六ヶ所再処理工場に関する緊急アピール

六ヶ所再処理工場に関する緊急アピール

 青森県六ヶ所村の核燃料再処理工場で、試運転の最終段階のアクティブ試験がごく近いうちに始まろうとしています。これは原発の使用済み燃料を使うもので、実質的に工場の運転開始を意味します。

 この工場がいったん動き始めると、工場周辺の環境がいちじるしく汚染されることが確実視されます。また、この工場が核軍縮に觝触し、核拡散へ手をかすことになります。

 環境上かつ国際関係上の重大な変化が起ころうとしているいま、沈黙していることはこの動きを認めることになってしまいます。そこで、この問題の重要性を指摘し、ひろく国民のみなさまで議論していただきたいと考え、緊急に提言いたします。

一、使用済み燃料の再処理工場は、平常時の運転においても大気中、海水中へ相当量の放射能を放出せざるをえない構造になっています。先行のイギリス、フランスの再処理工場の周辺が放射能で汚染され、人にもその他の生態系にも深刻な影響を及ぼしていることを私たちは知っています。

 クリプトン、トリチウム、炭素、ヨウ素などの放射能の工場からの放出量は公表されていますが、これらはあくまでも計算上の目標値としてあるのみで、これが守られる保証はありません。かりに守られたとしても、大気と土壌、海が汚染され農産物、魚介類の放射能汚染が長年にわたって続き、現在と未来の人と生態系にとりかえしのつかない悪影響を与えることは避けられません。青森県や岩手県の海やみちのくの豊かな大地、森、湖、渓流を放射能で汚してはなりません。

二、イギリス、フランスの再処理工場とは異なり、六ヶ所再処理工場から取り出されるプルトニウムはウランと1対1の割合の混合物(いわゆるMOX:モックス)になっているので核兵器の原料にはならない、なりにくいという主張が政府や事業者から繰り返しなされてきました。

 しかしIAEA(国際原子力機関)によれば、MOXは「特殊核分裂性物質で、かつ、直接利用核物質である」と規定され、一?三週間あれば、「核爆発装置の金属構成部分に転換できる」とされています。このことを日本の政府・外務省は国民にも青森県民にも隠し、あるいは言を左右にしたまま、六ヶ所再処理工場は核拡散に対して抵抗性があると言い張ってきました。政府の責任は重大です。

 この問題は昨年五月ニューヨークで開催されたNPT再検討会議でも議論になりました。六ヶ所再処理工場の稼働が他国の再処理正当化の理由として利用され、結果として核拡散を促すことがつよく懸念されます。

 イラン、北朝鮮の核問題に加えて、いまアメリカ・インドの核をめぐる取引で国際的な緊張が高まっています。日本の政治状況を国際的な政治関係の中で考えるとき、本質的な疑義を残したまま、六ヶ所再処理工場を動かすことは、大変危険なことと言わねばなりません。

そして、工場が大地震に襲われたら、結果としての放射能災害は通常の原発の比ではないことになる可能性があります。

 青森県と日本政府に、六ヶ所再処理工場のアクティブ試験の開始に十分慎重な姿勢を求めます。これは青森県民、岩手県民だけの問題ではありません。国民のみなさまに真摯で広範な討論を期待いたします。

二〇〇六年三月二三日

飯田哲也、池内了、石牟礼道子、石橋克彦、色平哲郎(佐久総合病院医師)、上野健爾、岡本厚、岡本三夫(広島修道大名誉教授)、奥平康弘、小田実、金子勝、鎌田慧、川崎哲(ピースボート共同代表)、櫛渕万里(ピースボート共同代表)、黒田洋一郎(科学・技術と未来社会論)、小出昭一郎、小林直樹、小沼通二、斎藤千代、佐々木力、澤地久枝、清水眞砂子、星川淳、松崎早苗、柳沢桂子、山口幸夫、綿貫礼子(五十音順)

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私たちは、六ヶ所再処理工場を動かさないよう訴えます。
cnic.jp/knowledgeidx/rokkasho