現行のロシアへのウラン濃縮委託停止を求める要請書

安倍晋三内閣総理大臣殿
甘利明経済産業大臣殿
麻生太郎外務大臣殿
      
現行のロシアへのウラン濃縮委託停止を求める要請書

東京電力をはじめ日本の電力会社は、日本国政府とロシア国政府との間に核物質の移転をともなう「原子力の平和的利用に関する協力のための協定」(以下、「日露原子力協力協定」)が存在しないにもかかわらず、ロシアの「テフスナブエクスポルト(テネックス)社」にウラン濃縮を委託し、経済産業省はその取引を許可してきた。しかし、以下に述べるようにこれは認められるべきではない。
日本国政府はその『原子力政策大綱』のなかで、「核不拡散とそのための仕組みの遵守が原子力平和利用の大前提」としている。核拡散防止の担保としては、核拡散防止条約(NPT)や国際原子力機関(IAEA)との保障措置協定に加え、二国間協定がある。
二国間協定は、核物質を当該国や第三国へ移転するにあたり、IAEAによる保障措置を受諾すること、平和的非爆発目的に限定すること、それに関わる罰則規定、などを具体的に取り決めたものである。日本の「平和利用」を担保するうえでも、また相手国に移転した核物質が軍事利用されるのを防止するうえでも、核物質の移転をともなう取引を承認するにあたっては、二国間協定が締結されていることを大前提とすべきである。
とくにロシアは、核拡散防止条約(NPT)が定める「核兵器国」であるから、IAEAによる保障措置を受け入れる義務はなく、現時点では受け入れていない。同国の核施設は軍事と民生の境界が曖昧なため、日本が調達し同国へ移転された核物質が、核兵器開発に利用される恐れもある。そのため核物質の取引にあたっては、同国と日本の間で原子力協力協定が締結され、発効していることが不可欠である。
 原子力の「平和利用」と核拡散防止を担保するため、日本国政府は、
一、核物質の移転をともなう「日露原子力協力協定」が締結され発効するまで、日本の電力事業者等とロシアの事業者とのあいだの、ウラン濃縮委託をはじめ核物質の移転をともなう一切の取引を、ただちに全面停止する措置をとること
一、今後、日本の事業者にたいし、原子力協力協定のない国の事業者との、核物質の移転をともなう取引は許可しないこと。
以上、要請する。

 2007年4月9日
グリーンピース・ジャパン
原子力資料情報室