原子力長計策定会議委員月誌(14)

伴英幸の原子力長計策定会議委員月誌(14)

政策大綱、醒めた目でみてみると…

 7月29日から8月28日まで「原子力政策大綱(案)」に対する意見募集が行なわれ、その結果を受けて第32回原子力長計策定会議が9月16日に開催された。次回は9月29日だが、この日が実質的に最後の会議となった。

 私は、6週間の意見募集期間を求めたが、草間委員の助け舟を得て、やっと2日延びたのだった。結果は701名から1717件の意見が寄せられた。この中には8月に青森、福島、佐賀、福井、東京の5ヶ所で開催された「ご意見を聴く会」での意見も含まれている。1190件だった前回の応募意見を越えている。福島県知事、新潟県知事も意見を寄せ、これは委員に別刷りで配布された。当室も積極的に応募を呼びかけた。多数の応募に、この紙面を借りて感謝します。

 今回の策定会議では2度の意見募集を行なった。これは初めてのことで、私の要求が通った結果である。もともと、意見を寄せて事務局が対応を決める一往復の今の仕組みを少しでも変えるための提案だった。しかし、その効果が得られたかは疑問である。募集のあり方は課題として残った。

 脱原発の立場からの意見も多く寄せられたが、当然ながら、これらが採用されることはなかった。しかし、意見を出すことに大きな意義があったと考えている。大綱(案)は、関係省庁、電力業界と原子炉機器メーカー、研究機関、そして与党などとの間のすり合わせが行なわれた結果として出てきている。これは会議のテーブルの向こう側での話である。委員となって垣間見ることができた。今回の政策大綱(案)のなかに大きく位置づけられたのは、地方自治体の役割である。これは、初めてのことではないか。福島県や茨城県などの対応がそうさせたように受け止めている。

 核燃料サイクル反対派の声が大きくなってきたこともあり、方法はよいが内容は欺瞞的な総合評価が行なわれた。残念ながら六ヶ所再処理工場をウラン試験入り前に止めることはできなかった。ただ、不確実性への対応として直接処分策への研究が盛り込まれたことは大きな意味を持ってくるだろう。

 従来路線を踏襲して、数値目標を出して原発などの積極推進をうたっているが、しかし、多くの箇所に「柔軟性」が盛り込まれた。以前のような勢いはなく、「自然エネルギーも原子力も」といった感じである。とはいえ、総合エネルギー調査会が第2再処理工場を含めてさまざまな検討を開始したことに私たちは注視していかなくてはならない。

 策定会議資料で明らかになったように原子力産業の売り上げは減少し続けており、次世代を担う人手も減少し続けている。脱原発派は政策を決定するステークホルダーとしてはまだまだ登場していない。国会の中でも脱原発を掲げる党は残念ながら圧倒的に少数派だ。脱原発の世論を高め、原発立地点や計画地点でさまざまな推進の動きを止める状況を作っていくことで、政策も変えていくことができるのだろう。多くの支援をいただきました。重ねて感謝します。(9月20日)

『原子力資料情報室通信』376号より

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