第3回アジア不拡散協議開催に際し、六ヶ所再処理工場の核拡散への影響について検討することを求める

外務大臣 麻生太郎殿

外務省軍縮不拡散・科学部長 中根猛殿

2006年2月13日

第3回アジア不拡散協議開催に際し、六ヶ所再処理工場の核拡散への影響について検討するとともに、同問題について懸念する米国のマーキー下院議員らの書簡に文書で回答することを求める

要請書

 去る1月27日、「米野党民主党のマーキー下院議員ら6議員は26日、日本原燃が使用済み核燃料再処理工場(六ケ所村)で計画する使用済み核燃料を使う試運転(アクティブ試験)をめぐり、核拡散上の「懸念」があるとして中止を求める書簡を日本政府に送った」との報道に際し、日本政府は、同日、内閣府、外務省、文部科学省、経済産業省の連名でこの書簡についての見解を発表しました。

 この見解は、書簡が「現時点では未だ日本政府には届いていない」との注意書きがついているとおり、書簡を読まないで書かれたものであり、書簡で挙げられている懸念に直接応えるものとなっていません。

 日本政府は、報道の当日に、書簡を見ないで見解を発表するという「迅速な」反応を示しておきながら、現時点では、未だにエドワード・マーキー下院議員らには文書による回答をしていないと私たちは理解しています。(もし回答がされているのなら、その文書の公開を求めます。)

 日本政府による米国下院議員らに対する返答がないまま、日本政府の見解発表だけが報道機関に対してなされ、同書簡に関し、2月7日に「フランスのビゴ政府特命原子力最高顧問が『再処理で核拡散上の危険性が高まるという考えは誤り』と指摘、再処理事業の先進国としての立場から日本の路線を支持する考えを示した」との報道が流れるなど、国際的な信義にもとる状況となっています。

以下の通り要請します。

 要請事項

一、本日、中根猛外務省軍縮不拡散・科学部長を議長に開催される第3回アジア不拡散協議において、六ヶ所再処理工場がアジア地域や世界全体の核拡散問題に与える影響についても真剣に討議するとともに、そのような話し合いに基づき、日本政府として、マーキー議員らに対し、書簡の内容に沿った回答をし、それを公表するよう要請します。

一、外務省内において、書簡への回答についての検討が、国際原子力協力室(外務省のホームページによると担当任務は「原子力の平和的利用(原子力の軍事的利用への転用防止に関するものを除く)」)でなされていると私たちは理解していますが、書簡で示された懸念は、まさしく「転用防止」や核拡散、軍備管理軍縮に関するものであるとの明白な事実に基づき、軍備管理軍縮課や不拡散・科学原子力課において六ヶ所再処理工場運転計画と核拡散との関係を検討し、計画見直しや書簡への回答についての議論を行うよう要請します。

 なお、政府見解は、電気事業者等が1月6日に公表した「プルトニウム利用計画」について原子力委員会が透明性の向上の観点から妥当である判断したと説明していますが、これは、書簡の懸念に応えるものになっていません。書簡は、日本の「余剰プルトニウムを持たないとの原則」を評価しながら、2003年末までに日本のプルトニウム保管総量が40.6トンに達している状況で「新しい再処理工場におけるさらなるプルトニウムの分離及び蓄積は、日本の方針に反するものであることは明らかです」と述べていますが、「利用計画」は、2004年末現在約43トンに達している日本の分離済みプルトニウムの利用について全く触れず、六ヶ所再処理工場で2005?6年度に分離される予定のプルトニウムについて、MOX燃料工場の運転開始予定の2012年以降、いつか利用する意思があることを各社が宣言しているだけであり、約43トンのプルトニウムと今回発表された「計画」との関係が明らかにされていないからです。書簡が指摘している通り、高速増殖炉計画が頓挫している上に、2010年までに16?18基の軽水炉で利用という計画が大幅に遅れ、軽水炉での利用が1基も実現していない現状からして、六ヶ所再処理工場の運転が計画通り進めば、日本の保有量は2010年末までに、約70トンの規模に達してしまいます。

 また、見解は、「六ヶ所工場においては、純粋なプルトニウム酸化物単体が存在することがないように、ウランと混合したMOX粉末(混合酸化物粉末)を生成するという技術的措置も講じられている」としていますが、これは、「テロリストたちによる核兵器の獲得」についての懸念に応えるものになっていません。強い放射能を持つ核分裂生成物から分離されてしまったウランとプルトニウムの混合酸化物(MOX)からプルトニウムを取り出すのは簡単であり、IAEAの規定でも、MOXは「特殊核分裂性物質であり、かつ直接利用核物質」と見なされ、「核爆発装置の金属構成部分に転換するのに要する時間」は、1?3週間とされているからです。

 最後に、日本政府から文書による回答がなされていない現状に鑑み、私たちは、市民による「政府見解」の試訳をマーキー議員らに送付するということを申し添えておきます。

グリーン・アクション代表 アイリーン・美緒子・スミス
グリーンピース・ジャパン事務局長 星川淳
原子力資料情報室共同代表 伴英幸
ピースボート共同代表 川崎哲