原発耐震設計審査指針案意見募集に対する意見・意見案(2)

原発耐震設計審査指針案意見募集に対する意見・意見案(2)

※意見・意見案(1)
www.cnic.jp/modules/news/article.php?storyid=393

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

山崎久隆

 耐震クラス分類は止めるべきであり、全ての構造物を最も強度の強いクラスIとすべきである。

 旧耐震設計審査指針において「クラスA(As)クラスB、クラスC」という分類があり、クラスCに至っては一般の構造物と同等でよいとされていた。
原発のような「潜在的危険性の高い構造物」であってさえ「一般の構造物と同等」に過ぎない耐震強度の構造物を許していた上、さらに変更案でも同様に規定しているというのは、もはや理解の限界を超える。
 もちろん現在の指針案では一定の担保をしていると主張するであろうことは、指針案6の(1)で「上位の分類に属するものは、下位の分類に属するものの破損によって波及的破損が生じないこと。」と規定していることでも分かるが、具体的にいかなる場合がこういうケースに当たるのかは見当も付かない。
 原発のように個別に独立した構造物ではなく、放射能を内蔵するという意味においては全てが連動する装置類の集合体である構造物においては、個々に重要度分類を変えて(切り下げを許して)いくことに合理性を見いだすことは出来ない。
 従って、新しい指針では全構造物に一律の強度分類を与えるべきである。

 地震調査研究推進本部の採用している活断層評価の方法を採用し、多数断層帯の同時連動を考慮して評価すべきである。

 近年日本各地で起きた地震を見ると、単一の断層ではなく複数の断層が一体となって活動したものがいくつも見られる。
 単独断層だけを評価する方法では、敷地に影響を与える地震の姿を正確に捉えることは出来ないのである。
 兵庫県南部地震も、六甲断層帯と淡路島西岸断層帯が連動したものであるが、事前にそれを知っていたものはどれだけいただろうか。
 しかるに近年、文部科学省地震調査研究推進本部は地震調査委員会の活断層の評価を明らかにし、日本各地の危険度マップを公表している。
 特に3月に運転差止判決を受けた志賀原発2号機については、邑知潟断層帯の存在が大きな要因となったものであり、それは
www5d.biglobe.ne.jp/~kabataf/katudansou/isikawa.htm
にもはっきりと示されているとおり30年確率の最大値が0.1%以上-3%未満である中程度の危険度を示している。
 こういった最新の知見を取り入れることこそが原発のような危険な構造物の耐震設計指針に求められるのである。

 鉛直方向の地震力を曖昧にせず、1対1あるいは場合によっては水平地震力の1倍を超える値も適用すべきである。

 新指針案6の(2)では、「基準地震動Ssによる地震力は、基準地震動Ssを用いて、水平方向及び鉛直方向について適切に組み合わせたものとして算定されなければならない。」とされているが、何を持って適切とするのかが曖昧で、以前の指針よりも後退したとさえ見えるのである。
 実際の記録を見れば、新潟県中越地震(2004.10)や宮城県北部の地震(2003.7)で水平地震力より鉛直地震力が大きいというものがある。これもまた最新の知見に学ぶべきである。

 全ての耐震設計に於いて「弾性設計の範囲に収める」ことを求めるべきである。

 およそ構造物や構築物の安全性を担保するためには、予想される応力に対して「弾性範囲に収める」のが当然のことである。
 塑性変形を起こしても破断に至らなければ内蔵された放射性物質を放出することはないというのは、一種の屁理屈であり、実際には起きてみなければ真実など分からない。
 もんじゅの配管構造が如何に強固なものであったとしても温度計の鞘管が折れてしまえばナトリウムは噴出するのであるが、起きるまでは誰もそんなことになると予想もしていなかった。
 このような予測不可能と言える事態を起こしたとしても、内蔵される放射性物質を放出してはならないのであるから、不測の事態に備えるという意味でも、弾性設計用地震動Sdだけでなく基準地震動Ssであっても弾性範囲に収める設計を求めるべきである。

「震源を特定せず策定する地震動」では少なくてもM7.3を想定すべきである

 すでに「M6.5の地震より大きな地震は未然に発見しているはず」という想定は成り立たなくなった。従って旧指針の「直下10キロ以内でのM6.5」は消えたのだが、規模は明記されなかった。これでは後退ではないのかと危惧する。
 現実に起きている例を見れば、鳥取県西部地震のM7.3があるのだから、少なくてもこの規模の地震を想定すべきであるし、また、明記すべきである。

 残余のリスクとは何を示すのか個別に明記すべきである。

 突如として今回の指針に現れた「残余のリスク」とは、平たく言えば「耐震設計指針において手当てしてもなお残る、想定外の地震発生や予期せぬトラブルが重なっての公衆の放射線被曝のリスク」ということである。
 要するに指針を策定してもなお、その想定が突破されてしまうことがあり得るという、制定側の「責任逃れ」といっても過言ではないだろう。
 このような「残余のリスク」などと言い出すのであれば、全原発について「残余のリスク」を計算し、少なくても立地道県民に示す義務があると考える。
その後、なおそれを受け入れるかどうか、住民投票なりで意志を問うほどの責任があるものと考える。そうでなければ、「残余のリスク」などと軽々しく言うべきではない。
 さらに「残余のリスク」というのならば、現在多発している制御棒の破損や配管のひび割れなどはまさしく想定不可能なリスクの要因となるのであり、少なくてもこういった事故が起きた原発は「残余のリスク」がいたずらに増大する結果となる。従って、このような原発の運転は認めないことを明記すべきである。

原発の設置されている地盤の崩壊や変位を考慮すべきである

 巨大地震でなくても、地盤の変位は珍しくない。また、大きな変位ともなれば、ゆっくりした動きであったとしても上部に載っている構造物には致命的な損傷を与えるであろう。
 少なくても原発を立地する際には、地盤の変位などは起こらないところを選ばなければならないが、実態としては傾斜地のすぐそばであったり地下の岩盤が安定的でなく人工岩盤であったり、軟弱な岩盤であるなどということが見受けられる。
 設置されている岩盤が崩落や変位を起こすことも考慮し、そのようなことがないことを指針に於いて具体的に指摘すべきである。

津波の影響を考慮すべきである

 2004年のスマトラ島沖津波災害や、1983年の日本海中部地震、1993年の北海道東方沖地震など津波災害の恐ろしさを目の当たりにしてきたのだが、耐震設計審査指針にはこのことが触れられていない。
 津波は原子炉建屋を崩壊させなくても、大量の海水により電気系統、特に非常用電源装置を全部破壊するなど、極めて深刻な事態を引き起こす大きな要因になる。
 そのうえ、巨大地震が襲った直後に津波に襲われるなどとなれば、極めて危険な事態を招くことは明らかである。
 津波に対してとりわけ脆弱と見られるのが冷却用の海水を取水する設備であるが、浜岡原発以外では特段の対策を取っているということもない。
 浜岡であっても、海底取水用のプールを設置しているというだけで、津波が引き起こす海底土石流により埋まってしまうのではないかと懸念される。
 つまり、巨大地震と津波の来襲はセットであり、この両者の競合にも耐える対策が必ず必要なのであるが、そういった考慮は何もなされていない。

多重事故にも備えることを明記すべきである

 地震による不測の事態とは、予測不可能な破壊が同時多発的に発生することである。
 通常の安全審査のような、単一故障基準の事故だけでは収まらない。むしろ多重性を持たせた安全保護系設備が全て使えなくなる事態も想定すべきである。
 例えば、「反応度の異常な投入又は原子炉出力の急激な変化」に「原子炉冷却材の喪失又は炉心冷却状態の著しい変化」が加わりさらに「ATWS、Anticipated Trangent Without Scram スクラム失敗事象」が重なるといった状況に置かれてなお、放射性物質の放出を阻止し得る設備とすべきなのである。
 それが実現できないのであれば当然ながら原発を運転してはならないのであ
る。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(意見)
全般的に設計の思想、概念、哲学を規定した内容であって、それ自体は非常に重要なことである。しかし、それを基本に具体的な数値が規定されていないことに、「あいまいさ」を感じる。許可申請者の裁量により、安全性が左右されやすい指針内容である。具体的な数値規定を取り入れた内容にすべきである

(理由)
原子力発電所の設置場所の地質、地質構造、地震活動等それぞれ条件が異なるから、一義的に数値を定めるのは無理があるように考えられがちである。しかし例えばNIED(独立行政法人防災科学技術研究所)が発表している地震ハザードステーションに基づいた最低限の数値目標Ssを定めることも可能である。このような具体的なことを規定しないと「残余のリスク」の程度が非常に不確かなものになる。

(意見)
この指針(案)は新規の原子力発電所(軽水炉)の許可申請だけに適用されるのか?あるいは既存のものにも適用されるのか不明である。新しい知見に基づいた改定であり、安全にかかわるということであれば、当然既存の原発にも適用されると適用範囲に規定すべきである。

(理由)
既存の古い原発は、古いからといって安全性が低くてよいというわけには行かない。定期的な見直し時期に新しい指針に基づいたチェックが必要である。当然新指針の方がより安全に対して厳しいであろうから、既存の原発では新指針に合格せず、停止すべき原発が何機かは出てきて当たり前と考えられる。いや、新指針は旧指針と設計思想が異なるので、厳しくなったとか、ゆるくなったとかの改定でないといわれるかもしれないが、それなら、やはり設計思想が異なる新指針では相容れない原発が何機かは出てきて、止めざるを得ないでしょう。安全を基盤にする設計指針であるのだから既存原発を含めた適用、見直しは進めるべきでしょう。

(意見)
「残余のリスク」という考えを導入したことは、工学的に言えば当たり前のことで、今まで絶対安全といってきたこと自体が偽善的であった。ただ、残余のリスクの見極め方とそのレベルを明確にすべきである。また、この新しく導入する「残余のリスク」の考え方は「絶対安全」の思想から、まったく異なり、国の原子力政策に基本的に影響する内容であり、国会の審議事項にすべきである。

(理由)
残余のリスクを認めたうえで、「実行可能な限りそれをなくすための努力」というのでは、余りにも精神的な規定であって、これでは原発の寿命期間、数十年間に数%、10%などというようなリスクがあるような原発も許可されることになりかねない。これでは、発電所の作業員や周辺住民だけに限らず事故がおきれば数十キロから数百キロの風下地域の住民さえ、命の危険にさらされて生活することになります。余りにも人命を軽視した内容ではないでしょうか。したがって、もっと具体的に残余のリスクの見極め方を規定し、また、残余のリスクを数値化し、許容レベルを明確化しないといけない。
 これまで、電力会社や原発立地自治体は、繰り返し原発の絶対安全を住民に説明してきました。絶対安全だと説明されて周辺住民は原発を受け入れてきたのです。この「残余のリスクについて」の項目は、それを真っ向から否定するものです。「残余のリスク」の導入はいわば当たり前ですが、絶対安全という哲学、思想からはまったく異なることから、言い換えれば、リスクを承知の上で原子力政策を進めるということから、国の原子力政策に影響を及ぼす内容であり、ぜひ国会での議論にのせ国民の審判を仰ぐべき内容と判断します。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

5、基準地震動の策定
(2)?の?)の(充分な活断層調査を行う事)と?の(諸特性)に関しては、学派、派閥などや小さな自我の欲求などの妄想幻想に依らずに必ず、客観的な徹底した調査を、現実的な事実に基づいて、真摯な態度で行われなければならない。
その為に、更なる検査機構を併設すべきだある。

<理由>
何となれば、施設の破損がいかなる理由によっても生じた場合には、我が日本をはじめ全ての外国の全生命に与える被害に関して、何人も責任の取れるものでは無いからである。原子力発電がそれだけ致命的なダメージを人類に与える可能性を持っていることを、決して忘れてはならない。からである。

6耐震設計

(解説)?耐震性設計方針について
2)弾性設計用地震動Sdの設定について
の中の(なおここでいう許容限界とは必ずしも厳密な弾性限界ではなく、局部的に弾性限界を超える場合を容認しつつも施設全体として概ね、弾性範囲に留まりえることで充分である)とあるが、これには反対である。原子力発電施設においては、たった一箇所の局部が損傷しただけで、関連施設に大きな被害を与えかねないことに着目し、さらに大きく安全性へと歩み寄らねばならない。
このSdに関する基準は全ての小さな局部のチェックを含むものでなければ現実に安全を保つ事はできないと認識すべきである。

P15の解説?の荷重の組み合わせと許容限界について
2)のSdなどとの許容限界については、具体的には建築基準法がこれに相当する)とあるが、これは一般の建築基準法ではなく、特に基準が高く厳しいラインを設けるのは専門部会の責任である。
<理由>放射性物質の与える致命的なダメージを鑑み、平素以上の強度・信頼基準を高めることは、欠くことのできない必然の行為である。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

耐震指針案についての意見・残余のリスクについて

〈意見〉指針案8「地震随伴事象に対する考慮」の項に、「地震のとき、地殻変動により地盤が変形しても、原発
内から放射性物質の漏れが一切ないこと」という規定を追加してください。

〈理由〉

 伊方原発訴訟における平成4年最高裁判決において、原子炉等規制法が、「原子炉災害が万が一にも起こらな
いよう審査することを求めている」とされました。この判決にに従うべきだというのは一つ。
 それから、チェルノブイリのような大事故が起こったら、日本は壊滅します。原発の建っているところがたとえ地震で隆起したり陥没したりということがあっても、絶対に放射能漏れが一切ないようにすべきです。技術的に不可能なら、残余のリスクをゼロにできないなら、日本での原発の稼動はやめるべきです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

水野彰子(弁護士)

意見の対象となる案件
1.「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針(案)」

意 見
 指針案「2.適用範囲」のうち、「なお」以下の記述を削除すべきである。

理 由
 指針案「2.適用範囲」には、「なお、許可申請の内容の一部が本指針に適合しない場合であっても、それが技術的な改良、進歩等を反映したものであって、本指針を満足した場合と同様またはそれを上回る耐震安全性が確保しうると判断される場合は、これを排除するものではない。」との記載がある。
 しかしながら、指針は、耐震安全性が確保されているか否かを明確に判断するために定められる基準であり、「指針に適合しない場合」をも「耐震安全性有り」と救済するような適用例外規定を認めることは背理である。
 しかも、「それが技術的な改良、進歩等を反映したものであって、本指針を満足した場合と同様またはそれを上回る耐震安全性が確保しうると判断される場合」などという上記記述は、極めて曖昧であり、誰が、どのような基準や方法で、耐震安全性を判断するのか明らかでない。
 経済産業省は、新指針策定後、既存原発についても、新指針に則った耐震安全性のバックチェックを行うことを公表しているが、上記のような適用例外が、新指針に適合しない既存原発を安易に救済する根拠として使用されるおそれがある。

意 見
 指針「5.基準地震動の策定」の「(2)」の「② 敷地周辺の活断層の性質」に関する考慮について、活動の連動性、一括活動性等を考慮すべきことを明記すべきである。

理 由
 一連の断層帯において、各単位セグメントが複数連動し、または、一括して活動することによって、大規模な地震動となることが指摘されている。
 原子力施設の耐震安全性確保するためには、安全側に保守的な想定が必要であり、敷地周辺の活断層の性質を検討するにあたっても、断層帯としての、活動の連動性、一括活動性を考慮すべきことを明記すべきである。

意 見
 指針「5.基準地震動の策定」の「(3)」の「震源を特定せず策定する地震動」について、「震源を特定できない場所でM7.3を超える内陸地殻内地震が発生することがあり得る」ことを示し、M7.3の地震動を想定すべきことを明記すべきである。

理 由
 指針「5.」の解説⑤には、「『震源を特定せず策定する地震動』の策定方針については、敷地周辺の状況等を十分考慮した詳細な調査を実施しても、なお敷地近傍において発生する可能性のある内陸地殻地震のすべてを事前に評価しうるとは言い切れないことから、敷地近傍における詳細な調査の結果にかかわらず、すべての申請において、共通的に考慮すべき地震動であると意味づけたものである。」と記載されている。
 このような趣旨に照らせば、中央防災会議の専門調査部会においては、「内陸部で発生する被害地震のうち、M7.3以下の地震は、活断層が地表に見られていない潜在的な断層によるもの少なくないことから、どこでもこのような規模の被害地震が発生する可能性がある。」旨指摘されているのであるから、「すべての申請において共通的に考慮すべき地震動」たるべき「震源を特定せず策定する地震動」としては、M7.3を想定すべきである。

意 見
 指針「5.基準地震動の策定」の「(2)」の「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」と「(3)」の「震源を特定せず策定する地震動」の関係について、「震源を特定できない場所でM7.3を超える内陸地殻内地震が発生することがあり得る」ことを示し、「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」についてもM7.3の地震動による想定を下回ることにならないよう、明記すべきである。

理 由
 指針「5.」の解説⑤には、「『震源を特定せず策定する地震動』の策定方針については、敷地周辺の状況等を十分考慮した詳細な調査を実施しても、なお敷地近傍において発生する可能性のある内陸地殻地震のすべてを事前に評価しうるとは言い切れないことから、敷地近傍における詳細な調査の結果にかかわらず、すべての申請において、共通的に考慮すべき地震動であると意味づけたものである。」と記載されている。
 ところで、敷地近傍で活断層が発見された場合においても、事業者が、当該活断層の距離や性質等について調査を十分に尽くさなかったり、当該活断層によってもたらされる地震動を過小に評価したりするおそれがある。このことは、島根原子力発電所近傍の鹿島断層(宍道断層)において、最近、改めてトレンチ調査によって活断層が確認され、その距離や活動時期、活動の性質、ひいては、同活断層によってもたらされる地震動について、事業者が過小評価していたことが明らかになった事実からしても明らかである。
このような事態が懸念される以上、上記解説⑤に記載された指針の趣旨(調査や評価の不十分性を補足する趣旨)に鑑みれば、「すべての申請において共通的に考慮すべき地震動」たるべき「震源を特定せず策定する地震動」としてM7.3を設定した上、敷地近傍で活断層が認識された場合においても、当該活断層から想定される地震動は、この地震動を下回ることのないよう明記すべきである。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

提出済み意見

東井怜

意見1
「8.地震随伴事象に対する考慮」の項に、次の規定も追加してください。
『地震時に発生する可能性のある次の諸事象が、発電所の重大な事故の誘因とならないこと、および事故の拡大を招かないことを確認する。また、その安全性を評価する場合には、その事象の発生の可能性を考慮すること。
i)発電所に繋がる送電線および、関連する送電網の状態
ⅱ)冷却水(補助的工業用水を含む)の供給の安定性
iii)非常用ディーゼルの燃料供給の安定性
iv)周辺の道路状況』

理由
「耐震指針検討分科会報告書」の18ページに、
『旧指針においては、地震随伴事象について特化した規定は存在していなかったが、今次改訂においては、原子力施設の周辺斜面の地震時における崩壊等への考慮、津波に対する考慮、地盤変動等についての考慮の取込みの要否等に関する幅広い調査審議が行われた。これに関連して、まず、周辺斜面の崩壊等及び津波への考慮についての議論がなされ、引き続き、以下のような具体的な案が追加的に出された。』
としてその上記i)ⅱ)が示されています。iii)以降の代わりに燃料供給の安定性と道路事情を加えて、指針本文に明記することを提案します。なお、事故の誘因とならないだけではなく、事故の拡大を防止することの確認も必要であるので、下線部を追加します。
地震随伴事象について議論された第41回速記録によれば、たとえば「発電所に繋がる送電線および、関連する送電網の状態」について、
『まず短期間であれば、もともと非常用発電機のようなものが用意されておりますし、それからもし長期間復旧できそうもないというようなときでも非常用発電機の燃料補充をするとかいうことも考えられます・・・(中略)要するに、災害対策という領域でも対応されるべきである』(事務局)
とあり、安全審査指針類でカバーされているという意見でした。非常用発電機はもともと短期間の対策でしかないといわれているのですが、では長期間に亘る際にはというと、「非常用発電機の燃料補充をする」と簡単に片付けられます。しかし例えば中越地震のですら、がけ崩れや地割れで道路は寸断、平坦地でも柏崎原発の周辺道路はほとんど使い物にならなくなりました。下水管が埋設されていてマンホールが浮き上がったのです。
まして証言『異様な音と共にアスファルトの道路がパクッと割れ、幅一米弱の亀裂が生じた。(中略)地面は未だ大揺れ、その時亀裂した道路が又、異様な音と共に閉じた。開いたり閉じたりする様は人の力ではない。(中略)見れば、その亀裂の中に半身が落ち込みそうになっていた』(静岡新聞03.4.7)にあるように44年東南海地震ほどの巨大地震の場合を想定すれば、指針に明記し、サイト周辺への対策をも求めるのは当然でしょう。
『念には念を入れて、大前提なら大前提ということで書くべきであろうと。書いてなぜ悪いのかというのが僕にはよく分からない。』(芝田委員)に同感です。

意見2

「8.地震随伴事象に対する考慮」の項に、次の規定も追加してください。
『 施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性があると想定することが適切な地震時地殻変動(特に地震に伴う隆起・沈降)に起因する地盤の変形によっても、施設の安全機能が損なわれないこと。』

理由
「耐震指針検討分科会報告書」の18ページに、
『旧指針においては、地震随伴事象について特化した規定は存在していなかったが、今次改訂においては、原子力施設の周辺斜面の地震時における崩壊等への考慮、津波に対する考慮、地盤変動等についての考慮の取込みの要否等に関する幅広い調査審議が行われた。これに関連して、まず、周辺斜面の崩壊等及び津波への考慮についての議論がなされ、引き続き、以下のような具体的な案が追加的に出された。』
としてその①に上記地盤の変形が示されています。

当該の議論があった第41回指針検討分科会に提出された、『震分第41-2号 地震随伴事象に「地震時地殻変動に起因する地盤の変形」を入れることについて(石橋委員資料)』およびその提案についての議論(第41回速記録)を参照の上、ぜひとも指針本文に入れていただきたいと思いました。
速記録にもありますが、実際にサイト内で、また建屋の下で、地震動により不均一な変形が生じれば、耐震設計がいかに優れていたとしても無駄でしょう。たいへんなことになります。(この点に異論を唱える委員はおられないと思います。)きわめて稀なケースかもしれませんが、この議論の中で言われているように、現在の知見である程度予測可能なのであれば、指針向上の目的に照らしてぜひとも新指針に反映させていただきたい。理由は入倉委員、石橋委員の主張できわめて明快だと思います。入倉委員は、『地盤の変形が起こるかどうかというのは、地震断層モデルを設定したら当然計算すべきものだろう』と発言されていますから、当然計算可能なのでしょう。さらに、『(8.地震随伴事象の)(3)として書いて問題になることは何もないと思うのです。皆さんがおっしゃるように、小さいなら小さいという結論が出ますし、小さくない場合も私はもしかしたらあるかもしれない。地震動というのは堆積層の中では出さないとしているのですけれども、変形は生じるのです。そうすると、その変形がそこのサイト次第でやはり起こる可能性というのはきちっと調べておいた方が、私はいいと思います。』と言われています。

意見3

従来主張されてきた「『活断層』を避ける」に代わって「『震源断層』の直上・直近を避ける」ことを明記すること。
理由

報告書9ページ「③ 改訂指針の基本方針 ⅴ)その他」に『基本方針の冒頭に「原子炉施設は、直下に過去または将来の浅い大地震の震源域が存在すると高い確度で判断される場合、その場所への設置を避けなければならない。」と規定すべきではないか』という意見が出された、とあります。これは当然です。(ただし”浅い”は削除する)
これまで国や電力では「活断層を避けて建設する」と強調・宣伝していましたが、今後この点はどうなるのでしょうか。活断層を避けるのみでは不充分で、最近の知見によれば、「震源断層」の存在が疑わしい地点への立地を避けるべきです。
現行指針にしても、新指針案にしても、アプリオリに建設許可を前提として作成されています。もちろん、上位指針として『立地審査指針』があり、その中で原則的立地条件として『(1)大きな事故の誘因となるような事象が過去においてなかったことはもちろんであるが、将来においてもあるとは考えられないこと。また、災害を拡大するような事象も少ないこと。』と明記されており、ここで大地震を想定していることは明白なのですから、立地審査においてそうしたサイトは排除されていなければならないのです。しかし「立地審査の指針」として具体的に明記されたのは居住人口についての三条件だけであり、現実に耐震設計審査以前に、立地の自然条件たる地震発生の可能性が審査されたことはありません。すなわち、地震に関係なく万一の事故に際して多少の放射能放出(めやすとして規定されている被ばく線量)は避けられないが、その影響をできるだけ小さくとどめるという目的で、人口規制を敷いたに過ぎないのです。
このことは、立地指針として不備・瑕疵があるということであり、原則的立地条件(1)を満たすために必要な自然条件についても「立地審査の指針」を規定するべきであったのです。そのような不備があるために、また地震空白域に対する過去の誤った認識により、浜岡、伊方、女川をはじめとして過去に大地震の想定される地域に多数の原発が建設されてしまいました。
この不備・瑕疵を補填するものとして、今回の指針改定にあたり是非とも上記規定を明記しなければならないと考えます。

意見4
原子炉立地審査指針を改訂し、原則的立地条件の(1)を満足するよう、立地審査の指針として地震発生を考慮した自然条件を加えること

理由

原子炉立地審査指針には、立地条件の適否を判断するための基本的考え方として、以下の条件が明記されています。
『1.1 原則的立地条件
(1) [u]大きな事故の誘因となるような事象が過去においてなかったことはもちろんであるが、将来においてもあるとは考えられないこと。また、災害を拡大するような事象も少ないこと[u]』
しかしながらその具体的要求としての立地審査の指針として明記されているのは、居住人口についての三条件だけであり、現実に立地審査の際に自然条件たる地震発生の危険性が審査されることはこれまでありませんでした。すなわち、万一の事故に際して多少の放射能放出(めやすとして規定されている被ばく線量)は避けられないが、その影響をできるだけ小さく留めるため、人口規制を敷いてあるに過ぎないのです。
いっぽう、今回の耐震指針改訂に際しても、当該サイトの地震動評価とそれに対する耐震設計を審査することが考慮されているのみであり、その立地地域の自然条件の適否判断は抜け落ちています。大震災が生起した状況においては、当該事業所がその周辺地域の被災状況から無縁であるということはあり得ません。
このことは、立地指針として不備・瑕疵があるということであり、原則的立地条件の筆頭に掲げられている自然条件についても「立地審査の指針」に規定するべきであったのです。そのような不備があるために、また地震空白域に対する過去の誤った認識により、浜岡、伊方、女川をはじめとして、過去に大地震の想定される不適切な地域に、多数の原発が立地され、増設を繰り返す結果となってしまったのです。
筆者はこの不備・瑕疵を補填するものとして、今回の指針改定にあたり新耐震設計審査指針に除外規定を設けることを提案しました(下記意見参照)。しかし、設置許可申請を行う事業者および審査する側の負担や無駄を避けるためには、この立地指針の方を修正するのが本筋であると考えます。
いずれにしろ、上に引用した原則的立地条件(1)を担保するために、耐震設計審査指針案もしくは立地審査指針のいずれかを上記趣旨に沿って修正していただきたい。

意見5

上下方向の地震動に対する耐震性が不備・不充分です。再検討し強化してください。

理由

指針案では、鉛直地震動について、きわめてあっさりとしか問題にされていません。
現行指針では(水平地震力は、)基準地震動の最大加速度振幅の1/2の値を鉛直震度として求めた鉛直地震力云々」として、上下動は水平動の半分でよいとされていますが、近年の膨大な観測結果により、震源域など震央に近づくにつれて上下動が大きくなる事実が観測され、現行指針の考え方が大きな間違いであることははっきりしてきました。上下動の最大値の方が大きい場合すら観測されています。まずこうした事実を解説なり報告書に明記していただきたい。
その上で、鉛直地震動の作成に当たっての手法なり指針なりを示す必要があると考えます。動的解析について、上下動についても要求することは分科会の中で当然とされていたと思うのですが、どうも本文には明記されているように読めません。
兵庫県南部地震のように直下型地震に襲われた場合には、延性的挙動を伴わない衝撃破壊が現れ(芦屋浜)、あるいは鉄筋コンクリート柱に衝撃座屈の例が見られたりしています。非常に大きな衝撃力を受けた場合を、米国生まれの原子力発電所の設計は考慮していません。たとえば、燃料集合体や、格納容器上の分厚いコンクリート製蓋は、上部は何ら固定されておらずフリーです。こうした機器等が飛び石のように跳んだり少しでもずれたりするだけでも、影響は甚大です。圧力容器スカートの衝撃座屈は問題ないでしょうか。こうした指摘は、解析によってすら確認されていません。
上下動は、素人が原発の耐震性についてもっとも不安を感じる理由のひとつです。
震源域に原発を建設してしまったことはすでに判明しています。こうしたケースや後に活構造が明らかになって万一震源が原発直下に位置することが判明した場合に、安全性を確認できるだけの指針を求めます。

意見6
基準地震動応答スペクトルの作成に当たっては、これまで採用してきた「震央周辺で一定とする誤った経験式」の見直しをし、かつ新指針に明記するべきです。

理由
現行耐震設計で活用されている大崎の方法においては、『実測結果に基づいた経験式は、地震のマグニチュードに応じた震源域の外ではその適用性も実証されているが、一般に震源域内では大き目の値を与えることもあり、』との理由により、ある範囲内では地震動を一定と仮定しています。これが間違いであることは、近年の膨大な観測結果によって明らかです。震央に近づくにつれて、上下動、水平動ともに増大しています。
このような明らかな間違いを明記せずに『高度化』といった表現で指針の改訂を行うことは、さらなる誤謬・偽装を招くだけです。
学問的に判明した事実は、率直に間違いと表明し、明瞭に修正してもらいたいものです。

意見7
報告書18ページ、地震随伴事象の⑤
『地震による損傷は、共通事象、同時多発的である。従って、単一事象としては、対策がとられていても、必要に応じ、同時多発の可能性のあることを認識して、その対策を考えなければならない。』
は、耐震設計審査指針として必要かつ不可欠と考えます。必ず本文に明記すべきです。

理由
あまりにも当然過ぎるので明記する必要がない、ということになったようですが、他の安全指針にはない地震特有の課題であるので、ともすれば忘れられがちです。備忘録的にも明記すべきです。

意見8
報告書18ページ、地震随伴事象の②
『検討用地震に随伴すると想定することが適切な余震の地震動によっても、施設の安全機能が損なわれないこと。』
は、耐震設計審査指針として必要かつ不可欠と考えます。必ず本文に明記すべきです。

理由
原子力発電所に直接影響を及ぼすことが予想されるような地震においては、余震について、その規模、頻度、継続時間など、慎重に考えるべきです。
過去の記録に『一日中揺れが止まることがなかった』とあります。
そうなれば、例えその揺れがさほど大きくなくても、また原子炉内では期待されているように微小な振動になるとしても、継続的に振動するということから疲労破壊を招いたり、共振して増幅することも考えられます。
近代的な人工工作物は、大地震についてほとんど未経験であり、何が起こるかわからない、という地震学者の言葉を真摯に受け止めるべきと思います。

意見9
(審査官の)恣意的な運用を許さないよう、明瞭な表現にすること。
審査の公平性、透明性を担保できるような指針にすること。

理由
公表された指針案は、あまりにも抽象的であいまいです。
たとえば『適切に』という表現が乱発されています。せめて「適切な手法(方法)」は「最良の手法(方法)」に、「適切に考慮(評価)」は「安全側に考慮(評価)」もしくは「保守的に考慮(評価)」等としていただきたい。
また従来の直下地震に変わって想定する「震源を特定せず想定する地震動」については、分りやすく「未知の断層」とでもしていただきたい。
このほど中国電力が活断層はないと否定してきた地域で明瞭な活断層を発見した広島工大教授は、中国電力がこのような間違いを犯したことについて、『専門家の能力が欠如もしくは不足』していたか、あるいは『専門家の倫理観が欠如』していたかどちらであろう、と述べられています。このように活断層を、活動度や活動時期を持ち出してできるだけ短く認定することは、原子力発電所の認可申請にあたって日常的に行われてきました。
こうして原子力発電所建設の度に、地元住民や専門家と電力会社の間に、探査結果を巡って意見の相違が起こり、あるいはサンプルの偽造・偽装、データ改ざんなどの告発がなされてきました。
分科会の傍聴を通して筆者が強く感じたことは、こうした現実から非常にかけ離れたところで、設置許可申請者および審査官への信頼を前提に指針の検討が行われている姿でした。現実を知ってほしいと強く思いました。
いかにして審査の公平性、透明性を確保するのか。それは、指針の策定とは別次元の問題です。しかし、どのような審査指針であるかによって、その運用に影響してくることも間違いありません。
あいまいな表現を極力避けて、明瞭な表現にすること、わかりやすい表現にすることも、分科会に残された課題だと思います。長期にわたる検討、真にご苦労さまでしたが、寄せられた多数のパブリックコメントに真摯に対応し意見を反映するとともに、どうか最後まで丁寧に仕上げていただくよう、お願いいたします。

意見10
既設炉の再評価について

安全委員会の対象ではないことを承知で、意見を書きます。これは原子力安全・保安院の対象となっていますが、意見を述べる機会がとくに設けられていないことから、申し上げます。
既設炉への適用については、早速保安院が動き出し、耐震安全審査室を4月に設置、専門家による耐震・構造設計小委員会で審査基準の設定と審査(評価)を行うと発表し、すでに取り組みを始めました。東電など電力会社も、より詳細な調査が要求される新指針にもとづき、再評価に備えるための地質調査を実施すると発表しました。ただし、常に新しい知見を反映していること、十分な余裕をもって設計していることなどを理由に、新指針に照らしても最終評価は変わるまいなどと先走った発言をしています。
指針案は、およそ抽象的な文言が並んでいます。言い換えれば、運用次第ということです。
具体的な数字を決めるところは社団法人「日本電気協会」とされており、すでに検討会と併行して民間規格を策定中とか。しかも指針検討会委員19人のうち、11人がこの業界団体の専門部会委員などを兼任しているとのことです。(「毎日」4.20)何のことはない、審査を受ける側が審査基準を作成しているというわけです。
『適切に』ということが、業界団体の都合の良いように、ということでは困ります。運用次第ということは、審査の中立性・公平性そして透明性が肝心・要だということです。海外の専門家や原発に批判的な専門家を委員に起用するなど、まず保安院の審査において、審査委員の中立性が大幅に改善されることを求めます。
同様のことは、安全委員会の審査についても申し添えます。

意見11
残余のリスクについて

日本の原発では絶対に住民が被曝するようなリスクはない(ゼロ)といってきた「国」が、『大地震の際には』ゼロとは言えないことを今後認める、という大転換をしたわけですが、事実に従って是正するのは当然ですから、その点は評価してもいいと思います。
しかし地元の住民からすれば、これまで「絶対に被曝するような事故は起こさない」と保証されて原発を受け入れてきたのに、いくら事実だからといって、「残余のリスクあり」といわれて今更被曝のリスクを受け入れられるでしょうか。180度の転換なのです。国が認めたからといって、自動的に住民が認めたといえるものではありません。
少なくとも地元自治体の同意のもとに原発は建設されてきたのですから、改めて地元同意を求める必要があるでしょう。「残余のリスク」を認めるか否か、住民が決める作業が不可欠だと思います。
またその判断基準として、一定のリスク試算を行い、公表すべきでしょう。
先に安全目標や性能目標を国が定めるようなことがあってはならないと考えます。
各地で公開討論会を実施していただきたい。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

上澤千尋(原子力資料情報室)

「3.基本方針」の項の上から4行目の「地震動による地震力に対して」のあとに「もれなく」を挿入する.同「(解説)」において,「もれなく」の意味として,当時期において現存する地震学等の知見をすべて反映させることはもちろんのこと,新しい知見が提起されるたびごとに,(必要に応じて)原子炉設置許可の執行を停止し,事業者から再申請があれば安全審査をその一からやりなおす,の意であることを説明する.上の新しい知見とは,安全審査の想定のいずれかを超える事態が露見した場合も含まれる.また,Ssの想定のいずれかが超えられるような事態が露見したときには,ただちに該当する原子炉の設置許可を取り消すことにする.

日夜進歩する地震学等の知見に対して,その知見の反映を単なる努力目標とするのではなく,実行可能なプログラムとして指針に組み込むため.

「3.基本方針」の項の上から9行目の「建物・構築物は、」のあとを「堅牢かつ剛な構造とし、節理等のない良好な岩盤に直接設置されなければならな
い。」と差し替える.

使用済み燃料の貯蔵のための建物など,工学的安全機能はなく建物だけで放射性物質の外部放出を防ぐ構造の施設もこの指針の対象となるから.岩盤の良好性の1つとして,弾性波速度0.7km/s以上であることをチェックすること.

「・.荷重の組合せと許容限界」について,LOCAなどのfaulted conditionとSsの組み合わせやtest conditionとSsの組み合わせも考慮するような規定にする.

基準地震動の作成にあたっては,位相パターンによるばらつきを十分考慮して,荷重の条件が厳しくなるように複数のケースを考察すること.

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

新耐震設計指針案への意見/理由

山口幸夫(原子力資料情報室共同代表)

(1)「旧指針」の「基本方針」における規定が耐震設計に求めていたものと、新指針案の
それとが「同等の考え方である」とは到底言えない。
(理由)
旧指針では、どんなに大きな地震がやってきても原発は大丈夫、と言っている。
しかし新指針案では、「極めてまれではあるが施設に大きな影響を与えるおそれあると想定することが適切な地震動」を適切に策定し、「周辺の公衆に著しい放射線被曝のリスクを与えないように」が基本とすべきことだと言う。
これは非常に曖昧な表現である。何をもって「適切な」、「適切に」、と言うのか。どのような人が、どういう立場に立ち、なにを根拠に論ずるかで、意味するところが異なってくる。いいかえると、これは内容をぼかした表現で、場合によってはどうにもなることを認めているのである。
「周辺」とはどの範囲を言うのか、「著しい」とは数値で言うといくらなのかを明示しないかぎり、これまた、相当に幅のある表現である。
したがって、「同等な考え方である」とはならない。本文に言う「適切と考えられる設計用地震に十分耐えられるように設計されなければならない」が空疎な表現になる。いろいろ議論はあったが、そのときは適切と判断して設計した、しかし、それを超える地震力が襲って、たとえば、公衆に短期間で3ミリシーベルトの被曝を強いた、というようなこともあるということを否定していないのである。
政治的・経済的な判断なしに正直に言えば、現在の科学・技術のレベルでは、どんな地震に対しても大丈夫であるような原発をつくるのは無理なのです、このあたりで我慢して下さい、と言うべきだ。

(2)「策定された地震動を上回る地震動が生起する可能性にたいして適切な考慮を払い・・・それを合理的に実行可能な限り小さくするための努力が払われるべきである」というのは、「残余のリスク」を認めることの意味を曖昧にするものである。もっと正直に言うべきである。
(理由)
「適切な考慮」とは何か。「合理的に実行可能な限り小さくする」「(そのための)努力」を払うとは、どういうことか。こういう疑問はだれもが抱くだろう。正直に言えば、何が適切なのかが、誰にも判っていない。将来の何時か判ることになるのかどうかも判然としない。「合理的に実行可能」とは、あまり経費をかけないで、ということか。「努力を払った」かどうかは誰が判定するのか。そして、しかるべく努力はした、残念ながら、破局的な結果になってしまった。こういうことを認めたのが「残余のリスク」があるということである。
「残余のリスク」などという奇妙な表現はやめて、”どうしても破局的な危険は避けられない可能性がある”と述べるべきである。そのうえで、原発を作るかかどうか、判断を世論に求めるのが科学者、技術者たる委員諸氏のとるべき姿勢ではないか。

(3)「十分な支持性能をもつ地盤に設置」はおかしい。これでは、旧頼針より緩やかな条件になりうる。
(理由)
旧指針策定時以降、免震構造等についての設計技術の進歩が著しいというのが、今回の言い分の根拠である。技術の進歩があったことは認める。しかし、そのことは同時に、万一のさいの余裕を小さくしていることでもある。固体物理学が単結晶を相手とした場合のような精密科学の世界の言い方では、真実とみなされる姿をより正確に把握できるようになったということである。新指針案の構造物が向き合っているのは人知がコントロール出来ない自然現象の地震であり、精密科学とは違い、地震を解きあかす地震学は、この10年で長足の進歩をしたとはいえ、いまもって解らぬことに満ちている。「岩盤」に支持させなくとも十分な耐震安全性を確保することが可能である場合もあろうが、そうでない場合が無いと言うことは出来ない。未知のことが多すぎるからだ。「残余のリスク」を認めざるを得ない以上は、慎重の上にもさらに慎重に考えるべきである。「岩盤支持」の条件をはずしてはならない。

(4)基準地震動をSsに一本化することは、曖昧さを大きくする。ここでの議論は、極めて不十分である。「高度化を図った」の意味も不明である。
〈理由〉
従来のS2と比較したとき、どちらが大きいのか判然としない。S2より小さいこともあり得るように読める。「残余のリスク」を認めるからには、どこかで線引きすることになる。Ssに或る係数を掛けてSdを決める、という。これは工学的判断で設定するのだ、という。すなわち、工学的判断とは、“つくる”立場に立って、経費との兼ね合いで判断するということである。そこでは、科学的な判断では結論が出せなければ、“つくる”ことを控える、という選択が無い。したがって、またもや「残余のリスク」に頼るという論理構造である。
「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」を策定するとき、敷地に大きな影響を与え得る地震として、幾つかの活断層が相互作用して連動する可能性を考慮するのか、しないのか。そして、問う。活断層どうしの連動を論ずる議論は確立しているのか、いないのか。
応答スペクトルを評価する「適切な」手法は未だ確立していない。そしてまた、断層モデルにもとづく計算も、震源特性パラメータを一意的にきめることが出来ない現状では、「適切な手法」が何かが、やはり、明確ではない。
「十分な調査を実施し」、「特段の留意」をすると、すでに存在している原発でも、解体したほうがよい、ということになり得よう。そこまで、考えているのか、いないのか。こういうことを考えると、なにが「高度化」なのか。疑開だらけである。

(5) 耐震設計方針について、施設の老朽化が考慮されていない。
(理由)
弾性設計用地震動Sdを工学的判断でどのように決めるのか。その「具体的な設定値及び設定根拠について、個別申請ごとに、十分明らかにすることが必要」と言う。にもかかわらず、「Sd/Ssの値は0。5を下回らないような値で求められることが望ましい」と言う。そのように言う根拠はないのではないか。“経費節約立場から”というのならわかる。再循環系配管の減肉の進行状況は推持基準の下でも十全に把握することは出来ない。超音波探傷法の原理的限界と実際上の限界とがあるからである。また、中性子照射による原子炉圧力容器鋼材の劣化については、照射の総量より照射の速度の方がより支配的だという研究がなされている。反論は成立していない。
この老朽化、あるいは経年変化という問題を視野におさめてSdをどのようにして決めることが出来るのかである。明白な根拠を示すことは出来ないと思われる。推持基準では済まない問題なのだから、当初から、考えておかなければならないのである。その種の議論を検討委員会はしなかったのではないか。

(6)適用範囲について、既存の原発に適用されるのか、されないのかが曖昧である。
また、原発及び原子力関係施設にも「本指針の基本的な考え方は参考になるもの」、とあるが、「参考」では緩すぎる。“踏まえなければならない”と言うべきではないか。
(理由)
新しい指針はこれから作る原発に適用されるものであって、既存の原発には連用されない、従来通り、という解釈がある。それを認めてしまうと、大きな災厄を引き起こす恐れを避けられないだろう。ここはどうしても、“既存、新設を問わず、新指針が適用される”と書くべきである。
また、たとえば既設の六ヶ所再処理施設について、「参考になる」というレベルの開題ではあるまい。原発よりはるかに危ない状況にある。すくなくとも、新指針は踏まえなければならない。本来はもっと厳しい指針が必要なのである。

(7) 文章表現で、「適切に」、「適切な」が多すぎる。そして、「十分に」、「十分な」も使いすぎである。もっと明白な、曖昧さのない表現をすべきである。
(理由)
A4で16ページの文章中に、「適切に」、「適切な」という表現がざっと数えて25箇所もある。異常だと言わねばなるまい。
何をもって「適切」と言うかは、言う人がどういう考えの人で、どういう立場で、何を重要視して、どのくらいのタイムスパンで、予防原則をどう考えて、‥・といった中身を明らかにしないと、どうとでも解釈されるだろう。「見解」によると、いろいろ議論があったとあるが、そのことを示している。
要するに、本案が悉意的に連用されるだろうことを、語っているのだ。
「十分に」はめったには使えない表現ではないのか。「十分な調査」(p。8)と言えば、“あますところなく行なわれた調査”ということだろう。そんなことが出来るわけがないことは、指針の検討に参加した方々は誰もが知っている筈である。にもかかわらず、そう言う。本指針の信頼度にかかわる表現だと言わざるを得ない。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針(案)に対する意見

湯浅欽史

意見(1):剛構造規定は削除すべきでない

理由:95兵庫県南部-00鳥取県西部-04新潟県中越-05福岡県西方沖、そして昨年8.16宮城県沖と、これまで予測されてこなかった地域において、大地震が発生し、大きな災害をもたらしてきた。原子力発電所は、ひとたび破壊や損傷に見舞われるならば、計り知れない災害を広い範囲に世代をこえた長期間にわたってもたらす。国ならびに電力会社は耐震設計審査指針の強化を迫られ、”高度化”を掲げて改訂作業に着手した。「見解」にも「耐震安全性に対する信頼性を一層向上させるためのたゆまぬ努力の必要性」と記されている。改訂の基本姿勢は、25年間の科学的知見と技術的進展を指針強化のために取り入れることにあったはずで、それらを毫も指針緩和に利用してはならない。
剛構造規定を万一緩和しようとするのであるならば、少なくとも具体的な根拠が示されなければならない。しかし剛構造規定を緩和する理由は、「免震構造等に関する設計進歩は著しく、その具体的な適用が一般化しており、その有効性が認められるものとなっている」と、抽象的な表現にとどまっている。審議過程では、東海事業所の事例が報告された[8-5-3]だけであった。先行事例の報告は、「もし剛構造の規定が削除されれば、このような設計も可能になる」という、削除をしてよい根拠ではなくて、削除された場合に採用される設計手法の可能性を示唆するものであり、削除するための必要条件ではあっても、十分条件ではない。
それどころか最終回に欠席した柴田碧委員の提出文書[3-2-2]には、「近来の耐震設計用解析技術の発展は、解析値の精度向上に寄与することが大である。しかし、精度の向上は、一般に裕度を減じている」と指摘されている。改訂作業のあるべき姿勢からするなら、剛構造の削除に際して、真摯に受け止められねばならない指摘であった。

意見(2):岩盤支持規定は削除すべきでない

理由:「見解」に「耐震安全性に対する信頼性を一層向上させるためのたゆまぬ努力の必要性」と記されている。改訂の基本姿勢は、25年間の科学的知見と技術的進展を指針強化のために取り入れることにあったはずで、それらを毫も指針緩和に利用してはならない。(解説)には削除の理由として「「岩盤」に支持させなくとも十分な対震安全性を確保することが可能である」とのみ記されている。「××でもよい」と「××の方がよい」とは論理としては別言明であり、削除する(方がよい)根拠ではありえない。石橋克彦委員[33-3]から、「岩盤その他」を削った代わりに、「地震働の増幅が小さく」を加える修正が示され、[36-2]でも言及された。このように表層地盤がもつ地震動の増幅特性には十分配慮する必要があるのでその旨基本方針に明記するよう、再三にわたって発言があり、他の委員からの賛意は表明されても反対の意見表明はなされなかった。それにもかかわらず増幅特性への配慮の必要は事務局案の文章化過程で落され、しかも、採用に至らなかった個別意見を集録することにしていた「見解」にもとどめられず、石橋委員からの意見表明があった事実そのものが無視されている。
耐震指針の基本方針に岩盤支持が求められてきたのは、静的な支持力が確保されるためだけではない。同程度の規模の地震がサイトに到達してもたらす地震動は、一般的に硬い(せん断波速度が大きい)地盤では増幅する恐れが少ないためである。もし岩盤支持規定を外すのであれば、少なくともサイトの地震動増幅特性については十二分の配慮が必要である。石橋委員の指摘は地震学(特に地震波の伝播の性質)にとって、初歩的かつ基本的な要請であった。その指摘を無視した岩盤支持規定の削除は、施設地盤の明確な弱体化をもたらす、安全性を切り下げる問題点の一つである。

意見(3):”適切に”の多用は責任放棄である

理由:世上で言われている規制緩和の風潮が、今回の改訂案では”適切に”との表現の多用をもたらしているように思われる。審査規定を具体的に記載する方式(仕様規定)から、抽象的に安全目標を謳うだけで安全確保のためになすべきことを申請者ないし民間の学協会技術基準等に委ねる方式(性能規定)への移行を印象づけるものとなっている。その流れの現われとして”適切に”表現が多用されている。本文および解説中の該当個所は20箇所にも及ぶ。
そのような “適切に”表現の多用は、大きな裁量余地を申請者及び審査担当者に委ねるもので、規制緩和・指針緩和の流れを強めるものである。実際の申請書では、学協会等の技術基準を参照した旨の記載があることになろうが、協会はそもそも営利業界団体を成立基盤としており、また学界の多くも独立法人の経営・産学協同の推進を通じて、これまで以上に「作ること」にインセンティブをもつようになってきている。「危険だから作らないでおく」という指向は稀で、せいぜい「作るために危険を減らす」努力を期待できるだけである。そして、申請書の安全審査を担当する官の側は、原子力発電を推進する部局の所轄に属している。指針改訂に責任を有する規制部局である安全委員会が、その役割をないがしろにして推進部局の裁量に多くを委ねることは、原発の安全が大きく脅かされることを意味する。
柴田委員[42-5-1]は、「いずれ、審査にて取り上げられるのだから、記載不要であると言うのは、安全審査部会への、責任転嫁であり、”適切に”の乱用より、なお、指針段階の、責任逃れともいえる」と厳しく批判している。また[43-2-3]においては、「全般に、最新の知見に基づき”適切に”と言う表現が多すぎる。指針としては、審査に全てを転荷したことになる」と指摘している。

意見(4):歴史地震・活断層重視の破綻を認めよ

理由:現行指針の[歴史的資料+活断層]では予測できなかった地域に大地震が続いたことを受け、四半世紀の地震学の知見を取り入れて、地震発生メカニズムに重点を移すことが求められていた。現行指針は「調べても見付からないものは不存在と断定してよい」との考え方によっている。科学的推論としては、未発見は不存在を意味しないにもかかわらず。地表に断片的に出現した活断層にとどまるのではなく、地下深部の不可視の震源断層の様相をこの間の地震学の知見から推定すること、歴史資料の年代を大きく越えた時間スパンでの地震発生様態を、見掛けの活断層群が「地下で連動する」ことなどにも考慮して、安全側の(可能性が否定できない)大地震発生を指針の基に据えることが求められていた。しかし結果として、現行規定の残渣を引きずって、8.16宮城県沖地震における「大崎の方法」の破綻も曖昧にされたまま、その期待は半ばしか果されなかった。
「震源を特定して」地震動を策定する方針では、検討用地震の選定について、活断層と歴史地震の後に、「さらに地震発生様式等による地震の分類を行った上で」という表現で、地震学的知見を取り入れることになっている。批判の多かった活断層を第一に挙げ、かつ地下の震源断層の推定に不可欠な複数の活断層の連動については直接記載されず、「地形学・地質学・地球物理学的手法等を総合した十分な活断層調査」という抽象的表現である。これでは、改訂の眼目がここでも申請者に委ねられることになり、地震調査研究推進本部の発表を否定する、電力会社の危険な居直りを糾すこを困難にする。

意見(5):弾性設計用地震動Sdは小さすぎる

理由:現行指針では最強地震動S1に対して構造物・機器類を弾性範囲内に収めることを基本とし、念のために限界地震動S2に対しても安全機能を保持することを確かめる。改定案では基準地震動Ssに対して安全機能を損なわないことを基本とした。それに伴って、弾性設計によって構造物の力学的挙動を確認しておく必要が工学の立場から幾度となく主張された。地震学の立場からは、一回り小さい地震はいくらでも存在するので、検討用地震とは独立に策定する理論的根拠に乏しいとの反対が出された。応力-歪関係が線形で構造物の挙動が明確に把握できる弾性状態に比し、弾塑性解析には非線形な物性を定めることに加え、等価線形(割線係数を用いる)か増分法(接線係数を用いる)か、さらに荷重の増加過程と減少過程の繰り返しなど、定式化自体に様々な問題を孕んでいる。分科会の審議過程でも、弾塑性解析への信頼度には委員間に落差が感じられた。
改定案では地震学の主張を容れて、地震の選定と地震動の策定は1種類とし、構造解析には、基準地震動Ssをα倍した弾性設計用地震動Sdを用いることとした。既設原発で設定されているS1とS2の比(S1/S2)の一覧が事務局から資料として提示され、その値は概ね2/3程度の値となっていた。
それにもかかわらず、「めやすとして、0.5を下回らない値で求めることが望ましい」という、規制としては極めて緩い表現が(解説)に記載された。SsがS2を大幅に上回らない限り、上記の剛構造と岩盤支持の項で指摘したと同じく、現行指針を具体的根拠なく緩和したことになる。αの設定値及び設定根拠が、個別申請ごとに明らかにすることを求めているが、逆にいえば申請者の裁量に委ねられており、Sdが規制手段になり得ていない。

意見(6):「震源を特定せず」策定する地震動は7.3にせよ

理由:「予想しないサイトに大地震」を防ぐために、活断層依存からの脱却が眼目の一つであった。目にみえる変形を地表に残留させる大地震もさせない大地震もある。地表に地震断層が出現する規模が推定できれば、その余事象として、地表に地震が出現しない場合の最大地震規模が推定できる。マグニチュードMに対して地震断層が地表に達する既往地震の出現率をプロットした「武村(1998)のFig.8」に重ねて、「香川ほか(2003c)」の計算値が提出された[17-4]。それによると、M6.5以下の地震では出現率がゼロに近く、M7.3を超えるとほぼ100%になっている。それゆえ、活断層の痕跡がないサイトでも、M7.3以下の地震ならば発生する可能性があることになる。ちなみに、事前の活断層の有無が問題とされた鳥取県西部地震はM7.3である。
しかるに(社)日本電気協会の報告[17-3]では、活断層と関連づけられるとして多くの地震を除外し、M6.6程度しか用いられず、現行M6.5とあまり変らないことになる。第29回分科会で石橋委員から、ノースリッジ地震や鳥取県西部地震などを除外し観測記録を限定することへの批判があった。第17回分科会での石橋委員の意見「いかなるサイトであれ、「直下でM7クラスの内陸地震が起こりうる」ということを「デフォルト(初期設定)」として考えるべきであり、「最近のMj6.8~7.3程度の内陸地震の震源近傍の観測記録に基づき、敷地の地盤物性に応じた地震働として設定する」は無視され、「見解」にも触れられていない。「存在すると予断をもって調べたら見付かった」鳥取西部地震の二の舞を防ぐには、石橋委員の意見を取り入れるか、少なくとも(解説)において「武村(1998)のFig.8」に触れておくべきである。

意見(7):6.耐震設計方針 (1)基本的な方針に、次の⑤を追加せよ

⑤地震による損傷は共通事象、同時多発的であることを配慮すること
理由:原発の設計では”多重防護”が強調されていて、万一ある装置等に故障・事故等が発生しても、それをカバーして事故が進展しないようになっている、といわれてきた。しかし、地震時には安全装置を含む複数の装置・機器類が同時に損傷を被る恐れがあり、なおかつ、外部電源の喪失やサイト周辺の交通麻痺等の状況もあって、にわかに機能不全の修復に対応できない状況が懸念される。地震時に原発の安全が確保されるためには、複数の装置・機器類が共通事象として同時多発的に損傷を受ける事態を想定して設計しておくだけでなく、敷地外部と遮断される事態も想定して方策を準備しておかなければならない。
審議過程において、このことは再三指摘されてきている。柴田委員は文書[41-3-2]で「・・平常時には、十分に、対策がされているが、地震時において、非常用諸システムの共通損傷モードとしての、考慮が必要と思われる」と指摘している。さらに文書[42-5-1]で同委員は「地震による損傷は、共通事象、同時多発的である。従って、単一事象としては、対策がとられていても、必要に応じ、同時多発的の可能性のあることを認識して、その対策を考えなければならない」との文言を、本文もしくは解説に加えることを提案した。そして事務局による報告書[43-3]にも「地震時随伴事象について・・以下のような具体的な案が追加的に出された」として、⑤共通事象、同時多発性、が記されている。しかるに指針(案)では、本文にも(解説)にも削除され、かつ、採用されなかった意見を記載することとしていた「見解」にも脱落している。

意見(8):「残余のリスク」を導入するな

理由:ある意味では、今後なされるであろう指針改訂を視野に入れるなら、今次改定案の最大の問題点が「残余のリスク」である。
分科会審議の前半では、確率論的手法によるリスクの定量的評価の導入に向けて、多くの回数を重ねた。しかし、その手法の成熟度、信頼性に関して委員間に落差があり、かつ目標数値のイメージに10-4~10-8と大きな幅があった。改定案では”残余のリスク”の存在だけを(解説)で確認し、基準地震動の策定過程に伴う不確かさがどの程度の超過確率に相当するか参照することを義務づけ、試行的実施から本格導入への道を拓くにとどまった。
柴田委員は文書[41-3-3]で、「最近、残余のリスクの具体的値について、各人の印象がバラバラであることに気付いた。極めて、観念的に受け止めている場合から、E-04程度を念頭に置いている場合、小生のように、E-08程度と受け止めている例などがある」「”残余のリスクを、定量的に評価する”ことは、現在では、準備が整っていない。従って、定性的な、努力目標に留まらざるを得ない」と指摘している。
そもそもリスクという概念は、便益と被害を同一人が得る場合にしか成立しない、統治する者にとって適合的なものである。自由意志で甘受する放射能被ばくの場合には、例えばX線診断の照射量の設定には、治療方針を明確にできる利益と癌化の危険性とを比較考量するために、自己の選択責任において確率論的リスク評価が用いられよう。国あるいは電力会社の便益のために、住民を犠牲にする施策の合理性をリスク論で評価することが許されてはならない。私たちの体験からするならば、原子力発電所の想定事故の超過確率をいくらに設定しておけば、チェルノブイリの災害を全世界の人々に受容させることができると言うのであろうか。