原子力長計策定会議意見および質問書(第18回)

第18回策定会議意見および質問書

2005.2.10
原子力資料情報室 伴英幸

I. 第17回策定会議第4号資料について
1. 回答1-2について
核燃料サイクル開発機構の実用化戦略調査研究を通じて、現在想定される我が国の原子力発電の規模では、マイナーアクニチドを含んだ燃料を利用した高速増殖炉サイクルとしていくことで、原子力発電の持続的利用のための燃料増殖と、放射能低減を同時に満たす見通しが得られつつあります。
 上記回答されていますが、第16回会合参考資料1のp.3「各高速増殖炉の設計結果の比較」を見ると、資源を重視した場合と経済性を重視した場合とで評価されています。マイナーアクチニドを含んだ燃料は後者に当たるのではないでしょうか? 資料によれば、増殖比は両者で大きく違っており、区分されていることから、「同時に満たす」とは言えないのではないでしょうか?

2. 回答2は回答になっていません。「技術的選択肢の中でも潜在的可能性が大きいものの一つ」とされてはいても、実際には、他の選択肢との比較検討はされなかったと受け止めてよいのでしょうか?
 だとすれば、本長期計画策定会議で他の選択肢との比較検討を行なうべきだと考えます。でなければ、このような無責任な表現を踏襲することはできないと考えます。議長の見解を伺います。

3. 回答13について
 2000年長計に際してのご意見を聞く会では、高速増殖炉開発に反対の意見7に対して賛成は2であり、多数が反対しています。同意見募集では第1回策定会議の発言メモに載せましたように反対の意見は58%でした(もんじゅについては82%が反対)。
 今回の長計では、事務局が要約した「長計についてご意見を聞く会」では、高速増殖炉に言及されたケースが3例あり反対が2、賛成が1でした。市民参加懇談会では、高速増殖炉に関して、敦賀で一人が反対の意見を表明、第7回では3名が言及し、いずれも反対。第9回では9人が言及して5名が反対、4名が賛成でした。また、第9回では「市民を交えてきちんとした議論がなされるべき」「どれくらいの役割を担えるのか議論するべき」などとの発言がありました。
 今回の策定会議で本日含めて3回の議論が行なわれたことになりますが、「国民の意見を反映した」見直し作業を行なっているとは考えられません。議論のほとんどないままに進めてよいのでしょうか?

II. 第18回会議資料第2号 放射性廃棄物処理処分について
1. 議論に入る前に資料に関するいくつかの質問があります。
1-1. ガラス固化体の発生量について43200本となっていますが、費用手当ては40000本を処理する前提で算定したものでした。そして、総額約2兆8000億円処分費用の中に、追加3200本分の処分費用は含まれているのでしょうか?
1-2. クリアランスでは、放射性物質が市民の日常生活のまわりに出回ることになりますが、これによって市民はどのようなメリットを受けることになるのでしょうか?
1-3. COGEMA社による固形物収納体とアスファルト固化体について、容器あたりの放射能量(αおよびβ・γ)はどれくらいに設定されているのでしょうか? また、同様にBNFL社のセメント固化体および雑固化体の容器あたりの放射能量はどれくらいに設定されているのでしょうか?

2.  かつて核燃料サイクル開発機構(旧動燃事業団)が地層処分予定地選定のための調査を行っていましたが、現在は原子力発電環境整備機構が処分の実施主体として、選定作業含めて引き継ぎ、「最終処分施設の設置可能性を調査する区域」を公募しているところです。その際、核燃機構が行なった過去の調査結果に基づかず行なうことになっていました。公募の精神からしてもこの姿勢は理にかなっていることです。
 他方、核燃機構は以前の調査結果を非公開にしていました。例えば、高レベル廃棄物の地層処分に関する調査・研究報告書では調査地点が推測できる部分などを非開示とし、リモートセンシング調査結果は名古屋地裁で敗訴となる(2004.12)まで非開示としていました。
 ところが、鹿児島県笠沙町で処分場誘致の話しがでました本年1月5日の地元紙をみますと、非公開のはずの内容を地元町長らが知っていたとしか考えられない報道がなされていました。
処分場計画をめぐっては、旧動力炉・核燃料開発事業団(現・核燃料サイクル開発機構)が1980年代にまとめた適地選定で、鹿児島県内10カ所が候補に挙がっていた。中尾町長は「うち1カ所は宇治群島」と明らかにした上で、「当時の地質調査で建設に適した岩盤であることが分かり、誘致を検討していた」と説明した。 (南日本新聞 2005年1月5日 1面)
以前、国から(宇治群島が)有望な地下岩盤だと打診された経緯がある。その時はお断りした。以来、財源確保として念頭にあり研究してきた。合併論議が始まる前からで、思いつきではない(南日本新聞 2005年1月5日 29面)
町長は5日、記者会見で「最終処分場については6,7年前、国から宇治群島が最適との話があったという。」(朝日新聞 鹿児島県内版 2005年1月6日 インターネットアサヒコム)
 報道にあるように、調査内容が町民には知らされず、一部の行政担当者らだけに知らされて公募への勧誘が行なわれていたのでしょうか? だとすれば、このような公募のあり方はあってはならないことで、過去の調査結果を元に働きかけることをするべきではないと考えます。

3.  TRU廃棄物を地層処分することの検討が提案されています。電気事業者と核燃料サイクル開発機構で技術面の検討が行なわれているとのことですが、原子力発電環境整備機構(NUMO)との関係はどうなるのでしょうか? NUMOは現在、高レベル放射性廃棄物の地層処分候補地の公募を行なっていますが、公募資料ではTRU廃棄物は考えられておりません。後からTRUが処分対象として追加することは地元の信頼を失うことになり、新たな紛争の種にもなりかねません。このような案が出てくるのであれば、少なくともその結論が出るまでは、NUMOの公募を中断するべきではないでしょうか? TRUも併置処分するとの結論が出たとすれば、その後に、TRU含めた形で公募することが公正な方法だと考えます。