美浜3号事故から2年を前に

美浜3号事故から2年を前に

⇒美浜3号配管事故に関する保安院・関電のシナリオは「7月中旬に未検査を認識し放置を指示」報道と両立するのか(2007年1月)

2004年8月9日に発生した美浜3号配管破断事故からまもなく2年をむかえる。電力自由化と原発老朽化が並行して進行するなか、基本的な老朽化管理と労働安全確保すらできていないことを示した美浜3号事故は、大きな変更を加えられつつある原発の設備管理・検査のあり方について深刻な問題を提起している。

1.事故への基本的シナリオが不透明なまま残されている

 関西電力が事故箇所の「未点検を認識した時点・経緯」および「余寿命評価をしたか否か」について不明のままである。事前に未点検を知っていたが放置したという情報が、事前には知らなかったという情報に変貌していった。これは警察の捜査における故意過失の評価や、再開の是非にもつながる重要な点である。
 現に「同発電所機械保修課の複数職員が遅くても7月中旬には、運転開始以来、配管が一度も点検されていなかったことに気づいていたことがわかった」と事故一年後、読売新聞が報じている。しかし関電はもとより事故調・行政も調査を深めず、事故2年経過した現在もその点は曖昧にされている。関電は事故後の対策として、トップマネジメントの強化を掲げたが、問題は逆で、幹部たちを守るために事故の経緯が不透明にされているだけではないか。この点をクリアにしない限り、組織文化の改善も何もない。未点検を認識した時期と余寿命評価の有無についての事実が明らかにされるべきだ。

・関西電力美浜原発3号機の蒸気噴出事故で、関電から配管検査の委託を受けていた系列の検査会社「日本アーム」(本社・大阪市)が5年前、事故で破損した配管が検査対象から漏れていることを把握していたことが10日、わかった。……日本アームなどによると、99年4月と00年8月の2回、三菱重工業の担当者から「美浜原発3号機と構造が似ている発電所で配管が薄くなる減肉現象が確認された。美浜原発3号機の配管は定期検査の対象には含まれていないので、点検した方がよい」との内容の連絡を文書などで受けた。(朝日新聞2004/8/10)
・2003年11月……「「日本アーム」(本社・大阪市)が昨[2003]年11月、破損個所が同様の原発では交換・補修されているのに、これまで点検されていなかったため同発電所の機械保修課の担当者に点検を提案した。この時に同発電所担当者は初めて検査漏れに気付いた。担当者は、破損個所の前後にある配管曲折部と、同じ構造の美浜2号機にある同様配管の摩耗が少ないなどを理由に、破損配管部分も「大丈夫だろう」と漠然と判断したという。」(読売新聞2004/8/10)
・2004年7月はじめ……大飯1号で配管減肉を確認
・7月中旬……「機械保修課の複数職員が遅くても7月中旬には、運転開始以来、配管が一度も点検されていなかったことに気づいていた」「破損個所が28年間未点検のまま放置されていたことに、同発電所が事故1か月前に気づいていた」(読売新聞2005/8/10)
・「美浜3号機では同[7]月中旬、破損個所を含め、耐用年数を過ぎた可能性のある未点検個所が約30か所あることが判明した。ところが、同支社は、配管のすり減り具合を推定する計算式で耐用年数を確認するなどの措置を取らず、未点検個所の点検は調査結果が出た直後ではなく、通常の定期検査で行うよう各発電所に指示。」(読売新聞2007年1月7日)
・「同[若狭]支社(原子力事業本部に統合)は、事故の約1か月前に行った調査で、耐用年数を過ぎた可能性がある個所に気づきながら、点検を先送りしていた。……同[7]月中旬、美浜3号機では、運転開始以来、28年間点検されていなかった個所など、未点検個所が約30か所あることが判明していた。ところが、同支社は、耐用年数を確認するなどの措置を取らず、通常の定期検査で対処するよう、発電所に指示していた。」(読売新聞2007年1月7日)
・7月23日……関西電力本店から若狭支社に指示文書を発出
・7月30日……若狭支社から各発電所サイトに指示文書を発出
・8月3~4日ころ……追加点検すべき箇所を抽出・集計中に美浜3号の事故箇所の未検査を認識(「点検リストのチェック作業を進める中で、未点検箇所の一部として当該部位を抽出したが、既に次回定期検査において点検する計画であったことを確認した」……2005/3/1関電報告書)
・8月9日……美浜3号配管破断事故

2.配管管理の現状は大丈夫か

 配管破断との関連では、配管管理方法が問題となる。関電および各社が美浜事故後、配管管理方法を安全側に改善したのかどうかは必ずしも自明でない。美浜3号事故のあと、他の多くの原発でも不完全な配管管理の実態が明らかになった。原子力安全・保安院は2005年2月に配管管理に関する暫定的な通達を出したが、その後各社がどのような配管管理基準を用いているのか、現在の各社の配管管理基準を公開するべきである。また基準があったとしても、関電が行なっていたように、都合のよい計算で交換を先送りにするような「不適切な配管余寿命管理の常態化」では意味がない。運用実態も再確認されるべきだ。
 事故後、日本機械学会のもとに配管減肉対応特別タスクが設置され、配管管理に関する民間規格を作成中である。その後行政上の基準に昇格すると思われる。それがどんなものになるのか、本当に事故の意味を反映した安全強化になるのかそれとも規制緩和になるのか、維持基準との整合性を意識したものになる可能性があり、進行状況を注視すべきである。
www.meti.go.jp/press/20050218007/20050218007.html
www.meti.go.jp/committee/materials/downloadfiles/g41213a7150j.pdf
www.jsme.or.jp/std/pgc/kouchi/PWTM_kouchi_annai.htm
www.jsme.or.jp/std/pgc/kouchi/PWTMTPS_kouchi_annai.htm
www.jsme.or.jp/std/pgc/kouchi/PWTM_kouchi_kekka.htm
www.jsme.or.jp/std/pgc/kouchi/pwtmtps_kouchi_kekka.htm
www.jsme.or.jp/std/pgc/KAIGI/PAPETASK.htm

3.配管以外の弱点は是正されたか

 美浜3号事故で噴出した蒸気は、密閉の失敗のため中央制御室にも進入した。またタービン動補助給水ポンプ流量制御弁A,B,Cを開けようとしたところA,Cで失敗した問題はバネが弱かったという初歩的欠陥であった。保安院は他の原発について点検指示を発出したが、その後、他の原発で問題が確認されなかったのか、具体的かつ網羅的に現状が報告されるべきである。

4.労働者や公衆の安全に反する力学が作用している

 美浜事故調は、関電が組織文化の改善努力をしているとしたが、その後も美浜3号では配管の刻印うち変え問題が発覚し、最近では水漏れ事故もあった。それらの調査報告で、基本的な問題が改善されていないことが反省として述べられることの繰り返しである。定検前に準備作業の名目で作業させたことで被災を招いたのが美浜3号事故の基本的問題点だが、今後は定検前に労働者を現場に入れて作業させないということすら実現されていない。
 関電の配管管理は劣化に追従する維持基準的な方法だったが基本的なところで失敗していた。維持基準は老朽化の進展が漏れなく把握できることを前提としているが、最近も予期しない制御棒の亀裂や再循環の亀裂が当初の検査で把握しているよりも圧倒的に大きいなど、老朽化の把握は建前でしかなく実態が追いついていない。美浜3号事故は電力・原子力産業にとっては定検合理化という宿願の具体化の矢先、のど元の骨となったであろうが、労働問題に照らしても公衆安全に照らしても、美浜3号の運転再開や、「検査の在り方検討会」を象徴とする美浜3号事故の意味に反する動きは認められない。

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