新刊 『福島・柏崎刈羽の原発震災 活かされなかった警告』

『福島・柏崎刈羽の原発震災 活かされなかった警告』
『福島・柏崎刈羽の原発震災 活かされなかった警告』
反原発運動全国連絡会 編
末田一秀・武本和幸 著
七つ森書館 発行
定価:900円+税

もくじ

序章 福島原発を襲った大地震 
現実となった原発震災 8
既設の原子力施設は直ちに運転を停止すべき 10

第1章 原発震災、福島いわき市からの報告 13
      福島県いわき市市会議員 佐藤和良

震災後、最初の一週間 14
原発震災で浴びる放射能汚染 19
子どもたちをどう守るか 22
3・11から被曝後の世界に入った 25
原発を受け入れてきた五〇年 29
福島原発は廃炉しかない 32
福島原発は廃炉に、全原発を止めろと、みんな声を上げよう 35

第2章 破綻した原子力防災 39
1 原子力災害対策特別措置法の特徴 40
2 事故想定 41
3 防災対策を重点的に充実すべき地域 42
4 オフサイトセンター 43
5 原子力緊急事態宣言の発出 46
6 事故情報の中央統制 48
7 国と自治体の関係 50
8 予防避難の考え方 51
9 避難の基準 52
10 災害要援護者対策 54

第3章 放射能汚染と向き合うためのQ&A 55

第4章 原発は地震に備えてきたか 65
1 地震はなぜ起きるのか 66
2 活断層とはなにか 68
3 アスペリティとは 69
4 地震の揺れについて 70
5 耐震設計審査指針とは 72
6 震源を特定する地震動の評価方法 74
7 「震源を特定せず策定する地震動」とは 76
8 残余のリスクとは 77
9 原子炉を設置する地盤はいかにあるべきか 79
10 地震随伴事象とは 80
11 バックチェック中間評価結果 82
12 変動地形学に基づく活断層調査とは 84
13 活断層の上に立つ原発 87
14 揺れを増幅する地下構造の上に原発 88
15 バックチェック結果のその後は 90

第5章 柏崎刈羽原発を襲った中越沖地震 93
1 中越沖地震の概要と計測された地震動 94
2 止める、冷やす、閉じこめる 95
3 原発が受けた被害は? 97
4 基準地震動S2を超えた意味 99
5 柏崎刈羽の地震・地盤論争 101
6 地盤の隆起・沈降の意味──地殻変動と地盤破壊 10
7 隠されていた海底活断層 105
8 ハギトリ波解析結果 107

*序章・第2章?第4章を末田が、第5章を武本が執筆した。

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序章 福島原発を襲った大地震

現実となった原発震災

 かねてから警告していた地震による原発事故、原発震災が現実のものとなってしまいました。
 二〇一一年三月一一日、東北地方太平洋沖地震の揺れが福島第一、福島第二、女川、東海第二原発を襲いました。
 福島第一原発は1号炉から3号炉までが稼働中でしたが、地震の揺れで自動的に制御棒が挿入され核分裂反応は止まりました。核分裂反応が止まってそれで終わりではありません。原子炉は停止しても冷やし続ける必要があるのです。東京電力は、二〇〇七年の中越沖地震のとき柏崎刈羽原発で綱渡りの冷却を経験済みです。
 1号炉では、地震の揺れでおそらく配管が破断し、水が抜けてしまいました。さらに、非常用発電装置も津波により使えなくなり、冷却水を供給するためのポンプが動かなくなったため、燃料棒が冷却水から露出してしまいました。また、漏れ出した蒸気の影響で格納容器内は設計圧力の二倍にも達したため、ベントと呼ばれる圧力抜きが地震翌朝には行われ、放射能が放出されました。
 燃料棒の被覆管にはジルコニウムという金属が使われていますが、このジルコニウムが高温になると、水蒸気と反応して水素を出してしまいます。この水素が圧力容器から原子炉建屋に漏れ出しました。1号炉と3号炉ではその水素が爆発し、建屋の上部が吹き飛びました。このとき多量の放射能が撒き散らされました。
 原子炉建屋の五階部分には、使用済み核燃料がプールに沈めてあります。この水が核燃料の熱でやがて蒸発し、何もさえぎるものがないことから、水蒸気とともに放射能が飛散し続けることになりました。
 4号炉は定期点検中で原子炉は止まっていました。しかし、原子炉からとりだしたばかりのまだ大きな発熱量をもつ使用済み核燃料がプールの中に入っていたため、発熱により水素が発生したのでしょう。あるいは3号炉から水素が流れ込んだのかもしれません。結局、水素爆発と火災により建屋はぼろぼろになってしまいました。
 電力会社はこれまで原発の安全性を説明するとき、五重の壁で放射能を閉じこめると言ってきました。しかし、今回の事故では、この五重の壁がことごとく破られてしまったのです。
 冷却機能を失った1号炉から3号炉までの炉心は溶融してしまい、崩れ落ちたと考えられます。もし圧力容器が割れたりして、熱い固まりの核燃料がさらに下に落ち、格納容器の底に溜まった水に落ちると、水蒸気爆発を起こします。大規模な爆発で、格納容器がふっとんで、放射能が大気中に大量にばらまかれる可能性がありました。この間何度か起こった水素爆発とは比べ物にならないほどの甚大な被害も予想されますが、懸命の注水でこのような破局的事故を食いとめてきました。余震で注水が止まるなど、まだまだ予断を許さない状態が続いています。
 放水された水が高レベルに汚染され、海に流出してしまいました。また、高レベル汚染水の保管場所を確保するため、低レベルとされる汚染水を意図的に放水することまで行われました。
 後手後手にまわる対処が、事故と汚染を拡大しています。

既設の原子力施設は直ちに運転を停止すべき

 福島第一原発大事故は、日本のみならず世界を放射線被曝・放射能汚染の恐怖に晒しています。
 日本の原発は絶対安全、大事故は起こらないと豪語してきた日本政府と電力会社、御用学者の責任は重大です。
 大地震・津波の危険性、電源喪失事故、集中立地の危険性、大事故が起こったときの決死隊の問題、一〇キロ圏内のみの防災対策の問題点等々、現在進行形の事態を多くの人が古くから指摘してきました。にもかかわらず、それらを真剣に受けとめることなく、ただただ原発推進あるのみとの姿勢が、今回、日本政府・東京電力の事故への対応が後手後手にまわった要因の一つです。それでも「想定外」と居直るのは、人の道を逸脱した犯罪行為にほかなりません。
 本稿執筆時点では、福島第一原発は冷温停止に至っておらず、事故の収束を見通せない状況が続いています。冷却機能の確保とこれ以上の放射能の放出・漏洩による汚染防止対策が重要です。その際、労働者の安全に十分留意しなければならないことは言うまでもありません。住民の被曝は、年間一ミリシーベルト以下になるよう、さまざまな手立てをすみやかに行う必要があります。巨大な放射性廃棄物と化した福島第一原発の処理処分は、数十年単位の長い闘いになるでしょう。
 全国各地で脱原発を求めて原発や原子力施設の反対運動を続けてきた私たちは、福島第一原発の危機的状況の一日も早い収束を願いつつ、私たちが今一緒になってできることを追求したいと思います。
 そのために、本書では福島からの報告などとともに、現行の防災計画や耐震設計審査指針がいかに破綻したか明らかにしています。
 これらの見直しが終わるまで、今なお動いている既設の原子力施設は直ちに運転を停止すべきです。
 繰り返し襲ってくる余震や、危険性がかねてから指摘されている東海・東南海・南海地震等により、これ以上の原発震災を繰り返さないために。

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