原子力長計策定会議委員月誌(6)

伴英幸の原子力長計策定会議委員月誌(6)やっぱり建前に過ぎなかった「安全第一」

原子力資料情報室通信より

 第13回と第14回会合の報告をする。この2回は原子力利用の安全確保についての議論だった。第13回では、原子力安全・保安院と文部科学省原子力安全課からそれぞれ安全確保への取り組みの説明があった。参考資料として、原子力安全委員会の基本方針、厚生労働省の労働安全衛生対策の在り方に係る検討報告書が配布された。第14回では、関西電力藤洋作社長、日本原燃兒島伊佐美社長、東京電力勝俣恒久社長から事業者としての安全確保への取り組みの説明があった。つまり、美浜事故、不正溶接問題、損傷隠しや漏洩率検査不正などで厳しく糾弾されている3社からの弁明だった。中間取りまとめ案が14回会合で配布され、第15回で案についての議論をすることになった。
 原子力委員会が安全問題をどこまで扱えるのか、縦割り行政に慣れきっているからか、所掌範囲を意識しているからか、委員の間にもとまどいが見られた。橋本昌茨城県知事から、この10年の事故の多発を考えれば安全問題は重要な問題であり、もっと書き込むべきだと印象に残る発言があった。
 伴はペーパーできれいごとを書いていても実際が伴っていないことを言いたく、保安院に対しては、福島第一5号炉の運転許可を取り上げた。すなわち定期検査で配管の余寿命が0.8年まで減肉していたにもかかわらず、運転許可を出したことは(東電に対しても同じことを述べた)、安全の確保どころか切り詰めだと主張した。保安院の回答は科学的、合理的な判断として許可を出したと開き直ったものだった。また、地震PSAのスクープが報道された直後だったので、詳しい説明の機会を策定会議の場で設けること、原子力安全基盤機構の評価は昨年9月のこと、保安院は結果を受けて1年間どのようなことを行なっていたのかも質したが、保安院は手法の開発のためであり個別プラントのデータを用いたものではないとかわした。電力会社の行なった地震PSA(原子力安全基盤機構の結果と大きく異なっている)も公表するように働きかけてほしいと座長に要請した。また、近藤委員長からは策定会議で議論する問題ではない、要請については各所に伝えるとの返事。
 関電の美浜3号炉事故後、藤社長は運転中のプラントへの立ち入りをしないと述べていたが、「協力会社、地元の方々のご理解が得られるまでの間」との条件が付いていた。安全性よりも経済性を優先させることはやめて運転中の立ち入りは今後とも止めるべきとの伴の主張には、タービン建屋のどこでも危険だと言うわけではないといった返答があった。
 日本原燃に対しては、大量のプルトニウムを使うが、安全の判断は事業者だけには任せられず、事故情報の積極的な公開が必要だと主張。これに対して、情報公開は重要だが、核物質防護という観点も非常に大事な要素で、配置図の公開とかはできないときっぱりと述べた。翌日の報道で知ったのだが、日本原燃はウラン試験時にマスコミが撮影した写真、ビデオなどを提出させ検閲するとのこと。日本は情報管理社会へ向けて暴走し始めたと実感した。
(12月14日)

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