原子炉稼働期間延長に関するパブリックコメントへの応募意見

原子力規制委員会は2013年5月2日から5月31日にかけて、「原子力規制委員会設置法の一部の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令(仮称)案に対する意見募集について」と題したパブリックコメントを行った。

このパブリックコメントに対して、情報室が提出した意見を以下でご紹介する。

 ●核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律施行令26条の6

<意見>
原子炉の運転期間延長を認めるべきではない。
<理由>
 今回提出された施行令案には「法第四十三条の三の三一第三項に規定する政令で定める期間は、二十年とする」とあるが、法第43条の3の31第3項には、「二十年を超えない期間であつて政令で定める期間を超えることができない」とある。つまり政令でこの期間を制限することができるということが立法の趣旨である。
 法第43条の3の31第5項には、運転期間延長申請の際、貴委員会が審査を行うとある。しかし、先般パブリックコメントにかけられた「発電用原子炉施設の使用前検査、施設定期検査及び定期事業者検査制度に係る実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則の規定の解釈(内規)(仮称)」には、運転開始後35年を経過する日以降に点検する対象が挙げられているが、たとえば沸騰水型軽水炉の原子炉圧力容器の点検対象は「母材および溶接部(炉心領域、接近できる全検査可能範囲)」と記載されている。この記載は沸騰水型軽水炉の原子炉圧力容器について不十分な点検しか行えないという意味である。つまり貴委員会自身が十全な確認が行えないことを認識されておられるということだ。
 原子力安全・保安院は、「中越沖地震における原子力施設に関する調査・対策委員会」の下に「運営管理・設備健全性評価ワーキンググループ」を設置し、柏崎刈羽原発の設備が地震で壊れていないか評価した。評価は、「設備の点検」と「計算による解析」でおこなったが、目視や非破壊検査で行える点検には限度があり、塑性変形や硬化を調べることはできない。また理論解析にも同様に限界があり、大まかな解析は可能であっても、実際の機器の健全性については不明だ。
 貴委員会の設立目的は原子力規制委員会設置法第1条にある通り、「原子力利用における事故の発生を常に想定し、その防止に最善かつ最大の努力をしなければならないという認識に立って、確立された国際的な基準を踏まえて原子力利用における安全の確保を図るため必要な施策を策定し、又は実施する」ことだ。しかし、高経年化原子炉については、国際的にも運転期間が40年を超える原子炉の実績は稀であり安全性を確保できうるとは言いがたく、また十全な点検も行いえないということを貴委員会自身認識されているはずである。
 国際的にも40年超の原子炉運転基準は確立されておらず、点検を行ったとしても十分には行い得ないことから、つねに安全サイドに立つべき貴委員会は、立場をまっとうするためにも、「延長期間を認めない」とするべきである。

 ●核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律施行令26条の6

<意見>
核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第43条の3の31第1項にある原子炉運転期間の原則である40年について貴委員会の見解を伺いたい。
<理由>
 東海原発の耐用年数は当初15年として計画され、32年間運転をおこなった。軽水炉については、当初は25~30年、更に30~40年と延長されてきた。かつて耐用年数を30年とされていた際の安全審査資料によれば、主要機器は40年保つが、余裕を考慮して耐用年数を30年と設定している。そのように余裕度を削ることで耐用年数を伸ばして、本当に安全は確保されるのか。
 玄海原発1号機では運転から36年経過時点でおこなった監視試験では脆性遷移温度が予測曲線から大きく外れて98℃まで上昇している。圧力容器が脆性破壊される可能性も否定出来ない状況である。
 原子力規制委員会設置法附則第97条には「施行の状況を勘案して速やかに検討が加えられ、必要があると認められるときは、その結果に基づいて所要の措置が講ぜられるものとする。」との規定がある。貴委員会は上記の点を勘案して40年間の運転期間を短縮することも検討されるべきではないか。

 ●核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律施行令別表第一(第六十五条関係)及び別表第二(第六十五条関係)

<意見>
実費を勘案して手数料の金額を上げるべきである。
<理由>
 原子力規制において、たとえば活断層調査などの調査の実施主体は電力事業者側にあり、その実施内容を規制側が検証するという体制になってきた。しかし、最大の利害関係者である電力事業者が中立的な態度で調査を実施するということはそもそも想定しづらい、本来は規制側が調査可能な体制をつくり実施すべきである。
 また、法75条1項には「実費を勘案して政令で定める額の手数料を納めなければならない」とあることから、手数料金額を貴委員会が実施する調査の実費が勘案された額に値上げするべきである。