原発耐震設計審査指針案意見募集に対する意見・意見案(1)

原発耐震設計審査指針案意見募集に対する意見・意見案

原子力安全委員会が「耐震設計審査指針(案)」に対する意見募集を行っています。
募集期間は5月24日~6月22日。
www.nsc.go.jp/box/bosyu060523/youkou_taishin.html

原発の耐震性が焦点となるなか、ぜひ多くのコメントをお願いします。

参考として、提出済みの意見や意見案を下に掲載します。

なお指針案についての問題点の指摘は以下にも掲載しています。
cnic.jp/modules/news/article.php?storyid=390

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提出済み意見

岩淵正明(弁護士)

意見の趣旨
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「残余のリスク」との考え方は撤回されるべきである。
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意見の理由

 現行指針は、「想定されるいかなる地震力に対してもこれが事故の誘因とならない」ことを求めている。ところが、新指針(案)では、「残余のリスク」との考え方を前提とし、「策定された地震動を上回る強さの地震動が生起する可能性は否定できない。」としながら、「それを合理的に実行可能な限り小さくするために努力が支払われるべきである。」とするだけである。この観点からは、これまでのように起りうると考えられる最大限の地震動として基準地震動を策定するのではなく、原発震災のリスクをある程度許容することとなっている。これはもはや現行指針と「同等の考え方」ではない。
 又、伊方原発訴訟における平成4年最高裁判決は、「原子炉等規正法は、原子炉災害が万が一にも起こらないようにすることを求めるものである」と判示するが、上記最高裁判決は、「実行可能な限り」小さくすれば足りるなどとはしておらず、まして「合理的に」実行可能な限り小さくすれば足りるともしていない。「残余のリスク」を肯定する新指針(案)は確定した判決である最高裁判決を無視するものである。

意見の趣旨
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指針の2.適用範囲の例外規定は外すこと
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意見の理由

 新指針案の適用範囲には「許可申請の内容の一部が本指針に適合しない場合であっても、それが技術的な改良、進歩等を反映したものであって、本指針を満足した場合と同様又はそれを上回る耐震安全性が確保し得ると判断される場合は、これを排除するものではない。」と明記している。
 しかし、指針は判断の基準となる規定である。
 最初から指針の適用範囲に「例外」を認め、「本指針を満足した場合と同様又はそれを上回る耐震安全性が確保し得ると判断される場合は、これを排除するものではない」などとすることはあってはならない。
 確保しうると判断するのは、事業者が、事業者の基準で判断することになりかねない。
 これでは安全は確保できない。
 指針の2.適用範囲の例外規定は削除しなければならない。

意見の趣旨
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震源を特定せず策定する地震動の規模はM7.3以上の地震とすべきである。
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意見の理由

 震源を特定せず策定する地震動の規模は従前のM6.5の地震を廃止したが、新基準の地震規模を明記していない。
 しかし、中央防災会議は、「内陸部で発生する被害地震のうち、M7.3以下の地震は、活断層が地表に見られていない潜在的な断層によるものも少なくないことから、どこででもこのような規模の被害地震が発生する可能性があると考えられる。」としている。
 又、志賀原発2号機の金沢地裁判決によれば、「マグニチュード6.5を超える大規模な陸のプレート内地震であっても、地震発生前にはその震央付近に対応する活断層の存在が指摘されていなかったと言われている例やマグニチュード6.5を超える大規模なプレート内地震が発生したのに、これに対応する地表地震動が確認されなかったと言われている例が相当数存在しているのであり、現在の地震学の知見に従えば、対応する活断層が確認されていないから起こり得ないとほぼ確実にいえるプレート内地震の規模は、マグニチュード7.2ないし7.3以上というべきである。」としている。
安全側に立つならば、M7.3までの地震観測記録を全て包絡する応答スペクトルとして「震源を特定せず策定する地震動」を定めるべきである。

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提出済み意見

海渡雄一(弁護士・原子力資料情報室理事)

意見1 残余のリスクについて

意見の趣旨
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 新指針案が導入しようとしている「残余のリスク」概念は、平成4年最高裁判決において原子炉等規制法が原子炉災害が万が一にも起こらないよう審査することを求めているとした、安全審査の基本的考え方と相反する疑いがある。
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意見の理由

 伊方原発訴訟における平成4年最高裁判決は、原子炉等規制法は、原子炉災害が万が一にも起こらないようにすることを求めるものであると判示する。ところが、新指針では、「残余のリスク」について、「上記(1)のように策定された地震動を上回る強さの地震動が生起する可能性は否定できない。」としながら、「それを合理的に実行可能な限り小さくするために努力が払われるべきである。」とするだけである。
 合理的という用語は「経済的合理性の範囲内で」と同義語に理解され、対策は可能なのに経済的に合理的でないという理由で否定されてしまうであろうという危惧がある。
 上記最高裁判決は、このようなリスクを「実行可能な限り」小さくすれば足りるなどとはしておらず、まして「合理的に」実行可能な限り小さくすれば足りるともしていない。同判決は、万が一にも原子炉災害が発生することは原子炉等規制法上は許されないとしている。このようなリスクをなくすことが実行不可能であれば、災害防止上支障があるとして原子炉施設は許可してはならないということが原子炉等規制法の考え方である。
 新指針案は、この分野における確立した先例である最高裁判決を無視ないし曲解するものと言わなければならないのであって、この最高裁判決との整合性を議論していないで策定された新指針は、見直されなければならない。

意見2 地震による共通原因故障について

意見の趣旨
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「耐震指針検討分科会報告書」18ページ(5)地震随伴事象「⑤地震による損傷は、共通事象、同時多発的である。従って、単一事象としては、対策がとられていても、必要に応じ、同時多発の可能性のあることを認識して、その対策を考えなければならない」は必ず指針に導入するべき考え方である。
 新指針は、このような点について議論がなされたにもかかわらず、地震によって複数の不具合が同時に発生する可能性について適切に考慮していない点で必ず見直されなければならない。
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意見の理由

 地震は、原子炉施設全体を激しく揺すぶるものであり、その外力によっていくつもの箇所に不具合が同時に発生する可能性が否定できない。ところが、これについて新指針は、考慮しておらず、その点で新指針は不十分である。
 現在の設計では、「「事故」に対処するために必要な系統、機器について、原子炉停止、炉心冷却及び放射能閉じ込めの各基本的安全機能別に、解析の結果を最も厳しくする機器の単一故障を仮定した解析を行なわなければならない。この場合、事象発生後短期間にわたっては動的機器について、また、長期間にわたっては動的機器又は静的機器について、単一故障を考えるものとする。」とされていて、これが、耐震設計においても適用されることとなっている。
 しかし、同時に複数の機器に不具合の生じる共通原因故障の可能性が、地震においては考えられる。また動的機器のみならず静的機器についても、同時に不具合となるおそれが否定できないのである。
 このような事態について考慮することが、耐震設計では絶対に必要であるが、この点については十分に議論もされず、また指針に盛り込まれていない。これでは地震現象に十分に対処した設計は不可能である。

意見3 地殻変動による地盤変形

意見の趣旨
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 指針案8「地震随伴事象に対する考慮」の項に、「地震のとき、地殻変動により地盤が変形しても、発電所の安全性が保たれること」という規定を追加するべきである。
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意見の理由

 「耐震指針検討分科会報告書」の18ページに、『旧指針においては、地震随伴事象について特化した規定は存在していなかったが、今次改訂においては、原子力施設の周辺斜面の地震時における崩壊等への考慮、津波に対する考慮、地盤変動等についての考慮の取込みの要否等に関する幅広い調査審議が行われた。これに関連して、まず、周辺斜面の崩壊等及び津波への考慮についての議論がなされ、引き続き、以下のような具体的な案が追加的に出された。』としてその①に上記地盤の変形が示された。
 『震分第41-2号 地震随伴事象に「地震時地殻変動に起因する地盤の変形」を入れることについて(石橋委員資料)』およびその提案についての議論(第41回速記録)は指針本文に入れるべきである。こういう提案があったのになぜ入らなかったのか残念でならない。導入に反対された委員にどのような科学的根拠があったのか疑問である。地震によって地盤の変形が起きることは避けられない。浜岡原発の西方にある掛川市南部地域(旧大須賀町)では、安政大地震で遠浅だったところが隆起し、現在の土地ができている。また、富士川周辺にも、地震でできた「地震山」という名前の山があるそうである。そう遠くない過去においてもこのような事例があることを重く見て、新指針を適切なものとするため、この項目はぜひとも導入するべきである。

意見4 送電系統と冷却水の安定供給の確保
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 指針案8に、以下i、iiも付け加えるべきである。
i)発電所につながる送電線、碍子及び関連する送電系統の健全性
ii)冷却水(補助的工事用水を含む)の供給の安定性
i、iiについて、地震によって起こり得るあらゆる場合を想定し、送電線の健全性と冷却水の継続的供給が、確実になされることを確保するべきである。
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理由

i)発電所につながる送電線とりわけ碍子及び関連する送電網の状態は、地震時には、まず停電し、原発内部の重要な送電が止まり機能しなくなる。又、鉄塔が倒れる、碍子が破壊される、道路も寸断され、復旧作業はいちじるしく困難になる事が想定される。
ii)の冷却水(補助的工業用水を含む)の供給の安定性についても、配管が破断した時、純水をどのように補給するのか。地震は1回大きなものが来て終わりではなく、場合によっては、長期間にわたりくりかえし余震がおそってくる(今年3月の玄界島の地震も、北九州全域に未だに余震はくりかえし続いている)ことが分かってきているので、もし初期の大地震には耐えられたとしても、余震が続く中でも、送電線、配管、冷却水等にまったく問題が起こらないように、耐震設計を責任を持って行うべきである。

意見5 指針2.なお書きの削除

意見の趣旨
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 指針の2.の適用範囲についての「なお書き」部分については削除することを求める。
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意見の理由

 新指針案の適用範囲には「許可申請の内容の一部が本指針に適合しない場合であっても、それが技術的な改良、進歩等を反映したものであって、本指針を満足した場合と同様又はそれを上回る耐震安全性が確保し得ると判断される場合は、これを排除するものではない。」と明記している。
 しかし、指針は判断の基準となる規定である。
 最初から指針の適用範囲に「例外」を認め、「本指針を満足した場合と同様又はそれを上回る耐震安全性が確保し得ると判断される場合は、これを排除するものではない」などとすることはあってはならない。
 確保しうると判断する主体が事業者となり、事業者の基準で判断することにもなりかねない。これでは原子力発電所の安全は確保できない。
 仮に、本指針のある部分がその後の技術的進歩で古くなり、その結果許可申請の内容が指針に適合しなくなったが、技術的進歩に照らせばかえって耐震安全性が確保されるような場合を想定しているのであれば、古くなった指針に従った過去の許可申請は、再審査を必要とする或いは取り消す等を明記する必要がある。その上で、指針自体を改訂すればすむことである。このような規定は善意で作られても、指針の適用をあいまいにしてしまう危険性が高く、有害であるから、削除するべきである。

意見6 「震源を特定せず策定する地震動」

意見の趣旨
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 基準地震動の策定の「震源を特定せず策定する地震動」については「震源を特定できない場所で気象庁マグニチュード7.3を超える内陸地殻内地震が発生することがあり得る」ことを盛り込むべきである。
 仮に、そのことがどうしても不可能なのであれば、せめて地域ごとに最大規模を示すべきである。
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意見の理由

 震源を特定せず策定する地震動の規模は従前のM6.5の地震を廃止したが、新基準の地震規模を明記していない。この点は指針の見直しのコアに当たる部分であったが、定量的に示すことができなければ結局もとの黙阿弥になってしまう。
しかし、中央防災会議は、「内陸部で発生する被害地震のうち、M7.3以下の地震は、活断層が地表に見られていない潜在的な断層によるものも少なくないことから、どこででもこのような規模の被害地震が発生する可能性があると考えられる。」としている。
 又、志賀原発2号機の金沢地裁判決によれば、「マグニチュード6.5を超える大規模な陸のプレート内地震であっても、地震発生前にはその震央付近に対応する活断層の存在が指摘されていなかったと言われている例やマグニチュード6.5を超える大規模なプレート内地震が発生したのに、これに対応する地表地震動が確認されなかったと言われている例が相当数存在しているのであり、現在の地震学の知見に従えば、対応する活断層が確認されていないから起こり得ないとほぼ確実にいえるプレート内地震の規模は、マグニチュード7.2ないし7.3以上というべきである。」としている。
 このように、現実に気象庁マグニチュード7.3の地震が事前に活断層の見いだされていなかった場所で発生しているのであるから、これを指針に盛り込むことは当然の要請である。
 事業者側は丁寧に調査すれば必ず発見できるので6.8で十分だとする。しかし、事業者は、専門家が活断層であるとするものすら、否定してきたのである。安全側に立った判断するならば、事前に調査で発見できなかった最大規模の地震であるM7.3としなければならない。
 仮に、いま数値を書き込みむのは無理であって、全国一律に考えるのがよいかどうかも要検討ということであれば、せめて地域ごとの最大規模を示すことが必要である。

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提出済み意見

西尾漠(原子力資料情報室共同代表)

意見/理由 「3.基本方針」について

「建物構築物は原則として剛構造」「主要な建物構築物は岩盤に支持」とする現行指針の方針を撤廃することの合理的説明がなく、撤廃の必要はない。

 前者については免震構造の有効性がうたわれているが、発電用原子炉施設の設計上確かに有効であるとの証明はなされていないのではないか。後者についても、現行方針を変更しなくてはならない理由は見当たらない。仮に新規立地地点の確保や原子炉施設・機器輸出の際の障害の軽減化といったことが理由になっているとすれば、とうてい認めがたい。

意見/理由 「3.基本方針」について

 先行地震動あるいは余震群の地震動にも耐えることを明記すべきである。

 石橋委員や柴田委員から提案されていることであるが、何の理由もなく採用されていないのは不当である。

意見/理由 「3.基本方針」について

「残余のリスク」の存在を認めたことが、基準地震動の強さを控え目に策定することの言いわけにつかわれてはならない。

「残余のリスク」を合理的に実効可能な限り小さくするための努力が払われるべきとされているが、「合理的に実効可能な限り」と言う以上、努力目標ではなく、「小さくする」ことを要求すべきではないか。また、そのための具体的な方針が示されなくてはならない。たとえば、「残余のリスク」が現実のものとなる可能性の高い地域では発電用原子炉施設の建設を許可しないといったことが必要である。

意見/理由 「5.基準地震動の策定」について

 より適切な地震動評価の手法が明示される必要がある。

 応答スペクトルに基づく評価、断層モデルを用いた手法による評価のそれぞれにおいて、また両者の関係において、曖昧に過ぎる。震源を特定せず策定する地震動については、さらに曖昧である。電気事業者の恣意性にゆだねられる危惧が大きい。

意見/理由 「8.地震随伴事象に対する考慮」について

 柴田委員提案の「人為的随伴事象」、石橋委員提案の「地震時地殻変動に起因する地盤の変形」の採用を求める。

 ともにきわめて重要な提案と考えられ、不採用となっていることは納得しがたい。

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提出済み意見

長沢啓行(大阪府立大学教授)
www4.ocn.ne.jp/~wakasant/

意見

決定論的安全規制から確率論的安全規制に道を開く「残余のリスク」の存在を認める方針を撤回し、「残余のリスク」を「安全審査で参照し審査の対象とする」ことも撤回すべきである。

理由

 解説Ⅰ-(1)で「旧指針の『基本方針』における『発電用原子炉施設は想定されるいかなる地震力に対してもこれが大きな事故の誘因とならないよう十分な耐震性を有していなければならない』との規定が耐震設計に求めていたものと同等の考え方である。」と記しているが、「残余のリスク」の存在を認める新指針案と旧指針は全く相容れない。それを「同等」と記すのは国民を欺くものであり、科学者・技術者の倫理にもとると言わざるを得ない。新指針案は旧指針とは全く異なる確率論的規制へ大きく舵を切る指針であることを明示し、立地点および周辺の自治体・議会・住民や国民に信を問うべきである。とくに、耐震指針検討分科会においては、確率論的安全評価が未だ確立しておらず、全面的な導入を見送った経緯がある。にもかかわらず、このような形で確率論的安全規制をこっそり導入し、全面的な転換へなし崩し的に導こうとするのは科学とは無縁な官僚的な発想であり、拒否すべきである。専門的な観点から言えば、確率論的安全評価はシステムの相対評価を行い、システムの弱点を抽出して信頼性を高めるうえでは有効だが、それによって信頼性がどの程度高まったのかを絶対評価するには適さない。なぜなら、確率論的安全評価は評価モデルに基づくものであり、モデルに組み込まれていない想定外の連鎖による事故の確率は求められないこと、データに基づく故障率は統計的平均であり、個々の機器の実際の故障率とは必ずしも一致しないこと、システムの期待確率を求めても個々のシステムの事故発生確率との関連付けは困難であることによる。また、最近の東京電力によるひび割れ隠し事件や関西電力による減肉点検の手抜きなど確率論的には扱えない事件や事故が多発しており、確率論的安全評価を議論する以前のレベルである。確率論的安全規制への転換は品質保証システムの劣悪な状態を改善するどころか、それを助長することになろう。

意見

「震源を特定せず策定する地震動」は、「震源と活断層を関連付けることが困難な過去の内陸地殻内の地震について得られた震源近傍における観測記録」に基づくのではなく、「M7.3以下の地震動の観測記録」に基づいて策定すべきである。

理由

首相が会長となっている中央防災会議の第5回東南海、南海地震等に関する専門調査会では「内陸部で発生する被害地震のうち、M7.3以下の地震は、活断層が地表に見られていない潜在的な断層によるものも少なくないことから、どこででもこのような規模の被害地震が発生する可能性があると考えられる。」としている。耐震指針検討分科会でもこれが検討されたが、採用されなかった。その理由は、(1)原発立地にかかる活断層調査では極めて高いレベルの調査が行われる、(2)既往最大のM7.3にすれば電力会社がモチベーションを失い、念入りな調査をしなくなる危惧がある、(3)伏在断層による地震では地表地震断層の現れた地震より短周期地震動がより大きいから地表地震断層の現れた地震の観測記録は用いなくてよい、の3点である。ところが、島根原発周辺で最近、これまで見つからなかった活断層が次々と発見され、宍道断層が中国電力の主張する8~10kmではなく約18kmに及ぶことが明らかにされた。これは、国の指示に基づく調査を含め中国電力による再三の念入りな調査によっても発見されなかったものである。しかも、中国電力が調査したすぐ近くで発見されたことから、調査の信頼性が揺らいでいる。これは(1)と(2)の理由を根底から覆すものである。電力会社が念入りに調査しない場合があるとの性悪説に立ってM7.3までの既往最大を考慮すべきである。調査のモチベーションを高めるためには、念入りに調査しなかったことが明らかにされた時点で設置許可を取り消すという罰則を設けることである。理由の(3)はむしろ、伏在断層による地震観測記録が少ないことから地表地震断層の現れた地震の観測記録を含めてM7.3までの観測記録をすべて包絡させるべきである。(3)の主張によれば、それでも過大評価にはならないのであるからバラツキを考慮してより大きくとるべきである。そうしないのなら、その理由を明確にされたい。

意見

「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」は「応答スペクトルに基づく地震動評価」と「断層モデルを用いた手法による地震動評価」によるとしているが、いずれも実際の地震動を過小評価していたことは明白である。前者では、大崎スペクトルによっては近距離地震や直下地震およびプレート間地震・スラブ内地震による地震動が過小評価されてきたことを明記し、地震動を過小評価しないよう特別の配慮を求めるべきである。後者に対しては、震源の深いプレート間地震やスラブ内地震では断層モデルのパラメータ設定を保守的に行うこと、とくにアスペリティの応力降下量については過小評価しないよう特別の配慮を求めるべきである。

理由

大崎スペクトルでは、震央域外縁距離内(M6.5で7.1km圏内、M7で10km圏内、M8で25km圏内)の地震動を一定としており、断層からの距離ではなく、活断層の真ん中に震央を置き、そこからの距離で敷地での地震動を求めている。断層距離による距離減衰式を用いることもできるが、設置許可申請書に記載されている内陸地殻内地震による応答スペクトルはほとんどすべてこの方式によっている。そのため、敷地近くまで走行している活断層では、敷地での地震動が大きく過小評価されている。直下地震にあっては、直下ではなく震央域外縁距離だけ離れた位置に震央が置かれている。確かに、地震動は震源断層付近でサチュレイトしていくが、フラットではなく、震源断層へ向かって地震動の増大傾向は続く。また、宮城県沖で最近起きたプレート間地震やスラブ内地震では短周期地震動が非常に強く、大崎スペクトルでは実際の短周期地震動が4分の1ないし9分の1へ過小評価されることが明らかにされた。ところが、この傾向は1980年代半ば以降の女川原発敷地内でのM6クラスの地震観測記録ですでに明らかにされており、東北電力も国もそれを知っていた。そうであればなおさら、大崎スペクトルによっては近距離地震や直下地震およびプレート間地震・スラブ内地震による地震動が過小評価されることを新指針案に明記し、警告し、保守的に評価するよう特別の配慮を求めるべきである。また、地震調査研究推進本部による想定宮城県沖地震の断層モデルでも、応力降下量が過小評価されており、短周期地震動を過小評価していたことを明記し、震源の深いプレート間地震やスラブ内地震では断層モデルのパラメータ設定を保守的に行うこと、とくにアスペリティの応力降下量については過小評価しないよう特別の配慮を求めるべきである。

意見

解説IIの(4)に「経験式を用いて断層の長さ等から地震規模を想定する際には、その経験式の特徴等を踏まえ、地震規模を適切に評価することとする。」とあるが、これでは従来どおりに「松田の式(1975)」が使われてしまう。内陸地殻内地震による大崎スペクトルを適用する際に、活断層の長さから地震の規模を推定するために「松田の式(1975)」を用いているが、これは活断層の長さではなく震源断層の長さと地震の規模を関係づける式であることを明示すべきである。そして、20km以内の活断層が見つかった場合に、それがM7.0以下の地震による活断層であり、今後もM7.0以下の地震しか予想できないと主張する場合には、将来地震を起こしうる震源断層の長さをそのように評価した根拠を具体的に明示するよう求め、それが明示できない場合には保守的にM7.3を設定すべきである。

理由

原子力安全委員会では阪神・淡路大震災以後、「松田の式(1975)」の提唱者自身が1998年に修正松田式を発表したことから、「松田の式(1975)」の再評価を行い、活断層の長さではなく震源断層の長さと地震の規模を関連づける式であることを何度も確認してきた。ところが、実際の安全審査では、活断層の長さから「松田の式(1975)」を使って地震の規模を算出し続けている。島根原発では中国電力が宍道断層を8kmないし10kmとみなし、地震の規模をM6.3ないしM6.5と評価し、国の安全審査もそれを認めてきた。M6.3ないしM6.5の地震で震源断層がそっくりそのまま地表地震断層として現れたという地震学的にあり得ない主張が安全審査を通ってきた。「松田の式(1975)」を再評価する際には活断層ではなく地下の震源断層と関連づける一方、安全審査を行う際には、震源断層ではなく活断層と関連づける。このような二枚舌を使い分ける官僚的対応をやめ、新指針ではこの誤りを正すべきである。地震学的見地から「松田の式(1975)」を用いる場合には、活断層の長さではなく震源断層と関連づけることを求め、20km以内(松田式によれば、M7の地震をもたらす震源断層がこの長さであり、この一部しか地表地震断層としては現れない)の活断層が見つかった場合に、この地表地震断層がどのようにして現れたのかという説明を求め、将来地震を起こしうる震源断層の長さを特定できない場合には少なくともM7.3(地下の震源断層で30kmの長さに相当する)の地震を設定すべきである。

意見

設計段階の耐震設計審査指針と運転開始後の耐震安全性確認手法の間に大きな違いがあり、後者では緩和される傾向がある。後者の場合にも設計段階の指針を適用すべきである。この意味で、亀裂の進展・破断を評価基準とした維持基準は耐震設計審査指針と矛盾しており、耐震安全性の確認になっていない。亀裂の入った機器の評価には、破壊力学による亀裂の進展解析ではなく、耐震設計審査指針に基づく耐震安全性の確認を求めるべきべきである。また、指針に基づく安全審査が過小評価であることが明らかにされた場合には審査結果を撤回し、審査結果に基づく設置許可を取り消すよう総理大臣に勧告し再審査を求めるとの条項を追加すべきである。こういう条項がないため、女川原発で端的に明らかにされたように、審査が終わった途端に「審査当時は最新の知見に基づいて審査したので妥当だ」という責任逃れが起きることになる。「安全審査に文句があれば行政不服審査で対応すべき」との居直りはやめるべきである。

理由

宮城県沖地震で停止した女川1~3号機の運転再開を巡り、東北電力の行った耐震安全性評価では設計工事認可時の耐震性評価の手法のうち、不確実さをカバーするための床応答スペクトルの周期軸方向±10%拡幅を行っていない。そのため、地震によって機器に発生する応力の評価は設計工事認可時の半分程度に過小評価されている。「今回の地震」に対する評価はともかく、将来発生する想定宮城県沖地震A・Bおよび安全確認地震動についてはパラメータの不確実さを考慮して、床応答スペクトルの周期軸方向±10%拡幅を行うべきである。現在女川1号の耐震安全性を検討している耐震・構造設計小委員会はこのままの評価で妥当だというのであろうか。その報告を了承してきた原子力安全委員会もこのような二重基準で妥当だとするのであろうか。耐震指針検討分科会の委員も同小委員会に出ており、新指針案で設計時と運転段階とで耐震安全性の評価基準が異なっても良いというのであろうか。耐震設計時に求められている耐震安全性の確認が運転開始後には求められないというのは全く矛盾しており、設計から運転停止まで一貫して同じ耐震安全性評価の基準・指針が適用されるべきである。それを新指針案に追加し明記すべきである。
 また、女川3号では1995年に東北電力が策定し国が安全審査した断層モデルでは、想定宮城県沖地震による応答スペクトルを過小評価していた。限界地震S2の設定も甘く、プレート間地震やスラブ内地震をを過小評価していた。これらが今回の宮城県沖地震ではっきりしたにもかかわらず、このような場合の対応方針が新指針案にはない。指針に基づいて審査した結果が過小評価であることがわかった場合の対応策を新指針案に明記すべきである。もし、基準地震動を超える可能性を「残余のリスク」で考慮していると言うのであれば、それは無責任な開き直りであり、ズサンな安全審査を助長することになろう。

意見

新指針案6の(2)では、「基準地震動Ssによる地震力は、基準地震動Ssを用いて、水平方向及び鉛直方向について適切に組み合わせたものとして算定されなければならない。」とあるが、これでは、現行指針より鉛直地震動が過小評価される恐れがある。鉛直方向について水平方向と同程度の大きさで不利な方向の組合せで作用するものとすべきである。

理由

現行指針では、設計用最強地震及び設計用限界地震による地震力の策定に際し、「水平地震力は、基準地震動の最大加速度振幅の1/2の値を鉛直震度として求めた鉛直地震力と同時に不利な方向の組合せで作用するものとする。ただし、鉛直震度は高さ方向に一定とする。」とされているが、新指針案では、静的地震力の記述は現行指針と同じだが、動的解析に用いられる地震動における鉛直地震動が「適切に」で曖昧化されている。これでは、鉛直地震動を水平地震力の1/2より小さく設定される恐れがある。そもそも、現行指針の「1/2の値」も鉛直地震力を過小評価していると思われるので、少なくとも直下地震や近距離地震などでは水平地震力と同程度に鉛直地震力を評価すべきである。現に、新潟県中越地震(2004.10)や宮城県北部の地震(2003.7)では、地上での観測機録で水平地震動をはるかに超える大きな鉛直地震動が観測されている。この現実を直視すべきである。

意見

新指針案では阪神・淡路大震災で明らかにされた衝撃破壊の教訓を生かしていない。衝撃破壊に対する耐震設計の指針を追加すべきである。

理由

芦屋浜シーサイドタウンの約40cm四方、肉厚5cmの中空箱形の鋼鉄柱416本中53本が、支持部近傍ではなく中間部分で、延性的挙動を示さず脆性的に破断した。阪神高速鉄道の2本の鋼管柱も同様に破断した。コンクリート橋脚の衝撃座屈も多くみられた。これらは直下地震に伴う強い衝撃波による破壊と推測されながら、原因の分析が進まず、対策もとられないままである。この破壊された構造材と類似したものが原発の重要部分でも使われており、原発がこのような衝撃波に耐えられるのかどうか極めて憂慮される。指針案では、鉛直地震動を水平地震動の2分の1しか考慮していない点も含めて再検討し、鉛直方向の衝撃波に対する耐震設計の指針を明らかにすべきである。
 耐震性をデモンストレーションするために兵庫県南部地震の強震記録波を用いて模擬振動実験が良く行われるが、この強震記録は周期1~2秒が卓越する地震波であるため、固有周期がこれよりかなり小さい原発の建物・構築物、機器・配管は当然破壊されない。このような子供だましの実験に金を掛けるのではなく、衝撃破壊をもたらした地震波を振動台で再現し、その地震波を用いて耐震性確認の実験を行うべきである。このような衝撃破壊に関する研究を進めて、衝撃破壊に対する耐震設計基準を早急にまとめ、追加すべきである。少なくとも、阪神・淡路大震災でよく見られた衝撃破壊に対する対策を指針に盛り込むべきである。

意見

弾性設計用地震動Sdを基準地震動Ssのα倍とし、αの値としては「0.5を下回らないような値で求められることが望ましい」とあるが、宮城県沖地震では限界地震S2を超える地震が実際に起きたのであり、現行のS2相当に対して弾性設計を行うのが当然である。したがって、S2をかなり超える大きな地震動としてSsを設定するのでない限り、Sdを現行のS2と同程度になるよう設定すべきである。少なくとも「震源を特定せず策定する地震動」に対しては弾性設計とすべきである。

理由

SdをSsの0.5を下回らない程度に設定するというのでは、現行指針の最強地震S1に対する弾性設計が大きく緩和されることになりかねない。島根原発で宍道断層が過小評価されていたように、S1そのものが過小評価されており、むしろ弾性設計をより強化すべきである。また、女川原発ではS2を超える地震が実際に宮城県沖地震で発生した。これはすなわち、現行のS2がS1であることを示している。ということであれば、当然、現行のS2相当に対して弾性設計を行うように方針転換すべきである。そして、Ssを現行のS2をかなり上回る地震として策定すべきである。ところが、現在の電力会社、原子力安全委員会および原子力安全・保安院の活断層評価の考え方等に基づけば、Ssは現行のS2とさほど変わらない可能性がある。「震源を特定せず策定する地震動」は今の地震学の現状から見れば、いつどこで起きても不思議でない地震なのであるからSsというよりはS1相当である。したがって、弾性設計の対象には少なくとも「震源を特定せず策定する地震動」を入れるべきである。

意見

複数の活断層の評価に際しては、地震調査研究推進本部の活断層評価の考え方、すわなち、「松田の起震断層区分基準(1990)」を採用し、地下で連動している可能性を否定できない場合には活断層帯として評価する方針を明記すべきである。

理由

地震調査研究推進本部の採用している活断層評価の方法を採用しない理由として、電力会社は活断層調査のレベルが違うと主張しているが、そのずさんさは島根原発の宍道断層調査で明らかである。すなわち、宍道断層の長さは中国電力の主張する8~10kmではなく約18kmに及ぶことが最近明らかにされた。しかも、これは、原子力安全・保安院の指示に基づく調査を含め中国電力による再三の念入りな調査によっても発見されなかったものであり、中国電力がかつて調査した地点のすぐ近くで「新しい活断層」が発見されたことも衝撃であった。このことは「極めて高いレベルの調査」によっても発見されない活断層があるということ、「極めて高いレベルの調査」によっても活断層の長さを過小評価する場合があることを示している。この事実を率直に認め、それを前提とした指針に変更すべきである。
 また、最新の活断層調査によっても断層の地下での連動は事前に発見できない。兵庫県南部地震の際、逆断層の隆起の仕方が異なる六甲断層帯と淡路島西岸断層帯が地下で連動して初めてこれらが連動するということがわかった。このように、震源断層として動いて初めて連動したことがわかるのが実情である。地震学のこの現状を素直に認め、活断層調査では地下での連動の可能性を否定も肯定もできないとの観点から、近接する活断層を保守的に活断層帯として評価し、耐震設計を行うべきであり、それを指針に盛り込むべきである。

意見

新指針案6の(1)では「上位の分類に属するものは、下位の分類に属するものの破損によって波及的破損が生じないこと。」とあるが、現行指針と同様にお題目にすぎず、それを具体的に担保する方法が明示されていない。新指針案に追加・明示すべきである。もし、これができないのであれば、耐震クラス分類そのものを撤回し、すべてを耐震クラスⅠとすべきである。

理由

耐震クラスⅠ以外の建物・構築物や機器・配管系が地震で破壊されても、耐震クラスⅠさえ安全機能を維持できればよいとする設計思想は、6の(1)の上記項目が担保されて初めて成立する。ところが、かつて一度もその具体的な担保の方法が示されず、それを確認したとの報告もなされていないと思われる。これでは絵に描いた餅であり、耐震性が確保されているとは到底言えない。隔離弁などで下位の影響から隔離されるという設計思想は、隔離弁が地震時に機能して成り立つ話である。ところが、1991年の美浜2号事故の際には隔離弁が閉まりきらなかった。弁に異物が挟まるとかで隔離できない状況は現実に起こりうる話であり、下位の配管が破壊されていれば、隔離弁の開口部から冷却水喪失が生じる。これは一例であり、下位のものが上位のものへ波及的破損が生じないことを具体的に確認する方法を指針に明記すべきである。また、実際に検証すべきである。それができないのであれば、耐震クラス分類をやめ、すべてを耐震クラスⅠとするべきである。

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意見案

内山茂樹(弁護士)

意見の趣旨
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 新指針案は、原子炉等規制法は、原子炉災害が万が一にも起こらないよう審査することを求めているが、新指針は、その要求を満たすものとは言えない。新指針案は、これを明確にした平成4年最高裁判決の要求を無視するものである。
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意見の理由

 伊方原発訴訟における平成4年最高裁判決は、原子炉等規制法は、原子炉災害が万が一にも起こらないようにすることを求めるものであると判示する。ところが、新指針では、「残余のリスク」について、「上記(1)のように策定された地震動を上回る強さの地震動が生起する可能性は否定できない。」としながら、「それを合理的に実行可能な限り小さくするために努力が払われるべきである。」とするだけである。上記最高裁判決は、「実行可能な限り」小さくすれば足りるなどとはしておらず、まして「合理的に」実行可能な限り小さくすれば足りるともしていない。同判決は、万が一にも原子炉災害が発生することは許されないとしているのであり、実行不可能であれば、災害防止上支障があるとして許可してはならないのである。
原子炉災害の重大性を考えれば、その対策が実行可能かどうか、ましてそれが「合理的に」(即ち経済的に合理的に)実行可能かどうかを問うこと自体が誤りであり、最高裁判決は、その当然の道理を述べたものである。
新指針案は、確定した判決である最高裁判決を無視するものと言わなければならないのであって、この最高裁判決との整合性を議論していないで策定された新指針は、そもそも出発点において誤っている。

意見の趣旨
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 新指針は、地震によって複数の不具合が生じる可能性について考慮していない点で誤りである。
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意見の理由

 地震は、原子炉施設全体を激しく揺すぶるものであり、その外力によっていくつもの箇所に不具合の生じる可能性が否定できない。ところが、これについて新指針は、考慮しておらず、その点で新指針は不十分である。
現在の設計では、「「事故」に対処するために必要な系統、機器について、原子炉停止、炉心冷却及び放射能閉じ込めの各基本的安全機能別に、解析の結果を最も厳しくする機器の単一故障を仮定した解析を行なわなければならない。この場合、事象発生後短期間にわたっては動的機器について、また、長期間にわたっては動的機器又は静的機器について、単一故障を考えるものとする。」とされていて、これが、耐震設計でも適用されることとなっている。
しかし、複数の機器に不具合の生じる可能性が地震においてはあり、また動的機器のみならず静的機器についても、同時に不具合となるおそれが否定できない。これについて考慮することが、耐震設計では絶対に必要であるが、この点については十分に議論もされず、また指針に盛り込まれてもいない。これでは地震現象に十分に対処した設計は不可能である。また、この点をも考慮することが、平成4年の伊方原発訴訟最高裁判決の「万が一にも」原子炉災害が発生しないようにしなければならないとする趣旨に合致する。

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意見

武本和幸(原子力資料情報室理事)

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1)適用範囲の例外規定は外すこと
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【理由】
新指針案の適用範囲には「許可申請の内容の一部が本指針に適合しない場合であっても、それが技術的な改良、進歩等を反映したものであって、本指針を満足した場合と同様又はそれを上回る耐震安全性が確保し得ると判断される場合は、これを排除するものではない。」と明記している。
指針は判断の基準となる規定のはず。
最初から指針の適用範囲に「例外」を認め、「本指針を満足した場合と同様又はそれを上回る耐震安全性が確保し得ると判断される場合は、これを排除するものではない」などとすることはあってはならない。
確保しうると判断するのは、誰が、何を基準に行うのか。
事業者が、事業者の基準で判断することになりかねない。
これでは安全は確保できない。
指針の2.適用範囲の、例外規定は削除しなければならない。

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2)残余のリスクは、地元との約束違反。残余のリスクがあるような施設は設けてはならない。
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【理由】
 残余のリスクは、地元との約束違反である。
これまで、「想定される最大の地震を考えている。原発は地震に対して絶対に安全だ」と説明し、地元手続きをしてきた。地震に対する知見が増大し、想定を超える地震の発生は避けられないので、残余のリスクを考えよとした、今回の改定案は、地元感情では「騙された、裏切られた」の感想を持つ。
残余のリスクがあるような施設は、それが、いくら必要な施設であっても設けてはならない。
既に設置された既存の原子力施設は、今後「今までは絶対安全だと誤った説明をしてきた。本当はリスクを伴う施設である」と地域住民に周知し、それでも了解するのかどうか判断を委ねる必要がある。

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3)剛構造・岩盤立地は堅持すべきである。
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【理由】
剛構造・岩盤立地は、低人口地域の立地は、人間はどんなに細心の配慮をしても想定外の事態が起こりうることを前提に、自然条件で被害の拡大を防止しようとする立場から設けられた事である。
耐震分野でも、免震構造の導入が、長周期震動に耐えられないことなど、新たな想定外の事態を引き起こしている。
第四紀地盤以外の地盤が広く存在しながら、わざわざ岩盤立地を除外すべきでない。
免震構造等は一定の有効性があったとしても、結果として安全余裕の削減につながるものであり、導入すべきでない。
コンピュータによる数値計算は万全ではない。地震や耐震技術の進歩があったからとて、人間が自然の全てを把握したわけではない。自然条件を無視するような、剛構造・岩盤立地を排除するなら、自然は、人間の慢心へ新たな報復をもたらすだろう。

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4)余震に対する記載がみられない。余震に伴う影響を追加されたい。
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【理由】
地震は一回の本震だけで終わるものではない。新潟県中越地震では、本震と同規模の余震が何回も発生した。
本震では、倒壊しなかったが傷ついた建物が、その後の余震で倒壊した事例が数多くある。
柏崎刈羽原発は10月23日の本震では停止しなかったが、11月4日の余震で7号がスクラムしている。
構造物は、最初の地震動の一撃で傷つき、その後の余震の繰り返しで傷が拡大して、破損に至ると考える。
耐震審査指針は、こうした余震の効果の規定がないのは不十分である。

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5)震源を特定せず策定する地震動の規模はM7.3以上の地震としなければならない。
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【理由】
震源を特定せず策定する地震動の規模は従前のM6.5の地震を廃止したが、新基準の地震規模を明記していない。
事業者はいつも過小評価する体質をもっている。
今回も新聞報道等では、丁寧に調査すれば必ず発見できるので6.8で十分だとする見解が目立つ。
事業者の調査、安全審査が追認している調査は実態を無視した誤りだった。
安全側に立つならば、事前に調査で発見できなかった最大規模の地震であるM7.3としなければならない。

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6)評価対象の活断層の最終活動時期は13万年で十分か?第四紀全体を対象とすべきである。
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【理由】
 日本列島の応力場は第四紀を通じてほぼ同じだった。従前は「5万年前以降の活動の有無だった」ものが、「後期更新世以降(13万年前以降)の活動の有無」と認定対象の期間が長くなったものの、第四紀(180万年前以降)に比較すれば短すぎる。
5万年前以降の活動とした根拠は、「策定時の工学的見地及び地震学的見地を総合して適切」P.11とあるが、結局は建設するための規定であったと考える。
今回の改訂も、地震関係の知見の集積で、現実を無視できなくなって後期更新世以降としたものの、未だ対象期間は短すぎて不十分である。
米国は50万年を対象としていると聞く。
安全を考えるならば、第四紀全体(180万年前以降)を活断層評価の対象期間とすべきである。

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7)評価対象の活断層の最終活動時期を後期更新世以降とするに関して、曖昧さが残っている。
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【理由】
従前は5万年だった、活断層の最終活動時期は、後期更新世以降とされた。
耐震指針検討分科会報告書のP.13には「検討用地震の選定に際に考慮すべき活断層としては、後期更新世以降の活動性が否定できないものとすることと、及びその認定には最終間氷期の活動の有無によることができる、とすることでコンサンサスが得られた」となっている。
最終間氷期の始まりが後期更新世であると考える。そうであるならば、なぜ、その認定には最終間氷期の活動の有無によることができるとわざわざ記載するのか。
「後期更新世以降の活動」と「最終間氷期の活動」は同じ意味でないのか。
「後期更新世以降の活動性が否定できないもの」で「最終間氷期の活動がない」とはどのようなことか。
「後期更新世以降と最終間氷期の関係」及び「認定には最終間氷期の活動の有無」の関係を明確にすべきである。
「考慮すべき活断層は後期更新世以降の活動性が否定できない」と「認定には最終間氷期の活動の有無による」は矛盾しないか。
「考慮すべき活断層は後期更新世以降の活動性が否定できない」とは、後期更新世以降の堆積層に断層が有れば、活動性が否定できないことになる。
一方「認定には最終間氷期の活動の有無による」は、後期更新世以降の堆積層に断層があり、最終間氷期上部の堆積層を切っていない場合は、対象とならないと主張することを許すとも読める。これは詭弁でないか。
指針には、曖昧さを残すべきではない。

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8)火山に対する規定を設けなければならない。
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【理由】
日本は地震列島であり、火山列島である。耐震審査指針の改定に、火山問題が欠落している。
気象庁の地震と火山の解説によると、日本の火山は、海のプレートが陸のプレートの下に沈み込むことに関係している。このため、日本の火山はプレートの境界に平行な帯状の地域に密集している。
火山フロントでは、新たな火山の誕生も考えられる。事実、十和田湖は十和田火山の巨大噴火で生じたカルデラ湖であるが、20万年前に初めて噴火したとされている。
火山フロントの周辺や、巨大噴火が繰り返されている地域では、地震対策-耐震審査とあわせて、火山対策の審査がなされなければならず、その指針が必要である。
カルデラを生じるような巨大噴火は、南九州や東北、北海道では、活断層が対象とする後期更新世以降でも何回も起こっている。巨大噴火では噴火口から50km~100kmの範囲を火砕流が襲っている。
こうした自然現象に工学的対処は不可能であり、火山地域を回避するしかない。
火山フロントから一定の範囲には、原子力施設を設置してはならないとする禁止規定が必要だと考える。

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9)活褶曲を地震との関係で記述していない指針は改める必要がある。
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【理由】
地震は地下の現象であり、地表部に現れる活断層は、地下の岩盤破壊が地表に現れた結果でしかない。
地表部の地質が新しく軟らかい場合、地下の岩盤破壊は、地表部の地層の曲がり-活褶曲となって出現している。
従前から、東京電力は、活褶曲は地震活動を伴わない変動であるとの認識を示し、羽越活褶曲帯の中に立地する柏崎刈羽原発の耐震性に活褶曲に伴う問題はないと主張している。
指針には、活褶曲を地震との関係の記述が見あたらないので、明記する必要がある。

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10)陸上の活断層活断層セグメントの連動を明記すること
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【理由】
従前、地質調査は施設から30km範囲を対象としていた。そのため、対象範囲内の活断層セグメントのみで評価する場合としていた。
東京電力の柏崎刈羽原発では、1975年に、長さ17.5kmの気比の宮断層がマグニチュード6.9の地震を起こすとして安全審査に申請し、1977年に設置許可が出されている。
2004年10月13日(新潟県中越地震の一〇日前)、地震調査委員会は、気比の宮断層を含む長岡平野西縁断層帯は長さが83kmで、地震規模はマグニチュード8.0との見解を示した。
長岡平野西縁断層帯は、北から角田弥彦東縁断層群、鳥越断層群、関原・上富岡断層群、片貝断層群の各セグメントがある。
東京電力は、現在でも、活動するのは鳥越断層群と片貝断層群だけであり、関原・上富岡断層群は断層ではない。各断層群は個別に活動するもので同時に活動することはないとし、申請当時の気比の宮断層がマグニチュード6.9の地震で十分だとしている。
いずれのサイトも事業者の電力会社が、従前の原子力施設の耐震設計で想定する地震規模は、活断層の単位セグメントのみを評価して決定している。しかも、事業者の電力会社が地表で認定する活断層は短い。先般も中国電力島根原発の近傍の宍道断層で中国電力の認定区間の東外でトレンチ掘削が実施され、中国電力の主張の誤りが明らかになった。
近年の調査では、一連の断層帯では、各単位セグメントの複数が連動して一緒に動いて大きな地震となることも、単独の単位セグメントだけが動く地震があることも明らかになっている。
原子力施設の耐震設計に際しては、最大の地震規模を想定しなければならない。
事業者・電力会社が、耐震経費を削減しようとして想定地震を小規模に設定したい意図が働いていることの事例は前述したが、これを規制する指針でなければ無意味である。活断層から想定する地震は、断層帯全体の連動を考慮するものでなければならない。
活断層セグメントの連動を明記していない現在の指針案は、活断層セグメントの連動を明記する必要がある。

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11)プレート境界地震の連動を明記すること。
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【理由】
近年の津波堆積物の研究成果から、プレート境界地震では、通常のプレート間地震に比較して極めて大きな地震の発生が確認されている。
2004年12月のスマトラ沖地震でも、複数のセグメントが連動して破壊してマグニチュード9.0の超巨大地震となって大津波がインド洋沿岸を襲い、数十万人の命が失われた。
これらの事実は、指針にプレート境界地震の連動を明記する必要があることを示す。
しかし、改訂指針案にはプレート境界地震の連動が具体的に記載されていない。
東北電力の女川原発が三基ともスクラムした、2005.8.16に発生した宮城県沖地震は、単独のセグメントが活動したプレート境界地震である。この地震は想定より小さい、遠くの地震であったが、想定を超える揺れが観測された。
太平洋側の原子力施設の耐震設計指針には、広範囲のプレート境界地震の連動を明記すべきであるが、記述がない。

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12)基準地震動Ss,弾性設計用地震動Sdが明確化にされていない。
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【理由】
指針案は、基準地震動Ssをα倍して弾性設計用地震動Sdとするようになっているが、αに関して明確な規定がなされていない。
基準地震動Ssを大きく設定しても、弾性設計用地震動Sdが小さければ、現行指針と変わりない。
係数αは、現在の指針で妥当とされた、東北電力の女川原発で想定した限界地震を超える揺れが観測された事実に鑑み、絶対に起こらない値となるように設定しなければならない。
弾性設計用地震動Sdは、想定される最大地震の地震動としなければならない。
係数αを明記しない指針は、部会関係者の責任放棄である。
基準地震動Ss,弾性設計用地震動Sd、係数αを明確化しなければならない。

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13)委員選任が恣意的であったと疑惑をもたれてはならないと考えます。主査 青山氏は民間検査機関「日本ERI」の技術顧問なら、委員を辞職して下さい。辞職しないならその理由を公表して下さい
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【理由】
毎日新聞2006年4月20日には原発耐震検討:委員の過半数が業界団体委員 安全委分科会との報道があります。
世間を騒がしているマンションの耐震偽装事件では、民間検査機関「日本ERI」が業務停止を受けました。
この「日本ERI」の会社概要
www.j-eri.co.jp/gaiyo.html
には 耐震指針検討分科会の青山主査と同一人か別人か不明ですが、技術顧問のところに青山 博之 東京大学 名誉教授 とあります。
姉歯事件のマスコミ主張(安全率と許容値が関係しています。-基準の50%しかない等々は安全率が3であれば33%で十分となる)と原発耐震問題の電力会社の主張は酷似しています。
こうした社会情勢の中で、耐震指針検討分科会の青山主査が、姉歯事件に関係する「日本ERI」の技術顧問の青山博之氏と同一ならば、指針の信頼性に疑惑をもたれかねません。
事実関係の公表を求めます。
同一人ならば、指針確定前に辞職して下さい。辞職しないならその理由を公表して下さい。耐震指針検討分科会の信用に関わることです。
別人なら青山主査にお詫びします。

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各地住民による参考例

耐震設計審査指針「残余のリスクについて」

この文章の末尾にある「実行可能な限りそれをなくすための努力」というのでは、まったく不十分ではないでしょうか。これでは、発電所の作業員や周辺住民、および風下地域の住民は、人体実験のモルモットにされているのと同じだと思います。
 これまで、電力会社や原発立地自治体は、繰り返し原発の安全性を住民に説明してきました。浜岡原発においても、中電や御前崎市は、「チェルノブイリ発電所と日本の原子力発電所は、基本的な仕組みが異なり安全文化も違うことから、日本の原子力発電所では同様な事故は起こり得ないものと認識しています」と言っているように、安全だからと説明されてどこの住民も原発を受け入れてきたのです。この「残余のリスクについて」の項目は、それを真っ向から否定するものです。
 言い換えれば、リスクを承知の上で原子力政策を進めるということ。それはひとつ間違えれば国家の崩壊にもつながりかねません。それだけの重要事と認識しているならば、「実行可能な限りそれをなくすための努力」などというきれいごとで片付けられるのがまったく不思議です。これは国会で審議すべきほどの問題ではないですか。
 それができないのであれば、この耐震指針全体が意味のない、国民の安全を守るにはまったく不十分であると理解します。

「残余のリスク」について

 スマトラ地震でもあきらかなように、想定外の災害が起こりうる可能性大である。今まで、地震による原発事故の被害を及ぼすことはないと言い切ってきた国に、非常に深い不信を感じざるを得なかったが、今回「残余のリスク」を認めたことは当然である。
 しかし、可能性は低いと言えども、いったん事故が起こった場合は、立地的にも浜岡原発は地震断層の上に造ってしまったこともあり、大都市に及ぼす影響大であり、日本全体に及ぼす被害は明白である。新しい指針を満足させ得ない既存の原発は、運転停止の英断をすべきである。

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各地住民からの提出済み意見

(意見)
「3.基本方針」について、

「施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性があり、施設に大きな影響を与えるおそれがあると想定することが適切な地震動に対して」とある部分は削除し、これに代わり、「いかなる地震動に対しても」と記載すべきである。

(理由)

 当該箇所の直後にある「(解説)」の部分にある、「これは、旧指針の「基本方針」における「発電用原子炉施設は想定されるいかなる地震力に対してもこれが大きな事故の誘因とならないよう十分な耐震性を有していなければならない」との規定が耐震設計に求めていたものと同等の考え方である」との部分は、承服できない。
 「想定することが適切な地震動」を想定し、想定外の「残余のリスク」を是認するような考え方と、「想定されるいかなる地震動に対しても」危険がないよう想定・対策することを求める考え方とは明らかに異なっているのであって、これらが「同等の考え方」であるというのは、恣意的な解釈であり、通常の日本語の読み方からかけ離れている。社会通念上、国民がそのような考え方を旧指針から了知することは不可能である。

 原子炉施設においては、万に一つの事故も起こってはならないのである。原子炉からいったん放射能が漏出することになれば、国民の生命・財産への損害は甚大かつ回復不能であり、国はそのような危険をゼロとする義務を国民に対して負っている。
 「(解説)」にいう「残余のリスク」を是認するような考え方を国が慫慂することは決して許されてはならない。しかも、そのような考え方は、これまで国や立地自治体が、国民・住民に対し、再三にわたって原子炉施設の安全性を強調してきた経緯・態度とも矛盾する。


 この見地からすれば、本件指針案は、旧指針の基本方針から明らかに後退しており、看過できない。旧指針の規定を参考に、明示的に「残余のリスク」を許容しない形に指針を策定すべきである。
 よって頭記の意見を提出する。
以上

「耐震指針案についての意見・残余のリスクについて」

 今回25年ぶりに、全国の原発の「耐震指針」というものを見直すことになった事を知り、意見させていただきます。
 私は、昨年からアクティブ試験運転に入った六ヶ所村の使用済み核燃料再処理工場がある青森県に住んでいます。率直にいって日々不安な気持ちです。
「何か事故がおきなければいいな」とか「もし放射能漏れがあったらどうやって逃げたらいいのだろう」とかたまに真剣に考えることがあります。
 事故は人間が誤って犯すものでもあり、防げるものでもありますが、地震は人間の力で止めることは出来ません。だから万が一原発の近くで想定外の大地震が起これば放射能が漏れるかもしれない。そのことを国は今回はっきりと「残余のリスク」として文章にしましたが、命に関わるリスクが少しでも残されている原発事業を日本は今後も進めていかなければいけないのでしょうか。残余のリスクが考えられる限り私は原発の建設をこれ以上すすめるべきではないと思います。命はみな公平にあるはずです。原子力発電所でつくられた電気を享受しているすべての人がこのリスクを理解できるよう国はもっとこのことを多くの市民に伝えていかなければならないと思います。

「残余のリスク」について

 「施設に重大な損傷事象が発生すること、施設から大量の放射性物質が放散される事象が発生すること、あるいはそれらの結果として周辺公衆に対して放射線被ばくによる災害を及ぼすことのリスク」に対しては、「存在を十分認識しつつ、それを合理的に実行可能な限り小さくするための努力が払われる」だけでは不十分、かつ無責任である。「策定された地震動を上回る地震動」に関しても、「地震に起因する外乱によって周辺の公衆に対し、著しい放射線被ばくのリスクを与えないようにすることを基本」とすべきである。

「震源を特定せず策定する地震動」について

 鳥取県西部地震はM7.3だったが、活断層は事前に把握されていなかった。震源を特定せず策定する地震動の規模はM7.3以上の地震とすべきである。

「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」について

近くの活断層が地下で連動して大地震が起きる可能性も考慮すべきである。

「地震随伴事象に対する考慮」について

 マグニチュード7前後より大きな直下型地震では、強固な岩盤も変位・変形する。「原発を支える岩盤あるいは地盤が地震時に変異・変形しても、施設の安全機能が重大な影響を受けるおそれがないこと。」を明記すべきである。

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発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針(案)に対する意見

全体として・・

 今回の見直しで、どれだけの安全性が確保されるか・・という事が重要です。
特に、老朽化の進む既存原発や関連施設、既存原発より毒性や危険性の高いプルトニウムを利用する、プルサーマルや、再処理施設について、核燃料冷却プールも含めて、危険性をどこまで想定されていらっしゃるのでしょうか?

3.基本方針の「充分な支持性能をもつ地盤」について、既存原発についての疑問

 現在の原発立地場所は、海岸に近い、人口密度の低い所という点が主に考えられ、真に地盤として、原発に向いているかどうか・・という点は、軽視されていませんか?
 東海地震の震源域の真ん中であったり(浜岡)中央構造線に近接していたり(伊方)・・
地震列島たる日本は、陸地も沿岸部も活断層だらけです。
この日本の中、地質学や、地震の専門家の意見として、原発及び関連施設の立地可能な場所が存在するとの確認はとれているのでしょうか?
近年の温暖化によるとみられる、海面上昇が、津波を巨大化させる危険性はないのでしょうか・・

3-(2)残余のリスクについて

 認められたのは、現状を正しく判断されたものと思いますが・・
であればこそ、いかにリスクを最低限でおさえるか・・こそが問われます。
・防災が可能であるのか
・事故が起こっても、早い段階で施設内に被害を封じこめるのか・・
・長年の間に外に影響が出ないのか
・放射能による汚染の可能性や被害程度はいか程なのか
・施設内や、近隣住民が安全に速やかに避難できるのか
・二次災害の危険性はないのか・・
チェルノブイリや、東海村のように、ヒバク覚悟の消火作業が許されるのか・・

いずれにしても、通常時と違い、消防やレスキュー隊の到着にも時間がかかるでしょうし、
同時多発的な災害では、到着不可能な事も充分考えられます。
実際、現地で暮らす方々は日々不安の中にいらっしゃるのです。
もちろん、大事故ともなれば、日本という国事態の存亡にかかわるでしょう。
海外にも大きな影響を与えることは、チェルノブイリで経験済みです。
自分たちも、狭い国土の中、被害を受けることは、間違いありません。
故に責任の所在をはっきりとさせる必要があります。

たくさんのデータを持つ事業者と、許可を出した国の責任です。

事業者・・原発震災が起こった時の、人的被害、環境への影響、経済的被害等の評価を、各施設ごとに行い、被害想定と、各事業者の体力をハカリにかけるべきではないでしょうか・・
 防災体制や、非難、復旧の体制を用意できなければ、設置を取り消す・
運転の凍結の上、安全管理の義務を課すぐらいの覚悟がいると思います。

国・・とにかく、安全でない場所の施設を洗い出し、運転や、建設を差し止めるべきです。
 放射能による汚染をしらせる、全国的なモニタリングポストのネットワークを構築する必要性を感じています。
少なくとも、子ども達の集まる施設の近くには、(原子力艦船や、数々の放射性物質も遠くの事ではなくなってきておりますし)必需品だと思います。
 どうしても、原発をやめないのならば・・集団移民計画もたててください。
(玄海がプルサーマルで大事故を起こした場合、九州、山口は、居住不可能になるとの予測もあります。
浜岡はもっと悲惨でしょう。)

もっと、大切な事がたくさんあるのでしょうが、以上です。

つたない意見ですが、一所懸命考えました。
よろしくお願い申し上げます。

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原子力安全基準・指針専門部会の見解に対する意見

今回の見直しで、どれだけの安全性が確保されるか・・という事が重要です。
特に、老朽化の進む既存原発や関連施設、
既存原発より毒性や危険性の高いプルトニウムを利用する、
プルサーマルや、再処理施設について、核燃料冷却プールも含めて、
危険性をどこまで想定されていらっしゃるのでしょうか?

地震列島たる日本は、陸地も沿岸部も活断層だらけです。
この日本の中、地質学や、地震の専門家の意見として、
原発及び関連施設の立地可能な場所が
存在するとの確認はとれているのでしょうか?

残余のリスクについて

 認められたのは、現状を正しく判断されたものと思いますが・・
であればこそ、いかにリスクを最低限でおさえるか・・こそが問われます。
リスク情報が、正しく生かされ、事故を予防原則で防がれますよう、お願い申し上げ
ます。

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各種指針類における耐震関係の改訂等について(案)に対する意見

今回の見直しで、どれだけの安全性が確保されるか・・という事が重要です。
特に、老朽化の進む既存原発や関連施設、
既存原発より毒性や危険性の高いプルトニウムを利用する、
プルサーマルや、再処理施設について、核燃料冷却プールも含めて、
危険性をどこまで想定されていらっしゃるのでしょうか?

地震列島たる日本は、陸地も沿岸部も活断層だらけです。
この日本の中、地質学や、地震の専門家の意見として、
原発及び関連施設の立地可能な場所が
存在するとの確認はとれているのでしょうか?

特に、1-(9)「高速増殖炉の安全性の評価の考え方」・・
規定の変更の必要性はない・・との事ですが、
「もんじゅ」は、配管が薄い上にナトリウムを
冷却材としている為、危険で、普通の原発よりも、
地震に弱いと聞き及んでおります。
訴訟で指摘された活断層もふくめて、計画の根本的な
見直しが必要ではありませんか?

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耐震設計審査指針(案)に対して

伴英幸(原子力資料情報室・共同代表)

1.意見
基本方針では、旧指針の「建物・構築物は原則として剛構造とする」を削除せずに残しておくべきである。

理由
ここでは設計技術の進歩と一部の原子力施設における免震構造の適用実績などを理由としてあげている。一方、原子力発電は今では60年運転を認める方向に進んでいるが、適用実績はこのような長期にわたる実績ではない。従って、設計技術の進歩や実績が長期にわたる施設の利用にたいして、充分な安全を保証するまでには至っていないと考える。現段階での削除は時期尚早であり、残しておくべきである。

2.意見
解説「『残余のリスク』の存在について」を削除するべき

理由
 耐震指針検討分科会の報告には「定量的目標値等の判断基準が明確になっていない現状では、改訂指針において『残余のリスク』について言及することは不適当ではないかとの意見も出された」とされている。この意見を支持し、削除を求めるものである。
 さらに、リスク論は議論の多いところで、事故でいえば、その発生確率と事故によってこうむる被害との積で表現されるものと考える。この観点で見ても解説文は曖昧である。このままでは策定された地震動を上回る強さの地震動がおきる確率のみ問題となりかねない。このようなリスク論は避けるべきであるとも考えるからである。

3.意見
解説1.基本指針について(1)で、「地震に起因する外乱によって周辺の公衆に対し、著しい放射線被ばくのリスクを与えないようにすることを基本とすべきである」とあるが、「リスク」の単語を削除するべき

理由
解説にいう残余のリスクを削除することと関連して、ここでもリスクという言葉を入れない方がよい。

4.意見
基本方針の中に施設に大きな影響を与えるおそれがあると想定することが適切な地震動による地震力に加えて、「適切な余震の地震動による地震力に対しても」を追加するべき。

理由
耐震指針検討分科会報告書には余震も含める意見が出、基準地震動の策定が適切に行なわれることで対応しうるとして、書き込まれなかった経緯が書かれている。しかし、本震で持ちこたえた家屋が余震で倒壊することもある。指針案では弾性設計用地震動を基準地震動の1/2を下回らないとしているが、宮城県沖地震によって女川原発で設計用限界地震S2を超えたことを考えると、1/2で充分とは考えられない。そこで、余震による評価も方針の中に明記しておくべきであると考える。

5.意見
基準地震動の策定では、その策定過程に、地震学会など地震専門家の判断を反映させるシステムを組み込むべきである

理由
もんじゅ事故やJCO事故など、原子力事故と安全審査に関するこれまでの経験に照らして考えると、一次審査では事業者が策定した基準地震動の妥当性を事業者の調査範囲内で、二次審査では一次審査の対象範囲内で行なわれることになる。
基準地震動の策定に当たって、その参考となる活断層やこの長さについて事業者と活断層に関する専門家と意見が食い違う場合が見られる。最近の事例では、宍道湖断層に関する新しい発見を事業者は認めていない。事業者が活断層の長さを小さくみる傾向にあることから、基準地震動策定に関する客観性を持たせることが必要である。

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阪上 武(福島老朽原発を考える会)

意見
 「残余のリスク」の存在を認めるのであれば、これが基本方針の根本的な変更であることを明記した上で意見を求めるべきである。

理由
 「およそ現実的でない」とはとてもいえない昨年8月の宮城県沖の地震により、女川原子力発電所で観測された値が 「およそ現実的ではないと考えられる限界的な地震による地震動」であるS2をあっさりと上回ってしまった事実は、旧指針の内実が、旧指針の「発電用原子炉施設は想定されるいかなる地震力に対してもこれが大きな事故の誘因とならないよう十分な耐震性を有していなければならない」という基本方針を満たすものではなかったことを明らかにした。
 新指針案が「策定された地震動を上回る強さの地震動が生起する可能性は否定できない。」と「残余のリスク」を認めたことは、いくら「新たな知見の蓄積」や「著しい改良及び進歩」を取り入れたところで、「およそ現実的でない」地震により「想定されるいかなる地震力」に対しても耐震性を有する設計などできないという現実を反映している。この点、新指針案の解説が、新指針は旧指針の基本方針と同等であるとしているのは欺瞞であり、この部分の記述は改めるべきである。
 立地地域の住民の中には、原子力発電所がおよそ現実的でない地震にも耐えうると信じている方も多いのではないだろうか。国は、そのような設計が不可能であることが明らかになったので、新指針案では基本方針を根本的に変えたことをきちんと説明したうえで、この変更の是非を問うべきである。その結果、了解が得られない場合には、原子力発電所の停止を含めた措置をとる必要があると考える。

意見
 「残余のリスク」の存在を認めるのであれば、これを最小限とするために、「残余のリスク」の可能性のある地域での原子力発電所の建設や運転を許可しないなどの措置をとるべきである。

理由
 「残余のリスク」については、確率論的評価について議論する前に、このリスクを最小限にするための措置を講ずるべきである。設計で対処できないのであれば、立地の段階から対処すべきである。例えば、震源断層が原発直下にあることが明確になっている浜岡原子力発電所など、「残余のリスク」が生じる可能性がある地域については、原子力発電所の立地の許可をすべきではなく、既存の施設に遡及適用すれば、運転中の原子力発電所の停止を含めた措置が必要となるであろう。こうした点について、耐震設計審査指針だけでなく、立地指針を含めての検討が早急に必要である。