九州電力のプルサーマル計画を国が承認

九州電力のプルサーマル計画を国が承認

 経済産業省は9月7日に九州電力から申請のあった玄海3号炉におけるプルサーマル計画を許可した。原子力安全委員会(05年8月29日答申)と原子力委員会(同30日)の「ダブルチェック」を経てこの日に判断した。これによって、九州電力のプルサーマル計画の国の審査は終了し、残された課題は地方自治体(県と地元自治体)の了解のみとなった。

 また、国では四国電力の伊方3号炉でのプルサーマル計画を審査中だ。こうした中、9月12日に中国電力が、同13日には中部電力がそれぞれ地元に対してプルサーマル計画の了解を求めた。これら一連の動きは、六ヶ所再処理工場の使用済み燃料を使ったアクティブ試験をにらんでの形作りに他ならない。日本原燃はアクティブ試験をこの12月から開始する予定だ。延期は必至と伝えられているが、それはともかく、アクティブ試験では実際の使用済み燃料を処理するため、実施の前に電力各社はこれによる抽出プルトニウムの利用計画について明らかにすることが原子力委員会によって求められている(「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方について」2003年8月5日原子力委員会決定)。

 アクティブ試験に入るにもかかわらずプルサーマルが進展していなければ、六ヶ所再処理工場から取り出されたプルトニウムの使い道がますます絵に描いた餅になり、批判が高まる。それをかわすための「申し入れ」と言えよう。

 プルサーマル計画は95年の高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の事故により日本の高速増殖炉計画が大きく後退したことを受けて、1997年2月に電気事業連合会から公表された。その年の1月から国の強力な要請が行なわれて、電気事業連合会が動いた形だった。その内容は、英仏との再処理契約に基づいて抽出されたプルトニウムを海外で燃料に加工して日本へ輸送し、1999年から2010年の間に16?18基の原発に装荷することで、およそ43トンのプルトニウムを消費する。

 ところが、現在に至ってもプルサーマルが導入された原発は一つもない。東京電力の初装荷MOX燃料が福島と新潟に、関西電力用の燃料が福井に輸送されたが、関電のほうはMOX燃料製造元の旧BNFLの燃料製造品質管理データの偽造や異物混入事件が発覚することによりプルサーマル計画の遂行は頓挫してしまった。2002年にMOX燃料は装荷されることなくイギリスへ返還された。他方、東京電力の場合は2001年に新潟県の刈羽村で住民投票が実施された結果、反対多数により柏崎刈羽原発へのプルサーマル導入が拒否された。さらに、2002年8月に発覚した定期検査データの改ざん問題によって、プルサーマルの自治体の事前了解が福島県、新潟県ともに白紙に戻っている。現在の動きは、先行2社のプルサーマル計画が破綻する中での動きである。いずれも2010年までに導入するとの申し入れである。

 プルサーマルの受け入れを促すために、経済産業省は04年度からプルサーマルに対して新たな交付金の導入を実施した。しかも、これは、電力会社が自治体へ申し入れた段階から交付対象となるものだった。そこで、電力各社は地元了解の根回しなく申し入れを行っている。現在その増額を検討していると伝えられる。

 玄海3号炉のプルサーマルの安全審査について、安全委員会は、専門の委員会を設置して詳細な検討をするべきという市民側の申し入れを無視した。高浜原発の時と変わらない燃料を利用するから専門の検討は不要というのが安全委員会の言い分だ。しかし、原発の出力が高浜3・4号炉の87万キロワットに対して、玄海3号炉は118万キロワットと高く、炉心設計なども異なることから、専門家による厳しいチェックが必要ではないか。

 さらに、日本のプルトニウム富化度がフランスなどに比べて相当に高い点からもそれが必要だ。フランスでは燃料集合体平均で3.1?4.6%であるのに対して、玄海原発では6.1%。それゆえ、MOX燃料体中にプルトニウムの塊(プルトニウムスポット)ができやすく、局所的によく燃焼するために、燃料破損の危険が高まる。

 また、使用済みMOX燃料を再処理する第2再処理工場の実現性はほとんどなく、中間貯蔵施設に送られるめども立たないなか、地方自治体に最終処分までの間貯蔵されることになる恐れが高い。

 こういった諸々の問題点を指摘し、プルサーマル了解をやめるように、佐賀県知事や地元玄海町、長崎県などへ市民グループが申し入れたのは8月29?30日。脱原発ネットワーク・九州や佐賀県平和運動センター、美浜・大飯・高浜に反対する大阪の会などを中心に151団体(情報室含む)と114個人が署名した。
cnic.jp/218

 多くの恐れを指摘した市民グループの申し入れであるが、ほかにも、地元九州では、海上反対デモ、県民署名などに加えて公開討論会の実施など、さまざまな反対運動の取り組みが行われている。隣接自治体のプルサーマル導入反対の議会決議も挙げられている。今後の運動の展開が焦点となってくるだろう。

(伴英幸)

『原子力資料情報室通信』376号より

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