原子力長計策定会議 意見と提案(第3回)

長計策定会議第3回会議への意見と提案

2004年7月16日
原子力資料情報室
共同代表 伴英幸

1)隠蔽行為を放置しては、原子力長計に対する「国民的合意」の端緒にすら着けない

 これまで原子力に関連する主な隠蔽や改ざん事件は多く報道されており、その多くが内部告発によって明らかにされています。都合の悪い情報を操作して『ブルドーザーのように』原子力政策を押し付けてきたことへの反省とそれを正すことを抜きにしては、その「信頼回復」はとうてい望めないと考えます(参考1)。
 電気新聞(04年7月13日付)によれば、12日に開催された青森県議会全員協議会の様子が第1面で報じられています。それによれば、「もう国は信用できないという県民は多い」「県民がもてあそばれているようだ。党としても結論はしばらく見合わせる」などの厳しい意見が自民党から出ています。
 隠蔽行為が問題になっているときに、政策議論にふさわしくないといった発言や再処理の方が高いのは当たり前と言った発言は(総合的な判断をすることがすでに話し合われていることを考えれば、なおさら)、「国民」への裏切り行為を続けてきたとの反省に欠けるものだと思います。これまでの様々な事故隠し・情報隠しが行なわれてきました(参考2)。原子力政策への「国民的合意」がないと指摘されていますが、一つ一つの対応がおろそかにしてきた結果ではないかと考えています。その意味からも原子力委員会の厳しい対応を求めます。
 また、再処理にかかる膨大な費用は、電気料金を通して市民が負担しています。再処理を継続することで、将来さらに膨大な費用負担を強いられる恐れがあるとすれば、現時点で立ち止まって検討して欲しいと望むのは当然のことです。

2)議論するべき諸点について

○使用済み燃料の直接処分(長期管理)は避けられない
使用済み燃料の処分場は受け入れてもらえないかの議論があるが、そうだとすれば、高レベル放射性廃棄物の処分場も受け入れてもらえないでしょう。むしろ、どちらも大変厄介な問題であるとの認識を共通にするべきです。さらに、仮に、再処理政策を進めたとしても、使用済みMOX燃料は何度も再処理することにはならず、直接処分せざるを得ません。この点も認識を共通にするべきだと考えます。
○電力供給の観点から見た、原発廃炉問題:原子力発電では、廃炉原発が増えてくることが予想できます。原子力発電による電力供給について、廃炉を加味して時間軸で見通すことは重要な作業だと考えます。これは、中間貯蔵される使用済み燃料の発生量をより実際に近い形で推定することに役立ちます。
○回収ウランの将来的な扱いについても明確にする必要があります。先のバックエンドコストの見積もりでは単に貯蔵されているだけです。処分にはTRU廃棄物ないしウラン廃棄物としての費用がかかります。再濃縮するには、濃縮工場の増設が必要になるでしょう。
○再処理―直接処分の定量的なコスト比較を行なう場合に、上記を含めて、より現実的な使用済み燃料発生量を推定し、また、コスト等検討小委員会で公表された18.8兆円は、いっそう現実的なバックエンドコスト費用の積みあげを再考するべきと考えます。
○プルトニウム利用の透明性が必要だとの認識は、異論のないところと考えますが、六ヶ所再処理工場から抽出されたプルトニウムの利用計画については発表されていません。余剰を持たないという国際公約を考えても、電力業界は六ヶ所再処理工場からの抽出プルトニウムの使用について明確にする必要があると考えます。

3)調べていただきたいこととして

<1> MOX新燃料・MOX使用済み燃料とウラン新燃料・ウラン使用済み燃料の主な核種ごとの放射能量および総放射能量の比較、発熱量の比較(時間による減衰を含めて)。
<2> プルトニウム・高濃縮ウランの国際管理がIAEAで話題となっていますが、国際管理にかんする議論の動向と現状に関してまとめてください。

参考1)

ロッカーを開けば秘密が一つ
原子力資料情報室 共同代表 西尾漠

 国会答弁でも存在が否定されていた、いわゆる直接処分と再処理の経済性比較が、1994年2月の総合エネルギー調査会原子力部会核燃料サイクル及び国際問題ワーキンググループに「核燃料サイクルの経済性試算について」として提出され、議論されていた。7月3日付の各紙は、いっせいにそのことを報じた。記事の中には、原子力環境整備センターが電力中央研究所から委託されて「使用済燃料の直接処分を考慮した核燃料サイクルバックエンド費用の検討」を1997年度に行なったとも書かれていた。
 7月6日には原子力委員会が、上記ワーキンググループ会合と同じく1994年2月に開催された長期計画専門部会第二分科会において、OECD/NEAの評価を基礎にしたコスト比較を検討していたことを明らかにした。OECD/NEAの評価とは、1994年7月に刊行された『核燃料サイクルの経済性』のドラフト版らしく、ワーキンググループ提出資料でも援用されている。
 さらに7月7日、電気事業連合会も1994~95年度に「各社の原子力部門のメンバーで構成される検討会を開き、直接処分を含むケーススタディを行っていた」として、その研究報告の要約を公表した。
 原子力委員会も電気事業連合会も、資源エネルギー庁のように国会答弁でというのではないが、やはり試算は行なっていないことを明言していた。それが、ワーキンググループ提出資料のコピーを入手したマスコミの取材を受けた資源エネルギー庁が「ロッカーから探し出した」途端に、次々と見つかりはじめたというのも不思議な話だ。
 ワーキンググループの議事概要を読むと、「STAにおいてもコスト試算はしている」と、STA=科学技術庁の森口泰孝核燃料課長(当時。以下、同様。行政機関や審議会、法人名も当時のもの)が発言している。前出のOECD/NEAの評価を基礎にした比較のことでないとすれば、まだロッカーの中にあるのかもしれない。
 また、6月21日の長期計画「新計画策定会議」で電気事業連合会会長の藤洋作委員は、同日付の日本経済新聞に同連合会が直接処分のコストを試算したという記事が出たことを「事実無根」と一蹴した。まるで試算をしていないのが誇るべきことであるかのような口吻には苦笑を禁じえなかったが、ともあれその後も日本経済新聞は、訂正記事どころか、同趣旨の記述を何度も繰り返している。

「失われた10年」
 7月8日の新計画策定会議では、日本生活協同組合連合会理事の渡辺光代委員や伴委員が、試算結果が非公開とされた経緯の調査と報告を求めた。伴委員は、「バックエンド事業に対する制度・措置の在り方について」の総合資源エネルギー調査会電気事業分科会中間報告案を白紙に戻すことと、六ヶ所再処理工場の建設を凍結することを強く要求した。
 10年前の審議会は非公開だったというのは当たらない。そうした一般論でお茶を濁されないように、伴委員は、入手したワーキンググループの議事概要を会議の場に提出したのである。ワーキンググループに示された「核燃料サイクルの経済性試算について」には、こう書かれていた。「核燃料サイクルの事業コストは最終的には消費者が電気料金として負担するものであるうえ、プルトニウム利用の経済性は国際的な議論の対象ともなっており、我が国の核燃料サイクル事業の経済性につき積極的に情報を公開し、国民の十分な理解を得ることが必要である」
 ところがこれに対し、中部電力副社長だった太田宏次委員がクレームをつけた。「個々のサイクル施設の試算まで積極的に公開することはいかがなものか」「例えば再処理コストの場合、(中略)もし、本当に発表され、それが非常に割高である場合サイクル事業が成り立たなくなるような数字が出てくる可能性がある」
 後段の発言や、日本原燃社長であった野澤清志委員が「六ヶ所再処理工場での再処理に係るコスト試算については、今少し時間を頂きたい」と言っていることからすると、問題の試算は中間報告のようにも見える。その点も含めて、積極的な公開が必要とされた情報が隠されてしまった経緯は、やはり明らかにされなくてはなるまい。
 7月5日付朝日新聞などの社説が指摘するように、当時、試算が公表され、きちんと議論されていたら、原子力政策は違っていたかもしれない。吉岡斉委員(九州大学教授)の言う「失われた10年」である。長期計画の策定と関わりのない話ではなく、「個別議題に入る前に説明と総括を」(渡辺委員)必要とする問題なのだと、改めて強調しておきたい。

選択肢が隠されてきた
 事業の遂行に支障が出るデータは公開しないということであれば、逆に、公開されているのは都合のよいデータだけということになる。新計画策定会議への提出資料を含め、基礎となる情報の信頼性が問われている。長期計画の安定性を求める意見も出されたが、その土台が誤っていた可能性があるのだ。
 ワーキンググループの議事概要では、東京電力常務の南直哉委員の、こんな発言もある。「電気料金が若干高くなろうと長期的判断から経営資金を割いても再処理事業に投入していく必要がある」。ならば、国に資金回収の制度・措置を望む理由は何もないだろう。
 コスト試算の結果が隠されてきた(試算の過程や根拠は今に至るも公開されていない)ことは、単に経済性のデータが隠されてきたのではなく、選択肢が隠されてきたことを意味する。「コストだけの問題でない」のは自明である。
 制度・措置中間報告は崩壊した。当てにすべきでない国の支援を当て込んだ六ヶ所再処理工場の建設は中止されるべきである。

参考2)過去の主な隠蔽・改ざん・捏造事例

明らかになった時期 事故や不正の内容
1976年7月 美浜1号炉で燃料棒折損事故
1982年9月 美浜1号炉で蒸気発生器細管損傷に違法の施栓工事
1986年11月 敦賀原発での故障隠しを日本原電に指示
1989年11月 能登原発の基礎工事にデータ改ざんの鉄筋使用
1991年7月 もんじゅの配管に設計ミス
1992年3月 もんじゅ蒸気発生器細管内で探傷装置が詰まるトラブル
1995年11月 東海事業所・プルトニウムに不明量
1995年12月 もんじゅナトリウム漏洩・火災事故で一連の情報隠し
1997年3月 東海再処理工場火災爆発事故で一連の情報隠し
1997年9月 原発配管焼鈍データ捏造
1998年10月 使用済み燃料輸送容器の中性子遮蔽材データ改ざん・捏造
1999年9月 MOX燃料検査データ捏造
2002年8月 定検時のデータやトラブル隠し
1961年 「大型原子炉事故の理論的可能性と公衆損害に関する試算」要約のみ国会報告