福島第一原発事故収束作業 暴力団関連企業とその従業員の存在

『原子力資料情報室通信』第457号(2012/7/1)より

福島第一原発事故収束作業
暴力団関連企業とその従業員の存在

双葉地方原発反対同盟代表 石丸小四郎

 「郡山警察署と双葉警察署は5月22日、(福島県)二本松市の住吉会系暴力団配下の組員5?6人を福島原発の災害復旧工事に建設作業員として従事させたとして幹部を労働者派遣法違反で逮捕したと発表した」と5月23日付け「福島民友」は伝えた。これに先立つ5月15日、「福島民報」は原発の請負事業に深く関わり、商工会長や福島県原子力発電所在町情報会議1)委員などの要職にあたった楢葉町の渡辺興業の社長が拳銃所持の疑いで逮捕されたことを伝えている。これらは、原発と暴力団の周辺にいる者が資金獲得のため経営する企業および役員・従業員とが深く関わっている実態を示し、東京電力という公益企業が、それを活用し相互依存関係にあることを物語るものである。

 日本では、“危険・きつい・汚い”の3K労働の現場は、暴力団組織に依存してきた歴史がある。原発も同様の軌跡をたどっている。

 資料1に示すように、会社数は第一原発で約350社。東京電力を頂点にプラントメーカー、東電・プラントメーカーの子会社、大手・中堅会社、小工事会社、ひとり親方などピラミッド型の多重構造で構成されている。

 原発は13ヵ月に1度の定期検査が義務付けられている。燃料の取り替え、点検工事、部品や消耗品の取り替え、改造工事や国の検査など当初は約3ヵ月間かけて実施していた。元請は日立・東芝・三菱重工の3プラントメーカーが受注し、各系列企業群に投げる。これに変化をもたらしたのが、1997年に国が推し進めた電力の一部自由化であった。これを機に東電は自社子会社を第一次下請けに投入し、修繕費などの徹底した絞り込みを行なうとともに、定検期間の短縮にしのぎを削るようになった。このとき、弱小企業は淘汰され、多重構造も数ランク減少したとされている。

 雇用形態・条件・期間・内容も上に行くほど好条件で下に行くほど不安定雇用となり、末端は日給5000円、社会保険や雇用保険も加入なしの使い捨て状態にある。

 ちなみに、現在の福島事故収束作業の末端報酬は日給8000円が相場だという。東電からは6?7万円出ているが、順次ピンハネされるため減少する。

福島第一原発での多大な被曝量

 原発労働者の多くは「福島第一原発は古く、汚染がひどい。作業場がせまく窮屈で、働きたくない」と語る。

 その背景には、米国から“実験炉”をつかまされ、1971年の運転開始当初から原子炉緊急停止(スクラム)、燃料被覆管のピンホールや亀裂、重要配管の応力腐食割れなどが頻発したことがある。そのため建屋内は、「放射能が降り積もる」と表現されるほど汚染が拡がり、社員からも悲鳴があがった。1976年に東電労組が行なったアンケートでは、被曝の不安から54%が転勤を希望、被曝労働は下請けに回すよう要求がでる事態となった。

 第一原発の1978年度の総被曝線量は80.47人・シーベルトと異常な高さとなった。70年代後半から80年代にかけて事故・トラブルが相次ぎ、被曝線量が高くなり、労働者にがん死やがん以外の病気が急増した2)

 原発で長年働いてきた佐藤信広さん(故人)は、「原発の3K実態が暴力団・企業舎弟が存在感を増す下地になっている。この組織がぴったりはまる労働現場は他にない。命令と服従の関係が仕事をこなすときに力を発揮する。放射線管理区域に入るとき防護服に着替えるが、入れ墨で幅を効かせる。労働トラブルを力で押さえられる」と語った。

 私たちは05年10月の東電交渉で、佐藤さんと共に申し入れを行なった。

 「原発では雇用の多重構造の弊害が噴出している。暴力団関連企業や入れ墨をしている人物の雇用があり、公益企業として異常な実態となっている。健康診断書や印鑑の偽造、健康保険や厚生年金に加入させないなどの違法行為が横行している」3)との訴えに対し、東電の回答は「当所では工事請負契約上うたっているのは工事の品質管理、施工方法、竣工状況などであり、個人の身体や人格上の問題を契約に盛り込むことはできない。福島第一原発では反社会的勢力への対応のために、富岡警察署の次長を呼び協力企業を対象に講話を開催し、意識の高揚を図っている」と工事請負契約で逃げを打ったが、反社会的勢力の存在は暗に認めたという経緯がある。

 さらに、佐藤さんは「原発では労災隠しが常態化し、急病人が出ても救急車も呼ばず3時間も放置され、同僚の車で病院に搬送された経験をしている。その後、後遺症で身体障害者になった。私の経験では、原発内の労働災害は90%まで隠されている。また、暴力団関連企業とその舎弟が大手をふるう職場になっていて、原発内部で野球賭博や花札賭博が横行している事実を知っているか?東電の管理責任が問われている」と追及した。この会社、都合が悪くなると無言になる傾向があるが、このときもそうであった。

 1年後の06年、「東電で暴力団・企業舎弟をなんとか排斥しようとつとめたらしいが、逆に『やれるものならやってみろ!』と開き直られ、あきらめたらしい…」との情報が入ったので、再び交渉の中で追及したが、これについては認めようとはしなかった。

 東電は、原発内の違法行為と労災隠し、暴力団関連企業とその従業員の問題には頭を悩ませていたとみられる。前者は相当程度改善され、救急車も入るようになった。しかし、後者は多重構造に深く食い込み、現在も手がつけられていない状態にある。

 困難を極める福島第一原発事故収束作業の現場では、暴力団関連企業とその従業員らが存在感をより高める可能性を内包している。

1)この組織は2002年の東京電力によるひび割れ隠しを契機に作られた組織で、所在4町からそれぞれ5名の住民代表20名、学識経験者1名、東京電力第一・第二両所長の23名で構成された意見を聴く会として発足したもの。ここにオブザーバーとして原子力安全・保安院、資源エネ庁、福島県が入り、05年2月1日に初会合を開き、事故直前まで継続的に開催されてきた。

2)本誌353号(2003年11月1日発行)原発内被曝労働と国・事業者の責務 http://www.cnic.jp/files/353p5-8.pdf

3)本誌378号(2005年12月1日発行)原子力産業の衰退は原発の現場から http://www.cnic.jp/files/378p6-9.pdf

 

 

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