「原子炉格納容器の漏えい率試験規程」の国の規制へのとり入れに関する問題点

「原子炉格納容器の漏えい率試験規程」の国の規制へのとり入れに関する問題点

参考
www.cnic.jp/256

 9月27日に開かれた総合資源エネルギー調査会原子力・保安部会原子炉安全小委員会の会合を傍聴してきました。ここでは、原子炉格納容器に関する話題、とくに漏えい率試験に関する問題点をとりあげます。

■漏えい(率)試験の種類について

 定期検査のあいだに、原子炉格納容器の閉じ込め機能に対して行なう試験には3種類あります。それらは、原子炉格納容器バウンダリ全体を加圧して行なう全体漏えい(率)試験、原子炉格納容器バウンダリを構成するシール部材または貫通部について加圧して行なう局部漏えい(率)試験、原子炉格納容器隔離弁漏えい(率)試験です。
 これらの試験は、日本電気協会の「原子炉格納容器の漏えい試験規程」(JEAC 4203-1994)に定められたやり方に準じて行なうよう、「発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令」(通商産業省令第62号)の耐圧試験の項目の解説に書かれています。
 この日本電気協会の規程が2004年7月に「原子炉格納容器の漏えい率試験規程」(JEAC 4203-2004)へと名称とともに試験条件などが改訂されました。経済産業省の原子力安全・保安院は、改訂された漏えい率検査規定を規制の基準にとり入れるにあたって、原子炉安全小委員会の下にワーキンググループを設けて一定の技術的評価をし、評価書案が9月27日の会合で公表されました。

■全体漏えい試験の条件について

 たとえば、事故が起きたときの放射能閉じ込め機能をみるA試験においては、窒素や空気などで最高使用圧力の95%に加圧したとき、1日あたりの体積漏えい率が、沸騰水型炉で0.45%以下、加圧水型炉で0.09%以下におさまることが試験の合格基準です。
 一番問題だと感じたのは、事故を模擬した試験の条件の内容です。格納容器の内側と外側には、各配管系統ごとに電動機駆動や空気駆動の隔離弁が設置されています。前の規程では、想定事故後を模擬した状態で、隔離弁は内側を開いた状態、外側は閉じた状態で漏えい試験を行なうことになっていました。これは、配管破断などの大きな事故が起きた際に、重要な安全機能のうちの1つの系統が、それにつづいて動作するはずの系統も含めて、正常に動作しないことを想定したものです(単一故障の仮定)。原子炉設置許可申請の安全審査において、事故時の放出放射能による被曝評価の計算も、この仮定がもとになっています(この仮定が十分かどうかは別にして)。
 改訂された規程では、冷却材喪失事故後の状態を模擬し、その際、単一故障の仮定は想定せず、隔離弁は内側・外側ともに閉じている状態で行なう、としています。その理由として電気協会は、原子炉隔離弁の個別の機能は別の検査で確認するのだから、故障を仮定することはないと説明しています。改訂とり入れに当たって、保安院もこの理由を技術評価書案にそのまま引用して、試験条件の変更を是としています。
 しかし、たとえば、電気信号系統の故障が起これば内側隔離弁の不動作が起こりうることを保安院らは無視しているのではないでしょうか。これでは漏えい率試験で非安全側の検査結果がでることになるばかりか、安全審査にある単一故障の仮定の考え方にも反しています。

■不正な隔離弁操作が行なわれていた

 もうひとつの問題は、隔離弁の閉鎖方式についてです。試験前の隔離弁は通常の動作により閉鎖することになっています。自動で電動または空気駆動で閉鎖したまま試験を行なったときに、うまく閉まらなかったかもしれないからといって、手で増し締めするようなことはあってはならないということを規定しています。新しい規程では、増し締めについて具体的に記載を追加しましたが、この説明にあたった統括安全審査官は「一部のプラントでは試験時の増し締めが実施されていた」と発言しました( www.meti.go.jp/committee/summary/003226/ )。
 2002年の8月以降、東京電力をはじめとする原発の事故トラブル隠し問題の調査の過程で、すくなくとも1991年と1992年に福島第一1号炉で、定期検査の格納容器漏えい検査で圧縮空気注入などによる偽造工作があったことが明らかにされ、同炉は1年間の営業停止処分を受けました。また福島第一6号炉で格納容器から可燃性ガスを除去する系統の流量制御器の補正係数を20年以上にわたって改ざんし続けていたことも今夏に判明しています。
 上記の審査官の発言によれば、定期検査時に隔離弁操作に関しても行なわれていたということです。増し締めが行われたプラントの名称と実施時期を公表し、それらに対して厳重に処分すべきでしょう。(上澤千尋)

『原子力資料情報室通信』378号(2005.12.1)図版略
情報は執筆時点のものです

 


パブコメ結果として
www.meti.go.jp/feedback/data/i51205cj.html
「隔離弁の増し締めについては、当院が福島第一原子力発電所第1号機に対して平成14年11月28日に実施した「原子炉格納容器漏えい率試験」の立入検査において確認しております。これは、原子力安全委員会の規制調査においても確認されています。その後、平成16年5月に、定期検査として同プラントについての「原子炉格納容器格納容器漏えい率試験」を実施しており、この際に増し締めが行われていないことを確認しております。」
という回答がなされている。

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