福島原発事故 作業員の労災、過労死で初認定

『原子力資料情報室通信』第454号(2012/4/1)より

福島原発事故
作業員の労災、過労死で初認定
横浜南労基署「短時間の過重業務」認める

 昨年5月、福島第一原発で作業中に心筋梗塞で死亡した大角信勝さんの遺族の労災申請に対し、横浜南労働基準監督署は2月24日、「過労が原因の心筋梗塞」として労災を認定した。

 大角さんは、元請けの東芝からみて4次下請けにあたる静岡県御前崎市内の建設会社の臨時雇いとして現場に入った。5月13日午前2時30分に宿舎を出発し、午前6時?9時のシフトに入り、汚染水の処理機材を設置するため、集中廃棄物処理施設の配管工事などを担当した。2日目14日の午前6時50分ごろ、特殊のこぎりを運ぶ途中で倒れた。医務室に運ばれたが医師は不在。8時10分、Jヴィレッジに搬送されたが、医療設備が不備のため、35分救急車でいわき市共立病院に搬送されたが、9時33分に亡くなった。

 大角さんが体調不良を訴えてから病院に着くまで2時間以上かかっている。大角さんの死をもって、救急体制の不備が指摘され、東京電力はようやく現場に常時医師を配置する措置をとった。大角さんの被曝線量は計0.68ミリシーベルト。報道によれば、ご遺族が労災申請したとき、東京電力は「(大角さんの死と)業務との関連性は高くないと考えている」、東芝は「労働と心筋梗塞との因果関係は不明で、いまの段階では労災だったかどうかは判断できない」とコメントを出した。東電、東芝から見舞金や補償は支払われていない。

労働環境の過酷さを重視

 大角さんの労働時間は2日間で計4時間弱の作業だったが、同労基署は、深夜から早朝にわたり、防護服・防護マスクを装備した労働が過重な身体的・精神的負荷となり、心筋梗塞を発症させたとし短時間の過重業務による過労死と認めた。

 厚生労働省によると、脳や心臓疾患による労災の認定基準は、?長期間の過重業務、?短期間の過重業務、?異常な出来事―の少なくとも1つに該当する場合としている。

 原発労働者の労災認定の壁は厚く、これまでなかなか認められなかった。今回、原発労働者が過酷な環境で働いていることを国が認めた判断は、原発で働く作業員の労働災害について救済の道を拡げる画期的なものである。

 福島第一原発での作業中の死亡は、大角さんの他にもこれまでに3人確認されている。昨年8月上旬に7日間、休憩所を出入りする作業員の被曝管理をしていた男性が白血病で死亡。累積被曝線量は0.5ミリシーベルト、内部被曝はゼロとされている。

 8月8日から汚染水をためるタンクの設置工事に従事していた50代の男性作業員が10月6日、作業中に倒れ死亡。死因は後腹膜膿瘍による敗血症ショック。前日の10月5日午前7時ごろ朝礼に向かうときに歩けなくなり、体調不良を訴えていたという。被曝線量は2.02ミリシーベルトとされている。

 1月9日には、建設中の廃スラッジ貯蔵施設でコンクリートの打ち込み作業を行なっていた作業員が体調不良を訴え、5・6号機の緊急医務室に運ばれ治療を受けたが、心肺停止状態となり、いわき共立病院へ搬送された。

 2月末までに、35件の労災申請が出ている。昨年9月、小宮山厚労相は「原発作業員の労災認定の基準について、広くがんを対象にしたい」と発言した。労災認定の拡大を望みたい。

2号機地下の線量、最大160mSv

 3月14日、2、3号機の原子炉建屋地下で放射線量を計測したところ、2号機の線量は最大で毎時160ミリシーベルトであった。建屋には、各号機に作業員3人ずつが入り、地下にある圧力抑制室の入り口付近などを計測した。2号機では100?160ミリシーベルト。3号機入り口の扉が開かず計測できなかったが、手前の場所で線量は2号機の約3倍あった。作業時間は2号機が20分、3号機が8分。作業員の平均被曝線量は2号機で2.87ミリシーベルト、3号機で2.68ミリシーベルトという高い線量で、作業者にとっては過酷な作業であった。福島第一原発のきびしい環境下での収束作業は、今後30?40年は確実に続く。

除染作業でも2人死亡

 各地で除染が活発に行なわれているが、作業に携わった2人の死亡者が出ている。昨年12月12日、伊達市霊山町下小国のモデル地区で除染作業をしていた男性作業員は休憩中のトラック内で心肺停止状態で見つかり、約1時間後に病院で死亡。死因は非公表。

 内閣府原子力災害対策本部と日本原子力研究開発機構は1月17日、福島県広野町の除染モデル実証事業で、除染に携わっていた男性作業員が倒れ、搬送先の病院で亡くなったと発表。死因は心筋梗塞であった。

 昨年10月からわずか2ヵ月間で「東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る電離放射線障害防止規則」(除染則)を制定し、2012年1月1日から施行されている。この除染則が適用されるのは、福島県全域および岩手、宮城、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉県の地域で、放射線量が毎時0.23マイクロシーベルト以上の除染特別地域および汚染状況重点調査地域で行なう、土壌等の除染作業等、または廃棄物収集等の作業である。労働者の放射線被曝の限度は、原子力作業従事者の限度と同様、年間50ミリシーベルトかつ5年間で100ミリシーベルト。

 また、上記対象地域以外での除染等の作業や自社の事業所の除染作業に関しては、ボランティアや自営業者、住民に対して除染則に留意しながら実施することが望ましいとしている。除染作業による被曝の問題にも注視していきたい。

(渡辺美紀子)

★梅田さんの裁判にご支援を!
30年前に島根原発と敦賀原発で働き、心筋梗塞で労災申請した梅田隆亮さんが、2月17日に福岡地方裁判所に『原発労災給付不支給処分取り消し』裁判を提起されました。
 
梅田さんの第一回口頭弁論 
 期日:2012年5月9日(水)午前11時?
 福岡地方裁判所303号法廷にて

■福島原発事故被曝労働:明らかにされない作業内容や被曝低減対策
 http://www.cnic.jp/1297
『原子力資料情報室通信』第452号(2012/2/1)より

■福島第一原発:3月から9月末の総被曝線量は198.5人シーベルト
 http://www.cnic.jp/1250
 『原子力資料情報室通信』第450号(2011/12/1)より

 

 

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