廃棄物安全小委員会報告書(案)に対する意見

「総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会廃棄物安全小委員会報告書(案)-原子力施設におけるクリアランス制度の整備について-」
に関する意見募集
www.meti.go.jp/feedback/data/i40609aj.html
に対して、以下のコメントを提出しました。

廃棄物安全小委員会報告書(案)に対する意見

原子力資料情報室
西尾漠

===========================================
1.意見の該当箇所
「2.クリアランス制度」
2.意見の概要
 原子力施設において発生した廃棄物は、施設外に搬出すべきではない。
3.意見及び理由
 原子力施設において発生した廃棄物をあえて「放射性廃棄物」と「放射性廃棄物でない廃棄物」「放射性物質として扱う必要のない廃棄物」に分け、施設外に持ち出さなければならない理由は存在しない。青森県六ヶ所村に向けて搬出されている放射性廃棄物も、本来は搬出されるべきでないものと考える。
 「循環型社会の形成に資する」との意義づけは、とうてい社会的な同意を得られるものではない。社会は、原子力施設において発生した廃棄物の循環より隔離を望むことは、火を見るより明らかである。
 そうした社会の声を反映させるには、パブリックコメントだけでは決定的に不十分である。
 なお、付言すれば、病院等で使用される短寿命のラジオアイソトープ廃棄物の規制除外については、原子力施設において発生した廃棄物と同列には論じられず、社会的に受け入れられる余地があるかもしれない。原子力施設において発生した廃棄物もRI廃棄物も有害廃棄物もその他の廃棄物も十把一からげにすることは失当である。

===========================================
1.意見の該当箇所
「3-4.クリアランスレベル設定等の考え方」
2.意見の概要
 クリアランスレベルの数値見直し後にパブリックコメントを行なうべきである。
3.意見及び理由
 クリアランスそのものに反対であり、パブリックコメントの不十分性を指摘した上で、肝心のクリアランスレベルについて見直しの可能性を残しながら意見を求めることに強い疑念を覚える。原子力安全委員会クリアランス分科会の検討後に、もっともっと多くの人に内容を知らせて意見集約を行なうべきだと思う。
 クリアランスレベルを決めた時には「日本独自の評価」(これ自体、「総てのシナリオ(評価経路)を考慮し」たものとは信じがたいが)を宣伝しながら、こっそりIAEAのレベルを導入することは許されない。
 海外でIAEAレベルの導入(従前のレベルからの大幅緩和)をめぐって反対運動が起きていることにも、国際動向を紹介するなら触れられて然るべきだろう。

===========================================
1.意見の該当箇所
「4-3.放射性核種濃度の決定の方法」
2.意見の概要
 決定方法は事業者による恣意的な選択にゆだねられている。信頼性はまったくなく、その点でもクリアランスは正当化できない。
3.意見及び理由
 ほとんどの廃棄物は実際に測定されなくてもよいこととされ、測定も容易なもののみで可とされている。

===========================================
1.意見の該当箇所
「5-3.クリアランスされた物の取扱い」
2.意見の概要
 「不測の事態」の際の廃棄物の回収に担保がない。やはりクリアランスはするべきでない。
3.意見及び理由
 不測の事態には「国は必要に応じ事業者に対して放射性廃棄物の回収を含む適切な措置を講ずることも必要」とあるが、回収を可能とする制度的な担保がない。
 「原子力事業者においてはクリアランス制度が社会に定着するまでの間、処分、再生利用の際の最初の搬出先が把握できるよう、例えば、埋設処分であれば処分場を、有価物として再生利用する場合には中間処理を行う会社等について、把握・記録するような枠組みを構築することが必要」とある。これでは第一次の搬出先までしか把握できず、それ以降は野放しと言ってよい。それすら「社会に定着するまでの間」では、不測の事態にまったく対応できない。
 そもそもクリアランスに無理があるのである。