新大綱策定会議奮闘記(4)原発の安全文化は根付かない

『原子力資料情報室通信』第450号(2011/12/1)より
新原子力政策大綱
新大綱策定会議奮闘記(4)
原発の安全文化は根付かない

新大綱策定会議

 第8回会合は、10月26日に開かれた。議題は原子力の安全性と小委員会からの報告(10P参照)だった。小委からの報告に、すべての損害費用を原発の出力比で考えることに疑問が出された。例えば、出力に依存して避難範囲を定めている訳ではないからだ。これは小委でも出ていた意見ではあるが、見直しが行なわれることとなった。
 もう一つのテーマである安全に関して議論があった。事故原因が調査中なのに、福島第一原発事故で「認識された安全確保上の課題と提言(案)」を議論しても大して意味があると思えない。筆者は言葉だけの提言を行っても安全文化は日本には根付かないとの意見書をまとめて提出した。この中で藤原節男さんの事例を引いて訴えた。彼は原子力安全基盤機構(JNES)で検査員として全国の原発の安全点検を行ってきたが、泊3号炉の使用前検査で、項目の一つ「冷却材温度係数測定」の不合格データを記録に残すように上司に訴えたが聞き入れられず逆に差別を受け、再雇用されなかった。現在、裁判で係争中だ。公益通報者が保護されない事例のひとつだ。この事例を放置してどうして安全文化が語れるのか? 因みに同機構では他の不祥事も重なり、第三者委員会を設置して「反省」するという。
 もう一点は、耐震安全性の見直しである。これまで耐震安全性のチェックのやり直しをするべきと繰り返し訴えてきた。「提言(案)」は委員からの意見をまとめたもの、意見として出てこなかった項目は触れていないと説明していた。しかし、事故の防止への「提言(案)」に津波想定の見直しは書かれていても、地震想定の見直しには言及していない。東京電力は、福島原発は地震に耐えたという見解なので、これを採用しているのだろう。地震計は途中で記録できなくなっており、耐えたという根拠がないという筆者の指摘を含めて無視された。どうしても地震の影響を認めたくないようだ。他原発へ波及させたくないのだろう。

総合資源エネルギー調査会
基本問題委員会

 委員会は原発以外の議題が多く、多様な意見が出てくるので、ついていくのがなかなか大変だ。筆者にとっては刺激の多い委員会だ。
 11月9日の委員会では原発に関して田中知委員と筆者がそれぞれ意見を述べた。発表者は二人だけではないが、原発に対する意見としては二人が激突することになった。筆者は、原発震災の被災者一人ひとりの悲しみや痛みから出発するべきとして、原発からの撤退を訴えた。支持する発言も得られ、正面からの批判などはなかった。他方、田中知委員は原発の必要性を訴えた。論調は震災以前と変わらないものだったので、事故の反省が感じられない(阿南久委員)、3月の前に作成した原稿ではないか(高橋洋委員)といった厳しい意見が出ていた。

(伴英幸2011.11.17)


□12/6 18:30~総合資源エネルギー調査会基本問題委員会(第6回)
 http://www.cnic.jp/1247
 →過去の基本問題委員会 議事要旨・配付資料
 http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonmondai/index.htm

□原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会:事故リスクのコスト
 http://www.cnic.jp/1245

●新大綱策定会議奮闘記(3)基本問題委員会も設置され、エネルギー政策の見直しへ
 http://www.cnic.jp/1233

●新大綱策定会議奮闘記(2)
 http://www.cnic.jp/988

●新大綱策定会議奮闘記(1)
 http://www.cnic.jp/977

□『原子力資料情報室通信』第450号(2011/12/1)もくじ
 http://www.cnic.jp/1246


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