日本原燃、『アクティブ試験計画書』を原子力安全保安院に提出

日本原燃、『アクティブ試験計画書』を原子力安全保安院に提出-ウラン試験にひそむもうひとつの「構造設計」問題

◇『アクティブ試験計画書(使用済燃料による総合試験)』

12月22日、日本原燃は六ケ所再処理工場の『アクティブ試験計画書(使用済燃料による総合試験)』を、原子力安全保安院に提出した。同院は検討を開始した。
www.jnfl.co.jp/press/pressj2005/pr051222-1.html
www.meti.go.jp/press/20051222009/20051222009.html

・アクティブ試験は、同再処理工場の試験運転の最後の段階の試験だ。これより前、水・蒸気、化学薬品、ウランを使った試験が行われてきた。アクティブ試験では原発の使用済燃料を約430トン再処理する計画で、ウラン、プルトニウム、高レベル廃液が分離される。実際の操業と変わらない危険性が出てくるのである。

・これまでのウラン試験によって工場の施設・機器類がウランによって汚染されている。死の灰の塊である使用済燃料の再処理が開始されると、工場内は雑多な放射能と高放射線に強く汚染されるだけでなく、周辺環境への放射能放出が始まる。排気筒からクリプトン-85、トリチウム、炭素-14、ヨウ素-129などが排出される。また海岸線から3キロメートル沖に設置されている海洋放出管の放出口からは、トリチウム、炭素-14、ヨウ素-129、セシウム-137、ルテニウム-106、ストロンチウム-90、プルトニウムなど雑多な放射能廃液に混ぜて垂れ流しされることになるだろう。

・放出放射能には管理目標値が設定されているが、アクティブ試験では放出量がその値に収まるかどうかを確認することも試験項目に入っている。実際に出してみなければわからないというのだ。英仏の再処理工場の稼働実態をみれば目標値に収まるかどうかはまったく不明であり、たとえ大量の放出があっても試験段階ということで認められてしまうだろう。

◇ウラン試験は終わっていない:設計ミスの改造工事実施中

同工場では、現在「アクティブ試験」の前の段階である「ウラン試験」が継続中だ。それは「高レベル廃液ガラス固化建屋」、「第1ガラス固化体貯蔵建屋・東棟」の改造工事がおこなわれているためだ。改造工事が終了しなければ、ウラン試験の最後の段階の試験は実施できない。

・この改造工事が必要になったのは、2つの建屋の設計で日本原燃と設計を担当した石川島播磨重工が、キチンとした安全解析を実施せずいい加減な設計をしたためだ。さらにその誤った設計を原子力安全委員会や原子力安全・保安院が安全審査で見逃して事業許可を出し、さらに保安院の設工認審査でも見抜けず建設の認可を出したことが最大の原因である。国の”誤った”認可を受けた両建屋は、すでに建設を終了してしまった。今大きな問題となっている「マンションやホテルの構造計算書の偽造:姉歯問題」と似たようなことが、すでに六ケ所再処理工場では1年前に発覚していたのである。

・施設に30~50年間も貯蔵される高レベルガラス固化体は、温度管理を厳重にする必要があり、日本原燃の設計目標値は500℃以下である。ところが両建屋ではデタラメな設計の為に冷却能力が不足し、600℃以上になってしまう可能性が明らかになった。さらに問題はこのデタラメな設計が、他の建屋、英仏からの返還高レベルガラス固化体貯蔵建屋(西棟)の設工認審査中にたまたま偶然明らかになったことだ。

・このように両建屋の改造問題は原子力安全委員会、原子力安全・保安院ともに、原子力の安全確保に求められる最低の審査さえ行っていなかったことを明らかにしたのである。日本原燃だけでなく、国の安全審査への信頼性も大きく揺らいでいる。

◇スケジュール優先の試験計画提出

 六ケ所再処理工場の立地する青森県では、改造工事が終了しなければ次の段階の作業には進まないとしている。改造工事が終了しても、施設の検査等も残されている。この段階での『アクティブ試験計画書』の提出は、安全優先と地元の理解を得るという態度とは到底理解されないだろう。ウラン試験の結果も部分的にしか公表されておらず、試験全体の評価も終了していない。アクティブ試験の準備ばかりを先行させている日本原燃や原子力安全・保安院、原子力安全委員会が、安全性よりスケジュールを優先していることは明らかである。