政策の大きな破綻を示すものであり、原発に頼らない電力・エネルギー政策の根本的な見直しを迫るものであると考えます。国民の核・放射能への恐れはこれほど深く、政府の原子力政策への不信がこれほどまで深刻であるということを示しました。政府は、これ以上危険な原発依存をやめ、速やかにクリーンな新しいエネルギーの開発にその主力を傾注すべきであります。今日の勝利を踏まえ、東洋町・四国の、私たちのふるさとを放射能から守り、祖国日本を核廃棄物の暗雲から解放する日まで、私たちの闘いは永続することを宣言します。

■原子力政策が問われている

核ゴミの最終処分場問題は、東洋町や周辺市町村、高知県、さらに徳島県にまで政治的混乱を持ち込み、住民の間に対立や葛藤をもたらしました。しかし東洋町の住民のみなさんは、原子力発電が抱える根本的問題について、賢明な判断を下しました。なぜどこにも処分できないような核廃棄物を生み出す原発を運転するのか、電力会社や日本政府に原子力推進政策の転換を求めています。

東洋町の応募取り下げ申請によって、原子力発電環境整備機構や資源エネルギー庁は東洋町での文献調査中止(事業計画変更)に追い込まれました。廃棄物問題を棚上げにしたまま建設が進められてきた原発は、「トイレなきマンション」と言われて続けてきました。今日までの原発の建設・利用を推し進めながら、他方でどこかの地域に廃棄物を押し付けようとする手法では、いくら補助金を積み上げても問題を解決することはできないでしょう。

約3000人の小さな町、東洋町の問い掛けは大変重いものです。また今までにも沢山の小さな自治体が、廃棄物処分場問題に翻弄されてきた実態があります(下記図参照)。電力会社や政府(経済産業省)は、「人類の負の遺産」である原子力発電に伴う廃棄物問題を国民に正確に説明する必要があります。そして原発推進政策を見直し、日本のエネルギー政策を省エネ、自然エネルギーを推進する方向へ転換するべきです。

■応募撤回と文献調査中止を求める文書(PDF)

【『高レベル放射性廃棄物の最終処分施設の設置可能性を調査する区域について』の応募の取り下げについて】

【応募取り下げ理由書】

■参照

・『原子力資料情報室通信』392号(2007.2.1)より
 【高レベル処分場候補地選び 露呈した「公募」の欠陥】

・高レベル放射性廃棄物処分場誘致の動き
 『通信』388号(2006.10.1)より
高レベル放射性廃棄物処分場誘致の動き クリックすると拡大します

■【関連報道】

・核廃棄物の行方:文献調査の応募撤回 静かな町へ公約果たす(毎日新聞)
www.mainichi-msn.co.jp/chihou/kochi/news/20070424ddlk39040501000c.html

・東洋町、放射性廃棄物処分場の応募撤回・機構側受け入れ
www.nikkei.co.jp/news/main/20070423AT6B2300J23042007.html

・高知県東洋町で何があったのか?町長選取材記
www.janjan.jp/election/0704/0704244366/1.php