隠ぺい・改ざんの膿は出し切れない 甘い保安院対応

隠ぺい・改ざんの膿は出し切れない 甘い保安院対応

伴英幸

 4月20日に経済産業省原子力安全・保安院はこの間の電力各社の改ざん・隠ぺいの数々に対する「評価と今後の対応」を発表した。この内容はあまりにも甘く、常態化していた隠ぺい・改ざんの根治はできないと考えられる。
 発表された内容によれば、同院は評価対象の316事案を評価して、うち法令に違反し安全に影響があった(評価区分I)もののうち原子力に関する11事案7発電所に対して、重大事故が経営責任者に報告される体制を作るよう「保安規定の変更を原子炉等規制法第37条第3項に基づく行政処分として命令」した。物々しい言いようだが、中身は保安規定の改定のみである。
2002年の東京電力の事故隠しなどの不正に際しては、福島第一原発1号炉が1年間の運転停止処分を受けている。その際に過去の事例はすべて報告されたはずだった。今回明らかになった事例の一つは、柏崎刈羽1号炉で残留熱除去冷却中間ループのポンプの故障を隠ぺいして国の検査に合格していた。2002年5月12日の出来事である。先の東電事故隠し発覚(2002年8月)の直前の不正である。先の洗い直しで発見できないはずのない故障隠ぺいだと言われても仕方ないだろう。それはともかく、福島I?1と同様に不正による定期検査合格に対して、今回は保安規定変更で済ませているのである。
さらに、今回の公表で明らかになったことは、コンピュータプログラム自体の改ざん、記録紙などの改ざんや隠ぺいなど、より悪質な改ざん・隠ぺい工作が行われていたことであり、さらに、先に述べた緊急炉心冷却系機器が故障したまま運転に入ったことや制御棒脱落・臨界事故など安全意識の欠如である。
原子力安全・保安院は、2003年10月以降データ改ざんはないとしているが、関西電力は不正調査の最中の2007年2月6日に大飯3・4号炉で記録の隠ぺいを行っていた。不正が常態化していた実態からは、より重大な不正が行われていなかったとは言えない。
あろうことか、甘利明経済産業大臣のコメントを合わせて公表し、「世界で一番安全で安心な原子力立国を目指す」と原発の推進を謳うようでは、原発推進のための規制であることを如実に示し、原子力安全・保安院の存在意義すら喪失させるものといえよう。改めて、原子力安全・保安院の経済産業省からの独立が求められる。
このような甘い対応では、不正の根絶はとうてい望めないばかりか、大事故を待つようなものである。住民の原子力への不信はますます高まらざるを得ない。

■4月13日に行われた原子力安全・保安院ヒヤリングのレポート
 https://cnic.jp/525