福島第一6号炉で制御棒のひび割れと破損

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福島第一6号炉で制御棒のひび割れと破損

『原子力資料情報室通信』380号(2006.2.1)短信

 1月9日、定期検査中の東京電力・福島第一原発6号炉(沸騰水型炉、110万キロワット)で、制御棒のひび割れと損傷がみつかった。最初にみつかったのは、炉心位置38?39にある制御棒1本のステンレス製(SUS316L)の被覆の表面のひび割れである。ひび割れの数は41本にのぼり、もっとも大きいものは長さ15センチであった。
 この制御棒はハフニウム板型と呼ばれるタイプのもので、中性子吸収材のハフニウムの板がうすいステンレス製のさやで包つまれ,多数の固定コマでさやに溶接固定されたつくりになっている。
 1月18日までに、この制御棒のさやには欠け落ちて無くなっている部分のあることもわかった。欠損部分は、制御棒の上部の、たて11センチ、よこ8センチの範囲で、めくれ上がった破損部が残されていた。
 その後の調査で、福島第一6号炉で使用していた同じ型の制御棒17本のうち、9本(欠損がみつかったものを含む)の制御棒のさやおよび、つなぎの部品(タイロッド)にひび割れのあることがわかった。これらは、中性子線量の比較的高い位置に装荷されていた制御棒で、中性子線量は、東京電力の推定によると4.4×10^21?5.0×10^21n/cm^2である。ひび割れの形状などから、中性子照射誘起型の応力腐食割れとみられる。
 従来、中性子照射誘起型の応力腐食割れにはしきい値があり、5.0×10^21n/cm^2以下では起こらないとされていたが、シュラウドなどでこれより少ない量でひび割れがみつかっており、今回の例からも、しきい値の考え方を見直す必要がある。また、他の原子炉で使用中の制御棒でも同様のひび割れがすでに起きている可能性がある。
 原子力安全・保安院は、1月19日、沸騰水型原子炉を運転する電力各社に対して、ハフニウム板型制御棒の点検や動作・機能確認を行なうよう指示をだした。
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以下既報

12月から定検中の福島第一原発6号(沸騰水型・110万kW・1979年運転開始)で、制御棒(出力調整用・ハフニウム板型)の動作に問題があったため確認したところひびを確認した。さらにシース(ハフニウム板の覆い、SUS316L製)がめくれ、その一部分は欠損。他の複数の制御棒のシースにもひびを確認している。保安院は19日、東電および他社のBWRに関しても確認を指示した。
www.tepco.co.jp/cc/press/06011903-j.html
www.tepco.co.jp/fukushima1-np/b45620-j.pdf
www.tepco.co.jp/fukushima1-np/b45613-j.pdf
www.meti.go.jp/press/20060119004/20060119004.html

沸騰水型炉の制御棒は断面が十字のブレード型で下から挿入される。今回のひびとめくれは制御棒上部にあった。めくれについて東電は運転中でなく検査中の動作確認で発生したものとしているが、「現時点での推定」である。

2005年7月
柏崎刈羽5号でハフニウムフラットチューブ型制御棒4本にひび。
www.tepco.co.jp/kk-np/futekigo/pdf/1707_02.pdf#page=3

www.nucia.jp

2003年10月
福島2-4でハフニウム板型制御棒にひび。
www.tepco.co.jp/fukushima2-np/4u1006-j.html

2003年6月
日本原子力発電敦賀1号でハフニウム板型制御棒にひび。
www.japc.co.jp/news/bn/h15/150626.htm
www.japc.co.jp/news/bn/h15/150627.htm

2003年5月
福島2-3でハフニウム板型制御棒にひび。
www.tepco.co.jp/cc/press/03052801-j.html

1997年12月
福島第2-1で制御棒がブレード膨れのため引き抜けず。
www.tepco.co.jp/cc/press/97120501-j.html
www.tepco.co.jp/cc/press/97121501-j.html
www.tepco.co.jp/cc/press/98012002-j.html

1997年10月
運転中の日本原子力発電・敦賀1号で、制御棒一本が膨れのため作動できず。
www.japc.co.jp/news/bn/h09/091024.htm
www.japc.co.jp/news/bn/h09/091107.htm
www.japc.co.jp/news/bn/h09/091118.htm
www.japc.co.jp/news/bn/h09/091203.htm
www.japc.co.jp/news/bn/h09/100120.htm

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