原子力長計策定会議委員月誌(11)

伴英幸の原子力長計策定会議委員月誌(11)核不拡散の観点からも六ヶ所再処理工場を廃止すべき

原子力資料情報室通信より

 このところは急ピッチで論点整理が行なわれている。昨年6月の策定会議開催から1年程度を目途にまとめたいとする委員長の焦りなのだろうか。第23?26回(4月14日?5月12日)まで、原子力研究開発の進め方、放射線利用、人材の養成・確保、原子力に関する国際問題、国民・社会と原子力の調和などなどについて論点の整理が行なわれつつある。国民・社会と原子力の調和などは重要で十分に議論されるべき課題のはずだが、資料と論点整理案が同時に出てきた。
 人材の確保で特筆すべきことは、原子力分野へ流れる金と人材が減少している傾向がはっきりと現われてきていることだ。国の研究開発費、企業の研究開発費共に減ってきている。メーカーは、原発建設がないのに人材を維持することなどできるはずもなし、国との共同プロジェクトを提案したいとねだるなど、産業界からの悲鳴が漏れ出てくる。
 失った信頼回復のために事業の透明性を増すことの一環として小さなトラブルまで公開しているが、あたかもそれが原因のように「社会の眼から生み出されるさまざまな重圧がのしかかっていて、自らの仕事における社会への貢献を感じにくく…働きがいや誇りが持てず、魅力のない職場になる…」と書いている。自業自得である。
 下請け作業といった労働構造の重層化の中での人材の確保といった視点からはまとめられておらず、あくまでも「優秀な」人材に着目している点を指摘する委員もいた。末端作業における技術や人材の確保にも言及する委員がいた。
 これらの論点は、資金と人材が減ってきている原子力産業の危機感の現れともいえよう。
 さて、国際問題ワーキンググループからの論点整理案が出されて、議論したのは第25回(4月28日)策定会議だった。第26回(5月12日)には策定会議としての論点整理案が出てきた。本誌勝田によるNPT再検討会議報告にある「憂慮する科学者連盟」の声明のことなど、伴としては言いたいことがいろいろとあったが、時間切れで議論は次回へ持ち越しとなった。
 第25回策定会議で、吉岡委員は同ワーキンググループのまとめを評して、「『核倶楽部の準会員』としての立場が、全体から湯気のように立ち上っているような印象」と述べ、機微性の高い核燃料サイクル諸施設の5年間のモラトリアムを提案しているエルバラダイIAEA事務局長案を支持して、「日本政府はエルバラダイ提案を大歓迎し、率先して国際合意へ向けてリーダーシップを発揮するのが、歴史的使命である」との考えを述べた。一方、伴は核不拡散の観点から考えても、六ヶ所再処理工場を廃止するべきと主張した。これには数名の委員から強い反発があった。平和利用と核兵器開発とを混同させるべきではないというのである。平和利用に制限が必要になるほど核拡散状況が進んでいるとの認識に大きな隔たりがあると感じた。
(5月16日)

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