原子力長計策定会議意見書(第7回)

長計策定会議第7回への意見書

2004年8月28日
原子力資料情報室 伴英幸

1)原子力発電に対する総合評価の必要性

 核燃料サイクル政策に対する総合評価が4つのシナリオを基に行なわれつつあります。吉岡委員が第6回委員会への意見書で記されているように(1.今後の議論の進め方)、「商業発電用原子炉建設/廃止問題」についても、いくつかのシナリオを立てて総合評価する必要があります。
 現行長計では原子力は基幹電源としての位置づけになっていますが、今回の美浜3号炉事故などが示す老朽化問題や電力自由化の進展などの状況の変化の中で、そのままの位置づけでは済まなくなってきていると考えます(参考1)。その意味からも、原子力発電についても総合評価を行なうべきだと考えます。

参考1)原発の設備容量の推移
【略】

 原発の運転期間を仮に40年間~60年間とした場合に、建設中の4基の原発を加えた57基の原発の設備容量の経年変化を図に示した。新規立地や増設の困難あるいはリードタイムの長期化、老朽化に伴う設備利用率の低下などを考えると、原発の発電への寄与は将来減少せざるを得ないのではないか。リプレースが話題になりましたが、果たしてどのように可能なのか、また、そのような事例が海外にあれば示してください。

2)核燃料サイクルシナリオの評価のあり方について

 4つの基本シナリオについての総合評価を行なうに際しては、各項目について評価議論を進めるためにも、項目ごとの評価議論に先立って、それぞれの評価軸に対してどのような評価を行なっていくかの議論が先に必要です。また、評価項目間では関連するものがあれば、評価の重み付けの議論も必要になると思います。次回会合では、総合評価のしかたについての議論をしてください。

3)会議の開催と資料公開について

 事務局の方々が配布資料の作成に日夜努力されていることに敬意を表します。しかし、他の委員からの指摘もありましたように、資料が直前に届く状況が続いています。これの状況をせめて1週間前に届くように改善してください。
 また、原子力委員会のホームページに掲載される策定会議の資料も遅れています。9月2日昼の時点で、7月29日の第4回会議資料までが公開されているに留まっています。会議配布資料は会議が始まれば公開可能ですから、即時公開に対応できるシステムを構築してください。これらは技術検討小委員会も同様です。
 資料作成や資料公開などの事務作業が遅れるのは、少ない人的資源で多くのことをする必要から来ているように受け止めますが、資料の早期配布やWEB公開は、人的資源*作業量に見合った会議の開催頻度にすることで解決できると考えます。

4)第6回資料について

4-1)核燃料サイクル諸量の分析について

 第6回策定会議資料第4号「基本シナリオの核燃料サイクル諸量の分析」では、2050年までと2150年までの期間について定量的に分析するとしています。2050年までの定量的分析というのも相当に無理がありますが、2150年というのは幕末に現在を分析するような時間幅であり、とうてい定量的分析に耐え得るとは思えません。
 その無理は、前提条件に顕著です。第6回策定会議で橋本委員ともども、廃炉とリプレースの現実性を見込んでいない原子力発電設備容量は仮想的なツールとしても余りに非現実的と指摘しましたが、そうした指摘をするまでもなく、そもそも「2030年まで58GWeまで伸び、その後は一定で推移」という仮定は、どう見ても奇妙です。この前提で2150年に発生した使用済み燃料の後始末を考えると、さらに先まで費用が延びていくことになり、とうていまともな評価はできません。
 「基本シナリオの核燃料サイクル諸量の分析」の4ページ「各基本シナリオの分析ケース」では、全量再処理の説明として「全ての使用済燃料を再処理する」とあり、他方、5ページの「プルサーマル継続」ケースの説明では「使用済MOX燃料については貯蔵する」と書かれています。これは矛盾しているので、使用済MOX燃料も全量再処理するシナリオとしなくては筋が通らないと思います。
 同上資料6ページのFBR移行シナリオについては、「ツール」としての有効性の範囲内でもちろん結構ですが、示されたグラフのように高増殖FBRと低増殖FBRが導入される根拠なり説明なりが、もう少し必要だと思います。なお、このシナリオのコスト評価をするには、データが決定的に不足しています。そのためにも、第6回会議で求めた行政監察局報告への誠実な対応がまず行なわれるべきです。
 使用済MOX燃料の貯蔵・再処理・ガラス固化体処分・直接処分について、使用済ウラン燃料のそれらとは違ったコスト評価が必要となります(参考のために、両者の使用済燃料の発熱量の違いを示します)。繰り返しになりますが、その試算を行うべきであることを再度強調しておきます。
 使用済み燃料中間貯蔵施設の必要箇所数として示された数は、現状の貯蔵容量とその増強計画、新設原発の貯蔵容量等を考慮すると、明らかに過大です。それでもオンサイトを含めて数箇所の貯蔵施設が必要であることは、その通りでしょう。他のさまざまな問題と合わせて、むしろ原発の運転継続の困難性を示しているのではないでしょうか。
 基本シナリオに加えて脱原発シナリオが必要であると、改めて痛感しています。

4-2)第6回策定会議資料第6号「循環型社会とリサイクル」は、「新計画策定会議における委員のご意見」として、核燃料サイクルを家電製品等のリサイクルと同列に見なすことには異議があります。それへの私の意見を再掲します。

・核燃料サイクルを一般のリサイクルと混同したご意見がありましたが、そもそも循環型社会の精神は、ゴミはまず発生抑制する、そうできないものは再利用、再生利用、熱回収し、最後に処分するというもので、再処理・核燃料サイクルは、循環型社会の精神に反するものではないでしょうか。プルトニウムだけに着目して「リサイクル」と混同した議論は、一般社会に誤ったイメージを流す歪曲した議論だと考えます。いうまでもなく、プルトニウムに関しては、一般のリサイクルの次元で議論すべきものではなく、核拡散を筆頭に放射能毒性などはるかに機微な問題として取り扱うべきものであると考えます。(第3回会議意見)

参考2)使用済みウラン燃料と使用済みMOX燃料の発熱量比較
【略】