ガラス固化体貯蔵建屋の改造工事のコンクリート温度等に関する原子力安全・保安院への質問書

ガラス固化体貯蔵建屋の改造工事のコンクリート温度等に関する原子力安全・保安院への質問書

2005年11月24日

原子力安全・保安院長 広瀬研吉 様

 貴院が2005年10月18日付で発表した「再処理施設に関する設計及び工事の方法の変更の認可」 について、特に、「第1ガラス固化体貯蔵施建屋東棟」の「コンクリート温度の制限値」に関して質問します。

本年1月に日本原燃は、「崩壊熱の除去解析」の誤りを反省しました。高レベルガラス固化体を30~50年間も貯蔵すべき重要な建屋の温度解析が間違っていたのです。

 そのため、日本原燃は4月18日に「設計及び工事の方法の変更認可申請」を行い、その中に「この改造により、設計目標としているガラス固化体中心温度500℃以下、コンクリート温度65℃以下を確保する」という目標を明記しました。

ところが日本原燃は、9月22日付で「一部補正」を貴院に提出しました。そこでは、当初の目標を放棄し、「『出口シャフト迷路板部』、『天井コンクリート(搬送室床部)収納管貫通部』にコンクリート温度が65℃を超える箇所が存在する」としています。すなわち、2箇所でコンクリート温度が設計目標の65℃を超えることを認めています。

 そして、65℃を超えても許される根拠として、「通商産業省告示の解説には、コンクリート温度制限値について一般部65℃以下、局部90℃以下と記載されている」と記述しています。その上で、上記2箇所には「局部90℃以下」を適用しています。

 また、日本原燃は、「審査の過程で、・・・局部コンクリート温度に関する解析について(貴院に)説明を行いました」と述べていることから、貴院もその根拠を容認したことが示唆されています。

 事実、貴院は、「日本原燃株式会社再処理事業所再処理施設ガラス固化体貯蔵設備の改造について(概要版)」(2005年10月18日)の「(3)耐震等」において、「事業者はコンクリートの長期健全性の観点から、一般部のコンクリート温度の設計目標値を65℃としている。・・(中略)・・原子力安全・保安院としては、当該部位の割合が力の及ぶ構造躯体の体積に対して少なく、65℃を超え90℃以下となる部分が仮に劣化したとしても、構造物の剛性や耐力に大きな影響を及ぼさない範囲であることから、局部的な範囲と判断した」と記述しています。このように、「局部」という概念を貴院自身も認めています。

 私たちは、コンクリート温度が65℃を超える2箇所はどちらも安全上非常に重要な部分であると考えます。それゆえ、そのような箇所が65℃を超えることを認める貴院の姿勢に強い疑問を抱かざるを得ません。

 このことに関し、以下の点について具体的に質問しますので、明確に回答して下さい。

 さらに、アクティブ試験の手続きに関する貴院の姿勢及びガラス固化溶融炉の問題について、基本的な質問をしますので回答されるよう要請します。

質問事項

1.ガラス固化体貯蔵建屋のコンクリート温度について

質問1.日本原燃のいう「通産省告示の解説」と「局部」について

 日本原燃が「一般部65℃、局部90℃と記載されている」と述べている「通産省告示の解説」とは、通商産業省告示第452号(1990年10月22日)の解説だと理解した上で以下の点を質問します。

 1-1.その解説の「表9.1コンクリートの温度制限値」で90℃が適用されている箇所は「貫通部」と明示されています。「貫通部」とは、具体的には原子炉格納容器の横壁にある貫通部のことと理解できますが、この理解で相違ないですか。

 1-2.告示452号の解説では、日本原燃のいう「局部」という概念は見当たりませんが、「局部」はどこに書かれているのですか。

 1-3.「出口シャフト迷路板部」がなぜ告示452号の解説でいう「貫通部」に該当するのか、説明してください。

 1-4.「天井コンクリート(搬送室床部)収納管貫通部」がなぜ告示452号の解説でいう「貫通部」に相当するのですか。

 1-5.もし日本原燃のいうように、「貫通部」をより一般的な意味合いをもつ「局部」と読み替えるのならば、そのようにできる根拠は何か、明確に示してください。

質問2.前記で引用した貴院の判断について

 2-1.貴院のいう「局部的な範囲と判断」したことの妥当性について法的根拠を示してください。どの法規にその規定が書かれているか、具体的に示してください。

 2-2.「当該部位の割合が力の及ぶ構造躯体の体積に対して少なく、65℃を超え90℃以下となる部分が仮に劣化したとしても、構造物の剛性や耐力に大きな影響を及ぼさない範囲である」と判断していますが、以下の3点を具体的に説明してください。

(1)65℃を超える部分はどれだけの範囲か、「出口シャフト迷路板部」及び「天井コンクリート(搬送室床部)収納管貫通部」それぞれについて示してください。

(2)「力の及ぶ構造躯体の体積」とはどの部分か、「出口シャフト迷路板部」及び「天井コンクリート(搬送室床部)収納管貫通部」それぞれについて示してください。
(3)「構造物の剛性や耐力に大きな影響を及ぼさない範囲」とはどの範囲を指しているのか、「出口シャフト迷路板部」及び「天井コンクリート(搬送室床部)収納管貫通部」それぞれについて示してください。

質問3.コンクリート温度が65℃を超える箇所の重要性について

 3-1.「出口シャフト迷路板部」について

 迷路板根元部分のコンクリートが劣化すれば、迷路板の先端が下がって迷路板部の構造が変り、冷却空気量や放射線の放出に直接影響が及ぶのではありませんか。30~50年に渡って迷路板部の構造を支えるべき根元部分の温度がなぜ「その他の部分」の温度より高くても許されるのか、説明してください。

 3-2.「天井コンクリート(搬送室床部)収納管貫通部」について

 この箇所は、廃棄物管理施設での「耐震計算書」(平成4年8月7日付第3回設工認申請書の添付書類)でも、「収納管は天井スラブに固定された状態で懸架される」と記載しているように、それぞれ約7トン近くもの荷重をもつ収納管がぶら下がる重要箇所のコンクリートであるはずです。30~50年間も約7トン近い荷重を支えねばならない重要箇所であるにもかかわらず、なぜ「その他の箇所」より温度が高くても許されるのか、説明してください。

2.アクティブ試験の手続きに関する貴院の態度に関して

 11月10日に貴院の薦田審議官は、改造工事の最中にもかかわらず、早くも「アクティブ試験の計画書が提出されればその妥当性を確認する作業に入る」と表明しています。他方、青森県知事は、ガラス固化体貯蔵建屋の改造工事が終了していなければ、ウラン試験の総合確認試験に入れないと表明しています。知事の意向からすれば、今の段階でアクティブ試験の手続きに入ることはできないはずです。貴院は、地元・県知事の意向を尊重するのですか。

3.ガラス固化溶融炉の技術開発について

 日本原燃のアクティブ試験計画では、高レベル廃液ガラス固化建屋(K施設)の溶融炉を用いてガラス固化を行うことになっています。ところが、ガラス固化溶融炉には重要な技術的欠陥があるため、東海村の研究施設で今なお開発研究が続けられているところです。
 そこで問題になった白金族やレンガ屑が溜まる問題はすでに解決したと考えているのですか。

以上、具体的資料を提示された上で、回答して下さい。

2005年11月24日

核廃棄物搬入阻止実行委員会
グリーンピース・ジャパン
原子力資料情報室
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会