全BWRの停止を求めて原子力安全・保安院へ要請

全BWRの停止を求めて原子力安全・保安院へ要請

BWR原発のある全県から市民グループが参加、不正を見抜けなかった保安院の内省を強く求めた

———————————————————–

経済産業大臣 甘利 明様
原子力安全・保安院院長 広瀬 研吉様

制御棒の構造的欠陥が明らかになったBWR原発の運転を全面的に停止せよ

2007年3月29日
BWR原発を案じる全国の市民

 BWR(沸騰水型原子炉)での臨界事故と事故隠しに抗議する。志賀1号機には停止措置をとったのに,同じく臨界事故を起こした福島第一原発3号機をはじめ,制御棒駆動機構に構造的な欠陥を抱えていることが明らかになった他のBWRになんらの措置を講じない国に抗議する。安全装置の中核である制御棒の引き抜け事故,臨界事故を頻発させ,隠ぺいしてきたことは,もはや電力各社に原発を運転する資格のないことをはっきりと示している。わたしたちBWR原発を案ずる全国の市民は以下について要請する。

  1.全てのBWR原発に直ちに運転停止指示を出すこと
  2.保安規定違反により福島第一原発3号機の設置許可を取り消すこと
  3.制御棒引き抜けと臨界事故に関する全ての資料を公表すること

 志賀1号機に続き,福島第一3号機でも臨界事故の隠ぺいが明らかになった。制御棒5本が引き抜かれ,臨界は7時間半も継続したという。これを東電は約30年間も隠し続けていた。制御棒が引き抜ける事故は,浜岡でも女川でも,柏崎刈羽でも福島第一でも福島第二でも起きており,既に8件を数える。それらを電力会社もメーカーも隠ぺいしていた。国は事故の把握すらできなかった。メーカーを含めた原発の安全管理体制に重大な問題があった。志賀1号機の臨界事故は内部告発で明らかになり,他の事故が連鎖的に発覚していった。データ改ざん問題で電力が行っているアンケート方式の調査だけでは限界があり,まだまだ隠されている事故などがあるだろう。

国はこれらを「操作ミス」「人為ミス」でかたづけようとしている。しかし、頻発する制御棒引き抜けと臨界事故が示しているのは、BWR特有の制御棒駆動機構の構造的欠陥である。BWRでは制御棒を重力に逆らって炉心底部から上方向に挿入することを余儀なくされ、その危険性が以前から指摘されていた。これに対し国や電力会社は,「安全装置がついているから大丈夫」「故障しても安全側(制御棒が挿入される側)に働くから問題ない」「制御棒は1本ずつしか動かせない仕組みになっている」「誤って制御棒を引き抜こうとしてもできないインターロックシステムになっている」などと説明してきた。これが全くのうそだった。BWRの制御棒は挿入側と引き抜き側の水圧の微妙なバランスで保たれており、それが停止時に水圧制御ユニットから隔離されると、スクラム(緊急自動停止)ができなくなる。弁操作一つで水圧が高まると,引き抜き側の水圧によって安全装置がはずれて複数の制御棒が同時に引き抜かれてしまうことが起こりうる。すなわち,止めた車の全てのブレーキをはずし,わずかな力で動き出す状況に置かれていたのである。これは操作手順の問題ではなく,BWRの構造的欠陥というべきものである。
制御棒が複数本抜け落ちる事故は、国の安全評価審査指針でも想定されていない。設計基準事故として想定されているのは制御棒1本の落下事故である。国の安全審査の想定がまったく不十分であったことをも示している。ABWRについても同様である。

 また,この間の不正隠蔽発覚において,低出力時の不安定性というBWRの別の欠陥も浮かび上がっている。度重なるスクラム隠しはいずれも停止操作における低出力運転時に発生しており,出力上昇などによるものであった。最近,福島第一4号機で発生した停止トラブルでも,低出力時に不安定な挙動を示している。

 3月25日に発生した能登半島地震は,地震の規模が,志賀原発の建設時に想定した「海底の断層による地震」の規模を上回っていた。改めて原発の耐震設計の甘さが浮き彫りとなった。活断層評価が問題となっている島根,柏崎刈羽原発,プレート間の巨大地震が切迫している浜岡,女川原発をはじめ,各地のBWRは地震の脅威にもさらされている。大地震のときに,制御棒の緊急挿入が本当にできるのか,本当に不安である。

 甘利経済産業大臣は「より一層の安全性の確立に向けた過去の改ざん等の総洗い出しについて」(3月23日)において,「世界で一番安全安心な原子力立国を構築してまいります」などと述べている。そこには,過去の大事故や隠ぺいについて罰則を伴う厳しい措置をとる姿勢が全くない。そもそも安全軽視,不正と不正隠蔽の電力会社の体質は,国の甘い安全規制と電力と国の癒着等によって長年にわたって醸成されてきたのではないのか。これらに対する少しの反省もない。
 国は,志賀1号機の臨界事故隠蔽発覚直後には、「極めて悪質」として法的裏付けのない経済産業大臣の指示による停止措置をとった。しかしその後発覚した数々の引き抜け事故については「報告義務がなかった」と電力会社を擁護し,7時間半にも及ぶ福島第一3号機の「一層極めて悪質」な事故と事故隠しに対しては,運転停止の措置を取ろうとしない。 しかし,福島第一原発の臨界事故当時の保安規定は,制御棒の操作手順を作成し,それに従うことを要求しており,「操作ミス」ですら禁じている。また,事故記録について,解体までの保存を要求している。福島第一3号機の臨界事故は明らかに保安規定違反である。保安規定違反により,国は原子炉設置許可の取り消しを命ずることができる。この処分に時効はない。経済産業大臣は法律にのっとり,福島第一3号機の設置許可を取り消さなければならない。

 臨界事故がその時明らかになっていれば,その後の事故やJCOの痛ましい事故も防ぐことができたかもしれない。電力会社も国も人々の命を軽んじた。国は事故の把握すらできなかった責任を明らかにしなければならない。報告義務違反や検査妨害についても時効のない設置許可取消処分の対象にすべきである。調査のありかたについても再考しなければならないだろう。事故と事故隠し,そこから明らかになったBWRの欠陥に正面から逃げずに向き合わなければならない。欠陥原子炉BWRは直ちに停止すべきである。

BWR原発を案じる全国の市民(29団体)

宮城県(女川)   原子力発電を考える石巻市民の会
            みやぎ脱原発・風の会
福島県        脱原発福島ネットワーク
(福島第一・第二) ストップ!プルトニウム・キャンペーン
新潟県(柏崎刈羽)柏崎原発反対地元三団体
            原発反対刈羽村を守る会
            プルサーマルを考える柏崎刈羽市民ネットワーク
            みどりと反プルサーマル新潟県連絡会
            脱原発をめざす新潟市民フォーラム
            原発のない住みよい巻町をつくる会
静岡県(浜岡)   浜岡原発を考える静岡ネットワーク
石川県(志賀)   能登原発差止め訴訟原告団
            命のネットワーク
            羽咋都市勤労協連合会
            志賀町勤労者協議会
            ふるさとを守る志賀町民の会
            原発震災を案じる石川県民
富山県(志賀)   北陸電力と共に脱原発をすすめる株主の会
            日本消費者連盟富山グループ
島根県(島根)   島根原発増設反対運動
首都圏        ふぇみん婦人民主クラブ
            日本消費者連盟
            東京電力と共に脱原発をめざす会
            グリーンピース・ジャパン
            ストップ・ザ・もんじゅ東京
            福島市民事故調査委員会
            原発を考える品川の女たち
            原子力資料情報室
            福島老朽原発を考える会

<連絡先>
〒164-0003 東京都中野区東中野1?58?15寿ビル3F
TEL03-5330-9520 FAX03-5330-9530
原子力資料情報室
〒162-0825 東京都新宿区神楽坂2-19銀鈴会館405号AIR気付
TEL03-5225-7213 FAX03-5225-7214
福島老朽原発を考える会/ストップ・ザ・もんじゅ東京

———————————————————–